とある神器持ちの日記   作:ウメ種

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お久しぶりです。
……本当に、お久しぶりです。
出版していた書籍の方も完結しましたので、戻ってきました。
き、気付いてもらえるかな……?



181(白猫日記)

 

 1月1日

 

 あけましておめでとうございます。

 なんだか、こんな事を日記に書くなんてとても新鮮な気分です。

 今日はお正月。

 姉様におせち料理の作り方を教わったり、家の皆と一緒に初詣に行ったり。

 人が多くて疲れたけど、楽しい一日でした。

 ……それに、着物姿。

 徹先輩に、綺麗だって言ってもらえたし。

 姉様やレイナーレの次だったけど。それでも、嬉しい。

 

 

 1月2日

 

 クリフォトとの戦いの最中だと分かっているけど、やっぱりお正月というのは気が緩んでしまう。

 しょうがない。

 だって、リビングにはコタツが出ているし。

 あの温かさには、どうしても逆らえない。

 姉様やロスヴァイセさんと一緒に、ずっとコタツから動けない。

 それと、新年のあいさつに沢山の人が来た。

 ヴァーリさん達や、お隣のグリゼルダさん。一緒に暮らしている八重垣さん。

 こういうのも、ご近所付き合いというのだろうか?

 賑やかな一日だった。

 みんなでコタツに入って、蜜柑やお雑煮を食べて。

 ずっと、こんな日が続けばいいと思った。

 

 

 1月3日

 

 ヴァーリさんは、徹先輩の友達なんだなあ、と思った。

 初詣を理由に家から連れ出されて、一緒に神社へお参りに行った。

 1日にも思ったけど、悪魔が神社にお参りってどうなんだろう。

 結局、朝早くから家を出て、帰ってきたのは夕方。

 お昼どころか、夕食まで奢ってもらった。

 ……姉様とレイナーレが先輩の恋人で、先輩も二人を好いている。愛しているんだって、分かっている。

 そして、同じ屋根の下。

 一緒に暮らしている私やロスヴァイセさん、オーフィスは三人にとって――そう思う事はないだろうけど、『お邪魔虫』ということも。

 でも。

 それでも。

 私だって、徹先輩が好きだ。

 好きで、ずっと一緒に居たいと思う。思ってしまう。

 ……何を言いたいかと言うと。

 ヴァーリさんにとって、姉様とレイナーレは徹先輩の恋人。

 私やロスヴァイセさん、オーフィスは家族。

 そう思われていることが……悔しい。

 

 

 1月4日

 

 京都の生八つ橋?

 あの匂いは、苦手だ。

 お土産の定番らしいけど、どうしてもあの匂いを好きになれない。

 それは姉様も同じ。

 イッセー先輩達が旅行のお土産に買ってきてくれた。

 ……お土産だから当然だけど。

 それを食べた徹先輩から、距離を取ってしまった。

 嫌われちゃったかな……ちょっと憂鬱だ。明日、謝ろう。

 

 

 1月5日

 

 徹先輩は無防備だ。

 凄く無防備で……だから、甘えてしまう。

 だって、ちゃんと恋人が居て、それを私達も知っているのに。

 それでもあんな――気の抜けた顔を見せてくるんだもの。

 コタツに入って、だらしない表情。だらしない声。

 そんなのを見せられたら。聞かせられたら。

 傍に寄りたくなる。

 触れたくなる。

 甘えたくなる。

 徹先輩は、そういう気持ちを理解していない。

 だから。

 甘えた後はこんなにも寂しいし、触れられない時間が冷たく感じてしまうのに。

 ……この気持ちは、なんて言うんだろう。

 これも、好き、なのかな?

 

 

 H月A日

 

 そういえば、徹先輩は今年が学園を卒業だ。

 いや、知っていたけど。

 最近は忙しくて忘れていた。

 それに、クリスマスとか正月とかのイベントだけじゃなくてクリフォトの問題が続いて、家で勉強する時間が無かったし。

 まあ、何を言いたいかと言うと。

 部屋で勉強する徹先輩の横顔を眺めて満足していたらしい姉様だけど、レイナーレとロスヴァイセさんに追い出されていた。

 しょうがないと思うよ?

 でもね。

 ……私に惚気ないでほしい。

 徹先輩の真面目な横顔が格好良い事くらい、知っている。

 

 

 H月B日

 

 オカ研の新部長が決まった。アーシア先輩だ。

 新学期の部活初めに徹先輩が部室に顔を出して、お祝いの言葉を言っていた。

 お茶を飲んだらすぐに帰っちゃったけど。

 家でも話せるけど、家以外の場所でももっと話したいと思うのは贅沢なのかな?

 ……多分、この気持ちはイッセー先輩とイリナ先輩の所為だろう。

 だって、クリスマスからずっと。ベタベタベタベタとくっついているし。

 というかイリナ先輩がイッセー先輩に甘えている。

 そして、部長……元部長と現部長もそれに嫉妬してもどこか楽しそうだし。

 ああいうのを痴話喧嘩と言うんだろう。

 悪魔や天使の喧嘩だから、他より少しだけ物騒だけど。

 そう考えると、徹先輩の周りは平和だな、と思った。

 

 

 H月C日

 

 ゼノヴィア先輩が、生徒会に立候補するらしい。

 生徒会の役員じゃなくて、会長として。

 ……イッセー先輩の影響でエッチなゲームとかに染まっているけど、大丈夫なのかな。

 そう言うと、俺の所為じゃないとイッセー先輩は言っていた。

 私が徹先輩の家に住むようになってから、あの家の中はどうなっているのだろう。

 いや、私が住んでいた時からイッセー先輩はエッチな本や玩具で囲まれていたけど。

 つまり、あまり変わっていないという事か。

 

 

 H月D日

 

 徹先輩のああいう所は、ズルいと思う。

 今日、家にミカエル様達が来た。

 年末に天界で騒動に巻き込んでしまった事。

 それと、教会の方でクーデターが起きた事を教えに来た。

 姉様が言うには、また徹先輩を巻き込ませるつもりなのかも、という事だった。

 だとしたら事前に教えるのも変な話なので、考え過ぎかも、とも言っていた。

 まだ年が明けたばかりなのに、また徹先輩の周りは慌ただしくなっている。

 ただ、徹先輩の話だと教会――天界関係で、悪魔の私達が巻き込まれないように教えてくれたのでは、と。

 本当にそうかな、と思うけど。

 でも、そうやって人を信用できるのは徹先輩の良い所だと思う。

 それに……『悪魔』の私を心配してくれている。

 それが、嬉しい。

 

 

 H月E日

 

 今日は、オーフィスが学園へ遊びに来た。

 アザゼル先生が市販のお薬が切れたと言っていたら、ロスヴァイセさんが新しいお薬を用意していた。

 やっぱり、学園の教師をして、『D×D』関係で色んな所に行って、イッセー先輩たちの訓練の様子を見て。

 ……忙しくて大変なんだな、と思った。

 でも、アーシア先輩に癒されたり、徹先輩に治してもらったりしているし、体力的にはまだまだ大丈夫なんだろうな。

 ギャー君も徹先輩に似た『時間操作』系の『神器』を持っているし、似たような事が出来るのかな?

 聞いたら、練習中らしい。

 

 

 H月F日

 

 ついこの前も思ったけど、やっぱり徹先輩は無防備だ。

 どれくらい無防備かと言うと、お風呂上がりの姿を見せてくるくらい無防備だ。

 濡れた髪とか、寝間着から覗く肌とか、火照った薫りとか。

 ……私は姉様と同じ猫趙だから、匂いには敏感だ。

 まあ、つまり。

 溜息しか出ないけど、姉様やレイナーレの前で徹先輩に抱き付いてしまった。

 しかも、そんな私を二人は怒らなかった。

 それが当然だと、言ってくれた。

 徹先輩もズルいけど、姉様も、レイナーレもズルい。

 私、もっと甘えたくなっちゃってる。

 

 

 H月G日

 

 姉様とレイナーレが、そわそわしていた。

 うん。

 きっと、そういうことなんだろう。

 ……ああいうの、凄く分かり易い。

 もしかしたら、普段の私もあんな風に徹先輩の前だとソワソワしているのかな?

 そう考えると、なんだか物凄く恥ずかしい気持ちになった。

 恋は盲目とか、よく本とかで見るけど。

 きっと、ああいうのを言うんだろうなあ……私もだけど。

 

 

 H月H日

 

 『D×D』の訓練に参加していたら、ヴァーリさんから話し掛けられた。

 最近はよく、顔を合わせると向こうから声を掛けてくれているような気がする。

 昔は少し怖いと思っていたけど、表情も凄く柔らかくなったように思う。

 聞いてくる内容も、徹先輩や家の事、周りで何か面倒な事が起きていないか。

 あとは、ありきたりな世間話。

 もっと無口で、周りの事はあまり気にしない人だと、心のどこかで思っていた。

 なんだか、とても悪い事をしていた気分になったので謝ったら、笑って許してくれた。

 ……その笑顔がどこか徹先輩に似ていたから、相談してしまった。

 私の事。

 徹先輩が好きで、でも徹先輩は姉様とレイナーレが好きで。

 私のこの気持ちは、どうしたらいいんだろう、って。

 ヴァーリさんの答えは単純だった。

 徹先輩なら、きっと、正面から話を聞いて、答えてくれる。

 それがどんな答えでも、きっと『私』を見ながら応えてくれる。

 やっぱり、ヴァーリさんは徹先輩の友達なんだな、って思った。

 

 

 H月I日

 

 昨日、タンニーン様が家に来たらしい。

 先日は天使の長、昨日は竜王。

 ……アザゼル先生が飴を食べるように胃薬を食べている姿が印象的だった。

 オカ研はゼノヴィア先輩の選挙活動で忙しいし。

 教会の方ではクーデターが起きているし。……というか、クーデターの首謀者が来るし。

 なんだか年が明けたら、急に忙しくなったような気がする。

 いや、クーデターだって大事だと分かっているけど。

 それでも、徹先輩の傍に居ると……そんな大事に慣れている自分が居る。

 イッセー先輩に「落ち着いたね」って言われたけど、なんだか素直に喜べなかった。

 

 

 H月J日

 

 ……モヤモヤします。凄く、胸がもやもやしています。

 だって、昨日の夜? 今日の朝?

 オーフィスが徹先輩のベッドに潜り込んでいた。

 それは以前にもあった事だけど、今は……私は、私の気持ちを自覚している。

 徹先輩が好きで、大好きだ。

 だから、モヤモヤしてしまう。

 羨ましいと思っても、恥ずかしいと思って行動に移せない。

 そんな私を見て笑っている姉様とレイナーレの表情を見ると、もっとモヤモヤしてしまう。

 ――好きって、何だろう。

 独り占めしたい。自分だけを見てほしい。

 そう思うけど、それだけじゃない。

 分からない。

 けど、恥ずかしくて……誰にも「好きってどんな気持ち?」なんて聞けない。

 

 H月K日

 

 アザゼル先生から徹先輩が荒事に巻き込まれないよう、注意するように言われた。

 言われたというか、釘を刺された

 レイナーレも同じような事を言われたらしい。

 夕食の後、教えてくれた。

 姉様の話だと、どうやら『D×D』は徹先輩を必要以上に深く巻き込まないように行動するみたいらしい。

 変に情報を隠したら周りから漏れて巻き込んでしまう。

 なら、適度に情報を与えて問題から遠ざけようとしているのだとか。

 徹先輩には、荒事になんて巻き込まれずに、平穏を過ごしてほしい。

 また倒れた姿なんて、見たくない。

 姉様達も言っていたけど、今まで無事だったから今度も無事、なんて甘い考えは持てない。

 だって、徹先輩だから。

 好きな人だから。

 ……好きな人が倒れた姿なんて、見たくない。

 だから早く。

 一日でも、一時間でも早く。

 問題が片付くと良いな、って。

 

 

 H月L日

 

 今日もまた、オーフィスがオカ研に遊びに来た。

 というよりも、徹先輩を迎えに来た。

 スコルとハティ、それに八岐大蛇の散歩をしながら。

 一緒に帰っていったから、きっとそう。

 散歩と言っていたけど、きっと迎えに来たんだって思う。

 オーフィスも、徹先輩が好きなのかな?

 『無限の龍神』。

 私には想像もできない存在だけど……やっぱりオーフィスも女の子なのかな?

 『D×D』の訓練に来たヴァーリさんに聞いてみたら、そうなのかもしれないと言われた。

 やっぱりそうなのかな……。

 こういうの、誰に相談したらいいんだろう。

 いや、相談するような事でもない。オーフィスに聞けばいいだけだ。

 でも……こう。

 聞いていいのかな? とか。

 恥ずかしいとか。

 もしオーフィスが徹先輩を『好き』って言ったらとか。

 そんな事を考えると、眠気も無くなってしまう。

 もう日付が変わってしまっているのに。

 全然眠れない。

 

 




間が空いてしまい、本当にすみませんorz
そして、投稿に気付いて下さった方。読んでくださった方。
本当にありがとうございます。
また、よろしくお願いします。

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