あれから俺はとある研究所に向かった。
扉を開けてその場にいる彼女に声をかける。
「よお静。」
彼女は木原静。俺の妹みたいなものだ。
「あー、おにーちゃんいらっしゃーい。」
うむ可愛い。天使すぎると思うがそれは胸の中に留めておこう。
「今日はどういった要件で来たの?」
「いや、特に用というのは無いんだがお前の顔を見にな。」
「ふーん。おにーちゃんの癖に嬉しい事言ってくれるね〜。」
「お兄ちゃんの癖には余計だ。どうだ?成果は得られたか?」
「うーん。これはまだ難しいかな。」
彼女が今作っているものはタイムマシン。俺もたまに手伝っているがまだまだ完成には程遠い。
「一体いつになったら完成するんだろな。」
「ねー。瞬間移動系の能力者だって少ないけど居るんだし出来てもおかしくは無いと思うんだけどね。難しいな〜。」
「まあ俺たちはまだ若い『木原』だからな。考えることを止めなきゃいつか出来るさ。」
「うん。そだねー。」
「さて、最近お前もろくに飯食ってないだろ?どっか食べに行くか?」
「え!?いいの!!行く行く!私ステーキ食べたい!」
「おう!めっちゃ美味いステーキの店行こうぜ!」
「そうと決まれば準備しなきゃ!あとお風呂も入って来なきゃね。」
「おう。俺ここで待ってるから早く準備してこい。あ、煙草吸ってもいいか?」
「いいけど灰皿無いよ?」
「能力で創るから大丈夫。」
そう言って俺は能力で灰皿を創ってテーブルに置いた。
「はっきり言ってお兄ちゃんの能力使えばタイムマシンなんて簡単に出来そうだけどね。」
まあ間違えでは無いな。間違えではないが
「『木原』が考えることを止めることは即ち死と同じである。あのクソジジイがよく言ってただろ。アイツの事は嫌いだがこの言葉は正しいと俺は思うぞ。」
「ちぇ、まあ私とお兄ちゃんが力を合わせたらタイムマシンなんて直ぐ出来そうだよね。」
「ああ、そうだな。」
アイツに会うためにも絶対に完成させる。意地でもだ。
「どうでもいいけど早く風呂入ってこいよ。時間無くなるぞ。」
「わー!そうだった!お兄ちゃん、覗いてもいいんだよ?」
「はいはい、覗かないから早くいけ。」
「はーい。」
静がしぶしぶとお風呂場に入っていくのを確認して俺は胸ポケットから煙草取り出した。
火をつけて一度ふかす。そうして吸って、肺に煙を入れて余分な煙を出す。
「煙草、やめなきゃな。」
分かっていても止められないのがこれだ。
静が上がってくる前に煙草を消し、灰皿を吸殻を能力で消す。我ながら使い勝手のいい能力だよな。
「お兄ちゃん上がったよー。」
「おう。準備も出来たか?」
「うーん。もう少しまってー。」
「ゆっくりでいいぞ。」
「いや、もう出来たからいいよ。」
「おけ、それじゃあ行こうか。」
「うん!」
そう言って彼女は俺の手を握り、一緒に研究所を出たのであった。
木原静(きはらしずか)
10歳にして、木原の中でも一目置かれている。
能力 無音(サイレント)
その名の通り対象物から発せられる音を消すことが出来る。