バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
日は流れ週末……オレたちは如月ハイランド入場ゲート前にいた。
「もうすぐだね」
「そうだな」
スタッフに変装しているオレと紫乃、そして本物のスタッフは此処にやってくる雄二と霧島さんを待っていたのだ。
スタッフに変装といってもまぁ、兄さんの要望なんだよな……というか、絶対バレるでしょ。
「うーん。やっぱり、紫乃にその胸は不自然だと思うよ」
「むぅー。というか、普段よりそこそこ大きくなっただけでそこまで言わなくても……」
オレはアイマスクと帽子を、紫乃はアイマスクに胸当てを詰めて、絶壁から巨乳(偽)に。後は髪型を地味にポニーテールにしたぐらいだ。……こっちの髪型の紫乃も可愛いなぁ……。
「おっと。どうやら来たみたいですね。ではスタンバイをお願いします」
「了解です」
さてと演技スタートかな。
「いらっしゃいマセ!如月ハイランドへようこソ!」
「「如月ハイランドへようこソ(そ)!」」
オレと紫乃は声を合わせ、雄二と霧島さんを歓迎するポーズをする。
「…………」
オレと紫乃を見ている雄二は、驚いたような感じでこっちを見ている。まあすぐにバレるよね~
「………おい。光正、ここでアルバイトか?」
「コウセイ?ダレデスカ?ワタシ、ワカリマセーン」
「……急に外人ぽく見せようとしても無駄だろ……」
そう言うと雄二は携帯を取り出して……
「まぁいい。確認させてもらう」
そう言って、携帯電話のどっかのボタンを押す。恐らく、オレの携帯電話にかけているのだろう。だが、爪が甘いな。
『あ、雄二。どうした?こんな休日に電話かけてくるなんて珍しいじゃないか』
「なっ!?」
「どうかしましタカ?お客サマ?」
「悪い後でかけ直す…………テメェは一体何者だ?」
ポケットに携帯電話をしまい直す雄二。
フフフ、目の前にいる相手に電話かけたと思ったら実は別のところで本人が出て来るもんな。さぞ驚いただろう。まぁ、電話に出たのはオレの声真似をした秀吉なんだけどね~
「私でスカ?私はただのしがないスタッフデース」
「そんなはずはねぇ。だってそっちの女は天く――――」
すると雄二は隣にいた紫乃を指差し正体を暴こうとするが。
「――――あれ?人違いか?」
ある一部分。本物の紫乃とは雲泥の差もある部分を見て途中でやめた。
まぁ、そのおかげで紫乃が雄二を殴りかかろうとしたので見えてないところで抑えつける。
『光正。坂本君は私が殴り飛ばす』
『ダメだよ紫乃。そんなことしたら作戦が台無しになる』
やれやれ。本当に紫乃は胸のことを言われると暴走しかけるよな……
「本日はプレオープンなのデスが、チケットはお持ちですカ?」
スタッフの人が本題に戻すためなのか、チケットの確認をしている。
「……はい」
霧島さんがポケットから例のチケットを出す。
「拝見しマース」
「ではワタクシモ」
スタッフが受け取り、オレとチケットを確認する。そして、雄二たちの顔を見て笑顔のまま一瞬固まった。
「……そのチケット、使えないの……?」
オレたちの様子に霧島さんが不安そうに表情を曇らせて聞いてくる。
「イエ、そんなコトはないデスヨ」
「ちょっとお待ちくだサーイ」
スタッフがポケットから携帯電話を取り出し、雄二たちの方に背を向けて電話をし始める。
「──私だ。例の連中が来た。ウェディングシフトの用意を始めろ。確実に仕留める」
雄二たち仕留める。オレたちハッピー。
「おいコラ。なんだその不穏当な会話は」
「……ウェディングシフト?」
霧島さんが首を傾げている。そう言えば如月グループのジンクスを知らないんだったっけ?
「気にしないデくだサーイ。コッチの話デース」
取り繕ったように元の雰囲気に戻るスタッフ。うーん。露骨に怪しいと思うんだけどなぁ。
「アンタ、さっき電話で流暢に日本語を話していなかったか?」
「オーウ。ニホンゴむつかしくてワカりまセーン」
「ユーのミミ腐ってるネェー」
「彼らは外国から来たのです。日本語はまだ慣れていませんから聞き間違いでしょう」
設定としてオレは日本語が下手な外国人ってことになった。まぁ、紫乃までその設定を入れるとこの如月ハイランドの配置する人の基準に疑問を感じる。
「ところで、そのウェディングシフトとやらは必要ないぞ。入場だけさせてくれたらあとは放っておいてくれていい」
甘いな。そんなわけにいくか。
「そんなコト言わずニ、お世話させてくだサーイ。トッテモ豪華なおもてナシさせていただきマース」
「不要だ」
「ソコをナントかお願いしマース。頭下げマスカラ」
「ダメだ。というか、頭が全く下がってないんだが……」
「この通りデース。ほらサガッタデショ?」
「却下だ。いや、本当に僅かしか下がってないしな」
クソ、頑固な奴だ。さっさと承諾してくれればいいものを。
「断ればアナタの実家に腐ったザリガニを送りマース」
「止めろ!そんなことをされたら我が家は食中毒で大変なことになってしまう!」
え?何で?どうしてスタッフの一言にそんな危機迫った顔になるの?あんなにオレの言葉は斬り捨てていたのに……まあ取り敢えず了承してくれたので良しとするか。
「では、マズ最初に記念写真を撮りますヨ?」
「……記念写真?」
「ハイ。サイコーにお似合いのお二人の愛のメモリーを残しマース」
「…………雄二と、お似合い……(ポッ)」
霧島さんはスタッフの言葉に仄かに頬を赤らめていた。なるほど分かりやすい。
「お待たせしました。カメラです」
そして帽子を目深に被ったスタッフこと変装した兄さんがカメラを片手に現れる。
「アナタが持ってきてクレたのデスか。わざわざありがとうございマス。助かりマース」
スタッフが礼を言いながらカメラを受け取ると、雄二が自身のポケットに手を入れる。
「悪いがもう一回電話をさせてくれ」
「わかりまシタ」
そう言った雄二は携帯を取り出して電話する。
prrrrprrrr
「ああ、すいません。僕の携帯ですね」
あ、その電話出たらいけないやつ。
「……いよう明久。テメェ、面白いことしてるじゃねぇか……!」
「人違いですっ」
ダッ!
やれやれ!これだからあのバカは!
「あっコラ!逃げるなテメェ!ええい、放せこの似非外国人共!」
「彼はココのスタッフのエリザベート・ハナコ(三十五歳)、通称スティーヴでース。吉井ナントカさんではありまセーン」
「ソーデス。ハナコの兄貴は吉井ナントカではありませーン」
「ええい黙れ!人種性別年齢氏名全てに堂々とウソをつくな!しかもどう考えてもその名前で通称スティーヴはないだろ!というかハナコの兄貴って何なんだよ!後、俺は吉井なんて苗字は一言も言っていない!」
すげぇ……全部一息で言った。言い切った。どんな肺活量してるんだコイツ……。
「翔子、すまんがちょっと我慢してくれ」
「……???」
ん?何を我慢するの?と疑問に思ってると雄二が霧島さんのスカートを掴んで捲り上げ……一瞬で視界が暗転した。
「光正は見ちゃダメ」
小声で囁く紫乃。ふむ。つまり、紫乃の手によってオレの視界は覆い隠されているようだ。
「咄嗟に懐のデジカメに手を伸ばすあの動き……。やはりムッツリーニも来ていたか」
視界が明けるとカメラを構えた人……ではなくキツネの着ぐるみがそこにいた。
成程。どうやら雄二はムッツリーニがいないかどうかの確認をする為にスカート捲りをしたのか。え?そんなことのためだけにやったの?
ん?雄二の事だから、兄さんやムッツリーニ以外にも、手伝いに来ている秀吉や姫路さんとかの存在にも気付いた可能性が高いな。というか、秀吉がばれたら芋づる式でオレと紫乃もばれるんじゃね?というか、もうバれてるだろ。
「……雄二、えっち」
霧島さんが少し怒った顔をして雄二を見ていた。そりゃそうだ。いきなりスカートを捲られて怒らない女性はいない。いたらただの変態だ。
まぁ、その事に雄二は動揺して、
「なっ!?ち、違うぞ翔子!俺はお前の下着になんか微塵も興味がないっ!」
「……それはそれで、困る」
「ぐぁああああっ!理不尽だぁあっ!」
バカな事を言ったために顔面にアイアンクローと言う名の折檻を受ける事になった。ん?頭蓋が軋む音が聞こえるぞ。幻聴か?それとも気のせいか?
「でハ、写真を撮りマース。はい、チーズ」
霧島さんに折檻されている雄二に、スタッフはそのまま二人を撮影した。え?何でそんな写真撮っちゃったの?
「スグに印刷しマース。そのまま待っていて下さイ」
えっ?印刷するの?マジで?
「……わかった。このまま待ってる」
「ぐぁあああっ!このままだと俺の頭蓋がっ!」
「お、お客様。そこまでにした方がよろしいのでは?」
「オー、ユーの旦那サンお陀仏ネェー」
「いい加減にその白々しい演技をやめろ光正!後、誰が旦那だ!」
あ、バレてた。まぁ、そんな予感はしていたけどさ。
「──はい、どうゾ」
程無くしてスタッフが写真を持ってきた。と、同時に霧島さんのアイアンクローから解放される雄二。
「……ありがとう」
霧島さんは嬉しそうに写真を受け取る。
「……雄二、見て。私たちの思い出」
咳き込んでいる雄二に霧島さんが写真を見せつける。後ろからオレたちも拝見拝見~っと。
「……なんだ、この写真は」
雄二がそう言うのは無理もない。オレも同じ感想だ。
何故ならその写真に写っていたは霧島さんの後頭部と折檻に悶える雄二だから。そして……。
「サービスで加工も入れておきまシタ」
そんな二人を囲うようなハートマークと、『私たち、結婚します』という文字。そして、雄二と霧島さんの周りを、未来を祝福するように天使が飛び回っている。
ふむ。二人の事を知らない人が見たら、どういう経緯で結婚に至ったのか気になる一枚だ。後、幸せになれそうになさそう。
「コレをパークの写真館に飾っても良いデスか?」
「キサマ正気か!?コレを飾る事で此処になんのメリットがあるというんだ!」
……スタッフ。これはさすがにオレも雄二と同意見だ。こんな写真を見た客は間違いなくドン引きするから。客が絶対に減るから。
「……雄二、照れてる?」
「すまない。どこからどう見てもこの写真には照れる要素が見当たらない」
霧島さん。さすがにそんな写真で照れる男はいないと思う。
『あぁっ!写真撮影してる!アタシらも撮ってもらおーよ!』
『オレたちの結婚の記念に、か?そうだな。おい係員。オレたちも写ってやんよ』
と、いきなり偉そうな態度でチャラチャラしたカップルがやって来た。見るからに鬱陶しい奴らである。頭湧いてるんかな?
「すいまセン。こちらは特別企画でスので……」
スタッフが断るとする。当然だ。何しろ今回のウェディングシフトは、雄二と霧島さんだけが対象だから。
『あぁっ!?いいじゃねーか!オレたちゃオキャクサマだぞコルァ!』
『きゃーっ。リュータ、かっこいーっ!』
男の方が睨み付けるようにスタッフを威嚇してくる。見たとおりのチンピラその者だな~。というか、その姿を見て喜ぶ女もかなりバカそうだ。オレは絶対に近づきたくない人間だ。
『だいたいよぉ、あんなダッセぇジャリどもよりオレたちを写した方がココの評判的にも良くねぇ?』
『そうよっ!あんなアタマの悪そうなオトコよりもリュータの方が一〇〇倍カッコイイんだからぁ!』
オレから言わせれば、アンタらみたいなこの世のゴミ……コホン。見た目も中身もクズ……バカップルを撮影して飾ってしまったら評判はガタ落ちになると思う。
あれ?雄二と霧島さんがいつの間にかいなくなってる。まぁ、雄二が連れ出したんだろうけど。
『あぁっ!?グダグダ抜かすとマスコミにここの態度について投書すっぞコルァっ!』
『そーよっ!アタシたち、オキャクサマなんだからねっ!』
あー鬱陶しい。オレこういう存在を見るといらつくんだよなぁ。
「…………(ツカツカツカ)」
「(ぐいっ)光正ダメ。私たちの目的を忘れないで」
「…………分かったよ」
そしてそのまま、紫乃に腕を引かれオレたちはその場を後にした。