バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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出し物決定!(遅くね?)

 バンッ!

 

「あ、光正。どこ行ってた――」

「一回死んで来いやぁああ!」

「――グフッ!?」

 

 Fクラスの教室を思い切り開け、入ると同時にちょうど目の前にいた兄さん(ターゲット)を殴り飛ばす。

 

「酷いよ光正!まだ親父にも殴られたことないのに!」

 

 そう頬を抑え、倒れ込みながら言ってくる兄さん。正直キモイ。

 

「親父が関係あるか!」

「はいはい。アキも光正も、兄弟でバカやっていないの」

「えーっと、光正君。何で吉井君を殴ったんですか?」

 

 さすが姫路さん。オレが何となくで暴力を振らないことが分かっているみたいだ。

 

「このバカが、家の実印を勝手に貸しやがった」

「えーっと、問題あるの?」

「おおありだよこのバカ!おかげでオレが……オレが!」

「光正。暴力に頼っては解決しないものもある。心の広い兄さんに何でも話してごらん?」

「死んで詫びろ」

「何でさ!?」

 

 ……はぁ。なんだか疲れたな。そういや、今清涼祭の出し物決めているんだっけ。お、黒板に何か書いてある。

 

 

【候補① 写真館『秘密の覗き部屋』】

 

 

 名前がアウトだろ!写真館ならまだ分かる。でも、店名がアウトだから!

 

 

【候補② ウェディング喫茶『人生の墓場』】

 

 

 だから、名前がアウトだって!ウェディング喫茶ってのも微妙だが、店名がとにかくアウトだろ!

 

 

【候補③ 中華喫茶『ヨーロピアン』】

 

 

 ……え?中華なの?洋食なの?え?何の店?というか、中華なのにヨーロピアン?意味分かんない。

 

「……何だこれ?」

「今上がっている出し物の候補よ」

 

 ……おい……冗談だろ?誰か冗談だと言ってくれ……

 

 ガラッ

 

「皆、清涼祭の出し物は決まったか?」

 

 鉄人がやってきた。そして、黒板に書かれている文字を読むと……

 

「……補習の時間を倍にしたほうが良いかもしれんな」

 

 やっぱりオレたちがバカだと思われてる。

 

『せ、先生!それは違うんです!』

『そうです!それは吉井兄が勝手に書いたんです!』

『僕らがバカなわけじゃありません!』

 

 クラスの連中が兄さんをバカ扱いして弁明しようとする。いやオレはそもそも話し合いにいなかったんだけどね。

 

「馬鹿者!みっともない言い訳をするな!」

 

 鉄人の一喝で、思わず背筋が伸びる一同。オレも地味に伸びた気がする。

 なるほど。腐っても教師だ。クラスメートを売ってその場を逃れようとする根性が気に入らないのか?

 

「先生は、バカな方の吉井を選んだ事自体が頭の悪い行動だと言っているんだ!」

 

 まぁ、そうだけど……というか。何で兄さんが書記をやっているの?それに島田さんが議事をやっていたのも不思議だ。あ、雄二がやる気を出さずに寝ている。そっか、あれが原因か。

 

「まったくお前たちは……少しは真面目にやったらどうだ稼ぎを出してクラスの設備を向上させようとか、そういった気持ちすらないのか?」

 

 溜息まじりの鉄人の台詞。え?そんなことが出来るの?

 

『そうか、その手があったか!』

『なにも試召戦争だけが設備向上のチャンスじゃないよな!』

『いい加減この設備にも我慢の限界だ!』

 

 一気に活気づく教室内。そりゃそうだろう。設備に不満を感じて試召戦争を始めたんだ。当時より更に低い設備では我慢ならないのも当然だ。無論オレも不満しかない。

 

「み、皆さんっ!頑張りましょう!」

 

 これは姫路さんの声だった。彼女は立ち上がって胸の前で手を握りやる気を見せている。

 どうしたんだ?姫路さん自身も設備に不満が無かった訳ではないだろう。だがこんな風に率先するとは不思議だ。もしかしたら、何か厄介事を抱えているかもな。

 

『出し物はどうする?利潤の多い喫茶店が良いんじゃないか?』

『いや、初期投資の少ない写真館の方が』

『けど、それだと運営委員会の見回りで営業停止処分を受ける可能性もあるぞ』

 

 ……おいおい。どんな写真を展示するつもりだったんだよ。

 

『中華喫茶ならはずれはないだろう』

『それだと目新しさに欠けるな。汚いせいであまり人が来ない旧校舎だと、その特徴のなさは致命傷じゃないか?」

『ウェディング喫茶はどうだ?』

『初期投資が高すぎる。たった二日の清涼祭じゃ儲けは出ないんじゃないか』

『リスクが高いからこそリターンも大きいはずだ』

 

 クラスの皆はやる気になった。しかし、その分意見はまとまりそうに無かった。

 

「はいはい!ちょっと静かにして!」

 

 島田さんがパンパンと手を叩いて注意するが、効果はあまりないようだ。皆が次から次へと自分の意見を口にする。

 

『お化け屋敷なんかの方が受けると思う』

『簡単なカジノを作ろう』

『焼きとうもろこしを作ろう』

 

 おーさらに意見がバラバラになっていく。試召戦争のときとは比べ物にならないほどのまとまりの無さである。雄二はこんな連中をまとめていたのか。なるほど。雄二のクラス代表としての手腕はやはり相当なものだと思い知らされる。

 黒板の前では島田さんと兄さんがなにか話してるようだが、クラスメートの声の方が大きいせいでよく聞こえない。というか、さらに意見は増えているし。

 

「もうっ。とにかく静かにして!決まりそうにないから、店はさっきの挙がった候補から選ぶからね!」

 

 業を煮やした島田さんが無理矢理話をまとめた。だが、これは正しい判断だろう。このままでは企画が中途半端になってしまう可能性があったからな。

 

「ほらっ!ブーブー言わないの!この三つの中から一つだけ選んで手を挙げる事いいわね!」

 

 反論を眼力で押さえ、決を採りにかかる島田さん。

 おそらく雄二は島田さんのこういうところを期待して議事に推薦したんだろう……と思う。実際、推薦なのか立候補なのかすら知らないけどさ。

 

「それじゃ、写真館に賛成の人!はい、次はウェディング喫茶!最後、中華喫茶!」

 

 島田さんの声が教室に響く。しかし、喧騒はいまだ収まる気配がない。騒がしい中、島田さんが挙げられた手の本数をカウントし始めた。結果……

 

「Fクラスの出し物は中華喫茶にします!全員、協力するように!」

 

 接戦だったけど僅差で中華喫茶が勝利となった。ここで、決戦投票をしないあたり分かっているのだろう。

 

「それなら、お茶と飲茶は俺が引き受けるよ」

 

 すると須川君が立ち上がる。兄さんの話によれば彼がこの中華喫茶を提案したらしい。

 

「…………(スクッ)」

 

 そしてムッツリーニも立ち上がった。

 

「ムッツリーニ、料理なんてできるの?」

「…………紳士の嗜み」

 

 中華料理が紳士の嗜み?そんな話聞いたことないけど、ムッツリーニのことだからどうせ下心が絡んだ理由だろう。まあ、手先が器用で物覚えも早いのだから安心して任せられるだろう。

 

「んじゃ、オレも」

「そっか、光正も料理できるもんね」

「ああ、それに厨房にいた方が女子に近づかれなくて済むからな」

「あはは……理由が相変わらずだね……」

 

 当たり前だ。もし、女(特に巨乳)に接客なんてした日にはオレは死んでしまう。

 

「まずは厨房班とホール班に分かれてねもらうからね。厨房班は須川、土屋、光正のところ。ホール班はアキのところに集まって!」

 

 そして何故か兄さんはホール班のトップにされていた。兄さんも料理上手いんだけどな……

 

「それじゃ、私は厨房班に……」

「ダメだ姫路さん!キミはホール班じゃないと!」

 

 平然と厨房班に入ろうとした姫路さんを兄さんが止める。

 

『明久、グッジョブじゃ』

『ナイス判断』

『…………!(コクコク)』

 

 その破壊能力を知っている秀吉、オレ、ムッツリーニからのアイコンタクト。ちなみにアイコンタクトが兄さん以外とも使えるようになった。まぁ、最大の犠牲者であったらしい雄二は寝ている為か気づかない……はずだけど、よく見ると小刻みに震えていた。夢の中で、姫路さんの料理を食べてるのか?

 

「え?吉井君、どうして私はホール班じゃないとダメなんですか?」

 

 自覚のない殺戮兵器が首を傾げる。

 オレは本当のことを話して、紫乃のように少しずつ更生させていく(それでもまだ三日に二日は死んでいるが)ほうがいいと思うし、何より本人のためになると思う。

 兄さんにそうやって伝えたが、本人が傷つくからという理由で、いまだはぐらかし続けている。

 

「あ、えーと、ほら、姫路さんは可愛いから、ホールでお客さんに接したほうがお店として利益が痛あっ!み、美波!僕の背中はサンドバックじゃないよ!?」

「か、可愛いだなんて……吉井君がそう言うなら、ホールでも頑張りますねっ♪」

 

 そうだ。そして頼むから、ホール()()で頑張ってくれ。

 

「アキ。ウチは厨房にしようかな~?」

「うん。適任だと思う」

「…………」

「それなら、ワシも厨房にしようかの」

「秀吉、何を馬鹿なことを言ってるのさ。そんなに可愛いんだから、もちろんホールに決まってみぎゃあぁっ!み、美波様!折れます!腰骨が!命に関わる大事な骨が!」

「……ウチもホールにするわ」

「そ、そうですね……それが、いいと、思います……」

 

 ……大丈夫なのか。

 こうして、オレたちの清涼祭は幕を開ける。果たして、無事に生き残れるのか……

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