バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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暴走と救出

「明久、光正。今日という日はお前らをコロス」

「あはは。やだなぁ雄二。目が怖いよ?」

「正気に戻ってよかったじゃん」

 

腹を殴り、薬を吐かせた後で冷水につけたら、なんとか雄二は正気に戻った。うーん。やはりというべきか身体が頑丈にできているように思える。

 

「だいたい、雄二の作戦が読まれていたのがいけないんじゃないか」

「そーだそーだ。相手が霧島さんって時点で雄二の策は詰んでいたんだよ」

「ぐっ。それを言われると反論できん……」

 

どうにも雄二は霧島さんが相手だと冷静に物事を考えられていないように見える。やれやれだ。ん?オレはって?そんなオレは常に落ち着いている。どんな状況でも冷静に考えているさ。

 

「ところで姫路や島田は教室にいるのか?」

「え?まだ確認していなけど、いるんじゃないの?」

「多分、そろそろ仕掛けてくるはずだと思うんだが……」

 

 また、妨害があるかもしれないということか。どうやら、兄さんも材料取りに行った時襲われたらしいし、可能性は十二分にあるか。

 

「…………雄二」

 

 教室の前まで戻ってくると、ドアの前に立っていたムッツリーニが駆け寄ってくる。どうやら、雄二の懸念は当たってしまったようだ。

 

「ムッツリーニか。何があったのか?」

「…………ウエイトレスが連れて行かれた」

「えぇっ!?姫路さんたちが!?」

 

 全く、何故こんなに次から次へと問題が発生するんだよ今年の清涼祭。でもまぁ、彼女たちが連れてかれてもオレ個人には支障がな――

 

「…………後、客で来ていた天草も」

「…………(つかつか)」

「おい光正。どこに行く」

「攫ったクソ野郎共を葬りに行く」

 

 許せねぇ。紫乃を攫うとはいい度胸だ。骨の髄まで後悔させてやる。

 

「ったく。明久が騒ぐのは目に見えていたが、お前まで怒るとは正直予想外だ」

「怒る?違うよ雄二。オレはキレているんだよ」

「ってそんなことより、姫路さんたちは大丈夫なの!?どこに連れてかれたの!?相手はどんな連中!?」

「あぁもう。お前ら一旦落ち着け。これは予想の範疇だ……天草も連れてかれること以外」

 

 よかった。雄二が紫乃が連れてかれることを予想の範疇だとか抜かしやがったら今ここで葬るところだった。

 

「え?そうなの?」

「もう一度俺たちに直接何かを仕掛けてくるか、喫茶店にちょっかいを出すか。そのどちらかで妨害工作を仕掛けることは予想出来ていた」

「なんだか随分と物騒な予想をしていたんだね」

「引っかかることが随所にあったからな」

「それに関してはオレも同感だ」

 

 今回ばかりは頭に来ている。自分でもここまでキレるとちょっとしたことですべて吹っ飛びそうだ。

 

「ムッツリーニ。連れてかれたところは分かるか?」

「…………もちろん」

 

 ムッツリーニが取りだしたのは何かの機械。

 

「なにこれ?ラジオみたいに見えるけど」

「…………盗聴の受信機」

「オーケー。敢えて何で持っているのかは聞かないよ」

「場所が分かれば、後は簡単だ」

 

 犯人をぶっ潰し、人質を開放する。実にシンプルだ。

 

「かる~くお姫様たちを助け出すとしましょうか、王子様方?」

「そのニヤついた目は気に入らないけど、今回は雄二に感謝しておくよ。姫路さんたちに何かあったら、正直召喚大会どころの騒ぎじゃないからね」

「それが向こうの狙いだろうな」

 

 ただ、タイミングが遅い気がする。後一時間早ければオレたちの大会に支障を出せたが……

 

「とにかく、まずはあいつらを助け出そう。ムッツリーニ、タイミングを見て裏から姫路たちを助けてやってくれ」

「…………わかった」

「雄二、僕らはどうするの?」

「何を抜かしているの兄さん?」

「王子様の役目は決まっているだろう?」

 

 茶目っ気たっぷりの目がこちらに向く。緊急事態でなければ、目潰しを仕掛けていただろう。

 

「王子様の役目って?」

「お姫様をさらった悪者を退治することさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さてどうする?坂本と──吉井双子だったか?そいつら、この人質を盾にして呼び出すか?』

『待て。吉井双子ってのは知らないが、坂本は下手に手を出すとマズい。今はあまり聞かないが、中学時代は相当鳴らしていたらしいからな』

『坂本って、まさかあの坂本か?』

『ああ。出来れば事を構えたくないんだが……』

『気持ちは分かるがそうも行かないだろ?依頼はその三人を動けなくする事なんだから』

 

 ムッツリーニの持っていた盗聴器から、音楽に混じって会話が聞こえてきた。

 依頼?オレの中で依頼したと思われる人物が一人しかピックアップされないのだが……

 

(雄二、光正。この連中って……)

(ああ。黒幕に依頼されたそこらのチンピラだろうな)

(というか雄二。いい加減に放せ)

(お前は放すとすぐに乗り込んでしまうだろうが。もう少し耐えろ)

 

 ムッツリーニに案内されたのは、文月学園から歩いて五分程度のカラオケボックス。そこのパーティールームに紫乃たちは連れて行かれたみたいだ。

 

『お、お姉ちゃん……』

『アンタたち!いい加減葉月を放しなさいよ!』

『そうですよ。小さい女の子を盾にするなんて、最低な行いだと思わないのですか?』

 

 聞こえてきたのは島田さんの怒鳴り声と明らかに怒気を含む紫乃の声だ。成程な。葉月ちゃんを捕まえて人質にしているから、抵抗できずに此処へ連れて来さられたのか。

 

『お姉ちゃん、だってさ!かっわいいー!』

『ギャはははは!』

 

 外道共の声はおよそ十人。余裕では無いが十分対処出来る人数だ。上等だ。今すぐその口を黙らせてやるよ。

 

(待て明久に光正。勝手に行動するな。気持ちはわかるが、まずは人質の救出が先だ。ムッツリーニがうまくやるまで待っていろ)

(……わかったよ)

(放せ雄二。そろそろ限界だ)

(お前が暴走すると止める奴がいなくなる。耐えてくれ)

 

『……灰皿をお取り替え致します』 

『おう。で、このオネーチャンたちどうする?ヤっちゃっていいの?』

『だったら俺はコッチの巨乳チャンがいいなー!』

『あっ!ズリー!それなら俺二番ね!』

 

 パーティールームの中から下品な笑い声が響き渡る。最早こんな奴等には手加減は必要ないようだ。

 

(ハナセユウジ……!)

(どんどん力を入れるんじゃねぇ!全力で押さえつけてるのがもう限界なんだ!いい加減に鎮まれ!)

 

『あ、あのっ!葉月ちゃんを放して、私たちを帰らせて下さい!』

『だってさ~。どうする?』

『それはオネーチャンたちの頑張り次第だよな?』

『やっ!さ、触らないで──」

『ちょっと、やめなさいよ!』

『こんな事してどうなるか分かってるの!?』

 

 この紫乃の言葉を聞いた刹那。オレは直感した。

 今出ていかなければ紫乃が傷付くと……

 

(お、おい!光正!)

 

『あーもう。うっせぇ女共だな!』

 

 ドン、と何か突き飛ばした音。そして数秒遅れて聞こえるのはガシャァァンというテーブルを巻き込んで倒れた音。

 

「こ、光正……」

「ってぇな!」

 

 蹴り飛ばされた不良が立ちあがり拳を構える……が。

 

「おせぇよ」

「グハッ」

 

 回し蹴りの要領で再び壁に蹴りつける。

 

「光正。どうしてここに……」

「オレだけじゃない」

 

 すると、再びドアが開け放たれる。

 

「おじゃましまーす!」

 

 兄さんだ。

 

「光正君に……吉井君?」

「光正、アキ……」

「ハァ?お前誰よ?」

「それでは、失礼して……」

 

 兄さんは入り口付近にいた男の手首を軽く握り、

 

「死にくされやぁぁっ!」

 

 股間を思い切り蹴り上げた。

 

「ほごあぁぁぁっ!」

 

 そして蹴られた男は一撃で沈んだ。

 

「て、てめぇらヤスオにほぐあぁぁっ!?」

「誰が喋っていいって言った?この野郎」

「ごぶぁぁっ!」

 

 掌底で顎を下から打ち、身体が若干浮いたので前蹴りを喰らわす。これで二人目だ。

 兄さんの方を一瞥してみると顔面を殴られたようだ。だが……

 

「イィッシャァァーー!」

「ごぶぁぁっ!」

 

 まだ、お返しのハイキックが出来るぐらい余裕のようだ。

 

「テメェら、よくも美波に手をあげようとしたな!全員ブチ殺してやる!」

「テメェら、紫乃に手を出そうとして……生きて帰れると思うなよ」

 

 処刑。慈悲はない。

 

「コイツら、吉井双子だ!」

「どうしてここが!?」

「とにかく来ているなら丁度いい!ぶち殺せ!」

 

 テーブルを蹴散らし、男たちが群がってくる。

 

「クハハハハハハッ!」

「こ、こいつイカれてぐぶぁぁっ!?」

「テメェノブオに何しごぶるぁぁっ!?」

 

 二段蹴りで一人、そのまま、真後ろから狙ってきた奴にひねり蹴りを喰らわせる。

 

「さぁ、もっと楽しませろよ!さぁ!」

「コイツ狂ってやがる」

「だが、見切った!お前は蹴り技しか使えな……!?」

 

 ドンッ

 

「グハッ」

「おいおい誰がそんなこと決めたんだよ?」

 

 何か勘違いした野郎の頭を掴みそのまま壁に叩きつける。

 

「おい!坂本にそこの狂ったやつ」

 

 そこの狂ったやつとはオレのことだろうか?心外だ。オレは至って正常なのに。というか雄二。君はいつの間にか乱入してきたんだね。

 

「このお嬢ちゃんがどうなってもいいのかァ?」

 

 卑怯な奴だ。葉月ちゃんを羽交い絞めにして人質に取るなんて。

 

「いいか?おとなしくしていろよ?さもないと、ヒデェ傷を――」

「…………負うのはお前」

 

 ゴインッ

 

「あがあっ!」

 

 白目をむいて倒れる外道。その背後にはクリスタルの灰皿を振り切ったポーズで立つムッツリーニが。これぞ、因果応報ってやつだろうか?

 

「お、お姉ちゃん!お姉ちゃーん!」

「葉月っ!良かった……。怖かったよね……?」

 

 解放された葉月ちゃんを島田さんが抱きしめる。

 

「おいおい狩りの時間はまだ終わってないぜ?死にたい奴からオレの前に――」

「光正!」

「……おい、どういうつもりだ」

 

 若干涙目の紫乃がいきなりオレを抱き締めてきた。

 

「光正。いいから落ち着いて。私はほら、光正のおかげで無傷だから」

「……………………ふぅ。悪かった暴走して。大丈夫か?」

「うん。良かった。さっきまでの光正、今までで一番怖かったから」

 

 そう言いながら、紫乃がオレの頭を軽く撫でる。

 

「もう大丈夫だ。お前もオレも」

 

 何とか正気に戻れたみたい……というかオレってそんなに怖かったのか?

 

「吉井君っ!」

 

 向こうでは姫路さんが腕を広げて兄さんに駆け寄り、兄さんは姫路さんに抱き付くつもりであったが……。

 

「吉井ぃ!ヤスオをよくも!」

「ぐぶぁっ!」

 

 チンピラのパンチが迎えてくれていた。

 

「…………!!」

「な、なんだコイツ?血の涙流してるぞ……?」

 

 姫路さんからの抱擁を邪魔された事に兄さんの怒りは頂点になった。うん。やっぱり、兄さんはバカだ。

 

「姫路さん、ちょっと待ってて! コイツをシバき倒した後でもう一度──」

「姫路に島田!後、天草も!お前らは先に学校に戻っていろ!」

「雄二!キサマまで僕の邪魔をするのか!」

 

 まぁ、妥当な判断だ。

 

「くはははは!それにしても丁度良いストレス発散の相手ができたな!生まれてきたことを後悔させてやるぜぇぇっ!」

「じゃあ、オレも行ってくるよ、殺さない程度にね」

「うん。気をつけてね」

 

 オレはさっきまでよりも清々しく穏やかな笑みを浮かべて不良に相対する。

 

「こ、これが坂本か……!」

「悪鬼羅刹の噂は本当だったか……」

「ってか何だアイツは!?さっきよりもさらに笑顔だぞ!」

「あんな清々しい笑顔で人をボコれるか普通!?」

 

 今のオレはとても気分がいい。さぁ、もっと悲鳴を聞かせてくれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、どうして秀吉だけ縛られているの?」

「…………とても良く似合ってる」

「姉上に縛られた時の縄が残っておっての……それと、何故かワシだけ随分と尻を撫でられたのじゃが……」

「あはは……」

「ところで光正のやつは大丈夫かの?狂った笑顔から今では純粋な子供が見せるような笑顔に変わったんじゃが……」

「うん。人を殴りながら笑顔の時点でもう人として終わっていると思う。実の弟だけど」

「…………救いようがない。明久の学力と同じくらいに」

「まぁ、そうじゃのう」

「ちょっと待つんだ!僕の学力がアレと同等の酷さって言うのは納得できない……って二人とも僕から目を逸らさないで!お願いだから目を合わせて!」

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