もし城戸くんが好戦的だったら   作:sukei

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ドラグブラッカー『AP6000』
ボルキャンサー『AP3000』

…………あとは……分かるな?



許容不可

城戸が仮面ライダーとなってから幾ばくか。変身し、出現したモンスターを倒すことにも慣れてきた頃。状況は唐突に変化することになる。

 

その日、事務所では城戸とOREジャーナルのシステム担当である島田奈々子がのんびりと休憩していた。

 

「………………平和だねぇ~」

 

「………………そうっすね」

 

実際は、世間にとって行方不明事件が後を経たないので騒ぎになっているわけだが、島田は気にせず、城戸は事件の真相を知っているがゆえにモンスターが出現していない間は緊張感は皆無だった。

一応、今二人がいるのは事務所であり二人とも勤務中なわけだが二人を咎める者はいない。大久保と桃井は取材で外に出ており事務所にはいないし、そもそも二人はそれぞれの仕事を既に終わらせている。

 

そんな中、だらけた雰囲気をぶち壊すように携帯を握りしめた大久保が駆け込んできた。

 

「た、大変だ!」

 

「そんな血相変えて……どうしたんです?編集長」

 

慌てている典型のような形相で事務所に入ってきた大久保に対して、島田はあまり気にすることなくのんびりと理由を聞いた。島田につられてか、それとも今までののんびり気分を引きずっているのか、城戸も変わらず緊張感のない顔で大久保の返答を待っている。

 

「…………さっき、病院から連絡があったんだが………………令子が……

 

 

 

 

………………令子が………………入院した!!」

 

 

 

「「………………………………、はあああぁぁ!?」」

 

部屋に蔓延していた緊張感のない空気は一瞬にして霧散した。

 

非日常は、いつだって唐突に訪れる。

 

 

――――――――――

 

 

事務所にいた全員で病院に駆けつけると、体の所々を治療された令子と須藤雅史と名乗る刑事だった。取材(調査)をしていた骨董屋で令子は何者かに襲われ負傷。偶々近くにいた須藤刑事に助けられたということだった。

 

病院を後にした城戸は一人、令子が襲われた骨董屋にいた。

 

令子は襲われた相手がどんな人物だったか分からなかったらしい。ただ、偶々近くにあった鏡を割ったことで外にいた須藤刑事が異変に気付き、助けられたのだと言っていた。また、犯人は行方不明となっている骨董屋の店主、加賀友之が怪しいのでは、とも。

 

しかし城戸はミラーワールドの存在を知るが故に、もう一つの可能性に至っていた。

 

(令子さんは、モンスターに狙われている可能性がある……)

 

令子がモンスターに襲われ、偶然にも鏡を割ったことでモンスターが一時的に退いた可能性があるのだ。もし仮に令子がモンスターに狙われていたならば、その命はあまり猶予があるとはいえない。モンスターは一度狙った獲物をしつこく追い回すからだ。城戸は、令子がモンスターの餌食になる前に、なんとしてもモンスターもしくは犯人を突き止める必要があった。

 

「――っ!?」

 

モンスターの手掛かりを求め、骨董屋の内部を調べていた城戸を突如としてめまいが襲った。城戸は思わず近くの壁に手をついてしまう。幸いにしてめまいはすぐに治まった。

 

「……はぁ、…………猶予がないのは俺も同じってか?」

 

そう自嘲気味に呟きながら、城戸は壁を支えに体を起こし…………

 

(……ん?)

 

同時に気がついた。

 

(この辺りの壁だけ…………感触が違う?)

 

そう。周りの壁と比べ、城戸が手をついたその壁だけが僅かに質感が違っていた。よく見てみると色も他の壁とは若干違うような気もする。

 

城戸は改めてその壁に手をかけてみる。すると、その壁はちょっとした窪みからボロボロ崩れ、剥がれ落ちていった。

 

――これは何かある。

 

己の直感に従い、城戸は夢中で半ば無意識に壁を剥ぎ取っていく。

 

…………中から、出てきたのは、

 

 

 

 

…………『()()()()』だった。

 

 

――――――――――

 

 

令子に事情を聞くために病院に戻ると、刑事二人が須藤を追って令子の病室から飛び出してきたところだった。

 

嫌な予感がした。

 

急いで刑事たちの後を追う。だが、前を走る3人との距離は徐々に徐々に離されていく。必然だった。城戸は速く走ることのできる体ではない。それどころか、長時間にわたり走り続けることすら困難な身体なのだ。

 

なんとか城戸が須藤刑事たちに追いついたとき、刑事2人はちょうど窓ガラスから出てきたモンスターに呑み込まれたところだった。

須藤は一枚のカードを掲げている。『契約モンスター(ADVENT)』のカードを。

 

「あんた、ライダーだったのか」

 

「それを知っている、ということは貴方もですか」

 

いろいろと問い詰めたいところではあるが、城戸はまずライダーであること(前提条件)から聞くことにした。

 

「あんたは、どうやってライダーになったんだ?」

 

「あれは……偶然でした……。死体を壁に埋めていた私に、突然、神崎が話しかけてきたんです。『ライダーにならないか』とね」

 

冷静に話していた須藤の目に、徐々に狂気が見え始める。

 

「最初は成り行きでした。でも今は……ライダーとして頂点を極めることに、すごく興味を惹かれるんですよ」

 

「……そのためなら、ライダーとは無関係の人でも手にかけていいと?」

 

「……フッ、ええ。ついでに私にとっての邪魔者も消えるんです。モンスターの強化もできて、一石二鳥でしょう」

 

「………………分かった。もういい」

 

ここで、城戸は会話に区切りをつけた。これ以上、理解の及ばない話を聞くつもりはなかった。ただ目の前の相手が、自分には許容できないと理解できただけで十分だった。

 

故に、城戸は行動に移す。

 

「とりあえず、…………あんたは倒す!」

 

このとき城戸は初めて、自分から、己の意志で、デッキを『他のライダー(他人)』に突きつけた。

 

 

 

「いいでしょう。受けて立ちます」

 

須藤はそう言いながらデッキを取り出す。

 

二人同時に、窓ガラスにデッキを向けた。

 

「「変身!」」

 

デッキをバックルに差し込むことにより、並び立つ二人はライダースーツに包まれていく。城戸は漆黒に、須藤はオレンジに。変身し終わり、一瞬だけお互いを見た二人はそのまま窓ガラスの中へ飛び込んでいった。

 

 

――――――――――

 

 

人の気配が全くない世界で二人のライダーは対峙する。片や龍の尾を模した剣を構え、片や蟹の鋏を模した武器を右腕に装着している。

 

「――ハッ!」

「――フン!」

 

戦闘の開始は唐突だった。剣と鋏が激突し火花が散る。時に互いの得物を打ち合い、時に周囲の物を破壊して、移動し戦場を変えながら、二人はひたすらぶつかりあう。

 

「「――ッ!!」」

 

一瞬の隙をつき二人はそれぞれカードをバイザーに入れた。

使用されたカードは……

 

 

『『ADVENT』』

 

 

どちらも同じカードだった。

 

光沢のあるオレンジ色をした蟹と漆黒の龍が召喚される。

召喚されたモンスターたちは互いを標的と見なし戦い始め、二人のライダーは再び激突する。

 

戦況はあまり変わってはいない……

 

 

 

 

 

……かに思われた。

 

 

仮面ライダーシザース/須藤雅史はリュウガからの猛攻をいなしながらも次の一手を考えていた。

 

(残る手札は『GUARD VENT』と『FINAL VENT』。なら盾で隙を作って『FINAL VENT』を叩き込む!)

 

一度リュウガと距離をとり『GUARD VENT』を取りだそうとしたシザースは自分の真後ろに『()()()()()()()()()()()()()()』衝撃を感じとり思わず後ろを振り返った。

 

シザースの後ろではオレンジ色をした『ナニか』が地面にめり込んでいる。その『ナニか』は頑丈であるはずの体にいくつもの切り傷を負い、ところどころが焦げている。その『ナニか』……否、シザースの契約モンスターであるボルキャンサーは、どこをどうみても満身創痍な状態で地面に沈んでいた。

 

「……な、なっ…………」

 

上空には特に傷を負った様子もない漆黒の龍が威風堂々とこちらを見おろしている。自身の相棒がなすすべなく倒された事実に須藤は言葉もでない。

 

逆に、城戸にとっては大きすぎる隙だった。

 

『FINAL VENT』

 

バイザーの音声を聞き、我に帰ったシザースが慌てて回避行動に移るが()()()()()()()()()()()

 

 

砲弾のようなリュウガの蹴りが、動くことすらできないボルキャンサーに止めをさした。

 

 

――――――――――

 

 

契約モンスターを倒されたシザースはライダースーツが灰色の状態――ブランク体になっていた。

 

すかさず城戸はシザースにも止めをさす為に『STRIKE VENT』をデッキから引き抜いた――

 

――が

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そこで、城戸は初めて気がついたのだ。自分はまだ、『人と戦う覚悟』はできても『人を殺す覚悟』ができていないのだと。

 

気づけばシザースはいなくなり、その場に存在するのはリュウガ一人となっていたが、それでもしばらくの間、城戸はそこから動くことができなかった。

 

 

――――――――――

 

 

城戸との戦いの場から少しでも遠ざかろうと逃げてきた須藤は、たどり着いた高架下で体を休めていた。

 

「……はぁ、はぁ。クソッ、私は、ライダーの頂点に立たなければいけないのにっ」

 

「――残念だけど、君はここで退場かな」

 

「ッ!!誰だッ!」

 

突如として聞こえる若い男の声。須藤が辺りを見渡すと、そこには一枚の()()()を掲げた青年が立っていた。

 

「なっ、が、あ゛あ゛あ゛ぁぁあああぁぁぁぁ……」

 

近くのカーブミラーの中からモンスターが現れ瞬く間に須藤を呑み込んでいく。

その光景を見届けながら青年は呟いた。

 

「ゲームオーバーした人にはちゃんと退場してもらわないと――

 

 

 

 

――『()()()』が面白くならないから、さ」

 

 




ボルキャンサー「…………戦闘力が、倍の相手には……………勝てなかった、よ……ガク」
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