とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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98(メイド日記 エピローグ)

 

 =月R日

 

 徹様は、一体何者なのだろうか?

 ――そう考えること自体、間違いなのかもしれないが。

 徹様は徹様。それでいい。

 ……そう考える事が出来たら、きっと楽なのだろうけど。

 兵藤君の話では、徹様…徹様の『神器』は『神の器』らしい。

 らしい、と言うのはその事を話した兵藤君自信がその時、正常な精神状態だったか怪しいからだ。

 誰もが信じていない。信じたくない。

 だが、徹様に関係することなだけに、無視もできない。

 乳神の精霊――と言うのが、どうにも現実味が無い。

 もう少しマシな名前の神はいなかったのだろうか?

 徹様の『神器』の中の神は、もっとマシな名前だと喜ばしい。

 名前を与えられていない神と言う事だったので、名付け親は徹様になるのだろうか?

 それなら、まだ安心はできるが。

 しかし、徹様――乳神の話を聞いた時から、酷く落ち込まれている。

 黒歌や小猫も、いつものような元気がない。恐らく、徹様の事を気にしているのだと思う。

 ――なにか、私に出来る事はあるだろうか? 

 

 今日は疲れた。

 北欧の悪神、ロキ。その息子であるフェンリルと、フェンリルの子供、スコルとハティ。ミドガルズオルムの複製体。

 私からしたなら、格上と言う事すら憚られる敵。

 よく生き残れたと思う。よく立ち向かえたと思う。

 フェンリル、そしてスコルとハティを僅かとは言え退かせる事が出来た。

 上出来どころの話ではない。私からしたら、奇跡のような戦果だ。

 私一人の力ではない。黒歌の、グレイフィア様の――たくさんの人に助けられ、鍛えられた結果だ。

 私の今日までの努力は無駄ではなかった。そう思えた。

 私は今日、少しだけ強くなれた。そう思う。

 ――明日からも努力し続けよう。

 今日からは、この家に住む人数も増える。

 北欧の戦乙女、ロスヴァイセ様と、スコル、ハティ。

 ……フェンリルの子供が人間に懐くと言うのも初めて聞く話だ。

 ロスヴァイセ様も驚いていた。異世界の神の器を持つ徹様に、何か感じたのだろうとアザゼル様は言われていた。

 オーディン様も、あっさりと神殺しの牙である二匹を徹様に渡していた。

 その事を、黒歌は警戒していたが…私達が何を言っても、徹様が受け入れたのなら、どうしようもない。

 今夜、徹様をお守りする事が出来た。

 今夜だけは――その事を喜ぼう。

 

 

 

 =月S日

 

 北欧の悪神、ロキの神性が失われたらしい。昨夜の戦いで。

 考えられることはいくつかある。だが、徹様を疑いたくは無い。

 ……ロキの事を聞いている時、どうでも良さそうな顔で聞かれていた。

 結果が判っておられたのか、本当にどうでもよかったのか……聞くのが怖い。

 ディオドラ・アスタロトとの一件の時を思い出してしまった。

 ――あの時のような徹様は、嫌だ。

 その理由で目を逸らしてしまった私は、『女王』失格だと思う。

 だがそれでも――真実を知るのが怖い。

 黒歌は徹様の真実は、徹様の口から聞きたいと言っていた。

 私もそう思う。秘密を話しても構わないと、そう思っていただけるほどの信頼を得てから――そう思う。

 少し、気が楽になった。

 やはり、黒歌は凄い。……本当に、徹様の事を一番に考えている。

 私も見習いたい。

 

 徹様は、ロスヴァイセ様の話の後、スコルとハティのお世話をしておられた。

 本当に、フェンリルの子供が人間である徹様に懐いていて驚いてしまう。

 徹様が学校へ行かれた後は、ロスヴァイセ様から色々と詳しい話を聞く事が出来た。

 徹様の護衛、それと、ロキの件で迷惑を掛けたから、と言われていた。

 黒歌は疑っていたし、私もあまり信じていない。

 だが、徹様はロスヴァイセ様を受け入れられた。オーディン様とどのような話をされたかは聞いていないが。ロスヴァイセ様、そしてスコルとハティを受け入れ、家に置くことを決めたのは徹様だ。

 なら私は、徹様に従うだけだ。

 

 

 

 

 =月T日

 

 ヴァーリ様達が帰って来られた。

 先日のロキとの一戦の時、フェンリルと共に戦場から消えられていたので心配していたが、無事だったようだ。

 黒歌も何か一枚噛んでいるようだが、徹様の害になるような事を黒歌がするとも思えないので、大丈夫だろう。

 その後、黒歌が美猴様にスコル達の住む家を作らせていた。

 戻って来られた人に何をさせているのか、とも思ったが美猴様も嬉々として造られていた。

 ああやって何か作るのもお好きなようだ。

 結果、随分と立派なスコルとハティの家が出来上がった。

 美猴様のお蔭だが、どうしてか黒歌が威張っていた。何をやっているのか。

 

 その後ヴァーリ様達は『禍の団』へと戻られたが、徹様が少し落ち込んでおられた。

 寂しがられているのだろうか?

 ……そんな徹様を癒す事が出来ない自分は、やはりまだまだだと思う。

 癒して差し上げたい? 当たり前だ。徹様には笑顔で居てほしい。

 黒歌からからかわれたが、徹様が沈んでおられる時は黒歌が癒してもいいと思う。

 そう言い返すと、逆に照れていた。

 変な所で打たれ弱い彼女は、美しいのに可愛いと思う。

 

 

 

 =月U日

 

 徹様が、いつも助かっていると、ケーキを焼いてくださった。手作りだ。

 グリゼルダ様に作り方を教わったらしい。

 ……凄く嬉しい。

 今日まで頑張ってきて良かったと思う。

 今日からまた頑張ろうと思う。

 ロスヴァイセ様の居候祝いと兼用だったが、それでも十二分に嬉しい。

 黒歌が私も、と言っていた。徹様には頑張ってほしい。

 私も、黒歌を祝ってほしい。きっと、彼女は凄く喜ぶ――幸せを噛み締めるだろうから。

 ですが、一つだけ言いたい事がある。言わなかったが。

 ――ロスヴァイセ様と一緒ではなく、私だけを祝ってほしいと思うのは、欲張りだろうか?

 欲張りなのだろう。

 でもいつか…私だけを祝ってほしい。どんな形で、どんな意味であれ。

 私だけを――私は何を書いているのか。

 

 

 

 =月V日

 

 フェンリルを怯ませた槍――黒歌が言うには、オーディン様の『グングニル』に似た偽の神槍。

 もう一度試そうとしたが、出来なかった。

 火事場の馬鹿力、と黒歌から笑われた。

 ……実際その通りだったので、言い返せなかったが。

 小猫から応援されたが、結局今日は上手く出来なかった。

 溜息しか出ない。

 少しは強くなれたと思ったが、どうやらまだまだだったようだ。

 だが、一度作る事が出来た。

 なら、もう一度。そして、いつか完璧に使いこなせるはずだ。

 今日まで私がしてきた努力は間違いではなかった。それが判っただけでも、一歩前進出来た気分だ。

 明日からもがんばろう。

 

 

 

 =月W日

 

 ロスヴァイセ様が、就職の事で徹様に相談されていた。

 私も相談を受けたが、紹介できるほど伝手がある訳ではない。

 そういう意味では、徹様は適任だと思う。

 様々な勢力、そのトップと面識があるのだから。

 しかし、北欧も就職は厳しいらしい。大変なのだな、と思う。

 私は徹様の家で家事をして、料理をして――随分と恵まれている。

 本当に――あの時徹様に救われ、拾われなかったら、どうなっていた事か。

 どれだけ感謝してもし足りない。

 

 就職が決まるまでしばらく時間があるそうなので、ロスヴァイセ様から北欧の魔術を教えてもらう事になった。

 ダメもとで頼んだのだが、了承を得られるとは思わなかった。

 今日から少し教わったが……結果は散々だった。

 どうやら、北欧の魔術の才能も、私には無いらしい。

 だが、ロスヴァイセ様の教えを無駄にしないよう、どうにかして生かしていきたい。

 仙術も、妖術も、魔法も、魔術も――才能が無いなら、努力で得るだけだ。

 それが私の生き方だ。

 ――今なら、胸を張って頑張れる。努力できる。

 その結果を、フェンリルに示せたのだから。

 

 

 

 =月X日

 

 スコルとハティは、本当に徹様に懐いている。

 フェンリルの子供なのだから、きっと頭もいいはずだ。現に、私の言葉も判っているようだ。

 大型犬ほどの大きさなのだが、二匹掛かりだと流石の徹様も遊ばれていた。

 だが、怪我をさせないのは流石だと思う。

 徹様は強くはあるが身体は弱いので、あまり無理をしないでほしく思う。

 ……でも、大きな銀の狼と遊んでおられる徹様は、可愛いと言うか、綺麗と言うか――らしいと思う。

 似合っている。

 日常や平穏。そう言うものが一番、徹様に似合っている。

 これからも、そんな時間を過ごしてほしいと思う。

 

 それにしても、スコルとハティに嫉妬する黒歌はどうにかならないのか。

 可愛らしくはあるが、徹様を困らせるのは駄目だ。

 まったく――最近は、人目も憚らず抱き付いたりしているのが目につく。

 そろそろ、また一度注意しないといけないだろう。

 嫉妬するのはいい。黒歌が徹様をどれだけ好いているかは、多分私が一番よく判っている。

 ずっと、彼女が徹様を好きになった時から見てきたのだ。

 だが、迷惑を掛けるのは容認できない。

 

 

 

 =月Y日

 

 まったく……黒歌にも困ったものだ。

 昨日の今日で、また徹様にご迷惑を……。

 しかも、私が注意しているのに、言い訳と言うか、惚気を言ってくる始末だ。

 普段はちゃんとしているのに、偶にああやって徹様の事だけを考える時がある。

 本人は気付いていないだろうが、ああなると数日はダメだ。黒歌ではなく、徹様に甘える飼い猫になってしまう。

 可愛らしくはあるし、微笑ましくもあるのだが。

 偶に思うのだが、もしかしたら徹様は、黒歌の初恋の相手なのかもしれないな、と思う時がある。

 私も長い時間を生きてきた、男と過ごした事だって初めてではない。

 だが、恋のような物をしたことはあるか、と聞かれると首を傾げるしかない。

 そんな生き方をしてきた。そんな生き方しか知らなかった。

 だから、今日のような黒歌を見ていると、自分を重ねてしまう。

 ……聞くような事じゃないし、私の勝手な想像なのだが。

 

 

 

 =月Z日

 

 徹様が、黒歌と小猫の為に魚を釣ってきてくださった。

 ヴァーリ様達と一緒に釣ってきてくださったそうだ。

 今度、お礼を言わないといけない。

 ディオドラの件と言い、今回といい、ヴァーリ様達には助けられてばかりだ。

 『禍の団』、テロリスト――三大勢力どころか世界の敵だが、私達には関係ない。

 徹様は、どこにも属していないのだから。

 徹様が持ってきてくださった魚は、私とロスヴァイセ様で調理させていただいた。

 余った分は、お隣のグリゼルダ様にお譲りした。喜んでいただけた。

 スコルとハティも喜んでいた。

 小猫も――だけど、一番喜んでいたのは黒歌だった。

 見ているだけで、幸せになれるくらいの喜びよう、と言うのはああいう事を言うのだろう、と思う。

 いつもはお姉さんぶっているのに、今日は一番幼い子供の様だった。

 良かった、と思う。心から。

 黒歌が徹様と出逢って、笑って、幸せで――良かったと心から思う。

 

 

 

 =月=日

 

 アザゼル様から呼び出しを受けた。

 内容は、今度から徹様と同じ学校でロスヴァイセ様が教鞭を振るうと言う事。

 それと、徹様の現状はどうか、と言う事。

 おそらく後者が本命だったのだと思う。

 だが、徹様は今回は倒れられていないし、落ち着かれている。

 『神の子を見守る者』に敵対する事も無い。

 そもそも、徹様は戦いを嫌っておられる。

 そう伝えると、目に見えて安心されていた。

 ――三大勢力も大変なのだろう。私は下っ端でしかなかったが、上に立つ者の心労には頭が下がる。

 コーヒーをお入れすると、喜んでいただけた。

 だが、昼間から酒を飲むのはあまり感心できない。

 飲まなければやっていられない、と言っておられたが。本当に大変なのだろう。

 何か手伝えることがあれば、何でも言って下さいと言ってきた。

 ……私に出来る事など、微々たるものだが。

 

 しかし、ロスヴァイセ様が大学まで卒業されていると聞いた時は驚いた。

 徹様も、今度勉強を教えてもらおう、と笑われていた。

 あまり徹様と変わらない歳なのに、天才と言うのは居るんだな、と思った。

 

 

 

 =月)日

 

 黒歌の嫉妬が続いている。

 スコルとハティに嫉妬してどうすると言うのか……。

 子供っぽい? ああ、確かにそんな感じだ。

 今まで徹様に甘えていたのは黒歌だけだったから、余計に自分の居場所を取られそうで拗ねているのだろう。

 子供らしい所もあるものだ。

 小猫も、そんな黒歌を見て笑っていた。

 

 しかし、黒歌とロスヴァイセ様はどうにかならないのか。というか、黒歌が一方的にロスヴァイセ様を避けているのだが。

 最低限の会話はしているが、それ以上は踏み込まない。そんな感じだ。

 まったく…徹様も気にされていた。

 

 

 

 =月(日

 

 グリゼルダ様に呼ばれた。

 と言っても、特別何も無かったが。呼ばれて、お茶を御馳走になった。

 ……徹様の周りは、とても微妙だ。

 あまり考えないようにしているが、それでも徹様が特別な存在だと言う事は誰だって判っている。

 これから先、きっともっと危ない立場になるだろう。

 徹様が望む平穏は――おそらく遠のくだろう。

 その事を、心配して下さっていた。お茶の席で、少しだけ話して下さった。

 多分――本心を。

 良い方だと思う。優しい方だとも…。

 

 

 

 =月&日

 

 アザゼル様が、小猫にも徹様の事を尋ねたらしい。

 やはり、しばらくは徹様の周囲は落ち着かなくなりそうだ。

 それが乳神の精霊――その言葉を介した兵藤君の所為なのだから、何とも言えない。

 少しずつ…徹様の周りがまた、騒がしくなってきている。

 今度もまた、徹様を守りたい。

 徹様に戦ってほしくない。

 ……その思いは、私たち全員が一緒だ。

 

 

 

 =月%日

 

 黒歌に勝てるようになりたい。

 ――私は『女王』なのに、『僧侶』に勝てないのでは、徹様の質を落としてしまう事になる。

 最強ではなくていい。だが、『女王』が『僧侶』以下というのは問題だと思う。

 徹様はレーティングゲームへはもう参加しないと言われていた。

 だが、周囲の見る目は『悪魔の駒』と『御使い』のカード…その配下を見るだろう。

 そうなった時、一番見下されるのは私だ。

 ……今すぐではなくていい。でもいつか――黒歌に勝ちたい。

 そう言うと、笑われた。

 まだ負けない、と笑顔で言われた。

 ――悔しい。

 でも、それが私の実力なのだ。受け入れ、努力していこう。一歩ずつだ。

 私はそんな進み方しかできない。

 一歩ずつ――黒歌に追いついて行かなければならない。

 今日のように、勝てないからと腐っている余裕はないのだ。

 

 

 

 =月$日

 

 黒歌が、徹様が構ってくれないと拗ねた。

 夕食の買い物ついでにスコルとハティを散歩に連れて行ったら徹様と会ったので、一緒に帰ったら拗ねていた。

 徹様と私が、一緒に二匹の相手をしたのが原因のようだ。

 こんな所は本当に子供っぽい。見た目はもう大人の女性なのにだ。

 久し振りに、猫の姿でソファを独占していた。

 その後、徹様に遊んでもらって機嫌を良くしていたが。

 徹様は猫が好きらしい。猫というか、小さな動物が。

 スコルやハティのような大型の動物は苦手だと言って、黒歌を慰めていた。

 それだけで機嫌を良くする黒歌は、見ていて面白かった。

 その後、何を思ったのか、小猫が猫の耳と尻尾を出していた。

 徹様に構ってほしいのだろうが。

 素直に口にすればいいのに、と思う。

 姉が姉なら、妹も――判りやすい。

 

 

 

 =月#日

 

 徹様が、小猫を撫でて楽しまれていた。

 猫が好きだと言っていたし、満足できたようだ。

 喜ばれていた。

 見ているこっちも幸せになれそうな絵だ。

 幸せ――平穏、日常。そんな一幕だった。

 ロスヴァイセ様が羨ましそうにしていた。明日は、小猫に頼んでみようと思う。

 その後黒歌は、まったく自重しないで撫で回されていたが。

 あの子にも困ったものだ。

 そして、徹様にも。

 昼間から尻尾やお尻を撫で回すのはどうかと思う。

 見せつけられるこっちは、反応に困る。

 

 

 

 =月”日

 

 小猫に頼んで、ロスヴァイセ様に猫の耳を触らせてもらった。

 黒歌に頼んだら、拒否されたのだ。

 まぁ、あの子の事はこれからだ。いつかロスヴァイセ様を認めてくれるよう、私もお手伝いしよう。

 しかし、大学まで卒業されていると聞いていたが、笑顔は年相応だと思う。

 いつも笑顔で居たなら、きっと黒歌ともすぐ仲良くなれるのでは? そう思う。

 それに、ロスヴァイセ様は愚直すぎる。

 きっと隠し事は苦手なのだろうな、と思う。

 

 

 

 =月<日

 

 昼食の後…黒歌と訓練をした後、疲れて眠ってしまった。

 黒歌もそのまま眠ってしまったらしく、起きたら夕方だった。

 しかも――徹様達に寝顔を見られてしまった。恥ずかしい…。眠ってしまった私が悪いのだが。

 せめて徹様は、そういう時は席を外すなり、気付かないふりをするなり……悪いのは私なのだが。

 黒歌のように開き直れない私は、少し損な性格なのかもしれない。

 

 

 

 =月@日

 

 今日から、ロスヴァイセ様が教員として徹様と同じ学校へ赴任された。

 初日は問題が無かったようで、安心されていた。

 あまり歳も離れていない教員なのだから、舐められないように、と意気込んでおられた。

 頑張ってほしい。

 ロスヴァイセ様は教えるのが上手なのだから、きっといい教師になれると思う。

 これからしばらくは、魔術の教育は中断させてほしいと言われた。

 もちろんだ。私の事より、まずは自分の事を考えてほしい。

 

 

 

 =月:日

 

 ヴァーリ様達が、久しぶりに来られた。遊びに、だ。

 徹様の友人、になるのだろうか?

 ヴァーリ様はあまり笑わない方だと思っていたが、今日はよく笑われていた。

 徹様も笑顔が多かった。

 これからも、ぜひ遊びに来てほしく思う。

 

 しかし、フェンリルを飼っているのには驚いた。

 まぁ、スコルもハティも喜んでいたし、フェンリルも私達に害を成そうとはしていなかったが。

 そのフェンリルが、ルフェイという少女に従っているのにも驚いた。

 本当に――よく考えると、今日は凄い事が起こったのではないだろうか?

 白龍皇に孫悟空、三匹の神喰狼。黒歌に小猫。ルフェイという魔女。

 これだけの存在が揃うなんて、きっと驚くべき事だと思う。

 ――徹様は凄い。

 それらが集まったのは、徹様の存在があったからだ。

 

 

 

 =月;日

 

 徹様が、二天龍を心配されていた。

 「おっぱいドラゴン」という特撮の所為で、随分と難儀しているようだ、ドラゴンは。

 その事を気に病まれていた。

 最強の代名詞とも言えるドラゴンを心配する人間。それが徹様。私の主人だ。

 それに、確かにあの特撮は子供にはあまり良い影響は与えないと思う。

 私は、徹様の考えを推したいと思う。

 まぁ、決めるのは結局製作者側であるルシファー様なのだが。

 

 黒歌が言っていたが、徹様は優しすぎる。

 今は、徹様も微妙な立場だと言うのに他の誰かを……ドラゴンを心配している。

 徹様らしい――のかもしれない。

 でも、その優しさで自分の首を絞める事にならないように――そう思う。

 いつか、誰からも祝福される平穏を徹様が得られるよう。

 自身よりも他人に目を向ける徹様が、幸せになれるように。

 そう願わずにはいられない。

 

 




あとは戦乙女日記で終わりかな?
100話から、次の話かと。キリが良いしね

主人公の日記を2話で終わらせると、結構テンポよく進んだイメージ。
この調子で頑張ろうと思います

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