もし城戸くんが好戦的だったら   作:sukei

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オリジナルシーンだと筆が進まない……



人生の転換点

城戸がミラーワールドのことを知った翌日。

OREジャーナルに行方不明事件が発生したと連絡があったのはその日の昼頃だった。

 

現場が偶々事務所から近かったこともあり、城戸も現場に同行することになり、そして今は昨日知り合った神崎優衣と共に鏡の中を見ていた。鏡の中では復活したクモ型のモンスターとナイトが戦っている。

 

城戸はふと思ったことを聞いてみた。

 

「なぁ、なんでモンスターって発生するんだ?」

 

「わかんない。でもお兄ちゃんが何か知ってる気がする。だから、会って話したいの」

 

「…………そっか」

 

それだけ聞ければ十分だった。城戸としてもこのままモンスターを放っておくことはできないし、見ているだけなのも居心地が悪い。

城戸はズボンのポケットの中にある感触を確かめる。

 

「神崎士郎……だっけ」

 

「え?」

 

「お兄さん、説得するのは結構難しいかもよ」

 

そう言って城戸はカードデッキを取り出す。

 

「それって、どういう…………ッ!?」

 

優衣の視界にはデッキの中心にモンスターの紋章が追加されている――紛れもなくモンスターと契約済みのカードデッキが存在していた。

 

「まさか、モンスターと……契約したの!?」

 

「…………」

 

優衣からの問いに答えず、城戸は昨晩からのことを思い出していた。

 

 

――――――――――

 

 

昨日、デッキを拾い、ミラーワールドのことを知り、仮面ライダーになるかどうかの選択肢に悩むことになった城戸は、頭を冷やすために外に出て――そろそろ帰ろうかと路地を曲がったところで()()はきた。

 

 

――昼間にも感じた、妙な直感。

 

 

この感覚は覚えがある。昼間にデッキを手にしたときの――モンスターが出現したときの直感だ。

 

城戸は慌ててデッキから封印のカードを取り出した。

しかし、いくら捜してもモンスターの影は一つとしてない。

 

「どういう…………こと……だ?」

 

この直感を感じる以上、モンスターが出現するのだと思っていたが、もしかして違うのだろうか。そう思いつつも慎重に辺りを見渡す城戸に、唐突に声がかけられた。

 

『……お前が、カードデッキを受け継いだ者か』

 

城戸は慌てて声がした方向を見る。

一人の男が()()()()()()()()()

 

「……な、んだよ?誰だよ、あんた!?」

 

『……………神崎……士郎……』

 

「か、神崎、って……」

 

――神崎士郎。それは、昼間に出会った女性の兄の名ではなかったか……。

 

城戸の混乱を余所に、神崎は説明を始める。

 

――ライダーの本質はたった一人の生き残りをかけたサバイバルであること。

 

――デッキは全部で13個、自分の他に12人のライダーを倒す必要があること。

 

――そして、最後に生き残ったライダーは一つだけ何でも望みが叶うこと。

 

神崎の説明を、城戸はすぐには理解できなかった。いや、相手の言っていることが突拍子もなさすぎてすぐに信じることができなかったというべきか。いずれにしても、城戸には一つだけ疑問があった。

 

「なんで、それを俺に教えんだよ?」

 

この男にとって、城戸にライダーバトルのことを教えるメリットがあるのか、ただそれだけが気になった。

 

『お前は、ライダーになる資格があるようだ』

 

『戦え。最後の一人が決まるその時まで』

 

最後にそう言い残して、神崎は消えた。もう辺りには影も形も見えない。最後の一人――すなわちライダー同士の戦いの勝利者が決まるまで戦えと残して。

 

相変わらず、神崎の考えは読めなかったが、城戸には一つだけ感じとることができた。それは『神崎は彼なりの信念に基づいて行動している』ということ。おそらくは彼なりの目的があるのだろう。そしてそれは、昼間出会ったライダーにも言えることだった。

 

昼間、秋山が言っていたことを思い出す。

 

『一度ライダーになった者は引き返せない。そのまま死ぬだけだぞ』

 

彼はこのことを言っていたのだ。一度ライダーになったものは、戦って生き残る以外には死しか選択肢が残されていない。そして、生き残れるのは13人の内1人だけ。秋山がライダー同士のサバイバルを知りながらライダーになったのだとすれば、彼も彼にとって、譲れない願いの為にライダーになったのだろう。

 

「…………」

 

結局、城戸の悩みは解決するどころか余計に複雑になってしまった。

 

忌避する理由はできた。他人を倒す――殺すことになる。それは、病に犯され、人よりも命というものに敏感な城戸にとって一番忌避すべき事柄だ。

 

 

……しかし同時に、ライダーになりたい理由もできてしまったのだ。

 

 

 

――人並みぐらいに生きることのできるの体がほしい

 

 

 

望みが叶うと聞いたときに浮かんだこの考えを、城戸は消し去ることができない……。

 

 

――――――――――

 

 

翌朝、結局考えがまとまらないまま、城戸はOREジャーナルの事務所に出勤していた。いつもと比べると大分早い時間であり、事務所には誰もいなかった。

 

城戸が来てから10分後、城戸の次に出勤してきたのは社長兼編集長である大久保だった。

 

「んお?どうした、真司?お前がこんなに早く事務所に来るなんて」

 

明日は雪か!?なんて大久保は城戸に声をかけてくる。どうやら城戸が事務所に一番乗りであることに相当驚いているらしい。

城戸はおもいきって大久保に相談してみることにした。

 

「……編集長に、ちょっと、聞きたいことがあって」

 

「ん、なんだ?」

 

「編集長は『自分か他人』、どっちかしか助けれないとしたら、どっちをとったほうがいいと思いますか?」

 

「『自分か、他人』ね」

 

城戸の声音から真面目な話であると察したのだろう。大久保もいつもの軽い雰囲気を消し、真剣に考え始めた。

 

少しの間をおいて、大久保は話し始める。

 

「…………人の本質ってのは基本的に二つだと俺は思ってる。自分を中心に考えるか、他人を中心に考えるか、だ。お前は普段から他人のためにってのを考えてるヤツだからな。たまには、自分を選んでもいいんじゃねぇか?」

 

「…………そう、っすか」

 

その答えは、城戸の質問に対しての明確な答えではなかった。むしろ微妙に論点がズレている気もしたが、そんな答えでも、城戸にとっては十分だった。

 

「ちょっと、外の空気吸ってきます」

 

「おう、しっかりなー」

 

もう一度一人になって考えるためにも、気分を切り替えるためにも、城戸は外に出てくることにした。大久保も特に引き止めることはせず、城戸の背中を押してくれた。

 

 

…………ゆえに、城戸が事務所から出た直後に大久保が呟いた言葉が、城戸の耳に届くことはなかった。

 

 

「…………オレと出会う前から、アイツは今までずっと苦しんできたんだ。だから、たまには自分を選んだって、バチは当たらないと思うぜ、真司。………………」

 

 

――――――――――

 

 

OREジャーナルの入っているビルの屋上に城戸は出ていた。大久保とのさっきまでの会話を思い返しながら、城戸はモンスターとの契約について考える。

 

結局城戸は、大久保に全てを話したわけではない。それどころか、随分と抽象的な相談だったと思う。それでも、事情を特に聴くこともなく背中を押してくれる大久保に、城戸は感謝した。

 

今、城戸の中ではライダーになりたいという想いのほうが強くなり始めている。自分の為に他のライダーを倒すことを話したら、大久保は反対するだろうか?それでも城戸は、人並みに生きていたいと思う。彼の元で働いていたいと想う。

 

それに、ライダーになりたいと思うのは、何も自分の為だけでもないのだ。

『人並みぐらいに生きることのできるの体がほしい』という願いは変わってはいない。

だが、同時にこうも思うのだ。

 

(俺が死ねば、他の誰かの願いが叶う)

 

同時に、モンスターを倒せば狙われている人を守ることもできる。どうせ後わずかな命なのだ。この命で誰かが救われるなら安いものではないか。

 

――城戸はそこまで考えてふと、思う。

 

(結局、俺は他人のことを考えてる)

 

おもわず城戸は吹き出しそうになった。大久保の言った城戸の本質は大当たりだったわけだ。相変わらず物事の本質を見抜いてくる人だと城戸は思う。

 

…………考えが、固まった気がした。

 

 

 

今の城戸にとって、『自分と他人のどちらをとるか』という選択に答えを出すことはできなかった。

 

――が、

 

 

 

 

――覚悟はできた。

 

 

 

「お前は、俺に付き合ってくれるのか?」

 

 

 

――人を守る為に戦う覚悟は。

 

 

城戸がいるビルとは反対側のビル。その窓ガラスに漆黒の龍は存在した。城戸の問いかけに対し、龍はただ咆哮をあげるだけだったが、城戸にとってはそれで十分だった。

 

城戸はデッキの中から契約のカードを引き抜き、ゆっくりと、自分を見つめる漆黒の龍にかざした。

 

契約から2時間後、モンスターの出現を知ると同時に、城戸は秋山達と遭遇する。

 

 

――――――――――

 

 

そして今――

 

 

優衣からの質問に答えることなく、城戸は窓ガラスと向き合う。

 

 

城戸は気負うことなく、速くも遅くもない動作でデッキを窓ガラスにかざす。

 

 

鏡の中に変身ベルトが浮かび上がり、少し遅れて現実の城戸にもベルトが装着される。

 

 

特にポーズはとらない。無駄な動作は、それだけで体力の消耗に繋がる。

 

 

 

「………………変身」

 

 

 

城戸はデッキをバックルに差し込む。ベルトが発光し、瞬く間に城戸を漆黒のスーツが覆っていく。そうして仮面ライダーリュウガとなった城戸は、戦場である鏡の中へ躊躇することなく入っていった。

 




ヤバい……。場面が全然進まない…………。
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