とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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十五巻をどうしようか悩み中。
それと、後誰を書くか。書くとしたらあと二人だろうなぁ。


142(戦乙女日記)

 

 !月A日

 

 兵藤君は、一体何をしているのか。

 オーフィスさんが徹君に甘えていた理由は、兵藤君の真似をしていたからだそうだ。

 それに、徹君も徹君だ。

 まぁ、確かにオーフィスさんの見た目は女の子ですけど、中身はちゃんとしたドラゴンだと判っている。

 だからといって、第三者が見たら明らかに度を過ぎたスキンシップだ。

 黒歌さんも悪乗りをしてるし。こっちはちゃんと猫の姿だったけど。

 白音さんは純粋に羨ましがってたが、私としては、生徒がそう言う趣味の人に見られるのは面白くない。

 他意は無い。

 羨ましくなんかありません。嘘も吐いてません。

 最近、白音さんも歯に衣を着せずに、何でも言ってくるようになった気がする。

 信頼されているというか、気を許してもらってるというか……良い事なんだけど、複雑だ。

 

 

 

 !月B日

 

 確かに、アザゼル先生が言いたい事も判る。

 『無限の龍神』オーフィスさんが駒王学園に来ると、不必要に他の勢力を刺激してしまうだろう。

 徹君の庇護下とはいえ、彼女は単体で世界を壊せる存在だ。

 そんな存在が完全中立の駒王学園に現れるのは、あまり良い事ではないのだろう。

 でも、だ。

 私は多分、止めれないだろうな、と思う。

 

 最近、なんとなくだが。

 オーフィスさんが嬉しそうなのだ。

 多分、『禍の団』でも友人――対等な存在などいなかったはずだ。

 彼女はそんな感情も無くしていたかもしれないが、孤独だったのではないだろうかと思う。

 だから――数少ない対等な存在。友人とも言える徹君と同じものを見てみたいのではないのだろうか。

 兵藤君…赤龍帝とも、仲が良いようだし。

 アザゼル先生には悪いが、私はオーフィスさんの好きにさせてあげたいと思う。

  

 お詫びに、今度の一緒に飲みに行く事になった。

 まぁ、ちゃんとお給料も貰ってるし、偶には奢ってあげよう。うん。

 

 あと、家に帰ったら徹君が黒歌さんとオーフィスさんから引っ張られて遊んでいた。

 ああいう姿を見せられると、やっぱりオーフィスさんを止めれないなぁ、と思ってしまう。

 

 

 

 !月C日

 

 グレモリー眷属の訓練を見る事が出来た。

 リアスさん達も頑張ってるんだなぁ、と。

 レーティングゲームでは使えないような、危険な必殺技を考えていた。

 『禍の団』も英雄派を失って、戦力はかなり減っている。

 だが、北欧やオリュンポス、海外の神々も一枚岩ではない。ああいう準備は大切だと思う。

 私も、負けていられない。

 レイナーレさんも、強力な力を手に入れた。

 いずれ使いこなせるようになれば、きっと私では太刀打ちできなくなる。

 もっと頑張らないといけないな。

 お仕事も、訓練も。

 ……徹君の傍は、毎日退屈しなくていい。

 そう言うと、黒歌は嬉しそうにしてた。

 そんな笑顔を見るだけで、私も嬉しい気持ちになれた。

 ――日本に、徹君の傍に来れて良かったと……日記に書くような事ではないか。

 

 ただ、忘れないようにしよう。

 今のこの気持ちを。

 

 

 

 !月D日

 

 メフィスト・フェレス。

 私は会う事が叶わなかったが、どうやら随分と私達――徹君に興味を持っているようだ。 

 聞いた話だと、魔法使いの契約の事を、徹君にレクチャーしてくれたそうだ。

 でも、多分徹君は契約を結ばないだろうな、と思う。

 そんな事、平穏に、自分から遠ざかるようなものだし。

 その辺りは、アザゼル先生も判っているようだった。

 良く思うけど、アザゼル先生って徹君の事を疲れたように話すけど、よく見てるなぁとも思う。

 あんなだから、徹君から頼られるのではないだろうか?

 まぁ、私も頼りやすいから、言わないでおくことにしよう。

 

 

 

 !月E日

 

 今日はオーフィスさんではなく、黒歌さんが学園に来ていたようだ。

 私はその時は会ってないが、家で聞いた。何をしてるんだか。

 オーフィスさんばっかり学園に行ってるから羨ましいと言っていた。

 変な所で子供っぽい。まぁ、黒歌さんらしいとも言えるけど。

 レイナーレさんに叱られてたけど、あまり気にしてないんだろうなぁ。

 

 あと、白音さんをからかわないでほしい。

 白音さんの反応は面白い、見てる分には微笑ましいし。

 だって、表面上は全然気にしてない風なのに、実は一生懸命内心を隠そうとしてるのが簡単に判ってしまう。

 行動とか、視線とか。羨ましいという、隠しきれない感情とか。

 拗ねた時の対応とか、黒歌さんが白音さんを可愛がる理由がよく判る。

 でも、拗ねると話を聞いてくれなくなって困る。

 レイナーレさんに慰めてもらっていた。

 本当に、あの姉妹は似てるな、と思う。羨ましいくらいに。

 

 

 

 !月F日

 

 オーフィスさんに、料理を教えてほしいと言われた。凄く驚いた。

 だって、『無限の龍神』にお願いされたのだ。驚かない方がおかしい。

 しかも料理だし。

 まぁ、仕事が忙しいので、今度時間が出来た時に、と言っておいた。

 しかし、本当に驚いた。

 なんでも、昨日レイナーレさんと一緒に料理をしたようで、徹君に料理を褒めてもらえたのが嬉しかったのだそうだ。

 ……本人は、嬉しい、という感情をよく理解できていなかったみたいだけど。

 そんな所も可愛らしい。

 黒歌さんにも、同じことを言っていた。

 そんな姿が心の琴線に触れたようで、抱き締めていた。別に…羨ましいなんて、思ってないし。

 無表情だったけど、ちょっと困ってるようだった。可愛かった。

 

 

 

 

 !月G日

 

 少し酔ってる。でも、気分は悪くない。気持ち良い。

 初めて……というか、ついに、レイナーレさんに負けてしまった。

 いつかはこの日が来るとは判っていたけど、いざ負けると、少し悔しかったけど……不思議と、喜んでいる。

 でも、最初は信じられないで驚いて、実感できなくて周囲を見渡して、実感したら――喜ぶよりも、私を心配してくれた。

 私より強くなっても、私に勝っても、ああ、あの人は私達の『女王』なんだな、と思った。

 悔しいやら、嬉しいやら。

 複雑だ。でも、悪い気分じゃない。

 

 まだ負けたくなかったのに、負けちゃった。

 ――でも、良い気分だ。

 こんな気持ちになれるのは、レイナーレさんの人徳だろう。

 努力家で、真面目で、優しくて、厳しい『女王』。

 徹君もだけど、レイナーレさんにも会えて良かった。

 私は弟子に恵まれたと思う。私より強い弟子だけど。

 

 ……あーあ、負けちゃった。

 

 

 

 !月H日

 

 徹君に、寝顔を見られてしまった。恥ずかしい。

 ワザとじゃないし、別に何かあった訳じゃないし、ただ酔って部屋を間違えただけなのに。

 ……黒歌さんだってよく徹君と一緒に寝てるのに、私にばかり言うのはズルいと思う。

 白音さんは嫉妬してくるし。

 でも、レイナーレさんの余裕のある態度も結構精神的にクルものがあった。

 あれが『女王』の余裕なんだろう。うん。

 

 

 

 !月I日

 

 私は酔って部屋を間違えたけど、意図して男性の部屋に夜這いを掛けようとした黒歌さんを止めるのは問題ない。

 むしろ、妹さんが同じ家に居るのに夜這いを掛けるのはどうかと思う。

 しかも、相手は妹さんの意中の人だし。姉の意中の人でもあるけど。

 まぁ、何を書きたいかというと、徹君は皆から好かれているという話。

 レイナーレさんもそうだし。学園の方でも、徹君を悪く思ってない人が結構いる。

 ……徹君って、倍率高いなぁ。

 

 

 

 !月J日

 

 白音さんが可愛い。

 徹君に夜這いをしようとして、出来なくて、気付いたら徹君の部屋の前で寝てた。枕を抱いて。

 ……途中まで、黒歌さんと一緒に観察してた。悪いとは思ってるけど、白音さんが可愛いのも悪い。

 教師としては駄目だけど、家族としては正しい事をしたと思う。

 

 家族――たぶん、それで合ってると思う。そう信じたい。

 

 それにしても、オーフィスさんって徹君の次くらいに、レイナーレさんに懐いてる。

 昨日は、私と黒歌さんが馬鹿をやってる時に、レイナーレさんと一緒に寝ていたんだそうだ。

 親子のように思えてきた。同じ黒髪だし。

 

 

 

 !月K日

 

 黒歌さんに叱られた。白音さんに呆れられた。レイナーレさんに慰められた。

 いいじゃない、100均巡り。

 日本のマーケットは質も良いし、種類もある。

 見てるだけでも楽しいし、お揃いの小物を買って飾るのっていいじゃない。

 ……それに、別にデートって訳でもなかったし。

 いくら私でも、デートならもっとちゃんとしたコースを選ぶ。うん。

 ――黒歌さんからはお叱りを受けたけど。というか、怒ってたけど。

 いいじゃないですか、100均デート。楽しかったもん。

 

 

 

 !月L日

 

 私は徹君にとって、なんなのだろう?

 女教師。そりゃ、動きやすいからジャージばかりで、色気の無い格好だと思うけど、女教師だ。

 もっと頼ってくれてもいいと思う。教師として。大人として。

 どうして私じゃなくて、アザゼル先生に授業で判らない所を聞くんですか。ヒドイと思います。

 それに、アザゼル先生もアザゼル先生で、徹君が判らない所を全部教えてるから、本当に私が女教師として役に立ててない。

 悔しい。レイナーレさんにも負けちゃって、アザゼル先生にも負けるのか。

 ……私って、何なのだろう。

 お酒を飲んで誘惑してみても、全然反応してくれないし。

 女としても挫けそう……。

 

 

 

 !月M日

 

 昨日の私は、日記に何を書いてるのか……もう、お酒は控えよう。

 

 今日は、グレイフィア様がこの家に来た。

 徹君ではなく、レイナーレさんへの教育の為に。

 メイドとしての心得とか、家事とかの教育。

 あと、どれだけ鍛えたかの確認。

 まだ十全オーフィスさんの『血』を使いこなせないようで、粘ってはいたが負けてしまった。

 遥か格上――現魔王ルシファーの『女王』に粘れただけでも凄いのに、レイナーレさんは悔しがっていた。

 その場では口にも、態度にも出してなかったけど、グレイフィア様が帰った後、私にも黒歌さんにも隠れて悔しがっていた。

 強くなるはずだ。この短期間で。

 オーフィスさんの『血』が無かったとしても、きっといつか、私はレイナーレさんに負けてたんだと思う。

 私は、粘れただけでも凄いと思った。

 レイナーレさんは、粘れただけじゃ、満足してなかった。

 満足どころか、悔しがっていた。

 ……ああ。どうして私は、負けてしまったのだろう。

 どうして私は、負けたのに満足してしまったのだろう。

 

 

 

 !月N日

 

 徹君は、長い髪が好きなんだろうか?

 黒歌さんと一緒に、オーフィスさんの髪型を変えている時、とても楽しそうだった。

 でも、気付いてるかしら。

 女の子にとって、髪は特別だ。

 オーフィスさんにそんな感情があるかは判らないけど、黒歌さんやレイナーレさん。

 好きでもない人には、きっと触らせない。

 そういう事に。

 ――それに、私も。

 不快ではなかった。思った以上に緊張していた。

 それと、少しだけ嬉しかった。少しだけ、だ。

 

 

 

 !月O日

 

 明日は、グレモリー眷属とアザゼル元提督、この地域を統括する転生天使グリゼルダさん、それにルーマニアの吸血鬼が揃って会談を行うそうだ。

 アザゼル先生が言うには、徹君は関わらせないとの事だった。

 冥界の魔獣騒動からそう時も経っていない。まだ徹君が表舞台に立つには、世界は荒れてしまっている。

 それでは、どんな勢力を刺激してしまうか判ったモノではない。

 特に、英雄派を失って行動が読めなくなった『禍の団』と、徹君に執着している北欧。

 きっと他にも、徹君の『異世界の神の器』に興味を持っている勢力は居るはずだ。表立っていないだけで。

 それに今なら、徹君だけじゃなくてオーフィスさんも傍に居る。

 下手をしたら“神々の黄昏”が起きてしまう。もしくは、それ以上の最悪が。

 というのが、アザゼル先生の心配事。

 

 徹君を心配してくれてるんだな、と。嬉しくなる。

 世界の崩壊の一端を徹君が負わないように、気に掛けていてくれている。

 

 でも、吸血鬼か。

 不死者は戦乙女の敵だった。徹君の眷属となった今でも、良い感情は抱いていない。

 何とも複雑だ――何事も無ければいいけど。

 

 




アザゼル先生は、日記を書かなくても不憫臭が漂ってる。不憫。

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