バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
「じゃあ、兄さん。オレはAクラスに行ってるわ」
「そう?天草さんに会いに?」
「まぁ、シフト入ってねぇしな」
「否定しないんだ……」
「じゃあ、三回戦でな」
「あ、うん」
こうして兄さんと別れ、Aクラスを目指すオレでだった。しかし……
「すいませんです」
「ん?」
振り返ると小学生くらいの女の子がオレに声をかけてくる。ん?この子どっかで見たことがあるような……?
「バカなお兄ちゃんを知りませんか?」
バカなお兄ちゃんか……うーん。この言い方からして身内では無いな。というか、バカな男ってうちのクラスにたくさんいるんだが……一体誰のことだろうか?
「うーん。該当者が多くて絞れない……他に何か特徴はあるかな?」
「すっごくバカなお兄ちゃんだったです!」
…………これもしかしなくとも兄さんじゃないのか?
「そうだね……あ、雄二」
そんなこと考えている時にトイレから雄二が出てきた。
「ん?どうしたんだ光正。女子小学生を誘拐するつもりか?」
誤解だ。ムッツリーニじゃあるまいし。
「違うよ!」
「あー悪い。ナンパ中だったか。でも、やめといた方がいいぞ」
「当たり前だろ!女子小学生をナンパするなんてどこのロリコンだよ!」
「いや、そういう意味で言ったんじゃない」
「は?」
こいつは何言ってるんだ?女子小学生をナンパするなんて最低のロリコンぐらいしかいな――
「天草に殺されるぞ」
――マズイマズイマズイマズイ……殺されるぞオレ。いや、きっと事情を話せば理解してくれる!いや、そもそもここであったことが紫乃に漏れなければ大丈夫。そうだ、きっと大丈夫。
「雄二。君は何も見なかった。違うか?」
「は?」
「じゃあ、そういうことで!あ、そこの子はオレたちの店まで連れてけば問題が解決するはずだ」
そしてオレはダッシュで逃げた。
「っておい……全く押し付けやがったあの野郎」
「すみませんです」
「気にするな。じゃあ、行くか」
「おかえりなさいませ。ご主人様」
Aクラスの店に入った時、出迎えてくれたのは紫乃だった。あれ?さっき来た時も紫乃だったような……
「光正を出迎えるのは私の役目。これは譲れない」
あ、なるほど。この役目を譲りたくないから……って、納得できるか!
「今回は客としてきているよ」
「分かりました。お席までご案内します」
さすがAクラス。今もお客さんが一杯いるね。オレたちFクラスとは大違いだ。
それにしてもメイド喫茶だから、てっきり男性が多いと思っていたけど、女性も多いみたい。まぁ、あれだ。もし、紫乃を変な目で見る奴がいたら……オレが断罪してやる。
って、何でこんなことを思うのだろうか?
「では、メニューをどうぞ」
立派な装丁のメニュー表だ。さすがAクラス。金の力がここにも働いていたか。
まぁ、中身……というか、メニューも何があるか知っているし、メニュー表は前に見せてもらったから覚えている。さて、俺は何を頼もうかなぁーと。
~メニュー~ 吉井光正専用
んん?ちょっと待て。何故、このメニューオレ専用になっているんだ!?おかしいだろ!
・メイドとの触れ合い
なんだこの漠然としたメニューは!?後それはメイド喫茶でやることじゃない!
・シフォンケーキ(メイドお手製)
ちょっと待て!死に送るようなものをメニュー表に乗せるんじゃない!
・メイドとの婚姻届
お・か・し・い・だ・ろ!バカじゃないの!?ねぇバカじゃないの!?
「メニューはお決まりになりましたか?」
紫乃が聞いてくる。うん。メニューはまだまだあるが……一つ言わせろ。
「まともなメニューはないのか!?」
「え?全部まともでしょ?」
……もう末期だ。こいつはもうダメだ。
「仕方ない。じゃあ、オレは――」
「ご注文を繰り返します」
「――ってちょっと待て!オレはまだ注文していないだろ!」
「『メイド特製シフォンケーキ』が一つでよろしいですね」
「……はぁ。もうそれでいいよ」
「かしこまりました」
……というか、『シフォンケーキ(メイドお手製)』と『メイド特製シフォンケーキ』の違いって一体……?
「あれ?光正君ですか?」
「ほんとだ光正じゃない」
「あぁ!さっきのお兄さんです!」
振り返ってみるとそこには姫路さん、島田さんとさっきの子供。後は雄二と兄さんがいた。
「あれ?みんなしてどうした?その子の親でも探しているのか?」
「いや。その必要はなくなった」
こっそり教えてもらったがどうやらこの子は島田さんの妹で名を葉月というらしい。
「あ、そう。で、何でここに?」
「ちょっとここで良からぬ噂を流している連中がいるらしくてな」
なるほど。風評被害というやつか。
「……では、メニューをどうぞ」
あー彼らの担当は霧島さんか。まぁ、雄二がいるから当然だな。
「こちら『メイド特製シフォンケーキ』で御座います」
そしてこちらの担当のメイドが料理を運んでくる。しかし、あることに気付く。
「あれ?フォークとか食器は?」
「ないよ」
「はい?」
料理だけで食べるためのものが一切用意していなかった。しかもそんなのが存在し無いと言い切った。
「全然よろしくねぇぞっ!?」
「うるさいなぁ雄二。自分で『メイドとの婚姻届』を頼んでいてよろしくないとか店に迷惑だよ」
「いやいやそんなメニュー普通のメイド喫茶で存在しないからな!?」
でもなぁ……オレのメニュー表にはあったんだよなぁ……メイドとの婚姻届。
「……では食器をご用意致します」
隣では霧島さんが女子三人にはフォークが、兄さんには塩が、雄二には実印と朱肉が用意された。
「しょ、翔子!これ本当にうちの実印だぞ!どうやって手に入れたんだ!?」
知るか。
「というか、紫乃。とりあえず、食器だしてよ。このままだとオレが素手で食う羽目になるぞ?」
「はい、光正」
すると、どこからかフォークが出てきて、ケーキを一かけら刺してオレに差し出す。
「あーん」
そして『あーん』と言い、オレに口を開けるよう促す。
「あーん……うん。今回は成功かな?」
「やった!」
喜ぶ紫乃。うんうん。和むねぇ。
『おかえりなさいませ、ご主人様』
『おう二人だ。中央付近空いてるか?』
と、和んでいると新規のお客さんが来たようだ。ん?でも、この声どこかで……
『それにしても、この喫茶店は綺麗でいいな!』
『そうだな。さっきいった二ーFの中華喫茶は酷かったからな!』
『テーブルが腐った箱だったし、虫も湧いていたもんな!』
あー営業妨害をしてきた常夏コンビか。
「紫乃。一つ質問だ」
「なに?」
「あの常夏コンビはこの店に来店したのは初めてか?」
「違う。さっき出ていってまた入ってきた。話している内容も同じ」
「注文とかはしているか?」
「ううん。休憩所代わりに使ってるみたい」
「そうか……」
紫乃の顔が歪む。予想通りと言うべきか、この店にとっていい客では無いことは確かのようだ。
近くのテーブルでは雄二たちも霧島さんと同じような話をしているが……
「お、俺がいつお前の着ているメイド服が欲しいと言った!?予備のヤツがあったら貸してくれって意味だ!」
……何故か雄二が霧島さんのメイド服が欲しいって話になっていた。うん。意味わからん。
「ねぇ光正。真ん中で騒いでいる人たちと同等ぐらいに坂本君たち目立ってるわよ」
「注目の的になってるな。これじゃ、常夏コンビに制裁を加えられないな」
というか、メイド服で何をするつもりだ?オレとしては颯爽とぶっ飛ばした方がいいと思うが……
「でも、どうするつもり何だろう?こっちとしては排除してくれるのはありがたいけど……」
「まぁ、仮にもAクラスの
『あの店、出している食い物もヤバいんじゃないか?』
『言えてるな。食中毒でも起こさなければいいけどな!』
『二ーFには気をつけろってことだな!』
ピキッ
「よし……あいつらシバク」
「待って光正!そんなことしたらAクラスに被害が……」
「知るか」
「え!?ほ、本当に待――」
「光正。ここは俺に任せろ。お前は取りあえず落ち着け」
「……ッチ。分かったよ。蹴り飛ばしてぇがここは我慢してやる。紫乃にも迷惑がかかるしな」
本当は今すぐに蹴り飛ばしたいがここは我慢しておこう。
「……雄二、これ」
霧島さんがメイド服を抱えて戻って来た。
「おう。すまないな」
「……貸し一つ」
「だ、そうだ。明久」
「わかったよ。お礼に今度雄二を一日自由にしていいよ」
「……ありがとう。吉井兄も弟と同じく良い人」
「ちょっと待て!どうして俺が!」
差し出された雄二の必死の抗議も虚しく、霧島さんは嬉しそうにその場を離れて行った。
「で、これをどうするの?」
兄さんの手元には先ほど姫路さんから借りていたらしいポーチとメイド服。コレ等を考えると……もしかして……
「……着るんだ」
恨みがましく兄さんを見て言う雄二。うん。兄さんに女装させるつもりかな?
「だってさ、姫路さん」
しかし当の本人はこちらの意図に気付かない。
「え?わ、私が着るんですか?」
兄さんは勘違いをしており、いきなりの事に目を丸くしている姫路さん。
「バカを言うな。姫路が着ても攻撃なんて出来ないだろうが」
「それじゃ、美波?でも、胸が余っちゃうとぶべらぁっ!」
「ツギハ、ホンキデ、ウツ」
凄い殺気だ。オレでもそこまでの殺気は出していない……はず。
「島田でもない。それなら面が割れてしまうだろうが」
「……まさか」
兄さんは漸く気付いたみたいで……。
「着るのはお前だ、明久」
「いやあぁぁぁっ!」
叫び声をあげるのだった。
「光正が着ればいいじゃないか!僕よりも絶対に似合うよ」
「いや、あいつはダメだ」
「何でさ!」
「光正。あ~ん」
「あ~ん。うん。おいしいよ」
「えへへ~」
「今は天草が光正の怒りを抑えている状態だ。女装なんてしたらブチ切れるぞ」
オレは女装したぐらいじゃキレねぇぞ。ただ、腹の虫の居所が悪いからキレるだけだ。
「で、でも……」
「やれやれ。我侭を言う奴だな。それなら、あっち向いてホイで決めないか?」
あ、雄二がこうやって言うって事は、また兄さんを騙すつもりだろう。流石に兄さんもそれは分かっているみたいで、裏を掻いてやろうと言うような顔をしている。ただね、兄さん。勝負を受けた時点で負けだと思うよ。
「よし、その提案受けるよ」
あ、兄さん負けたわ。
「それなら行くぞ、ジャンケン」
「「ポンッ」」
兄さんはパー。雄二はチョキで、兄さんの負け。しかしあっち向いてホイはここからが本番だ。
「あっち――」
雄二が勢いよく人差し指を出してきた。まるで兄さんの目を刺すかのような勢いでだ。
「その手に乗るかっ!」
と言って兄さんは目を逸らさずに雄二の指をじっと見ていた……が。
「向いて――」
ブスッ
「ぎいやぁぁっ!目が、目がぁっ!」
雄二は兄さんの目を刺し、兄さんは目を抑えてのた打ち回っていた。
「ホイ!……ふっ。俺の勝ちだな」
そして、雄二は兄さんののけぞった方向に指していた。うん。雄二の作戦勝ちだ。
「ねぇ光正。私には坂本君が目潰しをした気がするのですが……本当に明久さんと坂本君は友達なのですか?」
「いつものことだ。気にするな」
本当にいつものことなのだ。この二人が友人か怪しくなるのは。
「あの、吉井君。大丈夫ですか?」
姫路さんがハンカチを差し出す。なんて優しいのだろうか。
「ありがとう。まったく、雄二の卑劣さには驚かされるよ」
でもさ兄さん。ハンカチに目を当てているのは分かるけど、匂いを嗅いでいるようにみえるのはオレの錯覚か?
「あ、あはは……。でも、きっと大丈夫ですよ」
「そうだよね。あんな卑怯な勝負は無効――」
「吉井君ならきっと可愛いと思いますっ」
うん。そういう問題じゃないよね?