とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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曹操様転落日記。
( ´_ゝ`)この戦い、我々の勝利だ!!


131(英雄日記)

 

 +月A日

 

 京都の九尾――随分とあっさり、捉える事が出来た。

 娘の方は逃がしてしまったが、その方が楽しめるというものか。

 おそらく今は、母親を助けるために京都を駆けずり回っているはずだ。

 九尾は京都の象徴。彼女を助けるための戦力は集まるだろう。楽しみだ。

 極東の妖怪…俺の糧となってもらおう。

 九尾の封印はゲオルクへ任せ、その事をどうオーフィスへと切り出すか考えている。

 上代徹。

 彼女はあまりにもあの男に感化されている。

 今回の件は、彼女の変わり具合を確認するのにも丁度良い。

 俺達は、京都にグレートレッドを呼ぶ。

 果たして彼女は、その誘いに乗るだろうか? 今までの彼女なら乗るだろう。

 だが今の彼女なら?

 ――正直、確率としては6:4くらいでこちらの勝ちか、というくらいだと読んでいる。

 

 

 

 

 +月B日

 

 複雑なものだ。

 オーフィスが京都へ赴く事は無いようだ。

 確実にグレートレッドを呼べるわけではないので、それでも構わないのだが……。

 彼女の変化は、明らかだ。

 変わってきている。俺達にとっては、悪い意味で。

 『無限』が特定の誰かに興味を抱き始めている――いや、興味を抱いている。

 それも、グレートレッド以上に。

 少なくとも、俺達はそう判断した。

 もし京都で、九尾を使ってすらグレートレッドを召喚できなかったら……対応を考えるべきか。

 いや、考えなければならないだろう。

 それすらも楽しいのだが。

 予定通りに進むのは最高だが、少しばかり回り道をするのも悪くない。

 上代徹との勝負。

 俺が勝手に考えているだけだが……オーフィスが変わる前に戦争を起こせるか。

 少しばかり、分が悪そうだ。

 

 

 

 +月E日

 

 九尾の準備が整った事をオーフィスへ伝えたが、反応が思わしくなかった。

 戦場への誘い、『次元の狭間』への道。

 だが、それすらも彼女の心の琴線には触れなかったようだ。

 不思議なものだ。

 あれほど『次元の狭間』に、グレートレッドに固執していたというのに、たった一人の人間に影響されてしまっている。

 『無限』が――世界の全てから怖れられている『無限の龍神』が、だ。

 俺の祖先もまた、数多の英雄の心を動かし、従え、共に戦った。

 それこそが英雄の姿であり、勇者の姿であり、救世主の姿なのだと知っている。

 上代徹。オーフィスにすら影響を与える存在。

 俺と同じ弱っちい人間のはずなのに、英雄の子孫でもないはずなのに……オーフィスを変えるか。

 だが、そう簡単にはやらせない。そう簡単に負けを認められるほど、俺達は半端な覚悟でテロ行為を行っていない。

 九尾……アレを使い、京都を火の海に。

 そして、グレートレッドを呼ぶ。

 そうすれば、まだ間に合うはずだ。

 オーフィスは、グレートレッドとの闘争を選ぶ。今ならまだ、『永遠の静寂』を願うはずだ。

 

 

 

 +月I日

 

 旧魔王派が、陽動を買って出てくれるらしい。

 どういう風の吹き回しか、とも思ったが、理由は単純だ。

 京都へは、グレモリー眷属やシトリー眷属、アザゼル等、彼らが煮え湯を飲まされた存在が旅行へと行っているのだそうだ。

 彼らへの支援が無いように、冥界で少し暴れるそうだ。私怨も混じっているのだろうな。

 必要無いが…まぁ、無いよりはマシだろう。

 それに、ちょうどいい。

 赤龍帝に黒龍、聖魔剣使い、聖剣使い――面白い。

 九尾捕縛から今までの流れが良すぎたくらいだ、ここらで少しの刺激はありがたい。

 それに、赤龍帝――今代の二天龍の片割れの実力をそろそろ測るのも悪くない。

 才能は無いらしいが、アレも一種のバケモノだ。それなりに楽しめるはずだ。楽しめなかったらそれまでだ。

 そうならない事を祈ろう。誰に? 神にでも祈っていよう。聖書に記された神は死んでいるらしいが。

 戦神か、龍神か、それとも得体の知れない名前も存在も知らないような神にでも。

 

 

 

 +月K日

 

 赤龍帝を舐めた結果か。

 右目を潰されてしまった――舐めた代償。命でなかったのは、軽いのか重いのか。

 ゲオルク達には心配されたが、俺としては笑い話でしかない。

 まぁ、そろそろ人間の目には限界があった。ここらで『魔眼』の一つでも手に入れるとしよう。

 京都ではグレートレッドは呼べないどころか、『西海龍童』と初代孫悟空が来てしまうし。

 本当に、世の中ままならないものだ。

 これで一層、オーフィスの興味は上代徹へ向くだろう。

 グレートレッドを呼べなかった。

 赤龍帝にも傷を負わされ、京都での行動は失敗に終わり――ああ、ついていない。

 運も実力のうちというが、どうやら…俺には運が無かったようだ。

 『赤龍帝』に『黒邪の龍王』、『西海龍童』。

 ドラゴンだけで三体だ。普通ならばありえない。

 それに初代孫悟空。ああ、笑えない。本当に笑えない。

 ――今回は俺の負けか。

 赤龍帝たちにも……上代徹にも。

 オーフィスはおそらく、また変わるだろう。

 さて……次はどうするか。

 

 

 

 +月P日

 

 ヴァーリ達に警戒されてしまっているようだ。

 それもそうか。

 京都では彼の配下に邪魔をされたのだし、仕方がない事だろう。

 ……予想通り、オーフィスはまた変わった。変化した。悪い意味で。

 『次元の狭間』を求めるのではなく、現状に満足しているように感じた。

 いや、今まで知らず、気付かずにいた事に気付き始めたというべきか。

 周囲への興味と、自身の変化の答え。

 『次元の狭間』しかなかったはずのアレに、確かな『好奇心』が産まれていた。

 良くない事だ。

 周囲に感化され、変化する『龍神』に、どれほどの価値があるというのか。

 不変であり、絶対である存在だからこそ、俺達は彼女を必要としたのだというのに。

 

 

 

 +月W日

 

 冥府のハーデスから『龍喰者』の封印を、一時的に借り受けた。

 といっても、使えるのは一度だけなのだが。

 大切に使わせてもらおう。

 『龍喰者』サマエル。唯一オーフィスを殺せるかもしれない存在。ドラゴンの天敵。

 サマエルが居れば、オーフィスは無力化できるだろう。上手くいけば、殺せるかもしれない。

 一度しか召喚できないので試せないが、ドラゴンの天敵と謳われるアレなら、オーフィスを殺すはずだ。

 後の問題は、上代徹。

 ゲオルクの『絶霧』の結界で封じ、その上からさらに封印を施す。

 それで、無力化できるだろうか? 出来ると思うが、確信は持てない。

 アレは時間を操る。

 結界で封じる前まで時間を巻き戻されたら、どうしようもない。

 まだまだ、考えるべき、対策すべき事は多いようだ。

 どうにかして、封印直前までにあの男を倒れる寸前まで追い込めないものか……。

 

 

 

 !月E日

 

 『強制禁手化』――『魔人化』の実験が思わしくない。

 確かに『禁手』へ至った英雄は増えたが、壊れてしまった英雄も多い。

 力が至らない、と言えばそれまでだが――どうしたものか。

 

 

 

 !月J日

 

 どうやら、『魔人化』の事を三大勢力…それと、北欧側へ知られたようだ。

 裏切り者、というよりも死にたくない『神器使い』が漏らしたのだろう。

 そこまで大きく取り上げられていないのは、おそらくまだ実用化に至っていないからか。

 だが、オーディンが黙っているのには驚いた。

 アレは『魔人化』の方法に興味を示すかと思ったが……。

 まぁ、死と隣り合わせの強化など、そう珍しくないのかもしれない。

 それはそれで、面白くないものだ。

 だが、いずれ確実に……。

 

 

 

 !月K日

 

 今度、赤龍帝達と上級悪魔のレーティングゲームが行われるようだ。

 遊戯に興味は無いが、彼がどれくらい力を付けたか観戦させてもらおうと思っている。

 これでも気配を殺すのは得意なのだ。

 右目の礼をしないといけないし。

 どうしてやろうか……。

 そういえば、彼は『王』に懸想しているそうだ。

 彼女を傷付ければ、彼はさらに強くなるだろうか?

 

 

 

 !月W日

 

 京都の時よりも、随分と『赤龍帝の篭手』を使いこなしていた。

 とくに、今までの赤ではなく紅の鎧――アレは面白い。

 恐らく、単純な攻撃力だけなら『黄昏の聖槍』に近いだろう。

 『獅子王の戦斧』も然り。

 『神滅具』の戦いは、心躍るモノがある。

 彼はきっと、さらに力を付けたはずだ。きっともっと強くなるはずだ。

 だから――その時が楽しみだ。

 再び会いまみえる時が……赤龍帝、白龍皇、獅子王――戦いたい相手が多くて困る。

 

 

 A月A日

 

 面白い噂を耳にした。

 上代徹とシトリー家の次期当主は、随分と良い仲のようだ。

 調べてみたが、通っている学園では有名な事のようだ。

 それに、その噂を広めているのは彼女の姉――現魔王のレヴィアタン。

 ガードは堅いだろうが、攻めてみる価値はあるだろうか?

 ジャンヌやヘラクレスは気にし過ぎといったが、あの男は正面から戦うべきではない類の相手だ。

 戦う前に、出来れば勝負を決めておきたい。

 戦いとは、そう言うものだ。

 

 

 

 A月C日

 

 オーフィスが、上代徹の事を気にする時間が増えてきている。

 いや、表情に出さないだけで、心中ではどうだか判らない。

 恐らく、アレはもう使えない。変わってしまったと考えるべきだ。

 故に、切り捨てよう。必要無いモノは捨てる。当然の事だ。

 それに、世界を混乱させる――方法ならまだまだある。

 オーフィスとグレートレッドを戦わせる…それよりいくらか質が落ちるだろうが、戦争を起こす方法は多い。

 たとえばオーフィスの無力化。

 それだけでも、世界は動く。オーフィスを狙い、各勢力が動き出す。

 オーフィス殺しを狙って、世界が乱れる。平穏が消える。少なくとも――オーフィスを恐れ、憎む勢力は。

 その混乱に乗じて、どこかの勢力を狙えば…魔王や熾天使、堕天使幹部、神話体系の長を討てるかもしれない。

 そうすれば、こちらの勝ちだ。

 勢力の頭が潰れれば、混乱が起きる。大きな、大きな――戦争が。

 英雄が産まれる、必要とされる…戦争が。

 その時、オーフィスには死んでもらおう。消えてもらおう。

 『禍の団の長』として。『悪の親玉』として。

 そうする事で――英雄は産まれるのだ。世界が、英雄と認めるのだ。

 

 

 

 A月G日

 

 冥府から、死神を数百体借りることになった。

 『強制禁手化』を強行したツケか、作戦を起こすには英雄派の戦力が足りない。

 個の力は遥かに上昇したが、数が足りないのはいただけない。

 戦争は数だ。英雄数百人程度では、どうしようもない。たとえ、一騎当千だとしてもだ。

 あまり借りを作るのは面白くないが、行動を起こす機を逃すわけにはいかない。

 ヴァーリ達にも動きがある。オーフィスから警戒される前に、上代徹を無力化する。

 ソーナ・シトリー。

 頭は回るが、戦力としては中の下。上級悪魔としてはそれなりの相手。

 狙うには丁度良い。

 

 

 

 A月I日

 

 ヴァーリ達が動いた。オーフィスを連れて、『禍の団』から外に出たのだ。

 誰かと落ち合う算段だろうか?

 オーフィスを受け入れる勢力はいない――いや、思いつくのは一か所だけだ。

 だが、俺では上代徹とは接触できない。

 町へ入ろうが、近付こうが、その度に時間を巻き戻される。

 面倒な事この上ない能力だ。

 ヴァーリ達側も、俺やゲオルク――幹部クラスの実力が無ければ止められない。

 こんな判りやすい行動を、白龍皇がとるはずもない。

 本命は別のはずだ。

 ……確信があるのに確かめられないのも、面白くない。

 さて、どうやって『時間の壁』を突破したものか。

 

 

 

 A月J日

 

 何度も町へ侵入しようとしているが、その度に町の外へはじき出される。

 これで合っているのだろうか? これで上代徹の力を殺げているのだろうか?

 英雄数十人で試しているが、確信が持てない。

 

 

 

 A月K日

 

 ヴァーリ達の抵抗が激しい。

 旧魔王派は静観を決め込んでいる。ハーデスから借りた死神達は切り札だ。まだ使えない。

 俺達の戦力を見誤らせらせ、場を混乱させる。

 決行は、上代徹が疲弊してからだ。

 旧魔王派と共同戦線を張りたいところだが、協力は得られなかった。

 英雄派よりも戦力の残りが少ないのだ、静観せざるを得ないのだろう。

 オーフィスの『蛇』の残りも少ないだろうし。

 『強制禁手化』――『魔人化』の実験で英雄も相当数が減ってしまったが、旧魔王派の戦力はそれ以下のはずだ。

 このギリギリの戦い……ああ、これだ。これを求めていたのだ。

 この戦いを世界中で――それだけで、満たされそうだ。

 だが、まだまだだ。

 まだ、こちらが一方的に押されている状況だ。

 

 

 

 A月L日

 

 ようやく『時間の壁』を突破することに成功した。

 上代徹は確実に弱っているのだろう、ソーナ・シトリーへは接触できなかったが、明らかに彼の『神器』の能力範囲が狭まっている。

 今日の時点で、町を覆う事は叶っていない。

 ――この調子だ。もっと弱らせよう。倒れる寸前まで。

 だが、刺激し過ぎてはいけない。

 彼の『禁手』はエネルギードレイン。

 それを使われないように、使われても最小限の被害で済むように、少人数での波状攻めを続ける。

 もう少しだ。

 確実に、俺達は進んでいる。

 

 

 

 A月N日

 

 上代徹とオーフィスを封印することに成功した。

 今でも信じられないが――確かに、封印する事が出来た。

 一体どれだけ出鱈目なのか、と思わされたが……ギリギリまで弱らせていたのが良かった。

 魔力ではなく生命力の疲労。

 エネルギードレインでも対応できないほどまで蓄積していた疲労のお蔭で、上代徹が召喚した存在と戦わずに済んだ。

 上代徹。

 アレはいったい何者なのだろうか?

 オーフィスと共に『次元の狭間』へと追放し、道を完全に塞いだが……。

 もう二度と会う事も無いだろう。会いたくも無い。

 アレは正真正銘、人の形をしたバケモノだ。

 人でありながら人をやめた存在だ。

 少なくとも――悪魔や天使、堕天使…神などよりも、よほどオカシイと言えるだろう。

 召喚された大小さまざまな異形達。

 そして、異彩を放つ七柱のバケモノ。

 見た事も無い、見ただけで正気を失いそうな存在達。

 ああ、なるほど、と納得させられた。

 確かに――あんなバケモノでなければ、オーフィスは興味など抱くまい。

 

 『覇輝』の奇跡を用いてやっと、一瞬だけ生き延びる事が出来た。

 本当に奇跡だ。運が良い。

 上代徹とオーフィス。

 世界の中心であり、世界の要が失われた。

 これからどう世界は変わるだろうか? 楽しみだ。

 本当に――ああ、楽しみだ。

 

 

 

 A月O日

 

 レオナルドが狂った。

 際限無しに『魔獣創造』で魔獣を生み出し続けている。

 限界を超えて――上代徹が召喚したバケモノ達を創造し続けている。

 このままでは、彼は死んでしまうだろう。

 封印され、舞台から降りてなお、俺達の邪魔をするか……上代徹。

 だがその前に、仕事をしてもらわなければならない。

 

 




レオナルド乙
出番はこれだけかもしれない。
少なくとも、見せ場はまだあるから頑張れ。超頑張れ。SAN値は直葬だろうけどな。

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