もしもシリーズ   作:ユッケライス

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お久しぶりです。かなり時間が空いて申し訳ございませんでした。かなり空いてしまいましたので、本当に書き方忘れかけました。
それでは今回も、拙い文ではありますがよろしくお願いします。





もしもあの日に戻れたら 終(前編)

 

 

奈緒「え?」

 

かおり「だから、アタシたちはもう動かないの」

 

奈緒「う、動かないって、また何で……?……そりゃ、この前のかおりと雪乃の事もあるけど、だからって動かないってのは……」

 

かおり「ああ、違う違う。雪ノ下さんとのいざこざで拗ねて投げやりになってる訳じゃないからね?」

 

奈緒「ち、違うのか?なら、またなんで……」

 

かおり「賭けてみたんだ。あのどこにでもいるような、頼りなさそうな、普通の男の子に」

 

奈緒「普通の男の子……?」

 

かおり「未央を救う役目を譲るのはちょこっとだけ癪だったけどね。昨日の奈緒との電話で決心ついたんだよ?」

 

奈緒「……まさか、比企谷に?」

 

かおり「これで良かったのかなって、今でも不安はあるんだけどね。でも、奈緒の話を聞いてて、何故か見てみたくなったんだよね。あいつがこの件からどうやって未央を救うのか。どうやって野中から未央を切り離すのか、って」

 

奈緒「……」

 

かおり「んまぁ、本音を言うと、野中ともこの前バチッちゃったから、アタシは警戒されて近付けないってのもあるからね。ふふ、ウケる」

 

奈緒「お前なぁ……」

 

かおり「ふふっ、まあそういう訳なの。言い方が悪く聞こえるかもしれないけど、もうアタシはお役御免だからね。結局未央のために何も出来なかった。もう後は、未央の親友であるアタシから託されたあいつしか、連中に太刀打ち出来る奴はこの学校には居ないってわけ」

 

奈緒「……」

 

かおり「だから、もうアタシは未央を守る事だけに集中することにしたよ。野中達にはノータッチ。干渉しない。アタシ馬鹿だから、それが今のアタシの出来ることかな。だから奈緒も、加蓮を守ることだけ考えててよ」

 

奈緒「……分かった。あたし達も何も出来なかったからな。力になってあげれなくてごめんよ」

 

かおり「そういうつもりで言ったんじゃ無いんだけどなぁ。相変わらず奈緒はウケるね」

 

奈緒「なあ、かおり」

 

かおり「何?」

 

奈緒「かおりから見て、比企谷はどう映った?」

 

かおり「うーん、……さあ?」

 

奈緒「さあって……。あたしもあいつの事は信頼はしてるけど、そんな感じで決めて良いのか……?大袈裟に言っちゃうと、事の命運をあいつに託すって事だぞ?」

 

かおり「まあまあ、確かにそうなんだけどさ、なるようになるよきっと。それにさ」

 

奈緒「それに?」

 

かおり「(あいつのマジな顔見てると、何かやってくれそうな感じがしたからね)」

 

かおり「ううん、何でもないよ」

 

奈緒「何だよそれ……。…あ、そうだ」

 

かおり「ん?」

 

奈緒「比企谷に任せるって言うんなら、ちょっと気になることがあったんだった。あいつに伝えとかなくちゃ」

 

かおり「気になること?」

 

奈緒「うん。この前なんだけどな―」

 

 

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まゆ「何ですかぁ雪乃ちゃん。まゆに何か言いたいような顔ですね」

 

雪乃「あら、あなたにはそう見えるのかしら。私はそんなつもりはなかったのだけれど。でもあなたがそう見えたのなら、何か心当たりがあるのではなくて?」

 

まゆ「うふ。我関せずですか。むかつきますねぇ」

 

雪乃「あら奇遇ね。私もあなたに対してとても腹が立ってるのよ」

 

まゆ「ふふ、やっぱり言いたいことがあるんじゃないですか。はっきり言えばいいのに」

 

雪乃「……ならはっきり言わせてもらうわ。あの日、比企谷君にバレた日、あなた一体何をしていたの?」

 

雪乃「あの男の動きを封じるにはあなたが適任と評価してあなたに頼んだのよ?なのにあの日、あの男より先に帰っていたそうじゃないの。彼のことを運命の人だ何だと普段から宣っているあなたが聞いて呆れるわね」

 

まゆ「……先ず、最初に言っておきます。あの男ではありません。比企谷八幡という名前があります。まゆの目の前であの男なんて言わないでください」

 

まゆ「それと、雪乃ちゃんが言っていたようにまゆはあの日八幡さんより先に帰宅しました。ですがあの時小町ちゃんからペナルティとして帰らされたこと、そしてその小町ちゃんがそばに居るから大丈夫と判断したからです。ですので、雪乃ちゃんにとやかく言われる筋合いは無いですよぉ」

 

雪乃「大丈夫と判断した?ふふっ。現に大丈夫ではないじゃない。完全にバレたのだから。確かにこれまで、比企谷君の気を完全に逸らせ、あの三人の事を考えさせる時間を与えなかったあなたは正直凄いわ。普通ならどこかで考えてしまうもの。いえ、考える時間が出来るはずだもの」

 

雪乃「そう考えると、あなたと小町さんがどれほど労したかは想像できるわ。そこは感謝しています」

 

まゆ「……」

 

雪乃「けれど、最後の詰めが甘かったわね。甘すぎよ。あなたも……、……そして、私も……」

 

まゆ「雪乃ちゃん……」

 

雪乃「当たってしまってごめんなさい。あなたのせいでは無いのよ。私のせい。分かってるわ。折本さんに言われた通り、回りくどいやり方で解決しようとし過ぎたわ」

 

雪乃「早期に解決しなければ、被害者はどんどん苦しくなる。そんなこと、私が一番分かっていた筈なのに。問題に取り組んでる自分達に自惚れて、中々進まない現状を良しとしていたの……」

 

まゆ「……ですけど、八幡さんが知ってしまったのは、まゆのせいです」

 

雪乃「いいのよ。バレてしまっては仕方ないわ」

 

まゆ「……?」

 

雪乃「比企谷君を信じるしかないでしょう」

 

雪乃「四年前の彼を見た私達の考えすぎ、思い過ごしなのか、それとも、私達では思いつかないような方法で解決するのか……」

 

雪乃「穏便に、とは……、いかないわね。比企谷君だもの……」

 

まゆ「……」

 

まゆ「(八幡さん……)」

 

 

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折本から情報を貰った俺は人目の少ない渡り廊下の脇に一人座っていた。体育館や柔剣道場と校舎の間に位置するこの場所は、放課後は部活生で溢れるが、それより前、昼休みなどは意外だが生徒はあまり通らない。昼休みの体育館の利用は禁じられているのもあるが、体育館前に設置されているウォータークーラーが故障中である事が大きいのかもしれない。徐々に暑くなっているこの時期に、態々敷地内で端の方に位置する此処まで来るという生徒は稀だろう。しかしそれでも此処に来る生徒が皆無という訳では無い。だからなるべく端の方に目立たないように座っている。教室内は雑音が多すぎるからな。決して教室に居場所が無いわけではない。考え事するにはうるさすぎるんだよ。

 

八幡「(さぁ、お得意の脳内一人言が出たところで……)」

 

改めて折本から教えて貰った三人の情報だ。

上里明。こいつは本来とても大人しいらしい。小学校時代に同じクラスになったことがあり、何度か話した程度だが、誰がどう見てもそう答えるだろう、というのが折本の言葉だ。控えめ、おどおどしていて気弱、だそうだ。折本さん、言葉は選びましょうね。折本が野中と掴みあっていたあの日、折本はまず上里を捉え、口を割ろうとしていたらしい。

 

次に恵未来。小学校時代はずっと読書をしていたという。品行方正で、確か家もかなりの金持ちであった気がする。あまり覚えてないや、ウケる、……らしい。折本自身もあまり話すことは無かったようだ。折本曰く、遠くから人を見ているタイプで、上里とはまた違った大人しいタイプ。あの日三人の顔を見たが、こいつはどこか雪ノ下に似た風貌だというのが第一印象だった。

 

最後に野中可菜。この問題の核。小学校時代は今のような感じではなく、ごく普通の生徒だったらしい。一時期、積極的に手を挙げて発表したりしていたようだ。しかしどこか不器用な印象で、特に人付き合いはそこまで上手ではなかったようだったという。小学六年時に折本と本田と同じクラスであり、当時本田はクラスの中心人物であった。

先日折本と掴み合いの喧嘩まがいが発生、野中の折本に対する警戒心は上昇……。

 

八幡「……」

少し抽象的すぎる気もするが、前よりはマシだ。有ると無いとではかなり変わってくるからな。

話を聞いた限りでは、やはり野中が核なのだろうか。しかし……

 

八幡「……何だろうな、この、すっと落ちてこない感じは」

 

俺自身の性格なのか、物事を素直に捉えることが出来ないこの厄介な性格は、メモとして利用した携帯画面、そこに映し出されている字面を見ても、すぐに納得はしなかった。

 

八幡「……」

 

折本は楽観的、能天気に見えて友人関係が絡むと気が強いという事が先日の野中との一件で分かった。

 

折本と野中が取っ組み合いに発展した際、上里はその場に居なかった。上里の口を割ろうとした所で野中が乱入し上里を解放。

 

上里はその場から離れるが助けを呼びに校舎内へ。

 

八幡「……」

 

普通なら教師に言えばいい。しかし上里にそれは出来なかった。言えば折本と野中が争うその場は収めることが出来るが、これまでの問題が明るみになってしまうからだろう。

 

八幡「……」

 

そこで上里は残りの一人である恵に応援を頼んだ。いつも三人でいるんだ、この選択は間違っていないだろう。恵のイメージからして、何とかできるかは別だが。

先日この場面以降を見て俺は裏で雪ノ下や渋谷たちが動いていたことを知る。

 

あの時何故俺にあんなにも隠そうとしたのか分からなかったが、何か理由でもあるんだろうか。

 

八幡「……ん?」

 

内ポケットに入れている携帯が連続で振動する。誰かから電話か。珍しい。

 

八幡「……もしもし」

 

奈緒『あ、比企谷?』

 

八幡「神谷か。何だ?」

 

奈緒『ああ。何かかおりに一任されたんだってな。それで、役に立つかわからないけど、この前あったことを伝えとこうと思ってな』

 

八幡「この前あったこと?」

 

奈緒『ああ。かおりと野中が喧嘩した日、あたしと加蓮は中々報告会に来ないかおりを探しに校舎内を歩いてたんだけど』

 

奈緒『途中で野中と会ったんだよ。多分あれはかおりとやり合う前だな。あたしには特に何も無くその場を離れたんだけど、その後トイレから帰ってきた加蓮を遠くからじっと見てたんだ』

 

八幡「……」

 

奈緒『その時も何だろうとは思ったけど、特に深く考えはしなかったんだ。でも今改めて考えると、やっぱりあれは何かあるのかなって思ってな』

 

八幡「……そうか」

 

奈緒『あと、それから少しして、今度は上里と遭遇したんだ。多分あれはかおりと野中の件が始まった辺りなのかな』

 

八幡「……」

 

奈緒『辺りをきょろきょろしてて落ち着きが無かったよ。たぶん二人の仲裁役を探してたんじゃないかな。そこであたし達と鉢合わせたんだけど―』

 

八幡「けど?」

 

奈緒『うーん、上里もあたしに対しては何も無かったんだけど、やっぱり加蓮に気付くと何かこう、更にあたふたし出したと言うか……。記憶が曖昧だから自信ないけど、確か加蓮に気付いた時、加蓮の名前言おうとしてたんだよな。でもすぐやめて苗字で呼んでたよ』

 

八幡「名前を?どういう事だ?」

 

奈緒『わかんないよ。とにかく、その二つを思い出したから伝えとこうと思ってな』

 

八幡「そうか。助かる」

 

奈緒『どうかな、使えそうか?』

 

八幡「正直それは分からん。でも無いよりはマシだ」

 

奈緒『そうかそうか。あたしからは以上だよ。それじゃあな』

 

八幡「ああ」

 

 

北条を見ていた野中。これが意味する事は何だ?

 

そしてその後に出くわした上里。北条の名前を言おうとして止めた。これが意味する事は何だ?

 

八幡「……」

 

何かが繋がりかけている。考えろ。

 

八幡「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「-------。----」

 

 

八幡「ん……」

 

少し遠くで声が聞こえる。独り言か?まさか同志が居るとはな。でもそれは脳内に留めておいたほうがいいぜ。経験者は語るってやつだ。

 

「------、-----」

 

「--」

 

もう一人居るのか。……ん?あの二人は……。

 

 

バレないように二人の会話を注意深く聞く。そこで二人の会話を少しだけだが聞いた。

 

 

 

その後、今までの情報を基に考える。それこそ何通りも。そして……

 

 

 

八幡「……そういう事か」

 

頭の中の霧が無くなっていく。点と点が線となり繋がって行った。

 

 

-------

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放課後、俺はすぐに図書館へ行き、ある人物を待っていた。来るかは分からないが。

 

 

 

端の席へ座り、入口付近をじっと見つめる。すると、そいつが来た。そいつは俺に気付くが、何事も無いかのように、奥の部屋へと進んで行った。

 

八幡「ちょっと待ってくれ」

 

俺の声にそいつは歩みを止める。図書委員は何をしてるんだか、この室内には俺達しかいない。

 

「……私でしょうか?」

 

八幡「ああ」

 

「……何か?」

 

八幡「ちょっとな。ここじゃ何だから、ちょっと来てくれないか?」

 

「……あなたと面識なんてあったかしら?」

 

八幡「無いな。話したことも無い。だから正直緊張してる」

 

「……随分と軟派な人」

 

八幡「それは誤解だ、って、いいから少し時間をくれ」

 

そう言い、俺が外へ歩き出すと、後ろから足音が聞こえた。着いてきてくれているみたいだ。

 

 

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---

 

 

 

少し校舎から離れたところで、対峙する。

 

 

八幡「……」

 

「……」

 

八幡「……」

 

「……」

 

 

 

 

八幡「……あー……、そのだな、なんか言ってくれると助かる」

 

「……あなたが呼び出したようなものでしょう?」

 

八幡「……まあそうなんだが」

 

「……それで?何か用ですか?」

 

八幡「……心当たりは無いのか?」

 

「まあ、質問を質問で返すなって教わらなかったのかしら」

 

八幡「……あー、本田の件、って言えば分かるか?」

 

「本田?本田って、同じクラスの本田未央ちゃん?彼女に何かあったのかしら?」

 

八幡「……」

 

「あら、怖い。折角の整った顔が台無しよ?」

 

八幡「はっ、そんな無理して世辞なんか言わなくていいっつうの。いいから質問に答えてくれ」

 

「あら、本心だったのに。それと、答えて上げたいのは山々なのだけれど、心当たりが無いの」

 

八幡「……心当たりが無い、か」

 

「そ。貴方が何のことを言っているのか、見当がつかないのよ。ごめんなさい」

 

八幡「それは無理があるな」

 

「はい?」

 

八幡「無理なんだよ。どう考えても、色んなケースを、それこそ何通りも考えても、最後はあんたに行き着いちまうんだ。シラを切り通すのは無理がありすぎる」

 

「……」

 

八幡「だから教えてくれ。そしてあいつから手を引け。なんで本田にあんな仕打ちをしたんだ。あいつが何かお前らの気に触るようなことをしたのか?」

 

「……」

 

八幡「……あいつとは特に関わりはないが、あいつの友達ってやつに任されちまったんだ。お前が言うまで俺は退けないんだ。悪いな。だから正直に話してくれ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「恵未来」

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 







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