バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
「だってアンタと坂本って、愛し合ってるんでしょ?」
「もう僕お婿にいけないっ!」
帰りのHRも終わり帰ろうとした矢先。こんな意味不明の会話が聞こえてきた。
というか、なんで兄さんと雄二が愛し合ってると言われているの?
まぁ、去年から言われていたけどさ。
「誰が雄二なんかと!だったら僕は、断然秀吉の方がいいよ!」
いいのかよ。相手は男だぞ?
「……あ、明久?」
そして、偶然二人の会話を聞いていた秀吉の動きが止まる。あれ?おかしなことになっていない?
「そ、その、お主の気持ちは嬉しいが、そんなことを言われても、ワシらには色々と障害があると思うのじゃ。その、ホラ。年の差とか……」
「いやいや、お前らは同い年だから。……あと兄さん。今、秀吉なら良いとか思ってないか?」
「そ、そんなことないよー」
怪しすぎるだろ……。というか丸わかりだ。
「それじゃ、坂本は動いてくれないってこと?」
「え?あ、うん。そういうことになるかな」
でも、雄二がどうしたんだろう?確かに奴がいればもっと利益は増えるだろうけど。
「なんとかできないの?このままじゃ喫茶店が失敗に終わるような……」
妙な事を言う島田さん。
「というかこれ何の話?兄さんと雄二がラブラブだとか、喫茶店が失敗するとか話が見えてこないんだけど」
秀吉は何故か先程から顔を赤くしているため、オレが疑問を二人に聞く。
「深刻って程じゃないんだけど、喫茶店の経営とクラスの設備の話で――」
「アキ、そうじゃないの。本当に深刻なのよ……」
「え?どういうこと?」
んん?何が深刻なんだ?
「とりあえず、オレたちにも詳しく教えてくれ。そうしないと、何も動くことが出来ない」
「本人には誰にも言わないで欲しいって言われたんだけど、事情が事情だし……けど、一応秘密の話だからね?」
「う、うん。わかった」
島田さんの真剣な顔に兄さんが少し気圧されてるようだった。
「実は瑞希なんだけど」
「姫路さん?姫路さんがどうしたの?」
「あの子、転校するかもしれないの」
「ほぇ?」
島田さんの言葉に兄さんが変な声を出す。
「島田さん。それは一体……って、おい兄さん?」
「む。マズイ。明久が処理落ちしかけておるぞ」
「このバカ!不測の事態に弱いんだから!」
「明久、目を覚ますのじゃ!」
秀吉が兄さんの肩を揺すって起こそうとする。
「秀吉……モヒカンになった僕でも、好きになってくれるかい……?」
「……どういう処理をしたら、瑞希の転校からこういう反応が得られるのかしら」
「ある意味、稀有な才能かもしれんのう」
なるほど。オレもこの才能を受け継いでしまっているのか。
「起きろ!」
バコッ!
「光正。いきなり蹴るなんて何を……」
「……はっ!少しトんでた!美波!姫路さんが転校ってどういうこと?」
とりあえず、蹴れば大抵何とかなる。
「どうもこうも、そのままの意味。このままだと瑞希は転校しちゃうかもしれないの」
「このままだと……?」
妙な言い回しだ。この言い方だと転校はまだ確定したわけではないみたいだ。
「島田よ。その姫路の転校と、さっきの話が全然繋がらんのじゃが」
「いや、秀吉、もしかしたらこのFクラスが原因かもしれない」
「そうなのよ。転校の理由が『Fクラスの環境』なんだけど」
「ってコトは、転校の理由は両親の仕事の都合とかじゃなくて……」
「そうね。純粋に設備の問題ってことになるわ」
違う。Fクラスの環境って言うのは設備だけを指すものじゃない。Fクラスというそのものを指すだろう。例えば競い合えるような人が同じクラスにいないという学習環境のことも指しているだろう。
「それに瑞希は身体も弱いから……」
「そうだよね。それが一番マズイよね……」
島田さんの言うとおり、この劣悪な教室の環境は姫路さんの健康を害する可能性も十分ある。おそらく冬になっても今の調子で隙間風が入ってきたとしたら、姫路さん以外の生徒でも体調を崩すだろう。
「なるほどのう。じゃから喫茶店を成功させ、設備を向上させたのじゃな」
「うん。瑞希も抵抗して『召喚大会で優勝して両親にFクラスを見直してもらおう』とか考えているみたいなんだけど、やっぱり設備をどうにかしないと」
やはり、Fクラスはバカの集まりだからというのが転校を勧められる一因になっているだろう。
姫路さんの行動も間違ってはいない。が、それ以上に健康の方が問題になるのは自明だ。
「……アキはその……瑞希が転校したりとか嫌だよね……?」
島田さんが探るような目で兄さんを見ている。
「もちろん嫌に決まってる!姫路さんに限らず、それが美波や秀吉であっても!」
「ん?オレは?」
「えーっと…………嫌かも?」
「おい!」
「そっか……うん、アンタはそうだよね!」
まぁ、オレの場合は兄弟というか双子だから認識があれかもしれないけど、雄二やムッツリーニであっても秀吉や島田さんと同じ回答を得られただろう。…………おそらくね。
「さて、この問題を解決するなら、雄二も必要だ。何としても焚きつけるか」
「そうじゃな。ワシもクラスメイトの転校と聞いては黙っておれん」
「それじゃ、まずは雄二に連絡を取らないとね」
兄さんは気を取り直し、雄二に電話をかける。呼び出し音が受信器から聞こえる。
「もしもし、あ、雄二。ちょっと話が」
兄さんが雄二に話をしようとする。
「え?雄二。今何をしてるの?」
しかし、どこか様子がおかしい。
「雄二!?もしもし!もしもーし!」
そして、こっちの話を伝える前に切られたようだ。
「坂本はなんて言ってた?」
「えっと『見つかっちまった』とか『鞄を頼む』とか言ってた」
「……なにそれ?」
島田さんが使えない奴を見るような目で兄さんを睨む……が、今のは兄さんのせいではないと思う。だって、向こうが用件を伝える前に電話を切ったんだし。
「大方、霧島翔子から逃げ回っているのじゃろう。アレはああ見えて異性には滅法弱いからのう」
秀吉が腕を組んでうんうんと頷いている。そう言えばあの時も手錠?をさせられていたっけ。
「そうすると、坂本と連絡取るのは難しいわね」
島田さんが大きく息を吐く。
「いや、これはチャンスだ」
兄さんがいきなり明るい声を出す。
「え?どういうこと?」
「雄二を喫茶店に引っ張り出すには丁度いい状況なんだよ。うん。ちょっと三人とも聞いてくれるかな?」
「それはいいけど……坂本の居場所はわかっているの?」
「大丈夫。相手の考えが読めるのは、なにも雄二だけじゃない」
「何か考えがあるようじゃな」
「まぁね」
「じゃあ、任せたよ」
オレたちは兄さんに連れられて教室をあとにした。