バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
「さて、それじゃあ楽しい楽しい戦後対談を行おうか。な?負け組代表?」
「…………」
勝者である雄二は楽しそうに、敗者である根本君に話しかけている。
Bクラスの策略を打ち破り、戦争で勝利したオレたちはCクラスからBクラスに移動して戦後対談をする事になった。
ほとんどのBクラス生徒が下を向いたり、恨む感じで根本君を睨んでいる。まあ、自分たちの教室がある程度豪華な教室から廃墟になるかもしれないと考えたら気持ちは分からなくない。
まぁ、同情はしないし、どうせそんな心配杞憂に終わるしね。
「本来なら設備を明け渡してもらい、お前らには素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、特別に免除してやらんでもない」
するとBクラスFクラス双方から騒めきが生じる。
というか、もうBクラスの教室の設備で充分だと思うのですが……え?ダメですか?
「落ち着け皆。前にも言ったが俺たちの目標はAクラスだ」
「ようするに、ここはあくまで通過点だ……と?」
「あぁ、そうだ」
するとうちのクラスの方は納得したような表情になる。Dクラスの試召戦争もあってそろそろ雄二の性格を理解したのだろう。
「……条件はなんだ?」
根本君が弱々しく尋ねる。まぁ、条件がないわけじゃないよね。
「それはお前だよ負け組代表さん」
「えぇっ!?雄二にそっちの趣味が!?」
「黙ってろ光正!」
いやぁ~軽いジョークだよジョーク。
「Aクラスに行って試召戦争の準備が出来ていると宣言して来い。ただし宣戦布告はするなよ。あくまで戦争の意思と準備があるとだけ伝えろ。それができたら今回は特別に設備については見逃してやっても構わない」
まぁ、宣戦布告されたら、俺らの作戦が台無しだしね。
「……それだけでいいのか?」
「ああ。Bクラス代表がコレを着て言った通りに行動してくれたら見逃そう」
どこからかこの文月学園の女子の制服を取り出してきて根本君に突き出す。
え?どこから取りだした?というかそもそも何で持っているの?
「バカな事を言うな!誰がそんなふざけたことを……!」
そりゃあ、女装癖がない限り嫌だろう。根本君の女装か…………見たくねぇな。
『Bクラス生徒全員で必ず実行させよう』
『任せて!必ずやらせるから!』
『それだけで教室を守れるなら、やらない手はないな』
教室に残っているBクラスの生徒の反応を見ただけで、根本君の日頃の行いとクラスでの信用度がうかがえる。これは……うん。まぁ、あれだね。
「んじゃ、決定」
「く、来るな変態ども!俺はがふっ!」
「とりあえず黙らせました」
「お、おう。ありがとう」
一人の男子生徒が腹部に拳を打ち込んで根本君を黙らせる。
うわぁ……この代表本当に信用ねぇな。いや、信用よりもないのは人望か。
「着付けは明久に任せる」
「了解っ」
あ、そうだ。
「誰か、アイロンとかってない?ないなら、被服室とかその辺から取ってきてほしいんだけど」
「ここにあるよ。使いたいの?」
「ちょっとね」
「分かった。準備しておくよ」
「ありがとう」
Bクラスにも優しい人はいる。しかし、オレはその優しい女子生徒には近づきたくないと思った。理由?そんなの単純だ。
「……この震えからしてCカップぐらいか……?」
近づくと震えが止まらなくなりそうだからだ。
「あ、兄さん。根本君の制服から手紙は見つかった?」
「うん。光正の言うとおりあったよ」
「なら、良かった」
なければカバンの中も捜索するところだった。
「じゃあ、根本君の制服くれない?」
「いいよ。どうせゴミ箱に捨てるつもりだったし」
そう言われて受け取る。
「でも何するの?落書きとかは意味ないよ。彼には新しい制服があるからね」
新たな制服が何を指すかは触れないでおこう。
「そんな低次元のいたずらなんてしねぇよ。アイロンをかけて、綺麗に見せればうちの学校の誰かが予備として買ってくれねぇかなぁ~って」
「それって、結構やったらまずいことじゃ……」
「ん?バれなければ問題なし」
「鬼だ!鬼がいるよここに!」
「んなことより、早くその手紙を渡して来たら?持ち主に」
「あ、うん」
兄さんは走る。というか、あれってラブレターじゃないのか?姫路さんのと考えるとどう考えても兄さん宛だよな……まぁ、あの姫路さんがこのまま告白するとは思えねぇな。
「おつかれ、光正……何やってんだ?」
「ちょっと、アイロンがけと後ついでに染み抜き。本当は洗濯もしたいが諦めている」
「……相変わらず器用な奴だな」
「そりゃ、どうも」
「一つ質問だ」
急に真面目な雰囲気を出す雄二。
「お前……あの音声レコーダーの会話。あれは本物か?」
「なわけないじゃん」
「そうか」
今回の場合。彼女はあの会話が嘘で加工されていると言った。当たり前だ。これはオレの考えた、あったかもしれない会話だ。当然、真実とは異なるし、加工云々以前に虚構で出来ている。まぁ、彼女がその話は本当……つまり、Bクラス代表にそそのかされたのは本当と証言してくれた。ぶっちゃけ、これさえ分かれば後はどうでもいい。
「……いつだ?」
「ん?」
「あの会話を撮ったのはいつだ?いや、あの作戦を考えついたのはいつだ?」
「そうだねー見えたんだよ」
「はぁ?」
「Bクラス生徒をBクラスに押し込んで四時を迎えた時、ちょっとトイレに行ってたんだ。そして、そこでBクラスからCクラスへ向かう根本君がいた。まぁ、後は最悪の可能性を想定して音声を撮っておいた」
「なるほどな。で、作戦は?」
「そんなの即興で考えたに決まっているじゃないか!」
だって、そうでなければあそこまで回りくどく言っていない。事前に考えていれば、もっと、ダメージを与えられた自信がある。これは悔やまれるところだ。
「そうだ。この後どうするの?」
「ああ、Aクラスへは明日行かせるとして、とりあえず、女装撮影会だな」
「アハハ……じゃあ、オレは帰るよ」
「お疲れさん」
「ああ、本当に疲れた」
「……ったく。待っていなくていいのに」
「いいの。私が好きでやってることだから」
帰り道。下駄箱で待っていた紫乃と一緒に帰っている。
「Bクラス戦はやっぱりFクラス勝ったでしょ?私の予想通りだね」
「ああ。でも、Fクラスが勝つ予想をしたのってお前ぐらいしかいねぇんじゃねぇの?」
「ううん。翔子も同じ予想だったみたい」
Aクラス代表も……ねぇ。こりゃ厄介だ。
Bクラス戦で勝てたのははっきり言って代表である根本君の慢心もあったからだと思う。もし、最初の渡り廊下でもっと戦力を割かれていたら?Cクラスに潜むときに、もっと上手く溶け込んでいたら?オレたちが負けていた要素はあるし、そもそも、実力ではオレたちはDクラスにすら勝てていない。
「知ってるよ。Bクラスの代表を打ち取ったの光正でしょ」
「まぁ、運が良かったからね」
はっきり言ってあそこで一緒に潜んでいたのが英語や国語系の先生だったら負けていた。いや、そもそも戦いもせず逃げていただろう。
こういう面でもBクラス側の情報不足が見える。
「それでも打ち取ったのは光正で試召戦争に勝ったのはFクラス。違う?」
「事実は変わらないな」
「そんな、頑張った光正にはご褒美でお姉さんが頭を撫でてあげますよ」
「お姉さん…………ププッ」
「笑われた!?弟属性の光正に笑われた!?」
紫乃がお姉さん……想像しただけで笑えてくる。
「いいよ。別に」
「そんな事言わずにさ」
その後、別れるところまで頭を撫でられ続け、近所の人の目が温かかったのを覚えている。