とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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十六巻を読んでて思ったこと。
ヴァレリーちゃんとエルメンヒルデちゃん可愛い。


143(戦乙女日記)

 !月P日

 

 やはり、吸血鬼は好きになれそうにない。

 グレモリー眷属に助力を仰いでいるというのに、なんだあの態度は

 吸血鬼の血族以外を見下して、まるで自分達が悪魔や天使、堕天使よりも上位だとでも言うかのような態度だった。

 混血とはいえ、ギャスパー君も見下しているようだったし。

 あんな態度で会談など行われても、信用を得る事は出来ないだろう。

 現に、イッセー君やリアスさんも憤りの感情を隠しきれないでいた。

 結局、返事は先送り。まずは現状を確認してからという事になった。

 それが良いだろうと私も思う。吸血鬼は信用できない。

 

 それにしても、アザゼル先生やグリゼルダさんには感謝だ。

 吸血鬼との問題に、徹君を巻き込まないようにと気を使ってもらった。

 結局、吸血鬼に目を付けられてしまったが。

 というよりも、興味を持たれたというべきか。

 三大勢力に強いパイプを持ち、海外の神話勢からも気にされているのだ、今更そこに吸血鬼が加わっても、本当に今更だと思ってしまうが。

 

 しかし、溜息しか出ない。

 レイナーレさんと黒歌さんも、多分私と同じ感情を抱いているはずだ。

 徹君は本当に、平穏からは程遠い場所に居る。

 本人は、あんなにものんびりと過ごす時間を大切にしているというのに。

 

 

 

 !月Q日

 

 リアスさんと木場君、それにアザゼル先生がルーマニアへと行く事になった。

 吸血鬼側の現状を確認しに、そして必要なら、問題を解決に。

 願わくば、徹君の平穏が壊れない事を。

 徹君も『異世界の神の器』を持っているのだし、神に祈っても問題無いだろう。

 ああ、でも。北欧の主神にはやめておこう。

 あの人は、巻き込まれる事を心の底から願っているし。

 

 それと、アザゼル先生と呑みに行くのは少し延期になりそうだ。

 ルーマニアへ行く事になったので、忙しいようだし、しょうがない。

 問題が片付いて、戻ってきたら一緒に行こうという話になった。

 その時は、今度こそ私が奢ろうと思う。いつもお世話になっているし。

 

 

 

 !月R日

 

 白音さんが拗ねていた。

 どうも、徹君からギャスパー君の事で相談というか、なんというか、ギャスパー君の話を振られたそうだ。

 その程度で、とも思うが……徹君って、男の子にも何だか人気があるから何とも言えない。

 ギャスパー君だけじゃなくて、白龍皇であるヴァーリさん、孫悟空の美猴さん。

 まぁ、そんな事は無いだろうけど。

 というか、想像するという事は、白音さんはそう言う趣味があるのだろうか?

 ……私としては、それも色々と複雑だ。

 いくらなんでも、男色ではないだろう。うん。

 

 

 

 !月S日

 

 徹君には困ったものだ。

 女の子なら誰でもいいのだろうか? 名前を呼ばれたくらいで、デレデレして。

 まぁ、そんな事は無いのだろうけど。

 困ってる人に手を差し伸べるのは美徳だろうけど、誰彼構わずにされると、私も心配してしまう。

 いきなり家に訪ねてきて、話の内容は徹君の事ばかり。

 多分、徹君がどういう人物なのかを確認しに来た、といった所だろう。

 徹君を関わらせる気なのか、それとも違うのか。

 ただ、先日のリアスさん達への対応よりも、随分と柔らかな感じで接してきていたと思う。

 私たち、徹君の配下へは随分と傲慢だったが。

 以外にも、レイナーレさんはともかく、黒歌さんも怒ってなかった。

 ああいう性格は、舐められないための処世術と言っていた。

 それもそうか、とも言われて思った。

 あの人形じみた美貌の裏に、怯えを隠していたのだそうだ。よく判るな、と思う。

 その辺りの感情の駆け引きは、私達の中では黒歌さんが一番上手いと思う。

 

 私達を…徹君を巻き込むなら、覚悟を決めなければならないだろう。

 曹操のように。今まで自分が築いてきたものすべてを失くす覚悟を。

 英雄。最強の『神滅具』使い。その肩書を失い、『地獄の最下層』まで堕ち、ついてきた仲間の殆ども――。

 あの吸血鬼に、その覚悟があるかどうかは判らないが。

 ヴァレリー・ツェペシュ。

 ギャスパー君が助けたい少女。今日来た吸血鬼の敵。『神滅具・幽世の聖杯』の担い手。

 徹君は一応頷いていたが、あまり乗り気ではなかった。

 でも、これからどう転ぶかは判らない。

 徹君だから。優しい、優しすぎる私達のご主人様だから。

 ――私達は、徹君の意志に従うだけだ。

 

 

 

 !月T日

 

 また、黒歌さんがオーフィスさんに変な事を教えていた。

 昨日は吸血鬼…エルメンヒルデの事で色々悩んでいたのに、私は難しく考え過ぎなのだろうか?

 今日はもう、皆がいつも通りの生活をしてる。

 まぁ、どんなに自分が悩んでも、徹君の意志に従うので、悩むだけ馬鹿だと言われた。

 失礼な。

 ……まぁ、悩んでる姿を見せないだけで、みんな悩んでるのだろうけど。

 黒歌さんが朝食抜きにされて、この家はいつも通り。

 

 今回の騒動も、無事に、何事も無く終わればいいと思う。

 

 

 

 !月U日

 

 生徒たちから舐められないようにするにはどうすればいいんだろう?

 レイナーレさんは地道に頑張るしかないと言われた。

 地道に頑張ってるレイナーレさんの言葉は重い。

 黒歌さんは実力を示せと言われた。

 それだと体罰になってしまう。……脳筋と言われた。失礼な。

 教師って難しい。でも楽しいのも本当だ。

 

 ソーナさんから、レーティングゲームの学校を開くので、徹君が卒業した後に就職しないか、とのお誘いを受けた。

 どうしよう。

 まだ誰にも相談できていない。

 徹君は三年生で、今年で高校生活も最後だ。

 私が駒王学園に勤めるのは仕事を紹介してもらったからだけど、徹君の眷属としては、主人の卒業後の事を考えないといけないだろう。

 どうしようか。

 

 

 

 !月V日

 

 今になって思うが、年頃の男の子と、その男の子の部屋で二人っきりというのは、女教師としてどうなんだろうか。

 ……自分で想像しておいてなんだが、徹君って結構無防備だと思う。

 簡単に、部屋に女性を入れると勘違いしてしまいますよ?

 まぁ、この家にはお邪魔虫が沢山いますけど。

 黒歌さんとか、白音さんとか。オーフィスさんは自由すぎるし。

 レイナーレさんは余裕たっぷりだし。それとも、徹君を信頼してるのか。

 今の関係を受け入れているのか。

 ――敵わないなぁ。本当に。

 そんな今の関係が、私達はとても心地良いのだけれど。

 自分から「勉強を教えます」と言っておいてなんだけど、今度からどうしよう。

 今度は私の部屋に呼ぼうか?

 

 

 

 !月W日

 

 徹君と白音さんは仲が良いなぁ、と。微笑ましい。

 拗ねる白音さんと、なだめる徹君。最近、よく見るようになった光景だ。

 なんでも、徹君がレイヴェル・フェニックスさんに避けられていたらしいけど、今日和解したらしい。

 その時に、レイヴェルさんばかりに構っていたから、構ってもらえなかった白音さんが拗ねたそうだ。

 徹君がレイヴェルさんに特別な感情を抱いていないのは簡単に判るのに、それでも納得できない白音さんが可愛らしい。

 

 そう言えば、不思議に思ったので黒歌さんに聞いてみた。

 黒歌さんは徹君に嫉妬しないな、と。

 いつもあんなにべったりなのに、徹君と色んな女性の話題が出ても、嫉妬じゃなくてからかう事が多い。

 答えは簡単だったけど。

 要約すると、好きだから。本当に大好きで、想っているから。

 そんな感じ。内容は、とても日記に書くような事ではない。

 強いて書くなら…凄く惚気られた。レイナーレさんと黒歌さんが仲が良い理由が判った。

 

 

 

 !月X日

 

 今更の話になるが、私は転生天使だ。

 徹君から『7』のカードを貰って転生した。

 なので、私はこれから天使の一員としても見られることになる。

 ……一応、天使としての心構えをグリゼルダさんから教えてもらった。

 天使って大変だと思った。

 特に恋愛面で。

 多くは語りたくない。

 ――将来的には、いろいろ考えてるし、彼氏も欲しいし、まぁ、うん。その先だって考えた事はある。

 あるけど、面と向かって言われると、どう反応していいか。

 私、彼氏いない歴=年齢だし。

 いいなぁ、って思ってるのは徹君だけだし、その徹君は倍率高いし。

 兵藤君とかヴァーリさんとか美猴さんとか、他にも男の人の知り合いは何人かいるけど、あんまりよく知らないし。

 それを言ったら、徹君の事も全部知ってるわけじゃないけど。

 うぅ…私にはまだ無理だ。

 

 

 ああ、でも。レイナーレさんも元は堕天使だし、私も堕天してもいいかもしれない。

 

 

 

 !月Y日

 

 黒歌さんが落ち込んでいる。

 いつも元気だから、落ち込んだ黒歌さんを見ているのが辛い……。

 徹君とレイナーレさんが落ち着けていた。こんな時、何も出来ない自分に苛立ってしまう。

 オーフィスさんに慰められたが。

 多分、そんなつもりは無かったのかもしれないけど、落ち着かない時は話すだけでも随分気が休まる。

 白音さんが誘拐された。

 相手は『禍の団・はぐれ魔法使い』。

 最初に接触した兵藤君が言うには、面白半分の興味本位で、なのだとか。

 白音さんは『禍の団』が来た時に、レイヴェルさんや他の一年生を庇って捕まったそうだ。

 その時に、ギャスパー君も……一年生でも、グレモリー眷属ばかりが攫われた形だ。

 レイヴェルさんは違うが。

 ……まぁ、理由などどうでもいいか。

 白音さん達を無事に取り戻さないといけない。

 

 

 

 !月Z日

 

 向こうの要求はグレモリー眷属とシトリー眷属だったが、私達も乱入させてもらった。

 情報を教えてくれたのはソーナさん。

 正直、ありがたく思う。人質が人質なだけに、迂闊に動けなかったのだ。

 

 しかし――怒った徹君は凄まじい。

 オーフィスさんにとっても、白音さんは特別だったようで……今回の件の内容は、日記に書く事すら憚られる。

 正直、今回は私も黒歌さんもほとんど何もしていない。

 世界最強の魔力攻撃と、消滅しても復活させられて、再度の攻撃だ。

 私が『禍の団』なら、精神が擦り切れる。

 レイナーレさんが『邪龍』グレンデルを吹き飛ばしていたくらいか。

 怒りでオーフィスさんの『血』をある程度制御できたのか、それとも『血』が身体に馴染んだのか。

 兵藤君も復活の際にオーフィスさんの加護を少しばかり受けているようだが、レイナーレさんのソレは密度が違うのがよく判った。

 無限の――無尽蔵の魔力。

 恐らくだが、一対一、正面からの勝負なら、今日の彼女はグレイフィアさんにすら迫るのではないだろうか。

 それほどまでに、凄まじい力だった。

 あれでまだ、完全に『無限の血』を使いこなせている訳ではないそうだし。

 

 ああ、でも。

 白音さんが無事で良かった。

 気丈に振舞ってても、徹君が助けに行った時は泣いていたし。

 まぁ、涙は見ないようにしましたけどね? 声だけ聞いてました。

 それと――良かったですね、名前を呼んでもらえて。

 今回の騒動も、無事に終わったと思う。

 ――『はぐれ魔法使い』がこの後どうなるかは判らない。駒王学園の関係者側にも裏切り者が居たようだし。

 もう使い物にならない可能性が高いだろうが。知った事ではない。

 五体満足で、生きているのだ。感謝してほしいくらいだ、というのは黒歌さんの弁だ。

 誰も、なにも文句は言えなかった。

 

 ただ、少し心配ごとがある。

 あれだけ無茶をして――徹君は大丈夫だろうか。

 

 

 

 !月/日

 

 徹君は『神器』の使い過ぎで倒れたが、今回はそんなに酷くないそうだ。

 その辺りは黒歌さんに任せっきりだが、今までよりは随分落ち着いているそうだ。

 徹君の身体が『神の器』に慣れてきたのか、それとも何か別の要因があったのか。

 判らないことが多いが、まずはそこまで変調が大きくない事を喜ぼうと思う。

 黒歌さんは心配ないと言っていたが、白音さんは泣きそうな顔で心配していた。

 レイナーレさんも、黒歌さんも、もちろん私も心配している。

 オーフィスさんも、ずっと徹君の部屋で、徹君を見ている。

 心配しているのか、それとも何か感じる事があるのか。

 

 悔しく思う。

 こうならないように、私達は強くなりたいのに。

 いつも最後には、徹君に任せてしまっている。

 それは、私達が弱いからだ。

 

 

 

 !月!日

 

 仕事から帰ると、徹君が目を覚ましていた。

 教えてくれればいいのに。皆ヒドイと思う。

 ……まぁ、確かに。

 教えてもらったら、仕事を放り出して帰ったと思うけど。

 それは駄目だと思うし、私の事を考えてくれたのは嬉しいけど、やっぱり教えてほしかった。

 一番心配していた白音さんが笑顔だったから、安心した。

 ただ、自分が悪いというのはいただけない。

 弱いから、だから倒れたんだと。

 ……そんな事は無いのに。

 

 

 

 !月#日

 

 徹君が困っていた。

 白音さんを名前で呼ぶことが恥ずかしいそうだ。

 変な所で子供っぽいなぁ、と。悪いとは思ったけど、笑ってしまった。

 微笑ましい事だ。やっぱり、この家は暖かいな、と思う。

 結局、これからも「白音さん」と呼ぶ事になっていた。

 白音“ちゃん”は子供っぽくて嫌らしい。

 そんなこだわりが子供っぽくて、また笑ってしまったけど。

 

 

 




吸血鬼って、魅惑の響きだと思った(小並感

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