バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
「ひきょうもの」
「二人とも酷いです……」
「あ、いや。あれも勝負だったからさ」
島田さんのジト目と姫路さんの悲しそうな視線が兄さんに向く。
恐らくだが一番被害を受けたであろう兄さんが責められているのを見ると原因を作ったということでオレの胸が少し痛む……?あれ?ちっとも痛くないや。
「まぁまぁ二人とも。そこまで言ったら可哀想だよ。しっかりとオレたちが二人の代わりに優勝するからさ」
優勝しないと学園長との約束を果たせないしね。
「光正君。本当に大丈夫ですか?」
姫路さんが確認のためか聞いてくる。島田さんと兄さんは何やら小声で話している見たいだが……まぁ、無視で。
「ああ、油断せず上手くやる。というかオレよりも、兄さんを応援してやってよ。兄さんに人並みの点数を取ってもらわないと厳しいからさ」
「それもそうですね、吉井君」
「ん?何かな姫路さん?」
「絶対に優勝してくださいね……?」
兄さんの顔を、上目遣いに覗き込む姫路さん。凄い威力が出ているだろう。これには兄さんも……
「もちろんだよ。絶対に優勝する。全部上手くやってみせるさ!」
……簡単におだてられるだろう。無論、姫路さんにその自覚はないようだが。
「やれやれ。それなら明日の朝くらいしっかり起きてよ――っと。へぇ、かなり増えたものだ」
「そうだね。結構いい感じだね」
「良かった。宣伝の効果があったみたいですね」
「そうでなきゃ、こんな恥ずかしい格好で大会に出た意味がないものね」
それでも、ここまでの賑わいっぷりは予想以上。この分なら失われた分は取り戻せそうだ。
「あ!バカなお兄ちゃん!お客さんがいっぱい来てくれたんだよ!」
葉月ちゃんが兄さんの姿に気付き、店の中から駆け寄ってくる。
「そうだね。葉月ちゃん、お手伝いどうもありがとうね」
「んにゃ~……」
兄さんが葉月ちゃんの頭を撫でている。撫でられている本人は気持ちよさそうにして、それを眺めている兄さんの顔もほころぶ。
「バカなお兄ちゃんはロリコンなお兄ちゃんでもあるんですか~?」
「光正にバカなお兄ちゃんと呼ばれると無性に腹が立つ。後、ロリコンなお兄ちゃんじゃない!」
まぁ、そりゃそうだろうね。むしろ、ロリコンだったらオレが嫌だわ。
「明久。戻ってきたようじゃな」
「お、聞くまでもねぇかもだが、どっちが勝ったんだ?」
トレイ片手に持つ秀吉と用意されたエプロンを着ている雄二がやってきた。聞くまでもないって言うのはオレたちが勝っていると信じているからだろう。
「光正、かな?」
「そうね。光正の一人勝ちね」
「ですね」
「ブイ」
「?明久は同じチームなのに負けじゃったのか?」
まぁ、ある意味で負けたのは兄さん一人のような気がするけど……気にせず行こう。
「光正。宣伝ご苦労だった」
「ああ、大役は果たしたよ」
「さて、数少ないウェイトレスが固まっていたら客が落胆する。今は喫茶店に集中するぞ」
そういえば、お客さんたちの視線がこちらに集中している気がしなくもないな。
「そうですね。喫茶店のお手伝いをしないといけませんね」
「そうね。ちょっと視線が気になるけど、売り上げの為にも頑張りますか」
「……ワシは一応男なのじゃが」
「秀吉。絶対に性別をバラしちゃダメだよ」
さてと、オレも働きますか!
「それじゃ、準決勝に行ってくるね」
「店の方は頼んだよ」
「はい。頑張ってくださいね」
「アキ、光正。負けたら承知しないからね!」
「わかってるって」
「ベストを尽くそう」
喫茶店で働くこと一時間。準決勝の時間が近づいてきた。決勝戦は二日目の午後に予定されているので今日の試合はこれで終わりだ。
「明久、光正。この試合は特に負けられないからな」
雄二がオレたちの肩を掴み彼なりのエールを送ってくる。というか、目の色がマジ過ぎてで恐いよ?後、掴まれている肩も痛いし。まぁ、何故彼がここまでマジなのかというと……
「霧島さんと木下君のお姉さんが相手なんて、大変そうですね……」
そう。二年生でも、上位の二人、学年主席の霧島さんと学年で五本の指に入る木下さんが相手だからだ。雄二の場合は霧島さんがいるからだと思うけど……。というか、この二人にはオレみたいな弱点科目もなければ、姫路さんのような甘さもない。厳しい戦いになるだろう。
「いいか。お前らに策は授けた。この策で絶対に勝利を勝ち取ってこい」
まさか雄二のやつ、策が破られる、そんな可能性を考えていないのか?いや、きっと相手が霧島さんなせいで正常な思考が出来ていないからだろう。
「雄二。万が一の時はどうする?勝利優先?」
「ああ。最悪どんな手を使ってもいい。あの二人に勝て」
よし、雄二の策が通用しなくなったら、オレの作戦を使おう。
「いいかお前ら。今まで以上に気合を入れろ。絶対に勝て!お前らが負ければ――」
そうか。よくよく考えればオレたちが負けると、姫路さんは転校するし、教室の設備が……というか、この学園の存続の危機かもしれないのか。何か、責任重大?重圧が半端じゃないなぁ……。
「俺が今後の人生を失う!お前らの命が懸かっていると思え!いいな!」
あ、そこなの?正直そこはどうでもいいや。
こうして、オレたちは仲間の声援を受け、準決勝に向かうのだった。