果たして、ぐんちゃんのパートナーは誰でしょうね?
それではどうぞ、お納めください。
気が付くと私は、広い荒野に倒れていた。
景色に見覚えは全くなく、何故ここにいるのかも分からない。
「ここ・・・どこかしら・・・私は・・・確か、あの時・・・」
思い出すのは自分の最後。
乃木さんを庇って死んだ。そう、死んだんだ。
なのに・・・
「傷・・・治ってる・・・」
まるで、そんなものは元よりなかったかのように・・・。
「・・・とにかく、探索しよう」
周囲に人影はない。食べられそうな物も見当たらない。
なら、自分で探すしかない。
「土居さんなら、そう言うと思うし・・・」
『タマに任せタマえ!』なんて言いながら、嬉々として探索に向かう彼女の姿を夢想して、思わず笑みがこぼれる。
しかし、彼女の―――彼女たちの最期を思い出し、沈鬱な気持ちになる。
「(もっと・・・話したりすれば良かった・・・・・・あんなことになるなんて・・・・・・)」
土居さんと伊予島さんは、バーテックスとの戦いで戦死した。
その後、私は自分の心の声に負けて、乃木さんを襲った。
それが切っ掛けなのか、私は勇者に変身できなくなり、そんな私を、乃木さんは守ろうとしてくれた。
そこで私は、漸く気付いた。本当に大事なものに。私が欲していたものは、既に手の届く場所にあったことに・・・。
「(ここがどういう場所なのかは分からない・・・けど・・・!)」
きっとこれは私に与えられた試練のようなものなんだ、と私は予想していた。
もう私は間違わない。
もしかしたら、この世界のどこかに、土居さんと伊予島さんがいるかもしれない。確証は無いが、予感はあった。
だから、二人に会えたら、今度はちゃんと向き合おうと思う。
私たちは、仲間なのだから・・・
―――――――――――†――――――――――
意を決し、歩き始めて少ししたところで、人影を見つけた。しかも複数。
集落が近くにあるかもしれない、と思いその人影を追いかけると―――
「・・・・・・・・・なに、あれ?」
緑色の小人が複数、なにかを取り囲んでいた。
先程見た人影は、どうやらあの小人のものらしい。
「(・・・・・・・・・・・・行こう)」
こういう場合、関わるとろくな目に合わないと私の感が告げている。
だから無視して、なるべく気付かれないようにこっそりと、その場を離れようとした。
その小人たちが囲んでいるものがなんなのか、気付くまでは。
「っ!!!!」
それを知覚した瞬間、私は真っ直ぐに小人の集団に向かって走っていた。
「ん?」
小人の一人が私に気付いたが、構わず突っ込む。
そのまま小人を文字通り蹴散らし、その中心でうずくまっている黒い生き物を抱き抱える。
「いってぇ・・・あ!おい!てめぇ!」
小人に襲われる前にその場から走り去る。
腕の中には痛みにうめく、黒い謎の生物。
何故、小人たちがこの生き物を攻撃していたのかは分からない。
でも―――
「(あのまま放っておくなんて、できない・・・!)」
なぜか私は、この生き物を助けなくてはならない、と思っていた。
―――――――――――†――――――――――
しばらく走ると、ちょっとした横穴を見つけた。
ここならあの小人たちを撒けるかもしれない。
そう思い、穴の中に飛び込む。
果たして、それは正解だったようだ。
小人たちは何処かへと走り去って行った。
周囲を見回し、危機が去ったことを確認すると、いつの間にかあの黒い生き物が起きていた。
「あら、もう起きて平気なの?」
「・・・なんでオイラを助けた」
驚いた。まさかこの子もしゃべるとは・・・。
「・・・・・・助けた理由・・・ね。なんでかしら・・・」
「はあ?」
「逆に聞くけど、どうして襲われていたの?あなた、何かした?」
「・・・・・・・・・・・・別に」
そういって彼(性別があるのかさえ不明だが)は口を閉ざしてしまった。
その後しばらく私とこの子は、この横穴を拠点に探索していた。
運良く水場を見つけられたので、そこに生えているキノコや木の実(木になっているのではない、生えているのだ)を取って、二人で分けあった。
そうやって日々を過ごすうちに、ぽつぽつと、彼は自分のことを話してくれた。
「オイラはインプモン。捨てデジモンだよ」
「捨てデジモン?」
「テイマーに捨てられたのさ・・・・・・『弱いから』って理由で」
テイマー・・・確か、猛獣使いとかを指して呼ぶ単語だったか。
「・・・・・・ひどい人もいたものね」
「腹へって食い物探して、やっと見つけたと思ったら、ゴブリモンの巣でさ・・・・・・」
「それで、襲われた・・・と」
小人―――ゴブリモンに攻撃されていた理由は分かった。
どうやらこの子―――インプモンは、相当つらい思いをしてきたようだった。
「これから、どうするつもり・・・?」
「さあな。オイラはもう、ニンゲンなんてゴメンだ。ひとりでなんとか生きていくさ」
「・・・・・・・・・そう」
インプモンは口ではそう言うが、足が少し震えている。
危うく死にかけたのだから、無理もない。
そんな彼を、私はどうしてか、放っておけなかった。
「ねえ、インプモン。私、この辺りのこと、全然詳しくないの。少しの間でいいわ。案内してくれないかしら?」
「はあ?お前オイラの話聞いてたか?オイラはもうニンゲンとは関わりたくないの!」
予想通り、反発してきた。だからここは恩を着せることにする。
「あら、あなたを助けたのは誰だったかしら」
「ぐっ・・・・・・し、しらねえよ!」
あくまでしらを切るインプモン。ここは一旦・・・
「そう、じゃあ仕方ないわね。ここであなたとは、お別れね」
「えっ・・・」
「また会いましょう、インプモン。最も、会えたらの話だけど」
そういって横穴から出ようとしたら・・・
「ちょ・・・ちょっと待て!」
ほら、予想通り。
「何かしら」
「お前ひとりで行くのか?」
「そうよ」
「野良のデジモンに襲われたらどうすんだよ!」
「その時は、なんとかして逃げるわ」
「・・・・・・・・・ったく!しょうがねぇなあ!オイラがお前を近くの町まで、案内してやるよ」
「あら、本当に?さっきまで嫌がっていたのに、どういう風の吹きまわしかしら?」
「な、なんだっていいだろ!ほら、行くぞ」
そういって歩きだすインプモンを微笑ましく思いながら、どうしてこんなにも彼を気にかけるのか、なんとなく分かった気がした。
彼は、昔の私に少し似ている気がする。
高島さんたちに会う前の私。産まれた時に祝福され、その後忌み嫌われた、あの頃の私。
「(それなら、私と同じような道を歩まないように、私が視ていてあげないと・・・)」
「なにやってんだよ~。早く行くぞ~。・・・えっと」
「郡千景よ。よろしく、インプモン」
「ん・・・チカゲな。短い間だろうけど、まあ、その・・・・・・よろしく」
インプモンと握手を交わし、私たちは荒野を歩き出した。
この数ヶ月後、私とインプモンは『無双不敗のコンビ』として数々の伝説を打ち立てることになる。
という訳で!
ぐんちゃんのパートナーはインプモンでした!
テイマーズファンならこれだけでぐんちゃんのこの作品での扱いが分かるでしょうね。
ぐんちゃん好き。
小生はぐんちゃんとミノさんと園子様が一番好きです。
もちろん他の子も好きですけどネ♪