とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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主神日記を書きたいと思った(小並感


119(戦乙女日記)

 A月A日

 

 学生の恋愛を否定するつもりは無いが、もっと節度を持ったお付き合いというものをしてほしいものだ。

 今までも確かに、学生の恋愛というにはいささか不適切な場面があった事はある。

 特に兵藤君は男の子だし、そう言う所があるのも判らなくもない。

 彼は女性に対してオープンな所があり過ぎる。

 でも、リアスさんとお付き合いをするそうだし、これから少しでも落ち着いてくれれば、と思う。

 ……まったく。

 どうして私が、恋人たちの事で頭を悩ませなければならないのか。

 私だって恋人が居ないのに。

 ――溜息しか出ない。

 私も、と思ってしまうが――どうにも、今は難しいだろう。

 

 白音さんの調子も、相変わらず悪い。……というか、変だ。

 徹君とデートをした後は、しばらく落ち着いていたようだったが。

 相変わらず、この家の住人は平和平穏とは遠い場所に居る。

 誰もが普通を望んでいるのに。

 もしかしたら、普通とは望めば望むだけ遠のくものなのかもしれない。

 

 オーディン様からの連絡は無い。私からもしていない。

 それでも私は、徹君の傍に居る。

 ……それでいいのだろうか?

 

 

 

 A月B日

 

 レイナーレさんは、随分強くなったと思う。

 私が初めて見た時からすると、彼女の成長は目を見張るモノがある。

 劇的な成長ではないが、確かに一歩ずつの成長は、教えている側からすれば安心できる。

 彼女からすれば、少し不満があるようだが。身の丈に合った成長は、きっと将来、彼女の糧になるはずだ。

 ……随分と上から目線だな。私は。

 私自身もまだ、半端な戦乙女でしかないというのに。

 いや――これからは、戦乙女ですらなくなるかもしれない。

 レイナーレさんや黒歌さん、白音さんとの訓練は楽しい。

 アザゼル総督と話すと、落ち着く。

 徹君の傍に居ると、安心できる。

 ……随分と依存してしまっている。いつかどこかで、破綻しそうなほどに。

 帰りたい。でも、帰りたくない。

 おばあちゃんの所に。でも、この家もまた、居心地が良い。

 

 ――本当に、なんて中途半端なのだろうか。私は。

 

 

 

 A月C日

 

 黒歌さんに負けた。

 ……本気で戦ったら、負けてしまった。

 紙一重だったが、負けは負けだ……悔しい。次は勝ちたいと思う。

 確かに、迷っている。迷ってばかりいる。その所為で動きが鈍いと言われると、言い返しようがない。

 ――きっと、そんな私だからこそ、彼女は本気で戦ってくれたのだろう。

 レイナーレさんが淹れてくれたお茶も美味しかった。体の芯から温まれた。

 少しスッキリしている。

 頭の中で悩んでばかりだと、気が滅入ってしまって駄目だ。

 判っていたのに……本当にこの家に住んでいる人たちには頭が上がらない。

 

 黒歌さんは、優しいな。

 いつもは徹君にべったりなのに――きっと、この家の中の人の事を、誰よりも一番良く見ている。

 

 

 

 A月D日

 

 兵藤君が中級悪魔への昇格試験を受けるらしい。アザゼル総督から教えてもらった。

 私はてっきり一足飛びに上級悪魔へと昇格するとばかり思っていた。

 まぁ、まだ兵藤君は学生だし、つい最近までは一般人だったのだ。

 いきなり上級悪魔の仲間入りをしても、混乱するだけか。

 それに、上級悪魔となると貴族の一員のようなものだ。

 ……彼に貴族、という肩書はどうにも似合わないと思うのは失礼だろうか?

 レイナーレさんと魔術の勉強をした後にその事を話すと、笑っていた。

 彼女も同じ意見らしい。ちょっと嬉しい。

 それにしても、黒歌さんは魔術関係の才能が凄まじい。

 私が教えられることが、だんだんと減ってきている。

 白音さんも、黒歌さんほどではないが、覚えが良い。

 そんな人たちに囲まれているのに、それでも直向きに進んでくれるレイナーレさんに、眩しさすら感じる。

 ……私も、彼女のように真っ直ぐに進みたいものだ。

 肩書き、種族、神話…そういうのを無視できるくらい、真っ直ぐに。

 

 本当に、私は悩んでばかりだと思う。

 

 

 

 A月E日

 

 アザゼル総督の調子が、あまり良く無いようだ。

 いつもは飄々としてるのに、今日はあまり顔色が優れていなかったように思える。

 いつも相談に乗ってもらっているので何か力になれたら、と思う。

 まぁ、私程度では話を聞くくらいしかできないだろうが。

 それでも何か出来たら、と思う。私も、いつまで日本に居られるか判らないのだし。日本に居られる間に、私を助けてくれた人たちに、何か返したい。

 

 家に帰ると、グレイフィアさんが来ていた。

 「おっぱいドラゴン」のグッズをいくつか持ってきて、徹君に意見を聞いていた。

 魔王ルシファーは「おっぱいドラゴン」でどれだけ儲ける気なのだろうか?

 まぁ、お金などいくらあっても足らないだろうが。

 『禍の団』との戦い、領の維持、他勢力・神話体系への接触。

 どれもこれもお金が必要だ。

 頑張ってほしい。この家の平和と平穏の為にも。

 ――しかし、徹君は『禍の団』とどう接するつもりなのだろうか?

 オーフィスとは親しい関係のようだが、現在進行形で『禍の団』はテロ行為を続けている。

 特に英雄派の行動には、アザゼル総督も頭を悩ませている。

 

 

 

 A月F日

 

 支取さんの眷属の皆さんが、レイナーレさんと同じアザゼル総督の『人工神器』を使う事になったらしい。

 小耳に挟んだだけだが、どうやら本当の事のようだ。徹君も言っていたし。

 レイナーレさんの『人工神器』を見る限り、『神器』と比べるとどうしても見劣りする所がある。

 だが、誰でも使えるというのが強みか。

 これからは『人工神器』の開発も進むのだろうか?

 アザゼル総督に、休める時間があればいいが。

 今日も、アザゼル総督の顔色はあまり良くなかった。

 何かに悩んでいるようだ。

 それに、白音さんも。

 こちらは偶にある事なのだが……本当に大丈夫なのだろうか?

 レイナーレさんも心配していた。

 黒歌さんは大丈夫というが――。

 

 

 

 A月G日

 

 ああ、よく判った。

 白音さんの不調の理由――猫魈特有の発情期。

 私は詳しくは無いが、そういうものがあるというのだけは知っていた。初めて見たが。

 最近の白音さんは、その……徹君に発情していた、という訳だ。

 不調の理由が気になっていたが、教えられると教えられたで反応に困る内容だった。

 普段の白音さんらしくないという事は、きっとそういう感情を彼女が制御できてないからだろう。

 ……私達がどうこう言える事ではないだろうが、落ち着いたら…きっと大変なんだろうなぁ、と思う。

 しばらくしたら落ち着くという事なので、様子を見る事しかできない。

 私もレイナーレさんも、発情期の猫魈をどうすればいいかなど知らないのだし。

 一番詳しい黒歌さんがいう事を信じるしかない。

 それに、妹である白音さんの事を彼女が蔑にするはずもないだろうし。

 

 朝は本当に驚いた。

 徹君が驚いて大声を上げて、部屋に急いだら白音さんが徹君のベッドに居て、徹君は床に落ちていて……。

 でも――やっぱり、彼女も徹君を好きなんだな、と判って良かったと思う。

 発情期は子を成したい男性が傍に居ると起きるものだと黒歌さんは言っていた。

 どうしようもなく惹かれてしまうものだと、という事も。

 白音さんの身体が子を作れる状態になり、傍に心を許せる男性が居れば必然的にその周期に入る。

 それが今の白音さん。

 ――黒歌さんは、発情期は無いのだろうか?

 聞き辛い内容なので聞けなかったが。

 まぁ、いつでも準備できている、と返されそうではあるが。

 兵藤君といい、徹君といい――なんというか、だ。 

 

 

 

 A月H日

 

 黒歌さんから、オーフィス……『禍の団』の事で話が合った。

 明日、徹君とオーフィスが会うらしい。

 彼からしたら今まで何度も会っている、と言っていたが。

 その場にアザゼル総督に立ち会ってもらうという話だ。

 ……どうなるのだろうか?

 黒歌さんは、オーフィスは徹君と敵対する意思は無いと言っていた。

 戦いが終わる? 少なくとも、『禍の団』は徹君への干渉はやめるのだろうか?

 ――それは、オーディン様が最も否定する事だろう。

 北欧の主神は、徹君に戦わせたいはずだ。動かせたいはずだ――能力を、『神器』を使わせたいはずだ。

 それとも、オーフィスではなく曹操――英雄派を使うだろうか? そうかもしれない。

 あの人は、そういう神だ。

 自身の知識欲の為なら、使える物は何でも使う。知識を得るために、自分の命すら捧げられる。

 徹君とオーフィス。その二人を同時に敵に回してでも――。

 黒歌さんに相談したが、どうなる事か……。

 

 

 

 A月I日

 

 オーディン様からの横槍は無かった。

 少なくとも、私が知る限りでは、今日の会談に北欧は動いていない。

 そもそも、情報を漏らしていないのだから、それが当然なのだろうが。

 それでもあの主神なら私達が知らない所から情報を得ていてもおかしくない、と思えてしまう。

 ……不安だ。

 

 それにしても、徹君は本当にオーフィスさんと仲が良かったのだな、と見せつけられた。

 戦うつもりがない、というのも信じられる。

 オーフィスさんも、自分から戦うつもりは無いと言っていた。

 私が知る限り『無限の龍神』が自分からそういう事を言うとは思いもしなかった。

 まぁ、私が知っているオーフィスさんなど、きっと紛い物も良い所なんだろうが。

 彼女は徹君に興味があると言っていた。

 だから来たと。話しに――会話をしに。

 本当に、徹君の傍に居ると驚く事ばかりだ。

 まさか『無限の龍神』が一人の人に興味を抱き――歩み寄るなんて。

 この家に、住人が増えた。

 ――その事が、素直に喜ばしい。

 争いではなく歩み寄り。それが、きっと徹君の強さだ。

 やはり……オーディン様、貴方の願いは叶いそうにない。

 彼はきっと戦わない。争わない。

 今日徹君の家に来たのはオーフィスさんとルフェイさん、フェンリル。

 戦う意思がないテロリストに、リアスさん達は驚いていた。私もだ。

 

 それにしても、徹君が赤龍帝のカウンセリングをしていたのは知っている。

 けど、あそこまで徹君に依存しているとは思わなかった。

 というか「おっぱいドラゴン」の事を気にし過ぎだろ、と。

 オーフィスさん、赤龍帝の変化にも興味があると言っていた。

 ……あの変化には、あまり興味を持ってもらいたくない、と思った。

 

 

 

 A月J日

 

 ……最近、黒歌さんを見直していた。うん。

 だらしない所はあるけど、真面目で良いお姉さんだと思っていた。

 でも、黒歌さんは黒歌さんだった。

 オーフィスさんに何を教えているのか…まったく。

 黒歌さんの言い訳は、教えたくて教えた訳じゃない、と言ってた。

 だったら教えなければいいのに、と思う。

 まぁ、徹君もオーフィスさんには驚かずに、普通にしていたが。

 見た目は確かに少女だが、彼女は最強のドラゴン。

 ……その少女に同衾され驚かないという、徹君の胆力も凄いと思うが。

 というか、オーフィスさんより驚かれた白音さんって……。

 彼の中で、女性の順位はどうなってるのだろうか? 少し気になった。

 見た目だろうか、やはり。

 でも、そんな徹君の対応にルフェイさんは喜んでいた。

 オーフィスさんは、『禍の団』の拠点では徹君に会えずに寂しそうにしていたのだとか。

 想像できない。

 『無限の龍神』が寂しい? 失礼だが――そんな感情があったという事に驚いてしまった。

 ルフェイさんには笑われてしまったが、彼女たちも最初はそう思ったらしい。

 ――結局、最初から普通に接した徹君が正解で、色眼鏡で見ていた私達が間違いなのか。

 本当に凄いな――彼は。

 

 

 

 A月K日

 

 徹君が、兵藤君からサインでも貰おうか、と言っていた。

 今朝から冥界の新聞も取るようになっていたが、その一面に兵藤君とリアスさんが載っていたからだろう。

 変な所に彼は興味を示すな、と思う。

 そんな徹君と並んで新聞を読んでいるオーフィスさんは、可愛らしかった。

 ……私が抱いていた『無限の龍神』像は、本当にただの想像でしかなかったのだな、と思わされた。

 それにしても、オーフィスさんは本当に徹君にべったりだ。黒歌さん以上に。

 徹君も、そんなオーフィスさんを気に掛けているし。カルガモの親子、のように見えたのは内緒にしている。

 昨日からずっと、一緒に行動をしている。

 流石にお風呂はレイナーレさんが入れていたが。

 レイナーレさんもレイナーレさんで、オーフィスさんを受け入れているし。

 主の客人……というには、彼女は強力過ぎると思うが。

 それでも相応の対応をする彼女は、本当に徹君のメイドなんだと感心させられた。

 ……居候の身で警戒している私達が間違っているのだろうか?

 徹君とレイナーレさんを見ていると、そんな気持ちになった。

 

 どうやら、英雄派も動き始めたようだ。

 徹君に手を出したらしいが、何も出来ずに退いたようだ。

 でも――これからどうなるか。

 曹操は、徹君への対抗策があると言っていた。

 警戒すべきだろう。あの男を。最強の『神滅具』の使い手を。

 

 

 

 A月L日

 

 徹君の顔色が悪い。

 体調でも崩したのか、と思うが今は英雄派も動いている。

 あまり無理をしないでほしい。

 本人は勉強のしすぎかな、と笑っていたが。

 ……相変わらず、嘘が下手な人だ。

 だがそれでも、オーフィスさんとの会話を止める事は無かった。

 今がオーフィスさんとの繋がりで大切な所だからだろうか?

 戦いを嫌い、歩み寄る。それが彼の在り方。

 ――オーフィスさんへの歩み寄りが、今のこの現状。

 英雄派に狙われ、最強の龍神が傍に居る。

 これから先――上代徹という異世界の神のもとに、どれだけの存在が集まるのだろうか?

 でも……その光景もまた、オーディン様の興味を惹くことになるだろう。

 ……本当に、彼は平穏とは程遠い。

 どれだけ戦いを否定し、避けても――彼には常に、その影が付いて回るのだから。

 

 ――だからこそ、そんな徹君だからこそ……私は、私達は、守りたいと思ってしまうのか。

 

 

 

 A月M日

 

 皆が徹君を心配している。

 徹君の疲労が、目に見えて溜まってきている。

 何かあったのだろうか?

 そう聞いたが、答えてくれなかった。

 ――また一人で、何かしているのだろうか?

 オーディン様…北欧が動いた、という情報は入ってきていない。

 アザゼル先生も、徹君に干渉しそうな勢力への注意は怠っていないと言っていた。

 ならなぜ、徹君はああまで疲れているのか…。

 何事も無ければいいが。

 

 

 

 A月N日

 

 曹操の徹君への対抗策。

 ――なるほど、と思った。思わされた。

 彼の能力は厄介極まりない。恐らく、正面から戦うなら誰も打倒する事は叶わないだろう。

 だが、彼の性格は判りやすい。

 身内にも――敵にも優しい。殺さない、傷つけない――それほどに。

 だからこそ、もし英雄派が彼の周囲の友人や仲間に接触しようとしたら、自分の力で何とかしようとしてしまう。

 彼は人間だ。どれだけ強力な『神器』――神の力であろうと、振るうのは人間。

 その力の源もまた、人間でしかないのだ。

 ……それを思い知らされた。

 人間が神の力を使うこと自体に問題があるのだ。

 使い続ければどうなるか――簡単な事だ。倒れる。壊れる。

 

 英雄、曹操とゲオルク。

 ――オリュンポスの死神。

 そして、その裏で繋がっているであろう――オーディン様。

 確かな証拠はないが、どうしてかそう思ってしまう。オーディン様は……気付かれない程度に、徹君と敵対した。

 いや、きっとあの人に敵対の意志は無いのだろう。

 興味を――知識を満たす為に行動しただけ。きっとその程度のはずだ。

 短い間だったが、あの人に仕えたから……判る。

 しかし…徹君の『神器』は一体なんなのか。

 最初は時間を操るのだと思っていた。

 上級悪魔とのレーティングゲームの際に、その考えは少し変わった。

 時間を操っているように見えるだけで、何か他の物を操っているのでは。もしくは結果的に時間を操ってしまっているのか。

 ……そして今日は、銀の魔方陣から数多の魔獣、魔神を召還した。

 そうとしか表現のしようがない――規格外の人外達だ。

 人の形を保っている者もあれば、人とナニカが混ざったモノ、人とは掛け離れたモノ。

 七柱の魔神と数多の異形。そして、人の形をした者達。

 アレが異界の神の眷属なのか、それともまた別の存在なのか。

 今は、確かめる術は無い。あれらを召還した徹君は、力を使い果たした所を封印された。

 曹操としても、ギリギリだったはずだ。

 恐らくあと一瞬――刹那の時間でも徹君が限界を迎えるのが遅かったら、英雄たちは死神や『龍喰者』と一緒にあれらにやられていただろう。

 それほどまでに圧倒的だった。いや、圧倒的という言葉すら足らない――。

 無限と思える数の魔獣を一瞬にも満たない時間で蹂躙した軍勢。

 それが、徹君の力――異世界の神の力。

 

 ――オーディン様の願いは、叶うのだろうか?

 それだけは、嫌だと思う。

 嫌だと思うが……私の力だけでは、曹操を止める事が出来なかった

 レイナーレさん達も落ち込んでいる。リアスさん達ほどではないが。

 徹君を助けなければならない。

 彼の力がどれほど強力で、強大で、デタラメだとしても――。

 私達は、彼を戦わせない。力を使わせない。

 その為に、彼女は強くなった。その彼女を、支えたいと思った。

 

 

 

 A月O日

 

 レイナーレさんは強いと思う。

 徹君を救う事に迷いがない。

 黒歌さんも白音さんも、だ。

 彼が――上代徹君が好きだから。

 強いから好きになったんじゃない。優しいから、好きになった。

 ……羨ましい、と思った。

 私はまだ、そんな風に思える相手に出逢えていないから。

 そんな人だから、助けて、支えて――戦わせたくない、か。

 徹君の従者らしい…と思った。

 だから――私も力を貸そう。

 

 

 

 A月P日

 

 オーディン様が来日してこられた。

 最近の私の行動は不問という事らしい。これからも励め、と。

 ……それでもきっと、私はもう二度と、オーディン様に情報を送らない。

 あの人は知っていた、徹君の能力を。徹君がどうして曹操たちに封印されたのかを。

 私以外の誰かが、オーディン様に情報を送っている。

 オーディン様の興味は、私には欠片も無かった。

 そういう目をしていた。判りやすい――物を見る目。

 残酷な神だと思う。きっと…私がこうなる事は、判っていたんだと。そう思った。

 それでも私を徹君の傍に置いたのは、私以外の監視者を気付かれないようにするためか…。

 傷付いている――とは違う。

 ただ、ああ、と思った。

 私は頑張って戦乙女になったけど、オーディン様にとっては私はその程度でしかなかったのだ、と。

 薄々感じてはいた事だったが――気付くと、結構傷付くものだ。

 少し泣きそう……。

 

 

 

 A月P日

 

 私はもう不要なはずだ。

 ――今日、踏ん切りがついた。

 レイナーレさんも黒歌さんも白音さんも、受け入れてくれた。

 スコルとハティも、私の頬を舐めてくれた。

 私も、徹君の為に戦おう。今はまだ、戦う事しかできないが――いつか、レイナーレさんのように、彼を支えられるようになりたいと思った。

 私の居場所は、もうこの家しかないのだ。

 感謝します、オーディン。

 徹君の傍に置く者を選ぶ時、私を選んでくれて。

 これからは――この家で生きていきます。

 そしていつか、おばあちゃん達も日本に呼びたいと思う。

 住みやすいし、きっと喜んでもらえると思う……私の我儘だけど。

 どうなるかまだ判らない。

 でも――もう、私は戦乙女ではありません。

 徹君が帰ってきたら、私もレイナーレさん達と同じように…彼の眷属にしてもらおう。

 彼は…私に何の『駒』を、もしくは『カード』をくれるだろうか?

 楽しみだ。

 だから――早く徹君を助けに行きたい。

 今はまだ、英雄派が何処に居るか判らないから動きようがないが。

 ヴァーリさん達の傷が癒えたら――その時が、私達が動く時だ。

 その時まで…次こそ英雄たちを倒せるよう、準備を進めよう。

 

 




徹君の家のターン

サイラオーグさんの日記が全く書けない。
書きたいけど書けない。
なんでだろう……停電嫌い

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