とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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苦労人日記に名称変更してもいい。

あ、ちゃんと主人公は暴れてますんで(ぇ


116(総督日記)

 A月A日

 

 あーあー、若いってのは良いねぇ。

 イッセーとリアス、初々しいって言うか、バカップルって言うか…独り身には目の毒だな、アレは。

 正直、少しは自重してほしくもあり、今までが今までだったんだし、もう少し遊ばせても良いのかもしれないなぁ、とも思う。

 俺としてはそう思うんだが、ロスヴァイセのヤツがなぁ。

 職員室で愚痴る訳だ。俺に。俺以外に親しい同僚はいないのか、アイツは。

 彼氏が欲しいなら作れっての。というか、さっさと落ち着く所に落ち着け。テメェとオーディンのクソ爺の問題なんざ、アイツが簡単に解決してくれるっての。……多分。

 俺から見ても、ロスヴァイセは器量良しのイイ女だ。

 上代徹が傍に置いてなかったら、食事に誘うくらいはしている。出来ればその後も……。

 まったく――俺は絶対女運が悪い。

 すぐ傍にイイ女が居るのに口説けねぇ。口説いて良いのかもしれないが、それどころじゃねぇ。

 泣くぞ、チクショウ。

 

 

 

 A月B日

 

 先日のサイラオーグ戦の事で、ギャスパーが『神器』をもっとうまく使いたいと相談してきた。

 取り敢えず、『神の子を見張る者』の研究部を勧めておいた。まぁ、あそこは『神器』を上手く利用する事ばかりを考えている連中の巣窟だ。良くも悪くも、あの吸血鬼の為になるだろう。

 それにしても、イッセー達に昇格の話が来た…か。

 正直、遅いと思う。まぁ、サーゼクスの奴が止めてたんだが。

 イッセー達が昇格したら、嫌でも冥界はあいつらに目を向ける。

 赤龍帝、雷光、聖魔剣。

 目立つなという方が難しいだろ…特にイッセー。

 あいつ、「おっぱいドラゴン」としても有名だし。ロキの件、京都での曹操、サイラオーグ。

 強敵に恵まれるのは良い事か、悪い事か。

 

 

 

 A月C日

 

 どうしてこうなった。

 しばらく目を離したら、イッセーとリアスが孫の名前を考えていた。

 何を考えてるか判らねぇ。笑える。アホか。

 学生がガキを作るなんざ、退学になるぞ。まぁ、リアスのヤツはもうすぐ卒業だが。

 まったく――本当にアイツらは俺を楽しませてくれる。

 『禍の団』との問題もまだ片付いてないってのに。

 若いってのは良いね、本当に。羨ましい。

 俺もあと……どれくらい若かったら、馬鹿をやれたんだろうか?

 溜息しか出ねぇっての…グレモリー眷属の教育に、今度はシトリー眷属の為に『人工神器』を用意する事になった。

 アイツ等も伸び代は十二分にあるから、良いデータが取れると思うし、こっちは悪い事じゃない。

 レイナーレのヤツのデータは、どうにもなぁ。アイツ、『人工神器』の使い方が下手過ぎる。

 『刹那の絶園』を盾としか使ってねぇし。もっと頭を使って戦えっての。

 その辺りも、今度教育しねぇとなぁ。

 ギャスパーの事もあるし、イッセー達の中級悪魔昇格試験も近い。

 ロスヴァイセのヤツは、相変わらず馬鹿みたいに悩んでやがる。俺の近くで悩むな。遠くで悩んでくれ。視界に入ると気になるんだよ、ったく。

 媚を売るつもりは無いが、これでもあの男との関係には気を使っている。

 ……やる事が多すぎる。酒が美味い。

 俺が胃潰瘍になったら、誰の所為だろうか? 取り敢えず、上代徹の所為にしようと思う。

 アイツと会ってから、碌な目に遭ってないような気がする。

 

 

 

 

 A月D日

 

 ヴァーリの奴から連絡が来た。

 ……正直、どうするべきか悩んでいる。

 サーゼクスやミカエルに伝えるべきか? それとも、上代徹に賭けるべきか。

 ――頭が痛い。ヴァーリから連絡が来た後から、溜息が止まらない。

 いったい俺の幸せは、どれだけ逃げただろうか? 上代徹、返せ。俺の幸せを返せ。チクショウ。

 

 オーフィスが上代徹と会いたがっている。

 

 判らなくもない。以前、三大勢力での和平会談の際、あの男はオーフィスの『蛇』に干渉した。

 ディオドラ・アスタロトとのレーティングゲームの際には、オーフィスの奴が直々に出張ってきてあの男を殺した。しかも、そのオーフィスですら殺しきれなかった。

 その事で興味を持たれた。

 そして――そして、だ。

 俺に隠れて、オーフィスと会ってただと?

 聞いてねぇぞ。しかも、オーフィスは上代徹とは敵対する意思を持っていないときた。

 上代徹とは、ってなると俺達とは敵対する意思があるかもしれないって事だ。

 あの男とオーフィスが手を組む? 性質の悪い冗談だ。悪夢にも程がある。

 ただでさえ最強のバケモノが、永遠に戦い続けるってのか? そんな存在、グレートレッドでもどうなるか……。

 しかし――俺がそう疑うと判っていて、それでも俺を間に挟んで上代徹との会談を望むか、ヴァーリ。

 ……俺なら、サーゼクスやミカエルを説得すると踏んだか?

 期待し過ぎだ、クソ野郎。

 『禍の団』の中の反乱分子を炙り出す算段らしいが、それでオーフィスを外に出す事はリスクが多すぎる。ヴァーリの奴だって判っているはずだ。

 その相手が上代徹なら、尚更だ。オーフィスも、上代徹も…文字通り次元が違う存在だ。

 『無限』の体現者であり、最強の一角であるオーフィス。

 異世界の神であり、現状、殺す手段が存在しない未知の存在、上代徹。

 そんな二人が会う事を、誰も許しはしない。認めない。認める事が出来ない。

 

 ――それは、この世界の誰もが、『夢幻』の体現者であるグレートレッドですら敵わない勢力が誕生するかもしれないからだ。

 そう疑ってしまう。

 ああ、チクショウ。

 上代徹。未知の『神器』使い。異世界の神の器を持つ人間。俺が知る限り、最悪のバケモノ。

 あの男と会ってから、本当に碌な事が無い。アイツ、絶対疫病神の類だ。

 

 

 

 A月E日

 

 ロスヴァイセから心配された。

 よほど、俺の顔色は悪いらしい。は――笑うしかねぇ。

 イッセー達には悪いが、今日の訓練は休ませてもらった。

 『神の子を見張る者』の仕事も、無視させてもらった。

 教師の仕事もほとんど手が付かず、酒を飲んで――飲んで、どれだけ飲んでも…酔えねぇ。

 チクショウ。ヴァーリのヤツ…上代徹のヤツ、どれだけ俺を困らせれば気が済むんだ。

 どれだけ俺を利用する。

 俺は便利な青狸じゃねぇっての…。

 シェムハザやバラキエルには悪い事をしたと思っている。だが、俺のこの心労を誰が判ってくれる?

 ……誰も判らねぇよな…。

 オーフィスと上代徹。

 爆弾どころの話じゃねぇだろ……。

 

 

 

 A月F日

 

 腹は括った。というよりも、どうしようもない。

 考えなくても判る。俺が間に入らなくても、オーフィスは上代徹と会う。

 現に、すでに何度か接触しているらしい。誰にも気付かれる事無く、だ。

 なら間に俺が入り、少しでも情報を得るべきだ。

 オーフィスはイッセーにも興味を持っているらしいから、その辺りで人数を増やすべきだろう。何かあった時の為に。

 ……今のイッセー程度じゃ、百人居てもオーフィスには敵わんだろうが。それでも、俺一人よりはマシだろう。多分。生贄とも言うかもしれんが。

 そろそろ、俺一人の胃が痛むのはどうかと思う。それに、リアスを巻き込めばサーゼクスの野郎も上手く巻き込めるかもしれんしな。

 やってられるか、チクショウ。

 オーフィスと上代徹だぞ? どうしろってんだ。

 世界と喧嘩が出来るオーフィス。

 世界の時間を停めれるであろう上代徹。

 ……胃薬が美味い。

 

 

 

 A月G日

 

 今日は久しぶりに、上代徹が学校を無断欠席していた。

 何かあったのだろうか?

 特別――『禍の団』がアレに手を出したという情報も入ってきていない。

 というよりも、調べた限りでは家では元気にしていたそうだ。

 ……よく判らん。

 疑っているのは、自分でも理解している。

 オーフィスの件で神経が昂ぶっている。

 ああ、早く解放されたい。

 

 

 

 A月H日

 

 小猫の奴が体調を崩していた。

 猫魈特有の発情期。だから昨日、上代徹は学校を無断欠席したのか。

 アイツも男だなぁ。なんとなく、そういう所だけは親近感が湧く。

 男というか、雄というか。

 そういえば、レイナーレの奴も上手くやってるのかねぇ。

 黒歌に小猫。羨ましい限りじゃねぇか。美女に美少女、選り取り見取り。男なら迷わず食いつく所だ。

 そこにレイナーレとロスヴァイセ。

 ああ、羨ましいねぇ。

 俺はこんなにも神経をすり減らしてるってのに、アイツは女と乳繰り合ってる。

 ……やべぇ、イライラが納まらねぇ。

 胃薬って、酒で飲んだら効き目が増したりしねぇかな?

 

 学校が終わった後は、黒歌の奴が来やがるし。

 オーフィスの件でだ。今日のタイミングだ、言わなくても判ってた。

 公の場……とも言えないが、俺やリアス達の前で戦わないことを明言するらしい。ヴァーリから話は聞いてるらしく、俺が間に入る事を知ってやがった。まぁ、俺の所に来た時点で予想は出来ていたが。

 上代徹は戦いを嫌っている。オーフィスもまた、ヴァーリや黒歌から聞いた話では、上代徹と敵対する意思は無い。

 俺達が上代徹側になれば、必然的にオーフィスとの戦いは避けられる。

 リアス達は怒るかもしれんが、正直俺としてはオーフィスとは事を構えたくない。

 上代徹に至っては、敵対する意思すら抱きたくねぇ。

 純粋に強すぎるオーフィスと違って、あの男は未知の部分が多すぎる。

 強すぎるではなく、厄介すぎると言える。

 強ければ対抗できる『無限』とは違う。

 戦ってはいけない存在。そういう男だ、上代徹は。

 時間――この世界に生きるなら、誰もが抵抗できない概念。それがあの男の武器。

 そんな存在に挑むなど、馬鹿を通り越して愚かだ。

 

 取り敢えず、近いうちに会う事になった。日付は未定だ。オーフィスの気分次第ってやつ。

 一応、それとなくはぐらかしてリアス達には伝えておいた。

 ……これで取り敢えず、言い訳は出来るはずだ。多分。

 というか、言うのが遅い。

 他の勢力への根回しで、今日は疲れ切ったぞチクショウ。

 

 

 

 A月I日

 

 オーフィスとの会談。今日だった。

 昨日の今日かよ……笑うしかなかった。リアスに怒られた。判る。俺もアイツの立場なら、怒鳴り散らしてた。というか、相手が相手なら、確実に殺してたと思う。

 なんだよ…俺が悪者みたいに言いやがって。俺がどれだけ神経擦り減らしてるか何も理解してねぇクセに。泣くぞ、チクショウ。

 あれだけ話しておいたのに、アイツ等オーフィスに敵意を向けやがるし。

 オーフィスがヤル気になったら、俺達なんざ瞬きする間にミンチだっての。

 ああ……胃が痛い。どうして俺が、こんな仲介をしなければならんのか。

 しかしオーフィスのヤツ、ドライグの変化にやたら興味を示していたな。上代徹への興味には及ばなかったが。

 なんだアレ? 何時の間にあんなに仲良くなったんだ、アイツ等。

 だってオーフィスだぞ?

 『無』から生まれた無限の体現者。最強の一角。『無限の龍神』。呼び名なんざ、他にも腐るほどある。

 どれだけの命を奪った? どれだけの数を殺した? どれだけの敵を作った?

 そのオーフィスが誰かの隣に自分から座るなんて、目を疑うどころか悪夢だっての。

 上代徹はアイツで、普通に話しかけてるし。オーフィスも返事してるし。

 リアスが驚いてた。普段は能天気なイッセーもだ。ちなみに俺も驚いた。

 ……今度ヴァーリに、出会い頭に一撃入れても許されるよな?

 あんなに仲が良いなんて聞いてねぇっての。俺だって驚いたんだ。文句を言われても困る。

 ドライグはドライグで、以前にも増して上代徹に依存してやがるし。

 俺が依頼しておいてなんだが、アイツは本当にドラゴンカウンセラーの才能があるのかもしれん…。

 人間、本当に妙な才能を持ってるもんだな……。

 取り敢えず、イッセー達にオーフィスの現状と、これからを説明しておいた。

 英雄派がオーフィスの意志を外れて動いている事。上代徹に懐いている事。

 今日からしばらくは、オーフィスは上代徹の家に住む事になっている。

 オーフィスがそれを望んだからだ。

 出来れば、イッセーの家に置きたかったのが本音だ。

 英雄派の考えはいまだに判らないが、それを差し引いてもオーフィスと上代徹が同じ場所に居るのは喜べない。

 ――胃が痛い。

 これがバレたら、俺は三大勢力どころか、世界から敵視されるかもな…。

 ……笑えねぇ。

 

 

 

 A月J日

 

 案の定というべきか、英雄派の動きがこっちの警戒網に引っ掛かり始めた。

 探しているのはオーフィスか。

 だが、真っ直ぐにこっちに仕掛けてこないあたり、ヴァーリの奴がなにかやってるんだろう。

 オーフィスを狙う者を燻り出すと言っていたが……それが英雄派か。

 曹操。最強の『神滅具』の使い手。

 ――相手としては、あまり良いとは言えない相手だ。

 現状、イッセー達では勝ち目はないだろう。全員掛かりでも、だ。

 だが今は、上代徹とオーフィスが居る。

 あの二人――どちらか片方だけでも、曹操に勝ち目はないはずだ。

 それでも曹操は挑むだろうか? あの、英雄の子孫は。

 勝算があるからこそ、行動を起こしているのだろう。

 ……気味が悪い。どんな奥の手を用意したのやら。

 京都で言っていた、上代徹への対抗策。

 今は上代徹とオーフィスが揃っている。それでもアイツは、上代徹をどうにかできるのか?

 興味がある。どうにかできるなら、どうにかしたい相手でもあるからだ。上代徹は。

 

 

 

 A月K日

 

 賑やかだね、上代徹の家は。羨ましい。こっちは胃が痛い毎日だっての。

 ……オーフィスの事、サーゼクスたちにはどう説明したもんか。

 まぁ、サーゼクスはまだいい。アイツ、上代徹の事を気に入ってるし。

 オーフィスが上代徹側に付くなら、アイツはもしかしたら受け入れるかもしれん。

 上代徹の『神器』――魂の色に惹かれたと言っていたが。

 それはさておき。

 問題は天界、それに『神の子を見張る者』の他の連中、北欧、オリュンポス、他にも沢山だ――オーフィスと敵対する勢力は多い。多すぎる。というよりも、現存する勢力の殆どがオーフィスと敵対していると言ってもいい。

 それを説得する?

 ……無理だ。始める前から心が折れそうだ。

 どうして俺が、こんなにも苦労しなければならないのか……。

 酒代…経費で『神の子を見張る者』から出ないだろうか?

 今度、バラキエルに相談しようと思う。

 

 

 

 A月L日

 

 上代徹が、英雄派がちょっかいを掛けてくるのでどうにかしてくれと言ってきた。

 知るか。お前なら問題ない。オーフィスも居るのだ、英雄派最強の曹操が来ても問題無い。それどころか、お前ら二人なら、英雄派を全員的に回しても勝てると思う。

 むしろ勝って、さっさと問題を片付けてほしい。

 ロスヴァイセのヤツは相変わらず悩んでやがるし。

 悩むくらいなら、さっさと行動を――付く側を受け入れろ。

 悩むって事は、心が傾いてるって事だ。

 北欧側から、上代徹側に。

 俺としては面白くないが――アイツなら、ロスヴァイセを受け止める事が出来るだろう。

 オーディンの爺の嫌がらせだって、簡単に潰せる力がある。

 イイ女だってのに、勿体無い事をしたか? まぁ、そうかもしれん。

 癒しが欲しい。

 ……最近、飲み屋のねーちゃんとも会ってないなぁ。

 

 

 

 A月M日

 

 上代徹の調子が、悪いようだ。というよりも、顔色が悪いしふらついてやがった。

 何事だろうか?

 今までにない症状だ。

 英雄派が仕掛けてきてるわけでも、オーフィスが何かしている訳でもなさそうだし……。

 風邪でもひいたか、というのは流石にあり得ないか。

 よく判らないが、面白くない事態だ。

 オーフィスが居るとはいえ、上代徹に倒れられては不測の事態が起きかねない。

 気張れよ、レイナーレ。

 お前はこの時の為に強くなったのだから。力を望んだのだから。

 ――俺やグレイフィア、黒歌。他にも、お前を支えた奴らは居るだろう。

 それらを裏切るな、などとは言わん。それは野暮な事だ。

 ただ、気張れ――お前が、上代徹の『女王』ならば。

 

 ……柄にもなく期待してるのかね、俺も。グレイフィアと同じように。

 レイナーレの奴が、アイツ等が、上代徹の支えになる事を。 

 

 

 

 A月N日

 

 してやられた、と言うべきか。

 上代徹。アイツを無力化された。

 ここ最近、あの男の調子が悪かった事は理解していた。それでも、あの男なら――という考えがあった事を否定しない。なんだかんだ言っても、俺も、俺達も、あの男ならどんな相手にでも勝つと思っていた。

 それだけの力を有していたし……勝手な話だが、信頼もしていた。

 スマン、レイナーレ。それにリアス。俺の落ち度だ。俺達の落ち度だ。

 甘く見ていた。

 上代徹とオーフィスは『次元の狭間』に封印され、イッセーのヤツは生死不明。

 グレモリー眷属とヴァーリチームの殆どが傷だらけ。

 どうしようもない。完敗だ。ぐうの音も出ねぇ――。

 上代徹が『禁手』の力で死神どもを無力化してくれてなかったら、どうなっていた事か…。

 しかもその後、『禁手』で回復した力で『魔獣創造』の真似事までしてやがったが。

 その上代徹も、そのままオーフィス達と一緒に曹操達が張った結界に囚われて、今や『次元の狭間』だ。

 いったいあの男の『神器』はなんだ? 乳神の精の言葉を信じるなら、アレは名前を与えられなかった神の器。卵。だとしたら、アレから何が孵化するというのか――。

 時間を操り、他者から力を奪い、魔獣を生み出す。見た事も無い、おぞましい化け物どもを。

 そんな神が居るのか? 少なくとも、俺は知らない。

 旧魔王派のシャルバ――。

 イッセーは勝っただろうか? 勝っただろうな。

 力を使い果たした上代徹とオーフィスを助けるためにアイツは残った。

 今はとにかく、次の手を考えよう。

 曹操はオーフィスの力を奪った。

 その力を何に使うのか――。

 

 

 

 A月Q日

 

 上代徹とオーフィスを次元の狭間から助けるかどうかで、意見が分かれている。

 判らなくもない。

 いや、オーフィスはこちら側に連れてくるべきだ。

 グレートレッドと戦闘でもされたら、この世界が滅びかねない。力の大半を失ってはいるが、それでもどうなるか判らないなら、監視できる手元に置いておくべきだ。

 問題は上代徹だ。

 あの男はどの勢力とも敵対していない。

 だが、問題がある。何よりも重要な問題だ。

 あの男は厄介極まりない。

 オーフィスや英雄派と同等。もしくはそれ以上に。

 無害なのかもしれないが、あの男の能力は強力過ぎた。

 この世界の神、魔王が手を組んだとしても――どうしようも出来ないほどに。

 時間操作。生命力と魔力の略奪。バケモノの召喚。

 おぞましいとしか言いようのない――バケモノを。

 その事を、事もあろうかオーディンの爺が指摘しやがった。何を考えてやがる、クソ爺。

 何処で見てやがった――ロスヴァイセ以外にも監視役が居たようだ。まったく気付かなかった。

 その所為で、各勢力の議論は平行線をたどっている。

 上代徹を助けるか、『次元の狭間』に封印するか。

 ――まぁ、俺の意見としては……あの男なら、勝手に帰ってきそうでもあるが。

 冥界は救出に向かうと言っている。

 北欧とオリュンポスは封印を推している。封印を強要している訳ではないのが腹ただしい。

 他の勢力も、どっちつかずの体制を貫いている。

 上代徹がもし自力で戻ってきた時の言い訳にでもするつもりだろう。

 ……各勢力のトップが動けない状況が続いている。

 英雄派に時間を与えたくないというのに――それが狙いか、帝釈天とクソ爺。

 

 




さて、徹君の『神器』の中身はなんでしょう?
このまま、種明かししないのもこの作品らしいのかもしれない、と最近思い始めてます。

アザゼル先生の胃は宇宙だと信じてる(確信

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