□月B日
今日は、買い出しに出かけた時に懐かしい顔に会った。
あまり会いたい類の顔ではなかったが……。
フリード・セルゼン。元部下だった男だ。
私を探していたわけではないようだが、まだこの町に居たのか。
しかも、物騒な聖剣まで持って。
私が生きている事に驚いていたが、まぁ、それが普通の反応か。
徹様が居なければ、私はリアス・グレモリーによって滅ぼされていたのだから。
しかしあの男、どうするべきか…。
……徹様の害にならなければいいが。
それと、徹様のお部屋を掃除している時に、球技大会のプリントを見つけた。
……見に行ったら、怒られるだろうか?
□月D日
今日は珍しく、徹様がアーシアと一緒にご帰宅された。
どうやら、今日も相談というか、愚痴の様だったが、この子が訪ねて来るのは正直嬉しい。
よく考えると、私の話し相手は徹様とアーシアが主だ。近所付き合いがある訳でもないし。
今日は、以前から考えていたお菓子の作り方を聞いてみた。
アーシアはお菓子作りも得意との事で、教えてもらう事になった。
何でも出来るな、と褒めると面白いくらいに照れていた。こういう可愛い所が、実にアーシアらしい。
教えてもらった通りに作ると、形が歪だったり、若干焦げたりしたクッキーが出来上がった。
……まぁ、初めてにしては上出来だと思う。食べれたし。
アーシアは数をこなせば大丈夫と言ってくれたが、正直不安だ。
しかも、その出来の悪いクッキーを徹様に出されるし…最近、容赦がないなアーシア…。
良く出来てる、とは言ってもらえたが、出来は自分でも判っているだけに、素直に喜べない。
徹様に美味しい料理やお菓子を食べてもらえるのは、まだまだ遠そうだ。
その後、一緒に夕食も作った。今日は泊まっていくとは、その時に聞いた。
徹様も特に反対されず、アーシアがとても喜んでいた。この子の笑顔を見てるだけで明るい気持ちになれる。
……アーシアが聖女と呼ばれていた理由も、今ならよく判る。
先程まで、頬を膨らませて兵藤君の愚痴を言う姿は、年相応のものだったが。
でも、兵藤君との裸の付き合いというのは、この子にはまだ早い気がする。
それとなく窘めておいた。
今日は、随分と遅くまで起きている……でも、楽しい時間だった。
明日も――いや、もう今日か。早く起きないといけないのだし、もう寝よう…。
□月E日
今日は、アーシアと一緒に朝食を作った。
というよりも、アーシアが作ってくれた朝食を食べた、が正しい。
結構な回数調理をしているが、やはりアーシアには遠く及ばない。
姫島朱乃やリアス・グレモリー、グレイフィア様にも、だが。
やはり私には、料理の才能は無いのだろう。
だが、人並みの食事くらいは用意できるようになりたい。
やはり、それくらいは諦めずに頑張ろうと思う。
□月F日
……フリード・セルゼンがエクソシスト狩りをしている。
止めるべきだろうか?
だが、私の力で聖剣を持つあの男を止める事が出来るかどうか…。
しかし、放っておくわけにもいかない。
あの男の狂気はよく判っている。
必ず、徹様の害になる。
それはそうと、先ほど、徹様からペットは好きか、と聞かれた。
私はどちらかというと、犬が好きだ。
優しくするとすり寄ってくる、あの可愛さが堪らない。
それに、大きな犬は抱き締めると暖かいし。
□月G日
日中、フリード・セルゼンを探してみたが見つからなかった。
まぁ、エクソシスト狩りをして居るのに死体を隠さないのだから、いずれまた会えると思うが…。
しかし、エクソシストを殺されてもニュースにならない所を見ると、ヴァチカンでも動いているのかもしれない。
面倒にならなければいいが…。
法王庁は悪魔の敵だが、堕天使の味方という訳でもない。
まぁ、ヴァチカンの犬がフリード・セルゼンを処理してくれるのが一番楽なのだが。
今日は、徹様から猫は好きか、と聞かれた。
猫も嫌いじゃない。
でも、気まま過ぎて飼い主の話を聞かない所は、あまり好きではない。
……もしかしたら、ペットを飼おうとされているのだろうか?
だとしたら嬉しいが、まだ確かめた訳でもない。
過度の期待はしないようにしておこう。
□月H日
何だ、あの男は。
フリード・セルゼン。あの男、あそこまで聖剣を使いこなせる素質があったのか、と驚くしかない。
私の槍を簡単に斬り伏せられた時は、正直死を覚悟したほどだ。
しかも、途中で止めに入ってきたのはバルパー・ガリレイ。
「皆殺しの大司教」の名で知られる、元教会の司教。知っているのは顔と名前、そしてその悪行程度だが。
この二人が揃って、この町で何を成そうとしているのだろうか?
一応、別れ際には手を出さなければ何もしない、とは言っていたが。
……徹様と私を巻き込まなければいいが。
徹様は平穏を、普通を望まれている。
こんなくだらない事で、その普通を壊したくない。
やはり、もう一度接触しよう。
最悪、リアス・グレモリーに助力を仰ぐことになるかもしれないが……。
□月I日
フリード・セルゼンを探している途中、駒王学園に立ち寄った。
球技大会…徹様は楽しまれているだろうか?
徹様の普通。徹様の日常。
あの方が望む世界を、壊したくないと思う。
しかし、徹様……その、猫魈はどうかとおもいます。
フリード・セルゼンを諦め買い物をして家に帰ると、家の前で徹様が綺麗な黒猫と遊んでおられた。
それはいい。微笑ましい事だ。素直にそう言える。
けど、その相手が……。
猫魈。力を得た猫の悪魔。日本では妖怪というのだったか。
もしかしたら、徹様が飼おうとしているペットは、この猫なのだろうか?
いや、悪くは無い。猫魈は知能も高いし、私も知らない術に精通しているのかもしれない。
でも……でも、だ。
その…猫魈は人の形も取れるわけで……。
徹様が愛でていた猫は、見た限り――雌だった。股を開いていたし。股を開くほど従順になっていた、とも言えるが。
徹様ほどの方が判っておられないはずがない。
……その、徹様はそういう趣味があられるのだろうか?
だから私には手を出されず、ペットを飼おうとされているのか…いや、そんな事は無いと思うが。
先ほどから、そればかりを考えてしまう自分が情けない。
だが、どうしても気になってしまう。
フリード・セルゼンの件もあるというのに、悩みがまた増えてしまった。
でも、こういう馬鹿な悩みも悪くないのかもしれない。
堕天使や悪魔、聖剣なんて関係無く――こんな下らない事に頭を悩ませる。
そういう平穏も、悪くない。
私の羽も鳥のように見えるし、見せたら喜ばれるだろうか?
それともやはり、獣耳、というのが良いのだろうか?
今度、アーシアに相談してみよう。
□月J日
あいにくの雨だったが、夕食の材料がなかったので買い出しに行って、帰ってくると、徹様が帰って来られていた。
それは別におかしなことではないのだが、いつ帰ってきたのか知っているか、と聞かれた。
あれは、どういう意味だったのだろうか?
言葉通りに受け取るなら、自分でどうやって帰ってきたか判らない、という事。
……考え過ぎなのだとは思う。だが、不安もある。
どうして考えなかったのだろうか?
徹様は人間だ。不死不滅とはいえ、それは『神器』の恩恵もあるのだと思う。
あれほどに強力な『神器』だ。副作用が無いはずがないのだ。
□月K日
徹様は、今日もいつも通り学園へ行かれた。
いつも通り、だ。
私の不安など思い過ごしなのだと、そう言われるかのように。
きっとそうなのだと思う。その通りだ。
――私はたった一人で、見当違いの事で悩んでいるのだ。
そうであってほしい。
夕食の後、ごめん、と謝られた。
それは、どういう意味なのだろう…。
□月L日
今日、徹様がケーキを買ってきてくださった。
私が最近落ち込んでいるから、と。
――徹様は、何も悪くないのに。私が勝手に悩んでいるだけなのに。
だから、明日からは私もいつも通りに戻ろう。
徹様に心配をかけない様に、普通に毎日を送れるように。
私を救ってくれたこの人が、望む事を、望む間。
今までのみんなの主人公の評価
ドS いじめっ子 ロリコン 不死 不滅 魔王と同格 感情の機微に聡い 敵には容赦無し
優しい ドラゴンが戦いを避けるほど強い 時間の支配者 獣娘好き
……まぁ、こんなところか