バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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倒すために

 Bクラス戦が終わって三日が経った朝。

 この三日は補充試験をしたり、Cクラスが宣戦布告できないように裏で工作したり、まぁいろいろあった。

 

「まず、皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってのことだ。感謝している」

 

 壇上の雄二は素直に礼を言う。…………え?嘘だろ?あの、雄二が素直に礼を言った……だと。

 

「ゆ、雄二、どうしたのさ。らしくないよ?」

「ああ。自分でもそう思う」

「だ、大丈夫か?精神科行かなくていいか?それとも脳外科か?」

「そこまで俺が感謝することが意外か?」

「「うん!」」

 

 当たり前じゃないか。

 

「だが、これは偽らざる俺の気持ちだ。ここまで来た以上、絶対にAクラスにも勝ちたい。勝って、生き残るには勉強すればいいってもんじゃないという現実を、教師どもに突きつけるんだ!」

『おおーっ!』

『そうだーっ!』

『勉強だけじゃねぇんだーっ!』

 

 まぁ、勉強がすべてではないことには同意するけどイコール勉強をしなくていいというわけでは無いと思う。思ってるだけで言わないけどさ。

 

「皆ありがとう。そして残るAクラス戦だが、これは一騎討ちで決着をつけたいと考えている」

 

 瞬間、クラスから騒めきが生じる。オレはこの前の昼食時に聞いていたから驚かなかったけど、他の人には無理なようだった。

 

「落ち着いてくれ。今から説明する」

 

 雄二がバンバン、と机を叩いて皆を落ち着かせる。どうでもいいけど、叩いた机が壊れそうになってるよ。

 

「やるのは当然、俺と翔子だ」

 

 Aクラス代表の霧島翔子とFクラス代表の坂本雄二。クラス間の戦争を代理で行うのだから代表同士の一騎打ちは当然だろう。

 ただ、どうやって雄二は勝つつもりなのだろう?勝ち目はないようにも思えてしまう。

 さすがにオレでも数学とか化学ならともかく、他は勝てる気があまりしないしな……。

 

「あの馬鹿の雄二が勝てるわけがなぁぁっ!?」

 

 雄二がカッターを兄さんに向けて投げつけ、頬を掠めさせる。

 

「次は耳だ」

 

 ……この二人って本当に友達なのだろうか。週に五回はこの疑問を抱いている気がする。

 

「まぁ、明久の言うとおり確かに翔子は強い。まともにやりあえば勝ち目はないかもしれない」

 

 当たり前だ。まともにやり合って勝てるなら苦労していない。

 

「だが、それはDクラス戦もBクラス戦も同じだったろう?まともにやりあえば俺達に勝ち目はなかった」

 

 ……オレたちって、本当にまともに戦ってないよね?でも、勝ったのがオレたちFクラスという事実は変わらないけどさ。

 

「今回だって同じだ。俺は翔子に勝ち、Aクラスを手に入れる。俺を信じて任せてくれ。過去に神童とまで言われた力を、今皆に見せてやる」

『おおぉーーーっ!!』

 

 全員の意思を確認するまでもない。全員雄二を信じているようだった。

 ……というか、どうでもいい疑問だけど。何で霧島さんのことは名前呼びなのかな?雄二は女子のこと基本的に名字呼び捨てだよね?まぁ、どうせ、前からの知り合いってパターンだろうが。

 

「さて、具体的なやり方だが……一騎打ちはフィールドを限定するつもりだ」

「フィールド?何の教科でやるつもりじゃ?」

「日本史だ」

 

 日本史?別に霧島さんの苦手科目でもなければ、雄二の得意科目でもないだろう。……じゃあ何故?

 

「ただし、内容を限定する。レベルは小学生程度、方式は百点満点の上限あり、召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負とする」

 

 ……うーん。満点が前提の注意力勝負に持ち込むつもりか?でも、小学生レベルのテストにそんな警戒必要かな?

 

「でも、同点だったら、きっと延長戦だよ?そうしたら問題のレベルも上げられちゃうだろうし、ブランクのある雄二には厳しくない?」

「確かに明久の言うとおりじゃ」

「分の悪い賭けにしか見えないよ?運ゲーをやる気?」

 

 この程度の作戦が雄二の切り札なのだろうか?

 

「おいおい、あまり俺を舐めるなよ?いくらなんでも、そこまで運に頼り切ったやり方を作戦などと言うものか」

「??それなら、霧島さんの集中力を乱す方法を知ってるとか?」

「いいや。アイツなら集中してなくても、小学生レベルのテストなら何の問題もないだろう」

 

 それもそうだ。学年主席の座についている以上、小学生レベルなんて、集中をしなくとも満点は容易いだろう。

 

「雄二。あまりもったいぶるでない。そろそろタネを明かしてもいいじゃろう?」

「前置きが長い」

「そうだな……俺がこのやり方を採った理由は一つ。ある問題が出れば、アイツは必ず間違えると知っているからだ」

 

 必ず間違える問題?そんなのが小学生レベルの暗記科目である日本史に?

 

「その問題は『大化の改新』」

 

 大化の改新?久しぶりに聞く気もする言葉だなぁ。

 

「大化の改新?誰が何をしたのか説明しろ、とか?そんなの小学生レベルの問題で出てくるかな?」

「いや、そんな掘り下げた問題じゃない。もっと単純な問いだ」

「単純?たいかのかいしんを漢字で書けとか?」

「それは舐めすぎだ」

 

 分からないじゃん。兄さんなら退化の改心って書くかもしれないじゃないか。

 

「後は何年に起きた、とかかのう?」

「おっ。ビンゴだ秀吉。お前の言うとおり、その年号を問う問題が出たら、俺たちの勝ちだ」

 

 確か、無事故の改新で645年……だった気がする。

 

「大化の改新が起きたのは、645年。こんな簡単な問題は明久ですら間違えない」

 

 ……何かごめんな雄二。

 

「…………」

 

 兄さんは絶対に間違える。今もこんな問題余裕と思って思い切り外したって顔をしているし。

 

「だが、翔子は間違える。これは確実だ。そうしたら俺たちの勝ち。晴れてこの教室ともおさらばだ」

「というかさ、さっきから気になっていたんだけど……」

「どうした光正。疑問があるなら言ってみろ」

「じゃあ聞くけどさ。霧島さんとは仲がいいの?少なくとも顔見知りだとは思うんだけど……」

 

 去年雄二が霧島さんと関わっているところを見たことないし(オレが見た限りでは)このFクラス全体の反応からしても、去年は接点がないように見えたんだろう。だったら、もっと前からの知り合いってことになるけど……

 

「ああ。実はアイツとは幼馴染だ」

 

 あぁ、なるほどねぇ。理解した。

 

「総員、狙えぇ!」

「なっ!?なぜ明久の号令で皆が急に上履きを構える!?」

 

 そして、雄二が話しているところで兄さんが急に叫び、オレ、姫路さん、島田さん、秀吉以外の我がクラスメートは一人残らず上履きを持って雄二に殺気を向ける。……何やってんの?

 

「黙れ男の敵!Aクラスの前にキサマを殺す!」

「俺が一体何をしたと!?」

「遺言はそれだけか?……待つんだ須川君。靴下はまだ早い。それは押さえつけた後で口に押し込むんだ」

「了解です隊長」

 

 うーん。男子生徒四十五人分の靴下を押し込まれるのか……シュールだな。

 というか、女子と関わっただけでこの反応かよ。まぁ、去年も兄さんはこんな感じだったから予想はしてたけどさ。

 

「あの、吉井君」

「ん?なに、姫路さん」

「吉井君は霧島さんが好みなんですか?」

「そりゃ、まぁ、美人だし」

 

 うん。美人ではあると思うけど……オレは苦手である。まぁ、人格云々以前の問題だけどね。

 

「…………」

「え?なんで姫路さんは僕に向かって攻撃態勢を取るの!?それと美波、どうして君は僕に向かって教卓なんて危険な物を投げようとしているの!?」

 

 姫路さんと島田さんからも殺気を感じる。どうやら、兄さんの葬式を考える必要があるみたいだ。

 

「まあまあ、落ち着くのじゃ」

 

 パンパンと手を叩き場を取り持つ秀吉。オレではこんな風にはならなかっただろう。

 

「む。秀吉は雄二が憎くないの?後、光正も」

「ああ、興味ねぇ」

「……さすが光正」

「冷静になって考えてみるがよい。相手はあの霧島じゃぞ?男である雄二に興味があるとは思えんじゃろうが」

 

 ……そうなの?

 

「な、なんですか?もしかして私、何かしました?」

 

 何故か皆の視線は姫路さんの方へ。え?どういうこと?

 

「とにかく、俺と翔子は幼馴染で、小さな頃に間違えて嘘を教えてたんだ」

 

 prrrrprrrr

 

「もしもし警察ですか?ここに幼女を誑かす赤ゴリラがあぁっ!?」

 

 投げられたカッターナイフをギリギリのところで避ける。

 

「テメェ殺す気か!」

「誰が幼女を誑かす赤ゴリラだこの野郎!」

「まぁまぁ、光正も赤ゴリラも落ち着いてよ。ほら、僕みたいにクールに……」

「「黙ってろこのバカ!」」

「…………」

 

 はぁ、兄さんのせいで興ざめだ。まぁ、向こうも同じようだけど……え?警察はって?別に警察に電話をかけていないけど何か?

 

「アイツは一度覚えた事は忘れない。だから今、学年トップの座にいる」

 

 なるほど。だが今回はそれが仇になるわけか。

 

「俺はそれを利用してアイツに勝つ。そうしたら俺たちの机は――」

『システムデスクだ!』

 

 ……ただそう上手くいくかねぇ。

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