バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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雄二&霧島さん結婚大作戦! ④

《それではいよいよ本日のメインイベント、ウェディング体験です!皆様、まずは新郎の入場を拍手でお迎え下さい!》

 

 二人の準備が終わったらしく雄二と霧島さんのウェディング体験が始まった。この園内にいる人たちの何割かはスタッフが混じっているが、しっかりと一般客もいる。

 因みにアナウンスに関してはオレではなく、しっかりとしたプロの司会者である。さすがにメインイベントはプロの方でないと、オレにプレッシャーがかかる。そんなのはお断りだ。

 

「二人ともどんな風になっているのかな?」

「霧島さんはともかく雄二はな……」

 

 オレと紫乃は客席側にいる。もうオレの役目は終了したので紫乃と一緒にウェディング体験を観客として見物する。

 そして新郎役の雄二が壇上に立ち、司会者は進行しようとする。

 

《それでは新郎のプロフィールの紹介を――》

 

 プロフィール紹介だなんて、随分と本格的な事だなぁ。多分、兄さんから聞いて細かく下調べをしたと思うけど。

 

《――省略します》

 

 手抜きかよ。

 

『ま、紹介なんていらねぇよな』

『興味ナシ~』

『ここがオレたちの結婚式に使えるかどうかが問題だからな』

『だよね~』

 

 声の主は…………あぁ。最前列に座っているチンピラか。しかし、あそこで大声を出しながら会話をするとはね。見た目どおりでマナーが欠如した奴らだ。

 

《……他のお客様のご迷惑になりますので、大声での私語はご遠慮頂けるようお願い致します》

 

『コレ、アタシらのこと言ってんの~?』

『違ぇだろ。俺らはなんたってオキャクサマだぜ?」

『だよね~っ』

『ま、俺たちのことだとしても気にすんなよ。要は俺たちの気分が良いか悪いかってのが問題だろ?な、これ重要じゃない?』

『うんうん!リュータ、イイコト言うね!』

『それに俺はあの天草グループで働く、いわばエリートだぜ?俺を指摘しようものなら天草グループが後ろ盾してくれる』

『さすがリュータ!あったまいい~!』

 

 調子に乗って下卑た笑い声が会場に響く。ああ。本当に調子に乗ったクソ野郎どもだ。

 

「紫乃」

「えぇ。もし、邪魔するようなことがあれば即刻クビね」

「…………というか、なんであんなの雇ったんだ?」

「…………私に言わないで」

 

 というか、本当に働いてるのか?嘘の可能性も否定できんが……まぁいい。

 

《――それでは、いよいよ新婦のご登場です》

 

 心無しか音量の上がったBGMとアナウンスが流れ、同時に会場の電気が全て消えた。

 舞台に立っている雄二たちの方でスモークが足元に立ち込めると、否応無しに雰囲気が盛り上がる。

 そして、雄二の前方に一条のスポットライトが点された。

 

《本イベントの主役、霧島翔子さんです!》

 

 アナウンスと同時に更に幾筋ものスポットライトが壇上の一点のみを照らし出す。暗闇から急に光が入った事により、オレは思わず目を瞑ってしまう。

 そして、再び目を開けたその先に見たのは、

 

「…………」

 

 霧島さんの余りの綺麗なウェディングドレス姿にオレは言葉を失った。

 

『…………綺麗』

 

 静まり返った会場から溜息と共に洩れ出た、誰の者ともわからない台詞。だが、その言葉は、他の観客達もそう思っているはず。

 霧島さんはそんな観客の事は気にせず、真っ直ぐと壇上に立っている雄二の前に向き合う。

 

「…………翔子……綺麗になっているね……」

「……本当に綺麗だな……」

 

 オレたちが小声で会話をしてる中、花嫁の霧島さんが俯き、ブーケに顔を伏せていた。ソレと同時に静かに震えだしているようにみえる。

 

《ど、どうしたのでしょうか?花嫁が泣いているように見えますが……?》

 

 司会者が仕事を思い出したかのようにアナウンスを入れる。

 泣いている?………確かによく見たら霧島さんが静かに泣いている。何があった?

 

「お、おい。どうした……?」

 

 壇上にいる雄二が泣いてる霧島さんに問いかける。

 会場から静寂が消え、観客の間に少しずつザワつきが生まれだす。

 そんな中、霧島さんは、

 

「……ずっと……夢だったから……」

 

 涙混じりの掠れた声で答えた。

 

《夢、ですか?》

 

「……小さな頃からずっと……夢だった……。私と雄二、二人で結婚式を挙げること……。私が雄二のお嫁さんになること……。私一人だけじゃ、絶対に叶わない、小さな頃からの私の夢……」

 

 霧島さんの台詞にオレたちを含める会場にいる観客達が再び声を失う。彼女が自身の夢を語り、願いが叶ったと言ったからだ。口数の少ない少女が紡ぐ言葉にはそうさせる力があったのだ。

 おめでとう。霧島さん。

 

「……だから……本当に嬉しい……。他の誰でもなく、雄二と一緒にこうしていられることが……」

 

 霧島さんがそこまで言うと、後は言葉にする事が出来ずに再び静かに泣き始めた。

 彼女の言葉に胸を打たれたのだろう。観客たちの中から鼻を啜る音が聞こえて来た。もらい泣きをしているのだろう。

 

「うぅ……良かったね。翔子……」

 

 隣にいる紫乃も感動して涙を流しているし。

 

《どうやら嬉し泣きのようですね。花嫁は相当に一途な方のようです。さて、花婿はこの告白にどう応えるのでしょうか?》

 

 さて、雄二はこの状況で何を言うつもりだ?さすがのあいつでも逃げだすことはしないだろうな。きっと、本心で答えてくれるはずだ。

 

「翔子。俺は──」

『あーあ、つまんなーい!』

 

 折角、ツンデレの雄二が本心を言おうとしてたのに誰だ!この空気をぶち壊したバカは!

 

『マジつまんないこのイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、早く演出とか見せてくれな~い?』

『だよな~。お前らのことなんてどうでもいいっての』

 

 ピキッ

 

『ってか、お嫁さんが夢です、って。オマエいくつだよ?なに?キャラ作り?ここのスタッフの脚本?バカみてぇ。ぶっちゃけキモいんだよ!』

『純愛ごっこでもやってんの?そんなもん観る為に貴重な時間割いてるんじゃないんだケドぉ~。あのオンナ、マジでアタマおかしいんじゃない?ギャグにしか思えないんだケドぉ』

『そっか!コレってコントじゃねぇ?あんなキモい夢、ずっと持ってるヤツなんていねぇもんな!』

『え~っ!?コレってコントなのぉ?だとしたら、超ウケるんだケドぉ~!』

 

 好き勝手な事を言い、霧島さんを指差して笑い始めるチンピラども。すると、

 

《んだとテメェらっ!もういっぺん言ってみやがれ!》

《あ、明久君!落ち着いてっ!ステージが台無しになっちゃいます!》

 

 司会者の声ではなく、舞台裏の方から暴れている兄さんの声が聞こえた。チンピラどもの発言に兄さんは腹を立てたのだろう。まぁ……

 

『スタッフが怒るとか、本当にコントグへっ!?』

 

 オレもいい加減頭に来たけど。

 

『誰よ!リュータに向かってスチール缶何てモノ投げたのは!』

『いい度胸じゃねぇか!誰だぶつけたやつは!出てコイヤァ!』

 

 チンピラどもがキレる。沸点低いねぇ~

 

「あーすみません」

 

 手を挙げ、オレがやった犯人だと名乗り出る。

 

『テメェさっきのバカ司会者か!何のつもりだゴルァア!』

「ゴミ箱と間違えました。すみませんねぇ。ゴミにゴミをぶつけてしまって。後……」

『人を何だと思っていやがゴブアァ!?』

「缶を投げたんじゃなくて蹴ったんだけどな」

 

 再び飛んでいった缶が命中する。瓶じゃないだけありがたいと思え。

 

「あーまた、ゴミにゴミをぶつけてしまったか。まぁ、ゴミ同士仲良くやっていくでしょ」

『テメェ……!俺を怒らせると天草グループが……!』

『そうよ!リュータは天草グループの社員なのよ!天草グループが守ってくれるわ!』

 

 一歩また一歩チンピラの方へと近づく。嗚呼、こんな醜い存在を近くで見ないといけないのか。

 

「バーカ。こんな公の場でそんな礼儀も知らない行動をして、まだ天草グループの社員でいられると思ってんの?頭大丈夫?あ、ごめんなさいね。頭大丈夫ならこんな事しないか。というか、脳みそ入ってる?」

『テメェ……!』

「あーそういえば、ここに天草グループの御令嬢様がいるよ。まぁ、もう、上への報告は済んでるぜ?」

『は、はったりよ!そんなのはったりよ!』

「へぇ~はったりなんて言葉を知ってるんだ~まぁ、試してみればわかるし……」

 

 チンピラどもの目の前に立つ。

 

「……次はねぇって言ったよな?三秒で失せろ」

 

 目で威圧し、今抱いている憎悪を憤怒を殺意を全て言葉に乗せる。すると、一瞬震え、そのままチンピラどもは会場を後にした。無言で。何も言わずに。いや、何も言えずに……か。

 

《は、花嫁さん?花嫁さんはどちらに行かれたのですかっ?》

 

 司会者の発言に、オレは壇上の方を見る。そこには霧島さんがいつの間にかいなかった。立っていた場所にブーケとヴェールを残して。

 

《霧島さん?霧島翔子さーんっ!皆さん、花嫁を捜して下さい!》

 

 全スタッフが一斉に霧島さんを探し出す。

 そんな中雄二が会場から出ていくのが見えた。

 

「雄二。手伝おうか?」

「ん?俺は翔子捜索は手伝わんぞ?便所行きてぇしな」

「あ、そう」

「それに。お前、鳥肌立ちまくってるぞ?それに震えているようだし、チンピラに怖気付いたか?」

「アハハ……あのクソギャルに近づきすぎた。胸があるにもかかわらずに」

「なるほどな。じゃあな光正」

「ああ。任せたよ雄二」

 

 これから雄二がやろうとすることにオレは止めるつもりがない。まぁ、既に社会的制裁は済んでいる。後は、頼んだよ雄二。

 

「光正!雄二は!」

「ん?便所だって」

「あいつ……!」

「まぁまぁ兄さん。あのツンデレの雄二だよ。霧島さんの場所は分かってるはずだ」

「……まぁ、確かにそうだね。…………大丈夫?巨乳に近づいた?」

「察して」

「光正の相手は天草さんに任せるよ」

 

 こういう時だけ、自分の体質が嫌になってくる。観客にもちらほら巨乳が混ざってるせいで、思うように進めない。

 

「光正……」

「泣いたせいで目が真っ赤だぞ?」

「光正こそ。巨乳に近づきすぎたんじゃない?」

「……まぁ、巨乳に加えて嫌悪対象に入ってたから尚更かもな」

「ん?」

「何でもないよ。じゃあ、帰ろっか」

「うん!」

 

 やれやれ。今日は疲れたなぁ。

 

「でも、霧島さん。綺麗だったね」

「ほんとにね。翔子、綺麗になってよかった……」

「まぁ、雄二もあんなに綺麗なお嫁さんでさぞ羨ましい」

「ふふん。でも、私も綺麗さでは負けないはずですよ」

「はいはい」

「なんですかその適当さ。結婚式では言葉も出ないほど綺麗になって見せるんだから!」

「期待しないで待っているよ」

「むか。絶対に綺麗になるんだから!」

 

 知ってるよ。お前が元から綺麗なことぐらい。

 

 こうしてオレたちの『雄二&霧島さん結婚大作戦!』は幕を閉じた。

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