とある神器持ちの日記   作:ウメ種

31 / 195
重要なイベントがあったような気がしないでもない


30(堕天使日記)

 □月M日

 

 今日、おそらくフリード・セルゼンらを追っているであろう、ヴァチカンの犬を見掛けた。

 こちらの事は気付かなかっただろうが、あれほど濃い光の気配を出していては、少し慣れた者なら、すぐに感じる事が出来るだろう。

 しかもあの感じは、フリード・セルゼンから感じたものと同質。聖剣・エクスカリバー。

 いくつかの破片に砕けた、というのは聞いていたが、そのうちの三つがこの町に集まっているのか。

 ……本当に、面倒だ。

 兵藤君の『神滅具』、前回のフェニックスとの一戦。

 この町には、何か良くないモノが集まってしまうような何かがあるのだろうか?

 ……そう考えると、その一端が徹様に有りそうな気がしてしまうが。

 力ある者は、争いを呼び込んでしまう。

 難儀なものだ。徹様の望む平穏は、遠そうだな。

 諦めるつもりはないが。

 その為には、フリード・セルゼンとバルパー・ガリレイ。この二人をどうにかしないといけない。

 

 

 

 □月N日

 

 今日、バルパー・ガリレイと接触する事が出来た。

 というよりも、向こうから接触してきた。

 私に『神の子を見張る者』に戻ってくるように、と。

 一応その場で断っては変に刺激するかと思い、保留にしたが。

 しかし、そう言われたが、不思議とその事をどうでもよく考えている。

 『神の子を見張る者』……あそこに未練がない。

 あそこで手に入れられるモノに、興味が無い。

 戦うだけの生き方を、私は受け入れる事が出来ない。

 ……以前、徹様に救われる前は、その生き方しかなかったのに。

 今は、その生き方以外を探している。求めている。

 下手な料理を頑張って、苦手な家事をこなす。

 その生き方を、悪くないと……好きになりかけている。

 ああ、本当は、ここであの二人に付いて行き、『神の子を見張る者』に戻るべきなのかもしれない。

 堕天使である私の居場所は、『神の子を見張る者』にあるのかもしれない。

 ……でも、私はここに居たい。

 戦うだけの毎日。生き、他者を蹴落とす事だけを考える毎日。……その毎日が、どれだけ疲れるか知っている。その生き方が、どれだけ大切な事を見落とすか知っている。

 だから、私はここに居たい。

 大切な物を見付ける事が出来る、徹様の傍に。

 

 

 

 

 

 

 ――これは、書いていて少し恥ずかしいな。

 でも、私の居場所は、『神の子を見張る者』ではなく、ここにあるのだと信じたい。

 

 

 

 □月O日

 

 気分次第で料理の腕が上達したら、世の中練習なんてしなくなるとは思う。

 ……やはり、もう少し料理が上手になりたい。

 できれば、普通の見た目、普通の味程度に。

 何が悪いのだろうか? 教えてもらった通りにしているつもりなのだが…。

 もっと大雑把に、ざっくりと作れる料理だと楽なのに。

 包丁を持って、全部を同じ大きさに切るのは神経を使う。

 私の性格的に、その辺りが合っていないんだと思う。

 ……言い訳か。頑張ろう。

 

 

 

 □月P日

 

 兵藤君達が、例の聖剣使いの二人と一緒に行動していた。

 ……悪魔が聖剣使いと一緒に行動するなんて、不思議な光景だ。

 なんとなく、兵藤君って普通の悪魔じゃないような気がする。

 まぁ、赤龍帝を宿しているだけでも、十分普通じゃないが。

 兵藤君に『戦車』『騎士』、それに聖剣使いの二人……それと、知らない顔が一人。

 気配からして、聖剣使い以外は悪魔のはずだが、どうしてそんなメンバーで行動していたのだろう?

 見知った黒猫を見掛けて視線を外した隙に見失ってしまったが。

 しかしあの黒猫、徹様とどういう関係なのだろうか?

 聞いてもはぐらかされたが……。

 あれだけ撫でられ、身体を開いていたのに、赤の他人は無いだろう。

 気になる……。

 まぁ、徹様があの猫を飼うと言われたら、私に反対する事なんて出来ないのだが…。

 ……やはり、ペット、というのが良いのだろうか?

 

 

 

 □月Q日

 

 夕食の買い出しの途中で徹様と会ったので、一緒に買い物をした。

 徹様は野菜があまり得意ではなくて、肉や魚が好きとの事。

 ……結構、好き嫌いが多いんだと知った。

 そういう所は、結構可愛く思える。……でも、出来れば何でも食べてほしい。まぁ、今は料理を作る事で精一杯で、健康や栄養は考えて献立を立てている訳ではないが。

 今度、料理のコツだけじゃなく、栄養のバランスのようなものもアーシアに聞こう。

 それはそうと、買い物を終わらせて帰ろうとすると、また例の黒猫を見掛けた。

 付いて来いと言うので怪しんだが、徹様が付いて行かれるので私も続いた。

 ……素性の知れない猫なのだから、もう少し怪しむべきだとも思うが…まぁ、徹様なら大丈夫か。

 黒猫に案内された先には、リアス・グレモリーとソーナ・シトリーにお尻を叩かれている兵藤君と、どこかで見た悪魔が居た。

 どういう状況かは判らないが、とりあえず、白昼堂々とするプレイではないと思う。少しは恥じらいを覚えるべきだ、リアス・グレモリー。

 ソーナ・シトリーは徹様に慌てて弁解していたが。

 ……それはそれで、なんだか面白くなかった。

 というか、徹様ってシトリー家とも親交があるのかと、改めて驚かされた。まぁ、魔王レヴィアタン…セラフォルーとも対等に話していたし、不思議ではないか。

 その後は、ソーナ・シトリーの弁解を聞き流しながら、徹様と一緒に家に帰った。

 やはり、昼間からSM紛いのスパンキングはどうかと……徹様も、若干引いていたような気がする。

 家に帰ると、徹様から家に誰か来たか、と聞かれた。

 誰か侵入した形跡はなかったが……何かあったのだろうか?

 聞いても答えてはくれなかったが。

 

 

 

 □月R日

 

 結局、私は徹様にとっては足手まといでしかないのだと思い知らされた。

 古から生きる堕天使、コカビエル様――まぁ、もうコカビエルで良いのか。結局、『神の子を見張る者』の件も嘘だったわけだし。

 夕食後、のんびりしていたら、コカビエルが家に来た。書いていて思うが、本当にいきなりで、反応も抵抗も出来なかった……今思うと、よく生きていた、と思う。徹様と違い、私には何の価値も無いのだから。

 話の内容としては、簡潔に言うと「仲間になれ」という事だった。徹様は、それを聞いても別段反応を示さず、ただただコカビエルを見据えておられた。応える気が無いというのが、誰が見ても判る表情だった。

 『神の子を見張る者』の幹部として徹様を取り立てるので、悪魔を討つ手伝いをしろという事だが、それでも徹様の表情は動かなかった。

 ……一方的で、高圧的な態度には徹様も表情を硬くされていた。返事は駒王学園で、と言い残して帰っていったが。

 その後、リアス・グレモリーとその配下である『戦車』が来て、助力を乞われた。

 コカビエルがバルパー・ガリレイやフリード・セルゼンを使って戦争を始める、というのだ。

 ……戦争、だ。平穏とは程遠い、戦争だ。

 その時の徹様は、まるで信じられない事を聞いた、と言った感じの表情だったと思う。

 驚いておられた、本当に……それはそうだろう。普通と平穏を望まれるのに、いきなり戦争だと…私でも信じられない。

 この町でその発言。狙いはおそらく、リアス・グレモリーとソーナ・シトリー。

 魔王の妹を傷付け――殺したとなったら、堕天使と悪魔の戦争が起こる。

 天使がその間何もしないという事も無いだろう。そうなったら、三勢力の大戦争だ。きっとそれは、徹様の望まれる所ではない。

 説明を受けたのは良いが、返事をする前に連れて行くのはどうかと思うが…。

 まぁ、徹様がリアス・グレモリーを見捨てるはずもないか。

 この人は、優しい。傷付け、殺した私すら救ってしまうほどに。

 もしかしたら、学園でもあんな感じなのだろうか? なんとなくだがそう思う。簡単に予想が出来るし。

 リアス・グレモリーに巻き込まれるのを、どこかで楽しんでるのかもしれない。

 

 

 

 学園での戦闘は、熾烈を極めた。

 というよりも、私と徹様は参加する余裕がなかった。私は単純に弱いし、徹様は戦闘が苦手なのだ。……実際はどうだか判らないが。とにかく、私達は離れた場所から戦況を見ているしかなかった。

 しかし、フェニックスと戦った時もそうだったけど、兵藤君達、短期間で強くなり過ぎじゃないだろうか…。ケルベロス2体を圧倒するとか。

 欠片4つ分の聖剣も砕くし、あの『騎士』なんか、『禁手』に至るし……。

 だが、その兵藤君達でも、コカビエルの相手は難しかった。というよりも、圧倒的だった。同じ堕天使でも、ここまで力量差が出るものなのか…。

 赤龍帝の倍化の能力を受けたリアス・グレモリーの『滅びの力』でも打倒できないほどだ。

 純粋に、強い。能力や、『神器』の恩恵ではない。永く生きた、堕天使の地力。それが、コカビエルの強さ。

 いつか、私もあの強さに至れるのだろうか? そうすれば、少しでも徹様の役に立てるだろうか?

 その後、兵藤君達の相手を終えたコカビエルの次の標的は私達――徹様だった。私など眼中になかった。

 魔王ルシファーとレヴィアタンに認められた徹様。

 魔王の妹と、魔王に認められる徹様。ソレを傷付け、魔王を本気にさせる。それが、コカビエルの狙いだったようだ。

 最初の一撃は、私が徹様を庇う事で、何とか避けた。咄嗟だった、と思う。何かを考えて動いたわけじゃなかった。多分、守りたい、と思ったんだと思う。

 正直、その時の事は良く覚えていない。痛みも感じられないくらいの傷を負った、というのだけは覚えている。その後の事は、記憶に無い。気絶してしまったんだと……。情けない。私は最後まで、徹様の足を引っ張ってしまったのだと思うと、本当に泣きそうになってしまう。

 気が付くと、戦いは終わっていた。気を失っていたのは少しの間だけだったようだけど、徹様に心配されてしまった。

 私の傷は、致命的なはずだ。少なくとも、五体満足ではいられなくなるほどの。いや、死に至るほどの傷だったはずだ。

 だというのに、私は傷一つなく生きている。堕天使幹部の一撃を受けて、生き残っている。…また、徹様に助けてもらったのだ。

 ……私は、本当に足手まといだ。

 

 

 

 □月S日

 

 徹様が、体調を崩された。

 風邪だと言われたが、明らかに違う。タイミング的にも、昨夜の戦い……おそらく、『神器』の副作用だ。

 アーシアに助けを求め『聖母の微笑』を使ってもらったが、治る気配は無い。

 そもそも、『聖母の微笑』は傷を癒す『神器』だ。それで治せないとなると、体力的な問題か、それとも精神的なものか…。

 熱が下がらないし、食事も満足に食べる事が出来ない……どうすればいいのだろうか…。

 

 

 

 □月T日

 

 徹様の体調が戻らない。

 少し話す事は出来るようになったが、それでも体調は最悪と言える状態が続いている。食事も難しく、食べた物のほとんどを吐き出される。体調が戻らず、栄養も取れないのでは…。

 風邪だから心配するな、と徹様は言われるが……。

 今日も、アーシアが『聖母の微笑』を使ってくれたが、やはり効果は薄い。

 それどころか、アーシアの顔色も、あまり良くない。

 これ以上は、この子も倒れてしまうだろう。明日からは、もう頼れない。どうにかしないと…。

 

 

 

 □月U日

 

 いつぞやの黒猫が、薬を持ってきた。人型で。

 なんでも、妹を助けてくれたお礼だとか。

 ……よく判らないが、お礼を言ってその薬を徹様に飲んでもらった。怪しくもあったが、藁にも縋りたい気持ち……不安だったのだ。私一人では、何もできなかったのだから。

 自力で飲む事が出来なかったので、口移しで飲んでもらう事になった。心苦しい。私などが口付けをして良かっただろうか?

 数時間もすると落ち着かれ、夕食時には、随分と呼吸も和らいでいた。

 黒猫――黒歌が言うには、貴重な薬草を何種類も使ったのだとか。頭が上がらない。ちなみに、夕食は私が食べさせることになった。熱の所為もあるのだろうが、顔が少し赤かった。実は、結構初心なのかもしれない。すごい方なのに、そういう所は可愛いな、と思う。

 食事の後は、また眠られた。薬は飲んだが、まだ体調は万全には程遠いのだ。まぁ、食事を食べれる程度には回復したので、あとは大丈夫だと黒歌は言っていた。今は、その言葉を信じるしかない。

 その黒歌は、徹様に死なないで、と言ってキスして帰っていった。

 いったい、どういう関係なのだろうか? 気になる。凄く。

 

 

 

 □月α日

 

 黒歌の薬を飲んで数日、徹様の体調も随分と落ち着かれた。

 明日からは学園に復帰されるそうだ。私としては、もうしばらく休んでほしい。

 だが、これ以上休むと成績に響くらしい。学生とは大変だな、と思う。

 無理はしないと言っておられたが、どこまで信用できるか…まぁ、無理をさせたのは私なのだが。

 様子を見に来たアーシアから聞いてしまった。

 徹様が無理をしたのは、私がコカビエルから傷つけられたからだ、と。

 私のために怒ってくれたのだ、と。

 ……それが本当かは判らない。徹様に確認したわけではないし、確認できる内容でもない。そんなことを聞くなど、恥ずかしすぎる。

 だから、無事で良かったと心から思おう。そして、これからは無理や無茶をしなくて済むように強くなりたい。

 徹様の足を引っ張らないように。徹様と並んで戦えるように。徹様を、守れるように。

 

 

 

 □月V日

 

 徹様が学園に行っている間、黒歌が遊びに来た。

 薬草のお礼を、と思ったが別に良いとの事。妹を助けてくれたお礼と言っていたが、妹とは誰だろうか?

 コカビエルから助けてもらったとの事だったので、もしかしたらリアス・グレモリーかソーナ・シトリーのどちらかの配下悪魔なのかもしれない。教えてくれなかったが。それと、名前も伏せてほしいと言っていた。訳有りのようだが、恩人の頼みを断る訳にもいかないので了承した。

 また体調を崩した時のために、数日分の薬を置いていってくれた。

 どうしてここまでしてくれるのだろう? 妹を助けたからと言っても、少し度が過ぎているような気がする。まぁ、私の主観だが。黒歌は、徹様が気に入ったから、と言っていた。

 ……その時の表情は、あまり語りたくない。

 

 

 

 □月W日

 

 縁側で、徹様が黒歌と遊んでおられた。というか、マタタビを……。

 いいのだろうか……?

 まぁ、黒歌が拒絶しないなら…いいのだろう。

 そういう事だ。そういう事にしておく。

 ……私がどうこう言えるような立場でもないのだし。

 微笑ましい光景なのだろうが、あまり面白くない。

 人型の黒歌は美人だったし、猫耳と尻尾もあった。……やはり、ああいうのが良いのだろうか?

 




黒猫さんイイヒトすぎる…
まぁ、ご都合主義かもしれんがねw

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。