美森「───────え?」
夏凛の言葉に、思わず呆ける東郷。
それを見た一同は
樹「東郷先輩?大丈夫ですか?」
銀「おーい、須美ー?どっかで頭でも打ったのかー?」
園子「それは大変なんよー!にぼっしー!わっしーに人口呼吸だ!!マウスとぅーマウスなんよ~~!!」
夏凛「するかぁ!?てか、必要無いでしょうが!!」
普段と変わらない様子の仲間たち。
だからこそ、余計に東郷の頭は混乱する。
美森「ふざけないで!!!友奈ちゃんよ!?結城友奈ちゃん!みんなが覚えていない筈無いでしょう!?」
風「まだ言うか・・・・・・・はぁ、だからね?東郷。私たちは、その・・・結城友奈?って娘の事なんか、知らないって言ってるでしょ?」
美森「そん・・・・・な・・・・・・・そうだわ!写真!!」
東郷は思い出した。かつて奉火祭の贄となった時、自身が神樹に願い、みんなから自分に関する記憶を消してもらったことがあることを。その時、人一人分の奇妙な空白の空いた写真が数枚あったと、友奈から聞いていた。
きっと、端末の写真もそうなっているはず───
そう考えた東郷は端末を操作して、アルバムを開いた。が──────
美森「────────嘘。なんで?」
確かに、友奈の写真は無かった。
美森「そんな筈は!?」
しかし、探しても探しても、見つからない。不自然に穴の空いた写真も無い。
美森「──────どうして?」
更に混乱する頭で、友奈の存在を示す為の手段を探す。
その時点で既に、目的がすり変わっていることにも気付かずに・・・・
美森「─────────そうだ。家だわ」
何を思ったのか東郷は、実家のパソコンならば、写真が残っているだろうと考えたのだった。
美森「帰らなきゃ・・・・」
ふらふらとした足取りで、家に帰ろうとする東郷。
何処をどう歩いたのか自分でもわからないままに、
美森「─────パソコンなら、きっと・・・・」
うわごとのように呟きながら、自室のパソコンを立ち上げ、写真を保存してあるフォルダを検索。
が、しかし、そこにも無い。
美森「嘘よ・・・・・・嘘よ嘘!そんな筈無いっ!!どこかにある筈なのに!?」
パソコン内をくまなく探し、それでも見つからず、自棄になってパソコンを破壊。その後本棚に齧り付くと、アルバムをひっくり返して更に探す。
美森「無い───────無い!──────無い!!何処なの!?何処にあるの!?!?友奈ちゃん!!」
最早今の東郷は、友奈を探しているのか、友奈の写真を探しているのか、その区別すらついてない。
故に、
美森「──────そうだ、友奈ちゃん家」
ふらふらと、覚束無い足取りで出た部屋の先が、
美森「──────友奈ちゃん──────友奈ちゃん」
友奈の名前を呼びながら、白い闇の中を歩く東郷。
その身体が、
美森「──────友奈・・・ちゃん─────友・・・奈・・・ちゃん」
友奈を呼ぶ声も、だんだんと嗄れていき、果ては老婆のような姿と声で友奈を探しさ迷うのだった。
このまま行けば、東郷はいつか自分でも気付かないうちに死んでしまうだろう。
そんな時だった。
「まて」
美森(老婆)「・・・・・・?だぁれ?」
突如、東郷の目の前に光る人間が現れた。
「そのまま進んではならない」
美森(老婆)「どうして?私は、友奈ちゃんを探さないと・・・・」
「この先には居ない」
美森(老婆)「そう?なら・・・・何処にいるのかしら?」
困ったわ・・・とでも言いたそうに、首をかしげる東郷。
「安心しろ。お前の仲間なら全員無事だ」
美森(老婆)「あら、本当に?なら、みんなのところに連れて行ってくださらない?」
「ああ・・・・そのためにも、お前にはいくつか、思い出して欲しいことがある」
美森(老婆)「あら?何かしら?」
「まず・・・・・
美森「・・・・・・・・・えぇ?何処って・・・・・・あれ?」
光に指摘されて、漸く東郷は、自身が何処とも知れない虚無空間にいる事に気が付いた。それと同時に、東郷の身体が少し元に戻る。
美森「ここは?・・・・・それに、私・・・・」
「気が付いたようだな」
美森「これは一体!?」
「お前は今、ダゴモンの黒い海に呑み込まれている。そこから抜け出すには、お前が忘れているものを、思い出すしかない」
美森「わ・・・忘れている?私が?・・・・・何を?」
「思い出せ。
美森「相棒・・・・・?ここは・・・・・この場所は・・・・・」
完全に落ち着きを取り戻した東郷の周囲が、讃州市内の自宅周辺へと変わる。
しかし、もうこの幻想に惑わされる東郷では無い!!
美森「──────思い出した。私は何処にいるのか・・・・・私の、相棒の名前は・・・・・!!」
東郷の身体は完全に元に戻った。
右手を掲げる。
いつの間にか無くなっていた端末が右手に収まると、東郷は相棒────すなわち、パートナーデジモンの名前を呼ぶ。
美森「来て!・・・・・・レナモン!!」
ガラスの砕け散る音がして、東郷は夢から覚めた。
黒い光の中、東郷の目の前に降り立ったのはレナモンだ。
レナモン「ミモリ・・・・・心配したぞ」
美森「ごめんなさい、レナモン・・・・・友奈ちゃんたちは?」
レナモン「それぞれパートナーが救出に向かっている。皆、眠らされているが、じき目覚めるだろう」
美森「良かった・・・・・さぁ!私たちも!」
レナモン「ああ」
レナモンに手を引かれ、東郷は光の中を抜け出していったのだった。
─次回予告─
ダゴモンの悪夢から脱出した東郷を待ち受けていたのは、ボロボロになりながらも戦う銀とアグモンだった。
ダゴモンから黒い入江の真実を聞かされた東郷は、怒りを爆発。その時、レナモンに新たなる力が誕生する!
次回『東郷、怒りの梵筆閃!ダゴモンを打ち倒せ!』
今、新たな冒険の扉がひらかれる………