バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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決勝戦!

「兄さん。あそこまでオレや雄二に付き合わせたんだ。ここで負けたら承知しないよ」

「わかってる。勉強教えてくれてありがとね。雄二もだけどそれなりに頭いいじゃん」

「……兄さんに比べれば誰でもそうでしょ。──行くよっ」

 

 武器を太刀以外捨て、身軽になる。装備が軽くなったので兄さんよりも先に動くことが出来る。

 

「夏川!こっちは俺が引き受ける!」

 

 モヒカン先輩が慌ててオレの正面に立った。向こうが出遅れたおかげで、オレの召喚獣はかなり相手に接近出来ていた。

 

「それじゃ、僕の相手は先輩ですね」

「上等じゃねぇか!多少ヤマが当たったくらいでいい気になるなよ!」

 

 隣では坊主先輩の召喚獣が剣を構えて兄さんの召喚獣に突進する。動きは速いが……。

 

「先輩、取り乱し過ぎですよ?ただの突撃じゃ避けてくれと言ってるようなもんです」

 

 兄さんの召喚獣は半身を右にずらし、小さな動きで相手の身体を避けていた。あんなバカ正直な攻撃は兄さんには通用しない。まぁ、それだけじゃなく……。

 

「何で当たらねぇんだ……!」

「モヒカン先輩。そんな攻撃じゃ当たりませんよっと」

「くっ……ちょこまかと……!」

 

 こちらもこちらで最小限の動きで躱し、攻撃を地味に当てていく。この戦法は相手を焦らせ、冷静な判断力も失わせられる。

 

「っと、この……!」

 

 隣では坊主先輩の召喚獣が振り向きざまに横薙ぎの一撃を見舞ったが……。

 

「ふっ!」

 

 兄さんの召喚獣はその一撃を小さく屈んでかわし、一呼吸の間に三度木刀を振るっていた。流石は召喚獣の扱いが長けている兄さんだ。避けてすぐに三度の反撃をするとはある程度操作に慣れていないと出来ない芸当だ。

 

「くぅっ!」

 

 悔しそうな声を出す坊主先輩。兄さんの召喚獣からの攻撃を何とか剣で防御した後は、仕切りなおすように大きく一歩下がった。

 

「ほいっと」

「くそっ!」

 

 こっちも、モヒカン先輩の召喚獣は攻撃を回避し、そのまま大きく下がる。

 

「テメェ、試召戦争じゃ60点程度だったくせに……!」

 

 坊主先輩は語気も荒く兄さんを睨んでいる。ふむふむ。台詞から察するに、ある程度はオレたちの情報を集めていたようだ。

 

「お前の方も文系科目は苦手だったはず……!」

 

 おっと、坊主先輩じゃなくて、モヒカン先輩がオレを睨んでくる。本当に調べたんだなぁ。

 

「今でもそんなもんですよ。この教科以外は、ね?」

「というか、試召戦争終えてから時間は経っているんです。点数が上がっていても不思議じゃないでしょ?」

「野郎……!最初からこの勝負だけに絞ってやがったな……!」

「こいつ……!舐めたことを……!」

「その通り。よくわかりましたね、先輩」

「舐めたこと?別に日本史が取れているだけですが何か問題でも?先輩?」

 

 まぁ、雄二は初めから優勝させる気だったからね。そのつもりで科目指定をしたから。

 

「仕方ねぇ。二年相手に大人げないが、経験の差ってやつを教えてやるよ!」

 

 そう告げると、坊主先輩の召喚獣は大きく跳び退って、兄さんだけじゃなく坊主先輩本人からも距離を取った。使役する本人からも距離を取るなんて、一体何をするつもりだろう?そんな事をすれば戦闘がしにくくなる筈なのに。

 

「余所見している場合じゃねぇぞ!」

 

 そう言ってモヒカン先輩の召喚獣が突撃してくる。それによって、思考の中断を余儀なくされる。仕方ない。隣は兄さんに任せるしかないのか。 

 

「お前の知らない戦い方があるんだよ」

 

 チラッと坊主先輩の召喚獣を見ていると、剣を腰だめに構え、まるで力を溜めているような感じに見える。何だ?オレたち二年生の知らない特殊能力でもあるのか?

 

「おおおぉぉっ!」

 

 目の前のモヒカン先輩と相対している最中に坊主先輩が更に力を込めるように声をあげる。

 

「行けっ!」

 

 兄さんは牽制しようと召喚獣を敵に向かって走らせる。

 

「そら、引っかかった」

 

 と、坊主先輩のからかうような声が聞こえると。

 

「く──そぉっ!」

 

 兄さんがいきなり苦しそうな声を出した。

 

「これが経験の差ってやつだ」

 

 何だ?坊主先輩は一体何をしたんだ?兄さんの方を横目に見てみると、何やら目を擦っていた。

 ダメージを受けたはず。何で目を?まさかあの坊主先輩……!

 

「ぐぅぅぅっ!」

 

 今度は坊主先輩の召喚獣が兄さんの召喚獣に攻撃を仕掛ける。

 目が見えてない兄さんは勘で避けようと操作しても、相手は見抜いているかのように攻撃している。

 

「くっ、フォローを……!」

「させるわけねぇだろ!」

 

 キンッ

 

 オレの召喚獣が兄さんのところに行くのを妨げるモヒカン先輩。

 こっちはこっちで兄さんの召喚獣が攻撃された事により、兄さん自身にも痛みがフィードバックして更に苦しそうな声を出していた。

 

「そういやお前、『観察処分者』なんだよな?こいつはさぞかし痛えだろうなぁ」

 

 おまけと言わんばかりに兄さんの召喚獣の顎に拳を叩き込む。

 兄さんは痛みに耐えられなくなったかのように倒れようとした。

 

「兄さんっ!そんなところで終われるのかよっ!」

「……っ!」

 

 ダンッ!

 

 一喝によって思いっきり足を地面に叩きつけて踏み止まった。

 そうだ。オレの尊敬する兄さんならたとえ苦しかったとしても好きな人のためなら何度でも立ち上がるはずだ。このまま終わるはずがない。

 

「よし。いけるね、兄さん?」

「……当然っ!」

 

 そうだ。こんな奴らに負けるなんて、オレは絶対に嫌だからな! 

 

「悪あがきを!すぐに止めをくれてやるぜ!」

 

 坊主先輩の召喚獣が駆けて攻撃をするが。

 

「──んのぉぉっ!」

 

 兄さんは痛みを堪えながら、召喚獣を動かして敵の脇をすり抜ける。そのがら空きの背中に大きく蹴りを放つ。しかし、傷の影響により大して威力は無いが、体勢を崩すことが出来たので少し時間ができる。

 

「光正っ!」

「おうっ!」

 

 兄さんの様子を確認するまでもない。今ので全部分かった。オレは太刀を一本捨て、残った方を鞘にしまう。そして自身の召喚獣をもう一方の敵であるモヒカン先輩の方に突っ込ませた。

 

「舐めんなっ!」

 

 迎え撃つようにモヒカン先輩の召喚獣が剣を振り下ろす。対するオレの召喚獣は防御も回避もしない。ただ一直線へと迫る。

 

「もらったぁ!」

 

 モヒカン先輩の召喚獣の剣がオレの召喚獣の首を両断する。その寸前、

 

 ギィンッ!

 

 兄さんの召喚獣が投げた木刀が当たり、敵の剣の軌道を変えた。

 

「ぐっ!しまっ──」

 

 振り下ろされた剣が不発になった以上、オレの召喚獣は絶好の攻撃ポジションにいることになる。さすが兄さんだ。最高のフォローを最適なタイミングを無駄にしないっ!

 

「一閃っ!」

 

 オレの召喚獣の太刀の峰がモヒカン先輩の召喚獣を叩き込む。

 それと同時にオレの声と会場の歓声が重なった。

 

「野郎!得物を手放すなんて上等じゃねぇか!」

 

 そして、兄さんの召喚獣には坊主先輩の召喚獣が迫った。だが……。

 

「っ!?邪魔──!」

 

 坊主先輩の召喚獣の動きが一瞬鈍る。その原因は、オレが敢えて吹き飛ばしたモヒカン先輩の召喚獣。それが坊主先輩の視界を遮ったからだ。

 兄さんはその隙を狙って召喚獣を前に出す。坊主先輩の召喚獣は剣を振り下ろすがタイミングがずれて攻撃を避けられた。

 

「チィッ!」

 

 坊主先輩の召喚獣は空振りに終わった剣を戻し、再び兄さんの召喚獣に攻撃を加えようとする。しかし、もう遅い。

 

「くらえっ!」

 

 兄さんは反撃と言わんばかりに頭突きをさせた。威力は無い。だが、相手の動きを牽制させるには充分だ。

 

「兄さんっ!」

 

 オレの召喚獣は持っていた太刀を兄さんの召喚獣に向かって蹴り飛ばす。

 

「待ってました!」

 

 飛んでくる太刀の柄の部分を片手でキャッチする。ナイスパスだろ?決めろ兄さん。

 

「くそぉぉっ!お前ら如きに三年の俺が──!」

「くたばれえぇっ!」

 

 両者の召喚獣が同時に攻撃する。見ると兄さんの召喚獣は左腕が切り落とされている。

 アレはかなりの痛みがフィードバックされているだろう。あの様子では兄さんは召喚獣ともにもう戦えない。

 だが……。

 

「まぁ、オレたちの計算どうりだな。お疲れ、兄さん」

 

 坊主先輩の召喚獣には太刀が喉に突き刺さっていた。

 

『吉井・吉井ペアの勝利です!』

 

「ぃぃぃよっしゃぁああー!!」

 

 審判の宣言により、召喚大会の優勝者はオレたちに決まった。

 兄さんは叫び、喜びを表す。オレは……

 

「…………(グッ)」

 

 紫乃のいる方へ拳をつきだす。勝ったぞ紫乃。オレたちの優勝だ!

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