~前回までのあらすじ~
ダゴモンの海底神殿で棗を探そうとした勇者たちだったが、友奈が何処かへと消えてしまう。
友奈を探して奥へ向かう東郷。その先にあったのは黒い海の入江。
海の悪夢に呑み込まれた東郷だったが、光に導かれどうにか脱出することに成功するのだった………
美森「・・・・・んぅ・・・ここは・・・・・・」
レナモン「ミモリ。大丈夫なようだな・・・・よかった」
悪夢から覚ました東郷がいた場所は、どこかの洞穴のようだった。地面に置かれた端末から迸る光が、周囲を照らしているため、洞穴の中とは思えない明るさだ。辺りを見回し、仲間たちがそばで眠っているのを確認すると、唯一、起きていた人物から声をかけられた。
???「起きたか」
美森「あなたは・・・・・もしかして、さっきの?」
???「古波蔵棗だ。話は銀から聞いた。ホエーモンに、私の捜索を頼まれたそうだな?」
健康的に日焼けした小麦色の肌の少女が名乗る。
座っているため正確な身長はわからないが、風と同じか、少し高いくらいだろうか。全体的にクールビューティーな雰囲気を醸し出しているこの少女こそ、ホエーモンに探してもらうよういわれた"古波蔵棗"である。
美森「あなたが棗さん・・・・銀に聞いたって・・・・そういえば、銀は!?」
再度辺りを見回す。眠る仲間たちの中に銀の姿は無かった。
美森「棗さん、銀は今何処に!?」
棗「落ち着け────とも言っていられる状況では無いな・・・・・銀は今、ダゴモンと戦っている。お前たちを助ける為に」
美森「ダゴモン?あの悪夢はダゴモンの仕業なの?」
棗「そうだ。だが、今のダゴモンは誰かに操られているだけで、あいつ自身に悪気は無い。銀を助けに行くとしても、そこは念頭に置いておいて欲しい」
棗の懇願するような視線を受けて、東郷は答える。
美森「棗さん・・・・・・わかったわ!行きましょう、レナモン!!」
レナモン「うむ!」
棗「頼む。私は今、彼女たちの精神に干渉するので手一杯なんだ・・・・・とても戦えるだけの余力は無い」
美森「任せて。ダゴモンも銀も、私たちが助けるわ!」
そう言って、東郷とレナモンは洞穴の外に出ていった。
東郷が外に出ると、そこでは銀とジオグレイモンがダゴモンに追い詰められていた。
ダゴモン「フォフォフォ・・・我が魔力に抗えたことは評価してやろう・・・しかし!そのようなちっぽけな力では、ワレは倒せん!!」
銀「ジオグレイモン・・・・!」
ジオグレイモン「うぅ・・・・クソぉ・・・・」
美森「レナモン!!」
レナモン「承知!!」
レナモン進化────!
キュウビモン!!!
キュウビモン「『鬼火玉』!!」
キュウビモンの尾から放たれた『鬼火玉』がダゴモンに当たり、ダゴモンは一瞬怯んだ。
ダゴモン「ぐおぉ!?何事か!?」
銀「え!?須美!」
美森「・・・・・・今回は、ちゃんと間に合ったわよ、銀」
キュウビモン「大丈夫か?ジオグレイモン」
ジオグレイモン「ああ・・・・助かったぜ」
ダゴモン「くぅ!?ワレの術から逃れられるとは────さてはナツメが手を貸したか?」
美森「ダゴモン。どうしてこんな事をするの!?」
東郷の問いに、ダゴモンはカッカッカッ、と笑って近くにあったツボを掲げながら答える。
ダゴモン「これも偏にあの方の御為!このツボ一杯にニンゲンの生命エネルギーを溜め込み献上するのだ!!」
美森「あの方?・・・・そいつに操られていると言うの・・・・?」
ダゴモン「操る?ワレは誰にも操れん!!ワレはワレの意思で動いておる!!!」
そう叫んで両腕を広げたダゴモンの左腕、そこには黒いリング────イービルリングが装着されていた。
明らかに何者かによって操られている。
ダゴモン「それよりも・・・・だ。あの改良した黒い海より無事帰還できたとはなぁ・・・・・」
キュウビモン「どういう事だ?」
ダゴモン「なに、簡単な事よ。あの海は、ニンゲンの心の闇を刺激し、悪夢を見せる。その悪夢に呑まれれば呑まれる程、海の底へと沈み逝き・・・・果ては二度と浮上出来なくなる。ワレがそう改良したのだ!ちなみに今はそこに生命エネルギーを吸い上げる機能を追加しとるがな」
カラカラと笑うダゴモンを見て、東郷は身体を戦慄かせる。
美森「───────許せない」
銀「須美?」
美森「自ら手を下そうともせず、平和に生きる第三者を操り・・・・・ましてや!人の心の触れてはいけない部分に触れて!!」
東郷の身体から、青いデジソウルが沸き上がる。
彼女は今、怒りに燃えていた!
キュウビモン「ミモリ、感情をコントロールしろ。激情に流されてはいけない」
美森「平気よ。心は熱く、頭は冷静に────」
ゆっくりと、深く、息を吸い、吐く。
心頭滅却─────とまではいかなかったが、それでも、冷静さは失わずにいられた。
美森「行くわよ!キュウビモン!!」
キュウビモン「応!!」
その瞬間────
デジソウルの輝きが、東郷の端末に吸い込まれ、キュウビモンに新たな力を与えたのだった!!
キュウビモン超進化────!
タオモン!!!
美森「進化・・・・!?」
銀「うわぁ!カッケー!!」
┌────┐
│タオモン│
└────┘
魔人型デジモン
陰陽道に精通し、あらゆる技を駆使して戦う陰陽師デジモン。特に呪術の能力が高く、霊符や呪文の攻撃が得意。また暗器の達人でもあり、様々な武器を袖の下に隠し持っているぞ。非常に寡黙で多くは語ることはなく闇に潜み闇に生きる存在である。また、霊符を式神に変え使役することもできる。必殺技は霊符を敵の体に巻きつけて爆発させる『
美森「え?端末が・・・・!?」
キュウビモンがタオモンへと進化した際、東郷の端末が光に包まれ、その姿を変化させた。
光が収まった時、東郷の手にあったのは青い弓であった。それはかつて、東郷が"鷲尾須美"と名乗っていた時代、勇者として使用していた武具。
銀「わ!それって、須美の武器じゃん!」
美森「もしかして、歌野さんや郡さんの時と同じ・・・・?」
ダゴモン「グ────ガァァァァァァ!?!?!?その・・・・武器は!?」
東郷の弓を見たダゴモンが突然、頭を抱えてのたうちまわりはじめた。
ダゴモン「そ・・・れは・・・・か・・・みの!?────グォォォォォォォ!!!」
イービルリングが黒い光を放ち、ダゴモンが急に襲いかかってくる!その瞳にダゴモンの意識は感じられない。
銀「やろう!須美!ダゴモンを助けるんだ!!」
美森「勿論!言われなくたって!!」
東郷は、髪を結んでいたリボンをほどくと、髪をまとめて結い上げ、リボンで結び直した。かつて、"鷲尾須美"時代にしていた髪型。
美森(ここにそのっちも居たら、あの時の私たちみたいだったのに・・・)
頭の片隅でそんな事を思いながら、二人とそのパートナーたちは、ダゴモンに向き合うのだった。
ゆゆテ!
なっちの端末は特別製で、"黒い海"の中でもその影響を受ける事なく、すいすい泳ぐ事ができる。
が、その場合はデジヴァイスとしての能力を発揮できない為、パートナーを進化させられない。
今回はその能力を勇者たちに向けて使用。
それぞれのパートナーを中継にして、悪夢世界に干渉した。