バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
『それでは、四回戦を始めたいと思います』
マイクを持った審判の先生に呼ばれ、オレたちはステージ上へ。
そして、辺りを見渡すと外部からの来場客の為に作られた見学者用の席はほぼ満員なのが見えた。
これなら、宣伝効果も抜群だろうな。
『四人とも、準備はいいですか?』
「はい。では――」
大きく息を吸い、召喚獣をよぶ。
「「「「
オレたち四人の声が綺麗に揃い、それぞれの足元に魔法陣が現れる。
自分たちからすればいつもの光景でも、外部からの人にとっては珍しいご様子で小さく歓声があがる。
ちなみにだが、外部の方にも分かりやすくするためなのか、ディスプレイに点数を表示するらしく、情報処理に少し時間がかかっている。
『では、四回戦を――』
審判の向井先生が開始宣言をしようとする。が……
「ちょっと待ってください」
誰かに止められた。いや、止めたのオレだけどね。
「少しマイクを拝借しますよ」
そう告げてオレは返事も待たずにマイクを
『清涼祭にご来場の皆様。こんにちは』
兄さんもオレの意図を組み取り姫路さんと島田さんを呼び寄せる。
『ここにいる私たち四人は、本格飲茶を提供する二-Fの中華喫茶で働いています。このように可愛らしい女子も一生懸命頑張って働いていますので、よろしければどうぞお立ち寄り下さい』
オレがお辞儀をすると、兄さんや姫路さん、島田さんが動きに合わせて大きくお辞儀をした。
「「「よろしくお願いします!」」」
ついでに既に召喚された召喚獣達もペこり、と動きを揃えさせる。これで少しは印象に残るだろう。
「先生。ありがとうございます。マイクをお返しします」
そして宣伝を終えので、マイクを審判の先生に手渡し、軽く頭を下げる。
『──と言う事だそうです。ご見学の皆様、お時間に余裕がありましたら、出場選手たちのいる二-Fに立ち寄って見て下さい』
苦笑しながらも宣伝に協力してくれるとは、あの先生はノリが良い。そこにはきちんと感謝しないとな。
『さて、それではCMも終わりましたし、いよいよ召喚大会の始まりです。Fクラスの四人とも、良い試合をお願いします』
先生がそう告げると、オレたちから少しだけ距離を取った。
「アキに光正。ここまでよく勝ち残ってきたわね。でも、ウチらに勝てるとは流石に思っていないでしょう?」
わぁー余裕だねぇ。強敵となるはずの三年生が受験勉強のためほとんど参加していないんだ。この大会、優勝候補と言われているだけあって、オレたちは眼中にないらしいな。
「甘いよ島田さん。君たちは確かに優勝候補だ。しかし、それ故に勝ち上がってくる事は簡単にオレたちは予想できた。それなら、対策はいくらでも打てるというものだよ?」
オレは大型ディスプレイを指差して自信満々に応えた。
『Fクラス 姫路瑞希&島田美波
古典 399点& 6点 』
「こ、古典!?四回戦は数学じゃなかったの!?」
狼狽する島田さん。さすが、帰国子女だ。ただえさえ日本語が読めないレベルなのに古典が分かるわけがない。
「君たちに渡した対戦表だが──アレは雄二の手作りだ」
「だ、騙したわねっ!!」
そうだ。島田さんと姫路さんに渡した対戦表には細工がしてある。対戦相手には手を加えていないが対戦科目には少し手を加えてある。
「さぁこれで勝負は殆ど二対一!オレたちの勝ちは貰ったようなものだな、兄さん!」
「その通りだよ光正!6点しか取れていない美波の召喚獣なんて、はっきり言っていないも同然さ!」
「くっ!なんて卑怯な連中なの!」
そんな呻きをよそに、ディスプレイにはオレたちの点数も表示される。
『Fクラス 吉井光正&吉井明久
古典 104点& 9点 』
「……………………兄さん」
「……………………正直、悪かったと思ってる」
「……………………」
「……………………」
あ、これどうしよう。オレは古典を使うと分かった瞬間に、ひたすら文法を詰め込んでいつもの1.5倍ぐらいの点数をとったのに、姫路さんの前だと風の前の塵に同じだ。どうやって勝とう。
「よし、光正!ここはそれぞれ個人戦で行こう!僕は美波を受け持つから、光正は姫路さんを頼む!」
「待て!それではオレの負担が大きすぎる!」
オレと姫路さんの点数差は約4倍。兄さんとは約45倍。
…………あれ?これもしなくとも詰みゲー?
「わかってる!だからそこは、得意の頭脳プレイでカバーするんだ!」
「なんて無茶を言いやがるんだこのクソ兄貴!」
このクソ野郎。自分はいなくてもそこまで支障がない点数だからって……ん?いなくても支障がない?
「……仕方ない。こうなれば兄さんの言うとおり頭を使ってやる。──島田さんに姫路さん」
「はい?」
「なによ?」
「兄さんが如月ハイランドのペアチケットを手に入れようとしている、と話をしていたよね?」
この話を覚えてくれていればいいけど……
「それがなにか?」
良かった。ひとまずセーフだ。
「一緒に行こうとしている相手が雄二だと言う話だが──――あれは嘘だ」
まぁ、普通なら誰でも分かるよね。でも……
「「ええぇっ!?」」
この二人には分かってないみたい。
「そ、それじゃ、一体誰を……?」
「そんなの、決まっているじゃないか」
女子だよ。……と言おうと思ったがそれでは面白くない。よし、ここはあの人を使うか。
「兄さんが誘おうとしているのは、島田さん。君──」
「えぇっ!?あ、アキってば、ウチと幸せに……」
「──の妹だ」
「殺すわ」
素晴らしい殺気だ。微塵も嘘だと思っていない。
「待つんだ美波!僕は別に葉月ちゃんをどうこうしようなんて思っていない!」
「妙に仲が良いと思ったら……。まさか、そういうことだったなんてね」
目が座っていてオレでも恐怖を感じる。でも、その矛先はオレじゃないからいいよね?
「やっぱり吉井君にはお仕置きが必要みたいですね?」
「ひ、姫路さん……?」
おっと、にこやかに兄さんを見ている姫路さんの背後に阿修羅像が見えるよ。触らぬ神に祟りなしだね!
「瑞希!アキの召喚獣をボコにして!ウチはアキの本体をボコにするから!」
「わかりました!」
「わからない!二人の言っていることが僕にはさっぱりわからない!」
うん。オレにも分からない。
「兄さん!そのまま姫路さんの召喚獣を抑えるんだ!」
オレは自分の武器の中でもっとも攻撃力のある両手長剣を構え、他の6つの武器を捨て身軽になる。普通ならこんな事するのは愚策だが対戦者の二人が兄さんに気をとられているため安心だ。
「そんなことしようものなら僕が殺されるよ!」
「知るか」
「少しは考えろよ!」
「行きますっ!」
姫路さんの召喚獣が一瞬で間合いに迫った。気のせいだろうか、攻撃速度がやたらと速い。
「わ、わ、わ!」
そして兄さんの召喚獣はギリギリのところで攻撃を避けていた。避けるよりも早く取り押さえてほしいのだけど。
「アキ!おとなしく殴られなさい!」
「美波!それは反則行為だよ!」
こっちには兄さん本体に直接攻撃を仕掛ける島田さん。思ったけどこれで向こうの反則負けになるんじゃ……
『反則はありません』
……どうやら、そんな甘い考えは捨てた方がいいらしい。
『兄さん。こうなれば一瞬だけ姫路さんの武器だけ抑えてくれ。後はオレに任せろ』
アイコンタクトを飛ばすと兄さんはそれを分かってくれたらしい。
「おおおおおっ!!」
ザクっ!
「くうぅぅっ!!」
兄さんの召喚獣が姫路さんの召喚獣が持っている両手大剣を痛みを伴いながら封じた。長くは持たないか。
「うおおおおおっ!」
ザクっ!
姫路さんの召喚獣の背中に深々と刺さる大剣。だが、さすが点数差四倍だ。一撃で仕留められなかった。
「もう持たない!」
「安心しろ。兄さん諸共葬ってやる」
そう言って、姫路さんの召喚獣の背後から移動しつつ、唯一捨てなかった右腰にかけていた太刀の柄に手をかけ……
「き、キサマ、謀ったな光正ぃーっ!」
「くたばれ姫路さん!兄さんと共に!」
区別する事無く居合切りの要領で一閃。姫路さんの方は多分問題ない。召喚獣が戦死するだけだ。しかし、兄さんにはさぞかし強烈な痛みが届いているだろう。
「あ、きゃぁっ!」
防御しようにも虚しく、斬り捨てられた姫路さんの召喚獣。流石に高得点である姫路さんの召喚獣でも大剣といい居合斬りといい戦闘不能は免れないだろう。
「人体切断!?」
そして兄さんは頭のおかしいことを言っていた。何となく考えを読んでみると『人体切断マジックって失敗するとこんな感じなのだろうか』っと、やはり、よくわからんことを考えていた。
「瑞希っ!」
そして島田さんが斬り捨てられた姫路さんの召喚獣に目を向ける。そんなあからさまな隙……
「よそ見禁物油断大敵。さらば島田さん!」
オレが見逃す訳が無いよ。
「しまっ……!」
「これで決まりだ」
ザクっとに音を立て、島田さんの召喚獣に太刀が深々と突き刺さった。さすが、一桁の召喚獣。わざわざ斬りに行く必要がなかったな。
『あ~……え~と……』
何とも言い難い展開に審判の向井先生が困っていた。
『姦計を巡らせ、味方もろとも相手を葬った吉井光正君の勝利です!』
「アイ アム ウィナー」
上手い言い方だ。そして隣では痛みのあまり気絶した兄さんがいた。