バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
「一騎討ち?」
「ああ、Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎討ちを申し込む」
もはや恒例の宣戦布告。
Aクラスに着いたオレは雄二の隣に座って木下さんと向き合っている。今回の宣戦布告は兄さんだけではなく、オレ、雄二、姫路さん、秀吉にムッツリーニも来ている。
というか、毎回こうやってFクラスの首脳陣勢揃いで乗り込んでいけば兄さんはボロボロにならなかったのでは?もうすでに遅いけどさ。
「うーん、何が狙いなの?」
現在交渉のテーブルについているのはFクラス側からオレと雄二。Aクラス側からは木下さんだ。まぁ、基本は雄二が話を進めてくれているので問題はない。
そう思いながらAクラスの特権であるドリンクバーのコーヒーを飲む。…………ふむ。
「マスター、おかわり」
「誰がマスターよ。自分でやってきなさい」
「やり方わかんない」
「はぁ、しょうがないわね……」
ちょロイ。
「狙い?もちろん俺たちFクラスの勝利だ」
まぁ、木下さんが訝しむのも当然だ。学年トップである霧島さんに単騎で挑むなんて実力差の分からないただの大バカか勝ち目がある人間だけだ。ましてやFクラスでありながら、B、Dクラスを打ち取った指揮官様が言い出すんだ。裏があると考えるのが自然だ。
「面倒な戦争を手軽に終わらせられるのはありがたいけど、だからといってわざわざリスクを冒す必要もないかな」
オレも同意見だ。少なくとも相手がこの雄二なら、なおさら受けないだろう。まぁ――
「賢明だな」
――交渉はここからが本番だったりするけど。
「ところでBクラスとやり合うつもりはあるか?」
瞬間、木下さんの顔が悪くなっていく。おそらく根本君の女装姿を思いだしたのだろう。
「Bクラスって……、昨日来たあの……」
「ああ。アレが代表をやってるクラスだ。幸い宣戦布告はされてないようだが、さてさて。どうなることやら」
「でも、BクラスはFクラスと戦争したから、三ヶ月の準備期間を取らない限り試召戦争はできないはずだよね?」
これは試召戦争のルールの一つの準備期間。
戦争に敗北したクラスは三ヶ月の間、自分から宣戦布告できない。これは負けたクラスがすぐに再戦を申し込んで、戦争が泥沼化しない為の取り決めだ。
「それなら問題ないはずだよ木下さん。知ってるでしょ?実情はどうあれ、対外的にはあの戦争は『和平交渉にて終結』という形になってるんだ。もちろん、BクラスだけでなくDクラスもだが」
これは設備を入れ替えなかったからこそ取れる手段だ。
「……それって脅迫?」
「人聞きが悪い。ただのお願いだよ」
お願いと書いて脅迫と読む。
「コーヒーでございます」
「うむ」
「……何か言うことは?」
「うむ。よろしい」
「フンっ!」
ゴンッ
「ああ!頭が!頭が割れる!」
痛いよ!暴力反対だ!暴力!反対!
「おっと、すみませんね光正。手が滑りました。これ以上余計なことを言うと足が滑る予定です」
「アハハ、気をつけてよ。全く紫乃はドジだなぁ~」
「「あははははははは」」
やべぇ。次、何かおかしなこと言ったら殺される。
「明久よ。光正がAクラスの女子と仲良くしておるようじゃが……」
「あーうん。あの人は光正の去年の同じクラスの唯一の友達、天草紫乃さん」
「ふむ。まぁ、姉上から名前は聞いたことあるが……それで、何でお主らはそんな殺気だっているのじゃ?」
「実の弟なんて関係ない。FFF団に突き出し、異端審問会にかけてやる」
「本音は?」
「……凄く怨めしい」
「…………憎らしい」
訂正。何もしなくても後ろのバカ二人に殺されそうだ。
「うーん……わかったよ。何を企んでるか知らないけど、代表が負けるなんてありえないからね。その提案受けるよ」
「それは本当か?」
二人の殺気とその他をごまかす為、交渉に戻るオレである。
「だってあんな格好した代表のいるクラスと戦争なんて嫌だもん……」
うんうん分かるよその気持ち。アレは目に毒だし、相対もしたくない存在だ。しかし、そのおかげでこちらの提案があっさり通るとは。これは思わぬ収穫かはたまた雄二が狙ったことなのか。
「でも、こちらから提案。代表同士の一騎討ちじゃなくて、そうだね、お互い五人ずつ選んで、一騎討ち五回で先に三回勝利した方の勝ち、この提案なら受けていいわ」
やはりというべきか警戒心は緩んでいないか。まあ予想の範囲内だ。雄二も表情を変えてないから予想はしていたのだろう。当然だ。こんな口約束、護か怪しいからな。
「なるほど。姫路や光正が出てくる可能性を警戒してるんだな?」
「うん。多分大丈夫だと思うけど、代表が調子悪くて姫路さんが絶好調だったら問題次第では万が一があるかもしれないし、そこにいる紫乃のお気に入りさんも頭は回るようだから、警戒に越したことはない」
「紫乃のお気に入りさんって、長ったらしいから名前で呼んでくださいよ」
「じゃあ、賢い方の吉井君で、吉井君(賢)?」
「はぁ、それでいいよ」
まぁ、さっきのお気に入りよりはマシか。……というかAクラスの人からオレってどう思われているんだろう?
「ちょっと待つんだ二人共。まるでそれでは賢くない方の吉井君がいるみたいじゃないか」
「「え?お前(あなた)バカの方の吉井(君)でしょ?何か問題ある?」」
「その認識はあんまりだ!」
「はぁ?じゃあ、問題児の方の吉井は?」
「…………光正も人のこと言えないぐらいの問題児でしょ」
「紫乃?さっきのコーヒーのお礼がしたいから、跪いて頭を下げてくれると嬉しい」
「お礼がしたいなら、光正が跪いて頭を下げればいいのです」
「「…………(バチバチバチ)」」
オレらの視線がぶつかる。これは決して、見つめ合うとか言う生易しいものじゃないだろう。
「コホン。まぁ、安心しろ。うちからは俺が出る」
「無理だよ。その言葉は鵜呑みには出来ないよ」
これは競争じゃなくて戦争だからね、と付け足す。全くその通りだ。
「そうか。それなら、その条件を呑んでも良い」
と、雄二の耳を疑うような返事……ってわけでもないか。あまりにも予想通りすぎる返事だ。
「ただし、勝負する内容はこちらで決めさせて貰う。そのくらいのハンデはあってもいいはずだ」
ああ、なるほど。そういう方針で交渉するのか。科目の選択権はオレたちにとって必須だが、一騎討ちの上に科目も選ばせろなんて話は流石に虫が良すぎる。だからこそ五人での勝負を受けたのだろう。
「え?うーん……」
またもや考え始める木下さん。当然だ。これはクラスにとって重要なものだからな。
「……受けてもいい」
「ぅわっ!」
兄さんが素っ頓狂な声を出す。そして……
「…………(サッ》」
「はぁ……光正。翔子も苦手なの?」
「だ、誰が苦手だよ」
「……思い切り私を盾にするように隠れて言われましても……」
これはたまたまだ。うん。たまたま。
「というか、姫路さんは大丈夫だったの?この面子で一番の天敵でしょ?」
「問題ない。高校に入る前から少し縁があったからな。それに半径三メートル以内に居なければ問題ない。問題ないと思えば問題ない」
「……問題しかないじゃない。半径三メートルの距離を保とうとするクラスメートって……」
それはあれだ。体が受け付けないってやつだ。でも、これでも進歩した方だ。
「……雄二の提案を受けてもいい」
いきなり現れ、静かな声をだした人物。彼女こそAクラス代表の霧島翔子である。こうして会うのは初めてだが物静かな人だ。ただ、ある程度胸が発達してしまっているためオレの中では苦手な部類に入ってしまっているが。
「あれ?代表。いいの?」
「……その代わり、条件がある」
「条件?」
「……うん」
霧島さんは頷いて雄二を見た後に姫路さんをじっくりと観察した。まるで値踏みするかのようだ。そして再度雄二に顔を向けて言い放つ。
「……負けたほうは何でも一つ言う事を聞く」
……あの眼に映っていた色。あの色は……好意じゃない。何だろう……彼女の眼には姫路さんに何を見たのだろうか。
「…………(カチャカチャ)」
「ムッツリーニ、まだ撮影の準備は早いよ!というか、負ける気満々じゃないか!」
……そして、こいつ等は何をやっているんだ。バカなのか?
「じゃあこうしよう?勝負内容は五つの内三つそっちに決めさせてあげる。二つはうちで決めさせて?」
木下さんの妥協案が得られた。ふむ。
「交渉成立だな」
「同感だ」
「ゆ、雄二!何を勝手に!まだ姫路さんが了承してないじゃないか!」
「心配すんな。姫路に迷惑はかけない。絶対にな」
まぁ、いいか。というか、兄さん。何で姫路さんが関係しているの?
「……勝負はいつ?」
「そうだな。十時からでいいか?」
「……わかった」
「よし。交渉成立だ。一旦教室に戻るぞ」
雄二がそう言って立ち上がる。
「光正。勝負だね。……約束覚えてる?」
「負けた方が勝った方の何でも一つ言うことを聞く。大丈夫だ。覚えている」
「それなら良かった。……絶対負けないから」
「ああ。……お前には負けねぇから」
交渉を終了し、オレらはAクラスを後にする。
決着の時は刻一刻と迫ってきていた……