はじまりの町にたどり着いた風。
そこで出会ったのは、御神楽レイとジャリモン。
風がジャリモンと戯れている頃、夏凜は───
夏凜は一人、浜辺を歩いていた。
謎の穴に吸い込まれた後、気が付いたらこの浜辺に倒れていたのだ。
夏凜「まったく・・・・海の中じゃなくてよかったと思うべきかしら・・・・」
砂まみれの自分を見て思うことがそれか。
夏凜「にしても・・・・ここはどこで、みんなはどこに行ったのかしら?」
呟き、探索に戻る夏凜。そんな彼女の耳に、遠くからある音が聞こえてきた。
夏凜「・・・・・鍛練の音?」
自身でも毎日欠かさずやっていることであるが故か、その木を叩く音が鍛練によるものであると、夏凜はすぐに見抜いた。
夏凜「誰かいるの?」
音のする方へ向かう。そこには────
???「せい!やあ!たぁぁぁぁぁ!!!」
夏凜「・・・・・・なに、あれ?」
白いデジモンが、丸太に向かって打ち込みをしていた。
しばらく打ち込んでいると、丸太が真ん中で真っ二つに割れた。途端に上空から新しい丸太が降ってくる。
夏凜「いやなんでよっ!」
???「誰だ!?」
夏凜「しまった・・・・・!」
迂闊な奴め───
―――――――――――†――――――――――
???「お前・・・・ニンゲンだな?このファイル島に何の用だ!?」
夏凜「え・・・えっと・・・」
???「たとえお前が悪事を企てていようとも、この"未来のロイヤルナイツ"ハックモンがいる限り!お前の好きにはさせないぞ!!」
┌─────┐
│ハックモン│
└─────┘
小竜型デジモン
クールホワイトに輝く小竜型デジモン。戦闘センスのよさと、お目付け役のシスタモン姉妹の鍛錬により、敵が完全体であろうとも互角以上の戦いをする。必殺技は強靭な爪で相手を切り裂く『フィフスラッシュ』と、尻尾をドリルのように回転させて突っ込む『ティーンラム』、牽制にも使える『ベビーフレイム』だ!
ハックモン「おいお前!いったい何が目的なんだ!言え!」
夏凜「・・・・私は三好夏凜。別に、あんたが思っているような怪しいやつじゃないわ。私はただ、はぐれた友達を探しているだけ」
ハックモン「・・・・・・・・」
夏凜「嘘は言ってないわ」
ハックモン「・・・・お前の瞳、真っ直ぐでキレイだな」
夏凜「はぁ!?突然なによ!?」
ハックモン「師匠が言っていたんだ。『会話の時は相手の眼を見て話せ!さすれば、相手がどんな奴か、自ずと解る』てさ・・・」
夏凜「ふぅん・・・・そう・・・なんだ///」
ハックモン「お前の瞳は、悪い事企むような奴の瞳じゃないと思う。だから、お前は悪い奴じゃなさそうだな!」
夏凜「・・・・・つまり私のこと、信じるってワケ?」
ハックモン「そういうことだな!」
ハハハと笑うハックモンを見て、夏凜はちょっとため息を吐いた。
―――――――――――†――――――――――
夏凜「で、あんたはどうしてこんなところで特訓なんてしてるのよ」
ハックモン「俺には夢がある!」
夏凜「はぁ?」
唐突に語りだすハックモンを怪訝そうな瞳で夏凜は見つめる。
ハックモン「いずれ、ガンクゥモン師匠のような立派なロイヤルナイツの一員となること!これが俺の夢なんだ!」
夏凜「・・・・・ロイヤルナイツがなんなのかはわからないけども、それが、特訓してた理由?」
ハックモン「ロイヤルナイツになるには、強くなくちゃだからな!」
意気揚々と語るハックモンに対し、夏凜の顔はどこか暗い。
夏凜「・・・・・・・ねえ、あんたにとって、"強さ"って・・・なに?」
ハックモン「そんなもの決まってる。強さとはすなわち────
夏凜は何も答えず、沈黙したまま。
しかし、ハックモンはそれに気付かず尚も意気揚々と語り続ける。
ハックモン「"
夏凜「ふぅん・・・・そう・・・・」
ため息混じりに頷き、夏凜は告げる。
夏凜「なら、アンタは一生ロイヤルナイツになんて、なれないわよ」
ハックモン「─────なに?」
夏凜「私は、ロイヤルナイツってのがどんな連中なのか知らない。でも想像はできる。きっと、私たちが言うところの"勇者"みたいなものでしょ?」
ハックモン「──────そうだな。ロイヤルナイツは『デジタルワールドの危機にいち早く駆けつけてそれを救う、ネットワーク最高セキュリティの称号』だからな」
夏凜「なら尚のこと、今のアンタはロイヤルナイツになんてなれないわよ」
ハックモン「ふざけるな!!俺はロイヤルナイツになる!」
夏凜「無理よ。今のアンタには絶対になれない」
ハックモン「なんでそう言い切れる!!」
夏凜「アンタが、"強さ"の意味を履き違えているからよ!」
ハックモン「なにぃ!?」
夏凜「力だけの強さに意味は無いわ。そんなのただのアビリティ野郎よ。そんなこともわからないアンタに、ロイヤルナイツなんて────勇者なんてなれっこないわ!」
ハックモン「うるさい!俺は絶対になるんだ!」
夏凜「・・・・はぁ、このわからず屋め。口で言ってわからない様なら───」
ハックモン「───いいぜ」
二人「力付くにでも、認めさせてやる!!!」
―――――――――――†――――――――――
ハックモン「ルールは一つ!どちらかが『参った』と言うまで!いいな!」
夏凜「ええ!良いわよ!」
浜辺に漂着していた木の枝を二本持って、振り回しつつ調整していた夏凜がうなずいた。
ハックモン「まずはこっちからだ!『ベビーフレイム』!」
夏凜「っ!?」
ハックモンの放った火の玉に驚きつつも、夏凜は微動だにしない。何故なら──
ハックモン「『ティーンラム』!」
夏凜「来ると思った!」
ハックモン「何っ!?ぅわ!!」
夏凜はベビーフレイムの軌道から、それが牽制のための攻撃であると考え、次の攻撃を予測していた。
案の定、ハックモンはティーンラムによる突撃を行い、夏凜はそれを素早く半身を反らしつつ、左手の枝で叩き落としたのだった。
ハックモン「くぅ!」
夏凜「どうした!アンタの言う強さはこんなもんか!?」
ハックモン「まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ハックモン「『フィフスラッシュ』!!」
夏凜「遅い!」
ハックモン「ぬあ!!」
ハックモン「こんのぉぉぉぉ!!」
夏凜「踏み込みが足りん!!」
ハックモン「ぐわぁ!!」
ハックモンの攻撃をいなし、時にアドバイスをする夏凜の様は、端からみれば、それはまるで─────
ハックモン「クソ・・・・まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
夏凜「良い感じよ!相手の出方を良く見なさい!」
ハックモン「言われなくても!!」
夏凜「ほらほら!そんなんじゃ私にすら勝てないわよ!」
ハックモン「うるさい!余計なことを言うな!!」
師匠が弟子に、訓練を付けてあげているようであった。
ハックモン「『ベビーフレイム』!」
夏凜「!?」
ハックモンの放った火の玉が、夏凜に迫る。それを避ける夏凜の足元に、ハックモンが肉薄する。
夏凜「しま────!?」
ハックモン「もらった・・・・!『ティーンラ──」
ハックモンの必殺技が放たれようとしたその時───
突如として、海から何かが出現したのだった!!
ハックモン「!?・・・こい・・・つ・・・は!?」
夏凜「え・・・?うそ・・・・なんで・・・!?」
白い楕円形の身体に、歯のような器官を備えた仮面のような顔。その下には触覚のようなものが生えている。
その異形を、夏凜は知っていた。
夏凜「
天の神の尖兵──バーテックス。
もう既に、存在しない筈のものが、今、夏凜たちの前に現れたのだから・・・・!
~次回予告~
海より現れた謎の星屑型バーテックス。
ハックモンより"イーター"と呼ばれたそれを撃退するため、夏凜は一人、立ち向かう。
そんな夏凜を目の当たりにして、ハックモンは────
次回『"勇者"であること。吼えよ!バオハックモン』
今、新たな冒険の扉が開かれる………