クール属性が特に好きです。ですがパッションとキュートのアイドルもみんなかわいいので担当Pになれる気がしません。
休日。
なんと素晴らしい響きだ。
いま言った通り、今日は幼稚園は休みである。また来週からあるであろう雪ノ下の罵倒に耐える精神力を養わなければなるまい。まあそうはいっても、とりあえずはとことん惰眠を貪ってやる。
リビングのソファで寝転がりながらそう一人思っていた。目の前では小町がテレビを見ている。内容は絵本の読み聞かせであり、画面の中には本を読んでいるお姉さん、そしてその周りには俺と同じくらいの年の子達がおり、続きを気になりながら聞いている。小町もその一人であり、まるで画面の向こう側で一緒に物語を聞いているかのように珍しく集中していた。
少しすると親父が起きてきた。俺と小町に朝の挨拶を済ませる。テレビに集中していた小町はそれに気付かず、親父が少し落ち込んでいる。どんまい。
それにしても、小町は毎週この時間は絶対テレビの前でお利口に座っている。この本の読み聞かせの時間が小町の最近のお気に入りの時間らしい。リモコンも小町が自身の目の前に置き支配している。本人は使い方知らないのにな。
毎週読み聞かせの時間になると俺は小町から叩き起されチャンネルを合わせるためだけにリビングへ行かなければならないのである。
小町が息を呑む。どうやら絵本のお話も佳境に差し掛かったようだ。よほど絵本の世界に入ってしまったのだろう。小町が少し前に乗り出した。
その時突然、こまちのめのまえがまっくらになった!・・・ポケモンじゃないよ?
小町が前に乗り出したせいで、目の前にあったリモコンのボタンを押してしまったらしい。しかも電源ボタンを。小町は一瞬固まったが、その後自分が置かれている状況を理解したらしく、すぐさま俺を見た。・・・はいはい、つければいいんでしょ?リモコンかしなさい。割と早めにテレビを再度起動したのだが、現実は小町に厳しかった。
画面の向こうに映し出されているのは本を閉じたお姉さんと、拍手する子供達の姿であった。それを見た瞬間小町は泣き叫んだ。それはもう盛大に。俺と親父で必死にあやすが全く効き目がない。オチを聞き逃し終わりが分からないのでモヤモヤしてるんだろうな。
その後お兄ちゃんスキルが働いてしまい、休日の予定を睡眠から件の絵本探しの旅へと変更せざるを得なくなったのだった。
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俺は一人で本屋を目指し歩いていた。本当は親父か母ちゃんと一緒に行こうとしたのだが、親父は突然会社から連絡が入り休日出勤。本当にお疲れ様でございます。親父を見る度に将来の夢が専業主夫となっていくな。
母ちゃんは小町の機嫌を直さねばならず、家に残っている。ああなった小町は母ちゃんじゃないと直せないからな。俺一人で絵本を買ってくると言うと母ちゃんに心配されたが、そこは小町のお兄ちゃん。立派に買って帰ってみせよう。そういうわけで、母ちゃんから金を貰い、俺は本屋を目指すのであった。
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八幡「な、無い、だと・・・」
一人で外に出るのは公園に行く以外に家の近くを探検する程度しか経験が無かったが、以前母ちゃんと本屋にきたことがあったので、道程は知っていた。一人で本屋に来れる俺すごない?ふっ、負けを知りたい。そう考えていると、いくら探しても小町のお目当ての絵本が見つからなかった。店内を何周も何周も見て回ったが見つからなかった。早速負けてるじゃねえか。ああ、手ぶらで帰ると小町がまた泣き叫んでしまう・・・どうすっかな。
「・・・」
八幡「代わりを買おうにも、全部持ってるやつだしなあ・・・」
「あ、あの・・・・あれ、聞こえてない・・・?」
仕方ない。帰ろう・・・。小町には素直に謝ろう。
「・・・あの、すみません」
小町の悲しい顔見たくないな・・・
「あ、あの」
八幡「え?」
小町のことを考えていると、袖を引っ張られていることに気付いた。
「す、すみません・・・何か・・探しているようでしたので・・・」
声の主は女の子であった。俺よりちょっとだけ年上だろうか。前髪が目にかかっており、よく顔は見えないが、わずかに見えるとても綺麗な目。間違いなく美少女なのは容易に確認できた。や、やばい、年上の女の子とか、緊張してきた。あ、俺同い年でも幼稚園で緊張してたわ。
八幡「は、はい。絵本を探してまして。妹が今朝・・・」
俺は今朝の出来事を話した。女の子は少し考えている様子だ。それにしても緊張する。こ、小町の泣き顔は見たくないが早く家に帰りたい。
「あ、あの・・もし、よろしければ、わたしのおじさんの書店に来ませんか・・?その本でしたら、あったはずです・・・」
八幡「え?」
「あ・・・す、すみません・・・余計な、こと言ってしまって・・・無理にとは言いませんが・・・」
おじさんが書店を開いてるのか。俺も本は好きだから少し羨ましいな。せっかくこう言ってくれているんだ、ありがたく提案を受け取ろう。
八幡「で、でしたら、是非」
「! は、はい」
女の子は断られると思っていたのか知らないが、提案を受けたら少しだけ笑顔になったように見えた。かわいいなちくしょう。
こうして俺は女の子の言う本屋へと目指すのだった。
あ、まだお互い名前知らないや。
八幡「あ、あの、お名前は?」
「あ・・・はい・・。鷺沢、文香って言います・・」
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鷺沢さんの叔父さんの本屋は先程の本屋に比べると大きくはなく、むしろこじんまりとしたものであったが、それでも俺を引き込むには充分だった。店の雰囲気もだが、全く来たことのない場所に来たから冒険心のようなものも作用され、気分が少し高揚してしまう。
俺が来た道とは全然違うから、こんな所に本屋があるなんて気付かなかったな。いつもはさっきの本屋に母ちゃんと行ってるし。
大人が読むような難しそうな本はもちろん、俺でも読めるほどの児童書も多かった。というか児童書が一番揃ってるな。そして目当ての絵本も無事見つけることが出来たのであった。
八幡「どうもありがとうございました。鷺沢さんのおかげで妹に泣かれなくて済みそうです」
文香「いえ・・お役に立てて、良かったです・・」
その後、当然帰ることになり、鷺沢さんは先程の本屋の辺りまで一緒に来てくれた。俺が帰り道で迷わないために付いてきてくれた鷺沢さんめちゃくちゃ優しい。
八幡「あ、ここで大丈夫です。何から何まで今日はありがとうございました」
文香「ふふ、気にしなくて、いいです」
クスリと笑う鷺沢さんはかわいくて、本当はもっと年上なのでは、と思うほど落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
文香「あの・・比企谷くんは、本は・・好きですか?」
八幡「え、は、はい好きです。難しい本はまだ無理だけど、児童書くらいなら家でよく読みます」
文香「そうですか。では・・よければ、これを・・」
そう言って手渡してきたのは本であった。
文香「私のおじさんは、私が本が好きだから・・あの本屋に私が好きそうな本をたくさん置いてくれてるんです。だから、暇があると、あの本屋にいってるんです」
なるほど。だから店内に児童書が一番置かれていたのか。叔父さんいい人だな。
文香「私の通ってる小学校では・・・私の周りの子たちは、あまり本を読まないので・・・だから、比企谷くんが、本を読むことが好きと言ってくれて・・・嬉しいです。その本はとても読みやすくて、とても面白いですので、よければ読んでください。私からの・・・プレゼントです」
八幡「え!?い、いや、さすがにタダで貰うわけには・・・!?」
文香「・・・・」
鷺沢さん、そんなに悲しい顔をしないで下さい。罪悪感が半端じゃないですごめんなさい。
八幡「す、すみません。では、ありがたく頂きます」
文香「! はい」
笑顔が眩しすぎる。天使はここにいたのか・・・。危うく告白して振られるところだった。振られちゃうのかよ。
文香「いつでもいいので、また、うちの本屋に来ることがあった時、感想を聞かせてください」
八幡「は、はい。もちろんです。また来ます」
そう言って鷺沢さんに一礼をし背を向け、小町が待っているであろう家を目指す。今日はまるで冒険したかのような一日だったな。
本は一人で読み、自分だけの世界なのだと思っていたが、本を通してこんな出会いもあるなんて。
少し歩いたところで、後ろを振り向く。鷺沢さんが変わらず見送ってくれていることに気付き、俺は胸が少し温かくなるのを覚え、気恥しさからか、先程より少し早足で家に帰るのだった。
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〜おまけ〜
後日、鷺沢さんに貰った本を読み終えた俺は、鷺沢さんのおじさんの本屋に来た。
八幡「す、すみません」
文香「!! 比企谷くん・・。そろそろ、来る頃だと、思っていました・・・」
ドラマやアニメでよく聞くセリフをまさか鷺沢さんが言うとは思わなかったな。本だけじゃなくて、そういうのも見るのかな。
八幡「この前はありがとうございました。貰った本もすごく面白かったです」
文香「!!そ、そうですか。ふふ、良かったです。あ・・・そうだ。比企谷くん、ちょっとまっててください・・・」
そう言うと店の裏側に消えていく鷺沢さん。なんだろう。待っててと言われたからそのまま帰られるということは無さそうだが・・・無いよね?
少しすると鷺沢さんが戻ってきた。・・・大量の本と一緒に。い、一体そんな華奢な体のどこにそんな力が・・・。
文香「よ、よければ、この本たちもどうぞ。今回は、あげることは、できないから、貸すことになりますが・・・」
八幡「ええ!?で、でも、さすがにこの量は・・・」
文香「・・・」
ああ!悲しい顔しないで鷺沢さん!その顔されると八幡断れない!!
八幡「わ、わかりました。ありがとうございます」
文香「!! はい」
断ることができず大量の本を受けとる。季節は真冬だというのに寒くなく、むしろ本を運ぶ重労働で汗だくで、腕がキツくて涙目になるというシュールな幼稚園児を演じながら帰ったのだった。
おわり