バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
週末の朝、この日は何故か兄さんも早く起きていた。
「どうしたの兄さん。いつもなら寝ているかゲームしている時間でしょ?」
そう言いながら朝食であるパンを渡す。もちろんただの食パンである。
「あーうん。実は今日ね……」
「姫路さんたちとお出かけか?」
「よ、よく分かったね……」
「見ていればわかる」
それに消去法をしたってそうだ。雄二は何か用事があると霧島さんが言っていたし、秀吉もムッツリーニも何かと忙しいいらしい。となると残りは姫路さんたちとなるわけだ。
「僕の食費が……」
「いつもゲームに消えているだろ」
「あれ?そういえば光正は何か予定あるの?」
「紫乃とデートしてくる」
「……光正。兄さんは哀しいよ。こんなところで大切な弟を失ってしまうなんて……」
そう言いながら兄さんはキッチンに向かう。あの眼は二日に一度行われる捕まったら処刑のリアル鬼ごっこをしている時に追いかけてくる
「あーでも、オレは女子一人とデートだけど、兄さんは女子二人とお出かけかーまさに両手に花だね。まぁ、こんな事FFF団に言おうものなら、誰が処刑されるかなー」
「……光正。一時休戦にしないかい?」
「休戦も何もオレに戦う意思はないよ」
バカだ。ここでオレを仕留めればその情報がFFF団に流れることもないのに。
「じゃあ、そろそろ準備して行くわ。兄さんも約束には遅れない方がいいよ」
「あぁっ!?もうこんな時間!?」
さてと、準備しますか。
待ち合わせ時間まで後十分か……少し早く来てしまったようだ。
そう思いベンチに腰を掛ける。そして次の瞬間オレの視界は真っ黒に染まった。
「だ~れだ♪」
どうやら、視界を手で塞がれたらしい。ふむ、こんな事する人物は一人しかいない。
「貧乳」
「フンっ」
そして、答えると同時に突き抜けるような激痛。
「あぁぁぁっ!?背中がああぁぁぁっ!もの凄い勢いで蹴られたんですけど!?」
「余分なことを言うからでしょ」
「え?事実じゃん」
「もう一発!」
「あああああぁぁぁ!全く同じ場所に痛みがああぁぁぁっ!?」
全く同じ場所!しかも手加減なし!二回目だから場所を変えるなり、手加減してくれてもいいのに!
「さて、じゃれあいはこの辺にしといて……」
「……オレの命がかかるじゃれあいだな」
「行こっか」
「はいはい」
「返事は一回」
「はい」
やれやれ、まさか命令権で『私とデートして。後、料理を教えてほしい』って言われたもんな……というか、命令二回していない?まぁ、昨日までも昼休みは三途の河まで行っていたしな。管理するおっちゃんからも顔を覚えられたしな。というか、渡るのに6万は高いでしょ。せめて6文が相場だとオレは主張する。
そんな事思いながら歩くこと数分。オレたちは驚愕の光景を目にした。
「あれ?光正に天草だったか。こんなところで会うなんて奇遇だな」
「こっちこそ、雄二と霧島さんに出会うとは思わなかったよ」
雄二と霧島さんだ。デートかなと思ったが、雄二の様子がおかしい。いやねぇ……
「何でお前手錠……というか手かせ?をつけられて霧島さんに連れられているんだ?お前の趣味か?」
こいつの趣味だったら取りあえず連絡先からこいつの分を消しておこう。
「ちげぇよ!これは翔子に……」
「ハハハ、何を言っているのさ雄二。あの、学年主席の霧島さんが頭のおかしいこと――」
「……私がやった。雄二が逃げないための処置」
「さすが、翔子。考えているね」
「――――するわけないじゃないか」
「光正。現実をみろ。お前も直にこうなるぞ」
やべぇ。こいつら頭おかしい。というかこの状況を受け入れ始めたオレもやべぇんじゃねぇのか?
「ハハハ、じゃあ、二人仲良くデートを楽しんできてよ」
「テメェ光正!そこは俺を助けるとかないのか!」
「ないな」
「……ありがとう。吉井弟はいい人」
「どういたしまして、霧島さん」
「じゃあ、行こうか。二人の邪魔しちゃ悪いしね」
「そうだな」
オレと紫乃は歩き始める。
「こうせぇぇぇえええ!」
どこかのゴリラの雄叫びを無視して。
ちなみに、この後映画にあの二人は行ったらしい。
「…………私も翔子みたいにした方がいいかな」
ヤバい。こいつならそれを実行するだけの財力はある。ここでそんなことやられたら困る!
「こ、光正//」
「ほら、手を繋げばいいだろ。オレも逃げるつもりねぇしな」
「そうだよね!光正が逃げないためだもんね!」
心なしか紫乃の顔が紅い気がする。気のせいかな?
午後になった。今いる場所は……
「じゃあ、料理を始めるか」
「お願いします」
紫乃の家の厨房である。え?午前中のあのデートはって?ああ、使う食材を買っていただけだよ。ついでに吉井家の分も。というか、厨房広いなぁ。どうやら、普段からシェフを雇っているそうだ。羨ましい。
「まずは、自分一人で何か作ってみて」
「分かりました!」
三十分後……
「出来ました!」
「うむ」
いつも通り見た目はおいしそうな料理が出てくる。これは炒飯かな?
「では、いただく」
パクッ
うむ。何とも形容しがたい味だ。口の中で悪魔がダンスを踊り、意識が天の彼方へ持ってかれる不思議な味……そして目の前にはいつもの河。ん?河?
「ハッ!死ぬかと思った……」
あぶねぇ、またあの場所に行くところだった。
「どうだった?」
一応今回は料理の過程から全てを見ていたが……欠点はあるんだよ。確かに直した方がいいところもある。でも、それだけでこの天に召すような料理は出来ねぇんだよな……ん?でも確か卵焼きはこいつ何故か綺麗にできるんだよな……何でだ?でもエビフライで昇天した記憶がある……ん?そういえば、こいつの卵焼きってオレの味覚が正しければ……
「なぁ、紫乃。お前の作る卵焼きって、何も調味料入ってないよな?」
「えーっと。そうだね。でも、素材の味を楽しんでもらおうと……」
「ゆで卵と、目玉焼き。後は、調味料を入れた卵焼きを頼む」
「分かった」
オレの推測が正しければ……
「ここは……ああ、いつものおっちゃんか」
「いつものおっちゃんって、普通の人間はここに毎日のように来ぬぞ」
この足が透けていて頭に三角の頭巾を被っているおっちゃん。この河を管理する人で、向こう岸に渡ろうとすると金を要求してくる。この人(?)には給料が出ないのだろうか?不思議である。
「それで、本日は二回目だがどうしたんじゃ?」
「ああ、自分から来た」
「……もう、何も言わぬが。命を粗末にするもんでは無いぞ?」
「大丈夫だ。本当に死ぬときだったら、こんなところすぐに渡らされている。要するに、ここは生と死の狭間と言ったところだろ?」
「慣れって怖いのう……」
「さて、そろそろ復活するかねぇ」
「……ゲームの世界じゃないんだがのう」
「……予想通りか」
「バカなの!?ねぇあなたはバカなんでしょ!?何で復活して一言目がそれなのよ!」
予想通り河まで行けた。なるほどなるほど。
「紫乃。お前の料理の欠点は、調味料だ」
「……ちょうみ……りょう?」
「ああ。調味料が絶望的なまでに使いこなせていない。というか、分かってない」
「……えーっと?調味料が使いこなせない?」
おそらく、分量とかそもそもの調味料とか色々ミスって気付けば死を招く料理が完成したのだろう。
「うん。だから、そこを重点に徹底的にやる。というか、包丁の使い方もそこまで良くねぇしな。一から叩き込んでやる」
「お、お願いします……?」
その後、料理指導は夜まで続いた。成果があったかは今は不明である。