バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
「そういえば坂本、次の戦争の相手なんだけどBクラスなの?」
激しい昼食(やはりこちらでも被害者がいたらしく、秀吉はお茶を大量に飲んでいる)を済ませて、復活した皆でのんびりお茶をしていると島田さんがそう口にする。
「ああ、次はBクラスを獲りに行く」
昨日DクラスにBクラスの室外機を壊せって命令をしてたからね。これで、Bクラスを狙わなければ度の過ぎた嫌がらせである。
「どうしてBクラスなの?目標はAクラスなんでしょう?」
「正直に言おう」
おっと、急に神妙な面持ちになっている。
「どんな作戦でも、うちの戦力じゃAクラスには勝てやしない」
でしょうねーうん。知ってた。
まぁ、理由として五十人からなるAクラス。四十人に関しては正直Bクラスと大差ない。
でも、残りの十人は別格だ。予想だが、この十人だけでFクラスは全滅する気がする。
「ふーん。まともに正々堂々とぶつかったらAクラスには現時点で勝てない。……どんな荒業を使う気?」
「ああ、クラス単位での勝負はしない。一騎討ちに持ち込むつもりだ」
これは、また面白そうな……
「一騎打ちに?どうやって?」
「Bクラスを使う。明久。もちろん、試召戦争で下位クラスが負けた場合の設備はどうなるか知ってるよな?」
「え?あ、当たり前じゃないか!」
この反応は絶対に知らないな。すると姫路さんが兄さんに耳打ちをする。
「設備のランクを落とされるんだよ」
よく、最初から知っていた風に堂々と言えるな……
「……まあいい。つまり、BクラスならCクラスの設備に落とされるわけだ。では、上位クラスが負けた場合は?」
「悔しい」
確かにそうだと思うけど。何かが違うよね?
「ムッツリーニ、ペンチ」
「ややっ。僕を爪切り要らずの身体にする動きがっ」
「相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」
また姫路さんのフォローが入る。さすがというか、常識というか……
「つまり、オレらに負けたクラスは最低の設備になる。普通はな」
「そしてそのシステムを利用して交渉する」
「交渉、ですか?」
「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むように交渉する。設備を入れ替えたらFクラスの設備たが、Aクラスに負けるだけならCクラス設備で済むからな」
代表が超無能でない限り交渉はオレらの想定どうり進むはず。まぁ、何かを間違えて設備を入れ変えてくれるんだったら、万々歳だ。
「それで?」
「それをネタにAクラスと交渉する。『Bクラスとの勝負直後に攻め込むぞ』といった具合にな」
Bクラスと戦った後に直ぐに戦争は辛い。しかも、Fクラスには『現状の不満』という原動力があるが、Aクラスには戦争に勝っても特に何かを得られる訳ではないからモチベーションの差は歴然としている。
「でも、問題がある。そもそも、Aクラスが一騎討ちを受けてくれる保証がない。仮に一騎討ちを受けてくれても、どうやって倒す?」
「そうじゃな。こちらに姫路と光正が居るのは向こうに知れ渡ってるはずじゃろう?」
「だろうな。だが、そのへんに関しては色々考えてある。心配いらない」
自信満々にそう答える。まぁ、相手は必ず一対一の一騎打ちを受けてくれないのは目に見えている。絶対に五回勝負とかにするはず……というか、そっちの方が勝算ありそうだけど。
「まあその話はBクラス戦が終わったらだ。Bクラスに負けたら意味ないからな」
当たり前だ。Bクラスに負けたら三ヶ月宣戦布告できないんだからな。
「で、明久」
「ん?」
「今日のテストが終わったら、Bクラスに行って宣戦布告をしてこい」
「断る。雄二が行けばいいじゃないか」
うん。これで受けたら『ドMの兄貴』という称号を送るところだった。
「やれやれ、それならジャンケンで決めないか?負けたほうが宣戦布告に行く」
「ジャンケン?」
うん。絶対に怪しい。
「OK。乗った」
「ただのジャンケンでもつまらないし、心理戦ありでいこう」
心理戦?兄さんとなんて、心理戦にすらならないだろう。
「わかった。それなら、僕はグーを出すよ」
「そうか。それなら俺は――――お前がグーを出さなかったらブチ殺す」
ほらね。心理戦じゃない。ただの一方的な虐殺である。
「行くぞ、ジャンケン」
「わぁぁっ!」
パー(雄二) グー(兄さん)
兄さんの負けか。予想通りすぎる。
「決まりだ。行って来い」
「絶対に嫌だ!」
はぁ。まぁ、最終的には行くんだろうけど。
「Dクラスの時みたいに殴られるのを心配しているのか?」
「それもある!」
それしかないでしょ。後、面倒とか。
「それなら今度こそ大丈夫だ。俺が保証する」
保証の宛が無さすぎるぞ。
「なぜならBクラスは美少年好きが多いらしい」
……はぁ?そんな根拠のない説得で納得して宣戦布告に行くのなんて兄さんでもあり得ないでしょ。
「そっか。それなら確かに大丈夫だね」
何処がぁ!!?
「でもお前不細工だしな……」
「失礼な!365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」
「5度多いぞ」
「実質5度じゃな」
「5度しかないのか」
「三人なんて嫌いだっ!」
「とにかく、頼んだぞー」
こうして、昼休みは終わり、またテスト漬けになるのであった。
「というわけで、今ごろ兄さんはボロボロになっていると思われる」
「淡々と自分の兄の現状を説明されても……」
現在放課後。オレは何故か下駄箱にいた、紫乃と一緒に帰っている。
まぁ、方向は途中まで一緒だし、去年も週4~5日のペースで一緒に帰っていたから不思議ではない。
「心配はしないの?」
「自業自得」
「……相変わらず厳しいことで」
当たり前だ。ジャンケンにオレたちを巻き込めば勝機はあったのに、それをしなかった。
運というより頭で負けているんだ。自業自得としか言いようがない。
「それで?Aクラスにはどうやって挑むの?クラス単位での勝負だと負けるよ?」
「ああ、一騎打ちだ」
「へぇー誰と誰が?」
「両クラスの代表どうし……だと思う」
そこまで、詳細に決めていない。というか、教えられていない。
「まぁ、一騎打ち一回勝負では無くなるだろうな」
「あーなるほどね。多分交渉のテーブルにつくのは優子だし」
こういう、形式を変えた勝負を挑む場合、どうしても相手との交渉は必要不可欠だ。だって、交渉なく挑んだ方がルールを決められるんだったら、相手の代表VS自分たち50人。とかやれば、ほぼ勝てる。公平性という意味でもクラス単位の試召戦争以外は交渉というものが付きものだ。
もっとも、雄二がそこまで考えていなくて、一騎打ちにすると考えているとは思えないけどね。
「ねぇ、光正。もし、一騎打ちを複数回やることになったら……私と勝負しない?」
「ほーう」
「どうせ、やるとしても奇数。一騎打ちを三回とか五回。Fクラスの面子的に代表の坂本君、姫路さん、そして光正。その三人が出る可能性は極めて高い。だったら私と勝負できる」
なるほど。さすが、紫乃だ。こういう勝負はあの時から繰り返している。
「まぁ、どっかの誰かさんが振り分け試験で勝負していたのに途中退席したからね」
「別に。試験受けるのが面倒になっただけだ」
「ふふ、何があったか知ってるから。光正らしいよね。本当に」
「余計なお世話」
最近思うのだが、この女には勝てない気がする……料理とかは勝てるのに。
「分かった。勝負できるならしてやるよ」
「オッケー。じゃあ、負けたほうが何でも一つ言うことを聞くということで」
「え?何でも?」
「そう、何でも」
何でもってことは……!ミシン貸して欲しいとか言ったら貸してくれるかも!手縫いじゃ、座布団作るのにも限界があるし……
「だから、光正が私と……その……し、したいなら……してもいいよ」
「あ、そっちは今は興味ねぇわ」
「…………(プツン)」
「えーっと、紫乃さんや。禍々しいオーラが……ぎゃぁああ!頭が!頭が割れるぅぅうう!?ちょっと落ち着いて!あああぁぁぁぁっっ!」
この後、十分ほどオレは紫乃のアイアンクローに苦しめられることになったのだった。
理不尽だ。理不尽すぎる。