主人公の成り上がりが始まる……かもしれない(予定)
△月S日
最近は、俺よりレイナーレさんの方が起きるのが早い。
起きると朝食が用意されている日常……素敵過ぎます。
このままだと、レイナーレさんが居ない日常では生きていけなくなるかもしれない。いや、本当。マジで。
それと最近、朝早くから近所を兵藤とグレモリーがランニングしている。偶に姫島も。
悪魔が早起きしてランニングってどうよ? なんか違うような気がする。
しかし、疲れたからってウチに寄って牛乳を飲んでいくな。ウチは休憩所じゃねぇ。
レイナーレさんも悪魔らしくないと呟いていた。やっぱりそうですよねー。
それと、ようやっと、晩の食卓に肉類が並んだ。少し焦げてたけど、それはそれで美味かった。
というか、女性の手作り料理だ。マズイだなんて言えません。一生懸命作ってるようだし。
これをマズイだなんて言ったら神様に怒られる。
……堕天使って、神様を信じてるのだろうか?
今度、レイナーレさんに聞いてみよう。
△月D日
今朝も兵藤とグレモリーがランニング途中にウチに寄っていった。
だから、牛乳を飲みに寄るな。それもタダじゃないんだぞ、タダじゃ。
レイナーレさんも居るから、食費もバカにならないというのに……。
このままじゃ、家計簿をつける事になるかもしれん。
まぁ、親にレイナーレさんの事を相談して、小遣いを増やしてもらうのが一番なんだけど。
……どう説明しよう? 取り敢えず保留。まだそこまで切羽詰ってないし。
△月¥日
今日の晩飯は、久しぶりにチラシを使うかなぁ、と。
そんな事を考えていたら、グレモリーと姫島が俺を呼びに来た。
勘弁してほしい。お前ら目立ちすぎるんだよ。他の連中の視線が凄く痛いんだよ。
そうは言っても聞き届けてもらえないんだけどさ。こいつら、自分の道を爆走しすぎだと思う。
もう少し他人に気を配ってほしい。
しかも内容は、最近家に寄って済まない、との事。
まぁ、そう言ってもらえるならいいけど……誤解を招く言い方は勘弁してほしい。
高校生は話題に飢えているんだよ。
チクショウ……明日からの登校が怖い。
ムカついたので、チラシでグレモリーを呼んで、晩飯を作ってもらった。
……こいつ、料理出来たのか。笑顔がすごく怖かった。
△月F日
今日は兵藤とアーシアさんが一緒に走っていた。
息も絶え絶えなアーシアさんが、とても微笑ましかった。今日も寄ってきたので、野菜ジュースを出した。
だが兵藤、テメェは牛乳で十分だ。
最近は、随分とレイナーレさんとアーシアさんの仲が良いような気がする。
綺麗な女の子同士、仲がいいのは良い事だ。うん。
△月G日
こいつらは、俺の家を何だと思ってるのだろうか?
最近は毎日家に寄ってきやがる。そろそろ牛乳代を請求していいかもしれない。
しかも姫島とグレモリー。お前ら遠慮が無さすぎだ。
当然のように家によって、玄関で飲み物を持ってくるのを待ってやがる。遠慮しろ、遠慮。
塔城さんとアーシアさんが常識的過ぎて、お兄さんの好感度高いよ?
兵藤? なんかアイツ、いつも息絶え絶えなんだよな。体力ねぇなぁ。
そんなオカ研連中に飲み物を渡すレイナーレさんが天使過ぎる。堕天使だけど。
△月H日
何か兵藤が、奇声を上げながら夜なのに自転車を漕いでた。
どうも、呪いのチラシを配って回ってるらしい――後ろにアーシアさんを乗せて。
羨ましい。そして、近所迷惑だから大声で喋るな。会話の内容が丸聞こえだ。
ちっ、兵藤のヤツ、本当にリア充になりやがって。
まぁ、レイナーレさんの手料理が食べれる俺も大概か。リア充には程遠いけどなー。
そんな事を考えながら風呂から上がると、黒髪堕天使メイドのレイナーレさんとは別に銀髪のメイドさんが居た。
誰?
グレイフィアさんと名乗った銀髪メイドさんは、グレモリーが来てないか聞くと、すぐに消えていった。
ああ、グレモリーの関係者なのね……あ奴の一族は、本当に自分の道を爆走しているなぁ。
レイナーレさんが驚いて震えていたので、コーヒーを淹れてあげた。
そりゃ、いきなり他人が現れたら驚くよなぁ。しかもメイド姿だったし。
俺も結構驚いたと言うと、笑ってくれた。
……そんな異常事態に慣れている自分が怖い。
△月J日
今日は本当に、色々な事があった。
まず第一に、なんでか、昨日の銀髪メイドさんが学園に居た。
というか、オカ研に拉致られた。
……姫島といい、このメイドさんといい、グレモリーの関係者は忍者ばかりなの?
なんで? 俺、部員じゃないんですけど?
最近良く喋ってたし、関係者と勘違いされてるのだろうか?
抵抗らしい抵抗も出来ない、非力な自分が怖い。そのうち、誘拐でもされるんじゃなかろーか。
しかし、よく見るとこのメイドさん、あり得ないくらい美人だ。
レイナーレさんもそうだが、メイドっていうのは美人しかなれない職業じゃないはずなんだが……。
まぁ、レイナーレさんは厳密にはメイドとは違うけど。新しい服も買ったし、もう脱いでも良いと思う。
……眼福だけどさ。
部室には、案の定、元凶であろうグレモリーと姫島が居た。驚くな。俺も驚いてる。
このメイドさん――グレイフィアさんが言うには、サーゼクスさんという人が俺を呼んだらしい。誰やねん。
その後はポンポン話が進んで行って、途中からは上級悪魔? なんか、燃えてる男まで現れる始末。
だから、誰か説明をだな……悪魔って本当、自分の道を進むのに全力だよなぁ。と思った。
フェニックスさん。格好良い名前だ。アレかな? 死んだら復活したりするのかな? 無敵じゃん。
そんな事を考えながら、姫島が淹れた紅茶を飲んで気を紛らわせてました。
空気だ。俺は空気になるのだ。明らかな場違い感が、俺の豆腐なメンタルを押し潰そうとしますが、空気にメンタルなんかねぇ。
あと、笑顔の姫島に兵藤が怯えていた。気にすんな、アイツの本性はそんなもんだ。
その後はグレモリーの御家事情や、悪魔の家庭事情? なんか、色々と複雑らしい。
でも、『七十二柱』って、どっかで聞いたぞ。ソロモンだっけ? 男の子なら憧れるワードの一つだ。
フェニックスってソロモンの悪魔に含まれたっけ? 後で調べてみよう。
そんな事をぼんやりと考えていると、部室が燃えたり、グレモリーが紅く光ったり。
……とりあえず、ここに一般人が居る事を忘れてないか、お前ら? と言いたい。
怖かったので、あと火の粉が熱かったので、避難した先にはグレイフィアさんが居た。やっぱり美人だなぁ。
グレイフィアさんも、なんか俺に視線を向けてくる。 何? まだ何か用? 俺はさっさと帰りたいんだけど。
つか、俺って場違いにも程があるだろ。メイドさんに連れられて、ホイホイついてきた結果である。
今度からは、少しは抵抗しようと思います。悪魔に勝てる気はしませんが。
結局、その後はグレイフィアさんの鶴の一声でこの場は収まった。
なんか、『レーティングゲーム』? それで問題解決をするらしい。良いね、ゲーム。平和的で何よりだ。
――そう思っていた時期が俺にもありましたよ?
立会人がグレイフィアさんと俺じゃなかったら、さぞかし素敵なゲームだったろうよ。
なんか、サーゼクスさんって人が俺を指名したらしい。
だから誰だよそれ。グレモリー達も、驚く前にまず説明をだな……。
そういう意思疎通が出来ないから、争いが起きるんだよ。しかも、場の雰囲気的に凄く聞き辛い。
何処の何方様なのでしょうか、そのサーゼクスさんというのは?
結局その後は、グレイフィアさん指揮の元、お互いの配下悪魔を紹介して解散になった。
つか、フェニックスさんの方、本当に女の子ばっかりなのな。
兵藤じゃないが、ある意味すげぇ。
で、だ。
なぜみんなして、俺を置いて帰った? 拉致して放置とか、本当に悪魔だなお前ら……。
挫けそうになりながら家に帰り、レイナーレさんに今日の事を話すと、大層驚かれた。
サーゼクスさん。魔王なんだってさ。
……あのメイドさん、人違いしてるんじゃないの?
今度会ったら、それとなく聞いてみよう。
しかし、『レーティングゲーム』ってどんなゲームなんだろうか? ネットで調べたら載ってるかな?
今日は書くことが多い。というか、誰かに愚痴りたい……もっと意思の疎通を図る努力をしろ、悪魔ども。
△月K日
朝起きてリビングへ行くと、レイナーレさんとグレイフィアさんが居た。
……もうやだ、この人。神出鬼没にも程がある。
そして、それに驚かない自分も嫌だ……どんだけ慣れてるんだよ、俺。
人間の適応力は凄いらしいけど、そんなレベルじゃないと思う。
流石に、お客さんが居る前で朝食を食べる勇気も無いので、レイナーレさんが淹れてくれたお茶を飲んで空腹を紛らわせた。
本当、空気の読めるいいメイドさんだよ、レイナーレさん。
それと昨日の件、人違いじゃないですか、と聞いてみたが俺で合っているらしい。
……魔王様と会った事なんてないんだけどな。
絶対人違いだと思うんだけど。レイナーレさんは、凄く睨んでるし。
この人、美人だからマジで怖いな……。
今日は、『レーティングゲーム』ってのの説明と、昨日の事をお詫びに来たらしい。
放置した事を覚えててくれてよかった。それだけで少し救われた気分になる。……俺って安いよなぁ。
ゲームの説明を軽く受けて、一枚の紙を渡される。
10日後の勝負の時に、監視席に移動する物らしい。うん。正直、要らん。
でも返せない俺、本当にヘタレ。
最後に、グレモリー達を助けてほしいとも言われた。
や、一般人代表の俺に何をしろと? 自慢じゃないが、兵藤のゴツイ篭手に殴られただけでも死ねる自信があるよ、俺。
そう言うと、グレイフィアさんが初めて笑顔を見せてくれた。
……そこ、笑う所じゃないと思う。結構重要な所ですよ?
グレイフィアさんって素敵過ぎると思う。
今回は、主人公は完全に巻き込まれてます。
話の方向性が、やっぱり右往左往してるなぁ、と自分でも思ったり。