バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
学園祭の出し物を決める為のアンケートにご協力下さい。
『喫茶店を経営する場合、ウェイトレスのリーダーはどのように選ぶべきですか?
【①可愛らしさ ②統率力 ③行動力 ④その他( )】
また、その時のリーダー候補も挙げてください』
土屋康太の答え
『【①可愛らしさ】 候補……姫路瑞希&島田美波』
教師のコメント
甲乙つけがたいといったところでしょうかね。
吉井明久の答え
『【①可愛らしさ】 候補……姫路瑞希 木下秀吉 島田美波』
教師のコメント
用紙についている血痕が気になるところです。
吉井光正の答え
『【①可愛いらしさ】 候補……天草紫乃』
教師のコメント
君が質問にまともに答えてくれて先生は嬉しいです。
坂本雄二の答え
『【④その他(結婚相手)】 候補……霧島翔子』
教師のコメント
どうしてAクラスの霧島さんが、用紙を持ってきてくれたのでしょうか?
「で、三回戦は不戦勝じゃったと?」
「うん。相手が食中毒で棄権したんだ」
「まぁ、運が良かったということで」
三回戦。会場に向かったオレたちを待っていたのは相手の棄権による不戦勝という結果だった。まぁ、三回戦の科目はオレにとって得意とも苦手とも言えない教科だったのでよしとしておこう。
「ならば、済まぬがこっちの建て直しに協力してくれんか?」
秀吉が申し訳無さそうに表情を曇らせながら言ってくる。別に秀吉の責任じゃないのにな。
「雄二、何か良い方法は無いの?少しは考えていたんじゃないのか?」
「ああ。一度失った客を取り戻す為にも、何かインパクトのある事をやる必要がありそうだな」
そう聞きながら空席だらけのオレたちの教室を見る。
悪評の元を断ったとは言え、流れた悪い噂は簡単には消えることが出来ない。雄二の言うとおり、何かインパクトのある事をしなければお客は来てくれないだろう。
「ふむ。それで何をするか、じゃが……」
秀吉が教室を見渡す。オレや兄さんも見渡しているが、こんな設備の教室では特に出来そうも無い。
「雄二、何かアイデアはある?」
「任せておけ。中華とコレでは安直過ぎる発想だが、効果は絶大な筈だ」
そう言って雄二が取り出したのは、刺繍も見事な水色と白のチャイナドレスだった。
というか、どっから取りだしたのそんなもの。
「ほう。若干裾が短いような気もするが、これならば確かにインパクトはあるじゃろうな。コレを宣伝用に――」
まあ確かに秀吉の言うとおり、確かに宣伝にはなる。王道だけど悪くない。
「ああ。コレを――明久が着る」
それはインパクトがありすぎる……が。
「よっしゃ、メイクは任せろ」
「ちょっ……!お願い、許して!メイド服の次にチャイナまで着たら、きっと僕はホンモノだって皆に認識されちゃう!」
うーん。確かにそれは弟のオレからしたらよくないな。兄弟の縁を切りたくなるレベルに。
「冗談だ。これは秀吉と姫路と島田に着てもらう」
「あ、なんだ。良かった~」
「オッケー。それならいいよ」
「ワシが着るのは冗談ではないのかのぅ……?」
……まぁ、秀吉はセーフということで。
「たっだいま~!って、なんだ。アキってばメイド服脱いじゃったんだ」
「あ……残念です。可愛かったのに……」
「お兄ちゃん。葉月もう一回見たいな~」
と、ここで女性陣が戻って来た。
「あはは。残念ながら、ただで人のコスプレを見られるほど世の中甘く無いよ?」
兄さんがにこやかに笑って断った。気持ち悪い笑顔だ。
「そういうことだ。姫路に島田、クラスの売り上げの為に協力してもらうぞ」
そう言った雄二と兄さんは逃さないかのように、チャイナを片手に退路を断った。まるで、狙った獲物を逃さないかのようにだ。
「な、なんだか二人とも、目が怖いですよ……?」
「凄く邪悪な気配を感じるんだけど……」
若干引き気味になるエモノ……もとい女子二名。残念というべきか逃げ場は残されていない。
「やれ、明久!」
「オーケー!へっへっへ、大人しくこのチャイナ服に着替え痛ぁっ!マジすんませんした!自分チョーシくれてましたっ!」
「弱いな、お前……」
「はぁ。いろいろと情けねぇ……」
島田さんは近づく兄さんを迎撃した事により、あっさりやられるのを見た雄二とオレは呆れた。ただし、兄さんの心配はしない。
「どうしてまた、急にそんな事を言い出すのよ?前に須川はチャイナドレスを着たりする事は無い、って言ってたと思うけど」
兄さんを迎撃した島田さんは渋い顔をする。
「店の宣伝の為と、明久の趣味だ」
「そうそう。兄さんはチャイナドレスが好きだから」
「大好――愛してる」
あ、嘘つこうとして失敗したやつだ。
「……お前は本当に嘘を吐けないヤツだな」
「ああ、心底バカだと思うぞ」
「し、仕方ないわね。店の売り上げの為に、仕方なく着てあげるわ」
「そ、そうですね!お店の為ですしね!」
島田さんと姫路さんが、渋々従うという体裁を保とうとしているんだろうが、本心が兄さん以外にバレバレだ。
「お兄ちゃん、葉月の分は?」
「え?葉月ちゃんも手伝ってくれるの?」
「お手伝い……?あ、うん!手伝うから、あの服葉月にもちょうだい!」
この子は本当に良い子だな。とても島田さんの妹とは思えない。まぁ、冗談はおいといて……
「けど、ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど、葉月ちゃんの分は数が……」
「…………!!(チクチクチクチク)」
「…………(チクチクチクチク)」
「ムッツリーニに光正!?どうしてそんな凄い勢いで裁縫を!?しかも息のあった絶妙なコンビネーションでチャイナドレスが出来上がって……って言うかさっきまでムッツリーニはいなかったよね!?」
「…………俺の嗅覚を舐めるな」
何故だろう。格好良い台詞のはずが、凄く格好悪く見える。まぁ、今は集中だ集中。
「それじゃ、三回戦が終わったら着替えますね」
姫路さんがそう言いながら腕時計を確認している。そっか、姫路さんたちの試合はこれからか。
「いや、今着替えてもらいたい」
「「え?」」
雄二の言葉に二人の声がハモる。
「宣伝の為だ。そのまま召喚大会に出てくれ」
そう言えば。召喚大会の三回戦からは一般公開が始まるんだったっけ。客が集まっているから宣伝には持って来いだ。……っと、後はここの調整をして……
「こ、これを着て出場しろって言うの……?」
「流石に恥ずかしいです……」
まあ二人がああ言うのも無理もないだろう。一般客だけでなくメディアもいるから、かなり大勢の人の前でチャイナドレスを着て動き回るのは流石に恥ずかしいと思う。
「二人とも、お願いだ」
兄さんはそう言って頭を下げる。何時に無く真剣な顔だ。……はぁ。本当に兄さんは誰かの為なら自分から頭を下げれる。相手が姫路さんなら尚更だ。本人は自分の我侭だと思っているんだろうが……そんなところがオレにはない、兄さんを尊敬するところなんだろうな。でもまぁ……
「明久……。お前は本当に――チャイナが好きなんだな……」
「メイド服だけでなくチャイナドレスも好きなんだな……」
そんな空気。今はいらねぇな。
「もしかして吉井君、私の事情を知って――」
「仕方ないわね。クラスの設備の為だし、協力してあげるわ。ね、瑞希?」
姫路さんの言葉を遮った島田さんが色よい返事をする。
「あ。は、はいっ!これくらいお安い御用です!」
そして、姫路さんも快諾した。
『兄さん。余計な事を考えていただろ?』
兄さんにアイコンタクトを飛ばす。今、良からぬことを感じたから。ん?チャイナドレスはって?後の細かい微調整はムッツリーニに任せた。
『………何の事かな?』
ごまかすのが下手だ。
『例えば、姫路さんにお安い御用なら今後もちょくちょくお願いしようとか』
『光正。これ以上言うなら、天草さんに「光正はチャイナドレスが好きなんだよ」って吹き込むよ?』
『脅しのつもりなら百年早いぞ』
『……僕の方が兄なんだけどね……一応』
だから、どうした。
「それならスグに着替えて会場に向かってくれ。大会では自分達の所属がFクラスである事を強調するんだぞ」
そうすれば喫茶店の宣伝とFクラスのレベルのPRになって、二つの目的を同時に果たせる。
「オッケー。任せておいて。行くわよ瑞希」
「はいっ」
チャイナドレスを抱えて教室を出て行く島田さんと姫路さん。
「…………できた」
「わ、このお兄さん凄いです!」
さすがムッツリーニ。もう微調整を終わらせて、チャイナドレスを完成させた。
「というか、なんで光正は手伝ったの?もしかしてロリコ……」
「しゃべるな。そしてロリコンじゃない。気まぐれだ。ただの」
そう、これは気まぐれだ。
「ふむ。それでは着替えるとするかの」
「ちょ、ちょっと秀吉!ここで着替えるの!?きちんと女子更衣室で着替えないとダメだよ!」
バカなのか?なんで秀吉が女子更衣室で着替えるの?
「……最近、明久がワシの事を女として見ておるような気がするんじゃが」
「気のせいだ。秀吉は秀吉だろう」
「そうだよ。秀吉は秀吉。他の何者でもない」
「うんうん。雄二と光正の言うとおりだよ。秀吉は性別が『秀吉』で良いと思う。男とか女とかじゃないさ」
「……俺が言ったのはそう言う意味じゃない」
「……無論。オレもだ」
どうやら兄さんの頭がおかしいみたいだ。今後、兄さんには精神科か、脳外科へ行かせ……。
「んしょ、んしょ……」
「……………!!(ボタボタボタ)」
「は、葉月ちゃん!君もこんな所で着替えちゃダメだよ!ムッツリーニが出血多量で死んじゃうから!」
この空間を一言で言い表すなら……カオスだ。