結城友奈はテイマーである   作:渚のグレイズ

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ゆゆテ

鬱展開、ご注意。


百十二話 キオクのカケラ

景色が切り替わると、そこは、何処かのマンションの一室だった。

 

ブイモン「ここは・・・?」

 

友奈「──────あれ?」

 

スティングモン「どうした?ゆうちゃん」

 

友奈「日付が・・・・・」

 

ブイモン「日付?」

 

友奈の視線を追った先、タンスの上に置かれたデジタル時計に表示されている日付は──────

 

ブイモン「・・・・2015.07.30.?」

 

スティングモン「うーん・・・どの辺りが変なんだ?」

 

友奈「え・・・?だって、今は神世紀303年なんだよ?なのに、2015ってことは───────」

 

ヴァンデモン「そうだ。この記憶はグレゴリオ歴*12015年7月30日のもの・・・・我輩の、運命が定められた日付だ・・・」

 

友奈「─────そっか。せっちゃんが生きていた時代も“西暦”・・・・・」

 

スティングモン「向こうで出会ったのだから、同じ時代に生きていたとしても、おかしくない・・・ということか」

 

『行ってきまーす!』

 

と、その時。幼い少女の声が聞こえてきた。それと同時に、赤いランドセルを背負った小学生くらいの少女が、玄関へ向かって駆けて行く。

 

ヴァンデモン「彼女はアキ。我輩の───友達だった」

 

友奈「え─────“だった”?」

 

『アキ。忘れ物は?』

 

『無いよ、お父さん。へーきへーき♪』

 

マイからお父さんと呼ばれた男が、彼女を見送りに来る。その後ろから、コウモリのような姿のデジモンが表れた。

 

『アキ!リコーダーは?』

 

『・・・・あぁ!?』

 

『なんだ、やっぱり忘れ物あったじゃないか』

 

『てへへ・・・・教えてくれてありがと、ピコデビモン』

 

『おれに言われる前に、ちゃんと確認しろよなー!』

 

友奈「・・・・もしかして、あれが」

 

ヴァンデモン「当時の我輩だ」

 

ピコデビモンの持ってきたリコーダーを受け取ったアキは、男とピコデビモンに手を振って、元気良く出掛けて行った。

 

ヴァンデモン「─────グレゴリオ歴2000年1月1日。日付が変わり、新年を迎えた直後・・・・・それは起こった」

 

友奈「・・・・・」

 

ヴァンデモン「突如として、インターネットインフラと、そこに接続されている機器に異常が発生したのだ。とは言っても、当時はそこまでネットが普及していたワケでもなく、異常も数秒で元通りになったのだが・・・」

 

ヴァンデモン「後に“2000年問題”として語られる都市伝説。しかし、誰もその正体について、知る者はいない」

 

友奈「2000年問題・・・・?」

 

ヴァンデモン「当然だ。出来たばかりのネットワークが、よもや別世界と繋がろうとは、誰にも想像できる訳も無し。その上、そこから生物が紛れ込んだが故の出来事等と・・・・理解すら及ばぬだろうて」

 

スティングモン「別世界・・・・まさか!?」

 

ブイモン「・・・・そうか。()()()()()()()()()?」

 

ブイモンからの指摘に、ヴァンデモンは薄く笑みを浮かべる。

 

ヴァンデモン「そうだ。あの日、現実世界へ迷い込んだのは我輩だ。データを食し、ピコデビモンまで成長した我輩は、ある一人の人間によって捕獲された」

 

友奈「それが・・・さっきの人?」

 

友奈が玄関をちらりと見る。

男とピコデビモンは、もうそこには居らず、別の部屋でパソコン作業をしているようだった。

 

ヴァンデモン「彼は“本郷ゲンナイ”。職業はゲームプログラマー・・・といったか、確か。我輩が彼のパソコンに入り込んだのは、偶然だった。しかしその偶然によって、我輩は現実世界にて顕現することができるようになったのだ」

 

ヴァンデモンは、とても楽しそうに語る。

 

ヴァンデモン「我輩がゲンナイの家に来てからは、毎日が楽しかった・・・・アキは飛行機と音楽が好きでな、将来の夢は“音楽家”か“飛行士”かで、よく迷っておった・・・」

 

その語りっぷりから見ても、ヴァンデモンが二人を愛し、大切に思っていたことが伺える。

 

ヴァンデモン「────────本当に、楽しかった。この日までは」

 

記憶の再生が終わり、ヴァンデモンは再びシャボン玉を割る。

 

 

 

 

 

次に再生が始まったその時、そこは、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。

 

 

 

 

 

ブイモン「なっ・・・・!?」

 

スティングモン「なんだ・・・・何が起きた!?!?」

 

友奈「───────そうだ。思い出した・・・2015年の7月30日って・・・!」

 

ヴァンデモン「────────神の尖兵、後にバーテックスと呼ばれるモノが、襲来した日だ」

 

炎と轟音、そして人々の悲鳴が、バーテックスの埋め尽くす夜空に響き渡る。

 

『お父さん!!!』

 

突如、友奈の後ろからアキの声が聞こえた。

振り返れば、そこには瓦礫に挟まれてしまったゲンナイの姿。

 

『アキ、逃げなさい。私のことは良いから・・・・』

 

『でもっ!!』

 

『ピコデビモン、アキを・・・・・頼む!』

 

『──────わかった。さぁ、アキ』

 

『いやぁ!離して!離してよぉ・・・・!!』

 

ヴァンデモン「我輩は・・・嫌がるアキを無理矢理引きずり、避難所の公民館まで、向かおうとした・・・・その時だった」

 

上空より、バーテックスが落下してきて、瓦礫ごとゲンナイは─────

 

『おとう・・・さ・・・・』

 

『アキっ、走れぇぇぇぇぇ!!!!!!』

 

ヴァンデモン「我輩は叫んだ。そして、一分一秒でも長く、奴らの足止めをするために、戦った」

 

必殺技の『ピコダーツ』を放ち、バーテックスを一体ずつ倒していくピコデビモン。だがしかし、一向に数が減らない。

 

『クソぉ・・・・おれはゲンナイに頼まれたんだぞ、アキのことを・・・・・!なのに・・・・なのに・・・!こんな事でおれはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!』

 

叫び、応戦するも、数で勝るバーテックスには焼け石に水。

とうとうピコデビモンは、バーテックスによって食べられてしまった───────

 

友奈「あぁっ!」

 

と、誰もが思っていた。

 

スティングモン「────む?」

 

ピコデビモンを食べたバーテックスが、不意に膨張し始める。

やがてバーテックスは、内側からの圧力に負けて破裂。中から表れたのは、ピコデビモンから進化した黒いデジモン─────デビモンであった。

デビモンは、アキへと迫るバーテックスを一瞬で蹴散らし、見事、アキを守り抜いてみせた。

 

『アキ!無事か!?』

 

『うん・・・・ピコデビモン、その姿は?』

 

『────進化したんだ。お前を、守るために・・・』

 

『カッコいい・・・・・!』

 

『え?そ・・・そうか?』

 

『うん!!チョーカッコいい!!!』

 

『は・・・・ははは、そうか。さぁ、今のうちに行こう』

 

ヴァンデモン「そうして我輩は、アキを抱えて避難場所の公民館まで飛んだのだ。公民館には、バーテックスはいなかった。この公民館は、老朽化した神社を改築して建てたものらしく、中には神棚が奉られているのだが、今にして思えば、それがバーテックスを退けていてくれたのかもしれぬ・・・」

 

アキの安全を確認したデビモンは、その後、他の生存者を探しに向かった。

運良く助けられた者もいれば、間に合わなかった者もいた。

 

そうして、町中を探し回り終えた時には、既に夜があけていた………

 

 

 

*1
西暦




ゆゆテ


次からが、本番。
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