バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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ガオーさん様

ありがとうございます。
更新ペースは落ちていますが頑張って更新していきます。


バカ+プール=? ⑤

 バシッと水面にビーチボールが叩きつけられる音が響く。

 

「あのさ、雄二に光正」

「なんだ?」

「どうしたの?」

 

 オレの膝を枕に寝ている紫乃を撫でながら答える。

 遊び疲れたのだろうか。寝顔も可愛いなぁ……。

 

「僕の気のせいかもしれないんだけど」

「ああ」

「うん」

 

 ズバン、と勢いよくサーブを打つ音が鳴る。

 

「あの二人、ヤケに険悪な雰囲気で水中バレーをやってない?」

「大丈夫だ。俺にも険悪な雰囲気に見える」

「誰がどう見てもそんな雰囲気だよ?」

 

『美波ちゃん!絶対に譲りませんからね!』 

『上等よ瑞希!スポーツでウチに勝とうなんて思わないことね!』

 

 ボールよ割れろ、と言わんばかりに全力で打ち合う姫路さんと島田さん。最初は仲良くやっていたように見えたんだけど、何でいつの間にあんな事になったんだ?

 

「ときに明久」

「ん?なに、雄二?」

「この前俺がお前にやった映画のペアチケットはどうした?」

 

 ペアチケット?ああ、そう言えば雄二はウェディングプランが終わった翌日、兄さんにペアチケットを渡していたっけ?きっと、それについて言ってるんだろう。

 

「姫路さんと美波が随分と観たがっていたから、それなら二人で観てくるといいよってあげちゃったよ」

「……間違いない。それが原因だ」

「……ああ、それしか考えられない」

「へ?何が?」

 

『負けた方が諦めるって約束、忘れてないわよね!』

『もちろんです!美波ちゃんこそ負けてもお約束を破らないで下さいね!』

『そっちこそ!』

 

「ほぅ……。姫路と島田の勝負とは面白いのう。どちらが優勢なのじゃ?」

 

 疲れたのか、秀吉もプールから上がって兄さんたちの座るベンチに座りながら雄二に聞く。

 

「今のところは姫路が優勢だな」

「んむ?それは意外じゃな。球技ともなれば島田の方に軍配が上がりそうなものじゃが」

「姫路と島田の一対一ならそうだろうけどな」

 

 そう言って雄二はそれぞれの陣地と思わしきところを顎で示した。姫路さんのいるところでは霧島さんが、島田さんのいるところではミハル(?)とか言う人がそれぞれボールを追っていた。

 

「なるほどのう。霧島は運動神経も良いようじゃな。島田と互角とは、なかなかやるではないか」

 

 もし姫路さんと島田さんだけの勝負だったら島田さんの圧勝だっただろう。しかし、今回は霧島さんがパートナーである事によってそうはならなかった。霧島さんは勉強だけでなくスポーツも万能であり、巧みにボールを島田さんのいないところに落とし得点を挙げていた。

 

「それにしても、島田の相方は動きが不自然じゃな。故意に手を抜いておるように見えるのじゃが」

「あ、秀吉もやっぱりそう思う?」

「うん。あの人、確実に手を抜いているよ」

 

 島田さんのパートナーはさっきからミスばかりしている。サーブは全部外しているし、ボールが飛んできたら落とすか場外へと飛ばす。でも、構えや動きを見る限り、かなりの腕前だと思うのだが……。

 

『美春。アンタ、絶対手抜いてるでしょ……!』

『そんなことありませんお姉さま!美春はお姉さまの為に全力で(手を抜いていま)す!』

『これにはウチの大切な物がかかっているんだから本気でやりなさい!』

『はい!美春もお姉さまの為に本気で(手を抜いていま)す!あんなのとデートなんて、お姉さまの為になりませんから!』

『アンタ、さてはウチを負けさせる為にこっちに来たわね……!』

『ほらお姉さま!ボールがきましたよ!』

『あっ!?もう、早く言いなさいよっ!』

 

 島田さんたちが言い争いをしているうちに、姫路さんが打ったサーブが静かに二人の陣地に落ちた。

 

「はーい。これで15点。一セット目は代表&姫路チームの勝ちだよ!」

 

 審判をしている工藤が手を挙げて、最初の勝負の終了を告げる。

 

「一セット目?」

「大方三セットマッチだろ。五セットもやるとは思えないからな」

「確かにそうだね」

「遊びなのに随分本格的だね。コートチェンジもしてるし」

「お姉ちゃん、ファイトですっ」

 

 無邪気に姉の応援をする葉月ちゃん。島田さんのパートナーが手を抜いてるのに気づいていないのだろうか?

 

「続いて二セット目いくよ。サーブは島田さんチームだったよね?」

 

 島田さんのいる方にボールが投げ込まれる。島田さんはそのボールを拾ってパートナーに渡した。

 

「それじゃ二セット目っ!」

「ああっ!手が滑ってしまいましたぁっ!」

 

 工藤さんの合図と同時に宙に舞ったビーチボールは、サーバーの後ろへと飛んでいった。

 

「はい、0対一だよ」

 

 壁に当たって戻ってきたボールを再び工藤さんが島田さんのコートに入れる。

 

「パートナーがあのザマじゃ、島田の勝利はないな」

 

 その様子を見て、雄二が勝負の行く末をそう評した。

 

「そうだね。いくら美波が上手でも、一人じゃ勝ち目はないよね」

「パートナーが紫乃だったら島田さんも勝てるだろうに」

「あはは。でも、天草さんが入ると姫路さんが不利になっちゃうと思うけど」

「そこは仕方ないだろ。勝負の世界なんだから」

「もはやこの勝負は見えたも同然じゃな」

 

 雄二の意見にオレたちも同意し、意見を出す。

 

『……美春。もう一度言うけど、次のサーブからは本気を出しなさい』

『ひ、酷いですお姉さまっ!美春はお姉さまの為に一生懸命頑張っているというのに、その頑張りを疑うなんて!』

『下手な演技はいらないわ。よく聞きなさい美春。これが最後の警告よ』

『お姉さま信じてくださいっ!美春はお姉さまに嘘なんてつきません!』

『いい?ここまで言ってもまだ本気を出さないと言うのなら──』

『ですから、美春は本気を出してますと何度も』

『──ウチは明日から美春のことを、「清水さん」って呼ぶことにするわ』

『…………』

 

 黙り込む清水さん(?)。別になんの問題もないと思うけど。

 

「ねぇ、いまのサーブ見た!?垂直に変化したよ!?」

「どうやればビーチボールであんな芸当ができるのじゃ!?」

「流石の翔子もアレは取れないな……!」

「ほぇ?あの程度。オレと紫乃も出来るよ?やろうと思えば」

「「「え……?」」」

「ん?何その顔。疑ってる?じゃあ、やってみるよ」

 

 そう言って手近にあったビーチボールを座ったままでサーブを打つ。

 

 パアンッ!

 

「ね?垂直に折れたでしょ?」

「「「それもだけどボール割れたよな!?」」」

「あー力加減ミスったか……まぁ、座った状態だしな」

 

(((何なんだコイツの身体能力……)))

 

『お姉さまごめんなさい!美春は嘘をついていました!』

『いいのよ美春!これからも友達でいましょうね!』

 

 公衆の面前でヒシと抱き合う二人。なんだか、お芝居を見ている気分だ。

 

「でも、こうなると形勢は一気に逆転だね」

「そうじゃな。可哀想じゃが、姫路はお世辞にも巧者とは言えんからのう」

「うんうん。さっきまでの動きと雲泥の差だよ。あの人」

「やれやれ。姫路も可哀想にな。折角のデートのチャンスが奪われるとは」

 

 パアンッ!

 

 大きな破裂音がプールに響き渡った。

 

「むぅ。凄い威力じゃ。まさかビーチボールを割るほどとは」

「え?今の音って光正が垂直サーブ見せた時と同じ……ボール破裂したの?」

「うむ。島田の相方がサーブを打った瞬間に破裂したのじゃ」

 

 プールの水面にはボールだったものと思われるが破片が浮いてる。一体、どんな力でボール打ってたのやら。

 

「ん?もう朝……?」

「あ、起きた?」

 

 こちらは今の音で目が覚めたらしい。

 

「むにゃ……光正大好き」

「はいはい。ありがとうね。オレも大好きだよ」

「えへへ~」

 

 尚この時、凄まじい殺気を二人から感じたが全面スルーした。

 

「あ……!ごめんなさい。美春、ちょっと力を入れすぎてしまいました。代わりを探してくるので、お姉さまたちは休憩してください」

 

 そう告げてパートナーの子はプールを出て行く。用具室にでも向かったんだろうう。

 

「……ちょっと疲れた」

「そうですね。ボールが見つかるまではお言葉に甘えて休みましょうか」

 

 休憩の為に、バレーをしていた皆がプールから上がってくる。

 

「お疲れ様。皆凄く気合が入っていて、観ていて面白いよ」

 

 兄さんが最初に上がってきた姫路さんに声を掛ける。

 

「あ、はい。ありがとうございます。私も皆と一緒に遊べて嬉しいです」

「あはは。それは良かったよ」

「ところで、どうしてプールを借りることができてたんですか?」

 

 姫路さんが顎に指を当てて尋ねる。あれ?兄さんや雄二から聞いてないのかな?

 

「まぁ、ちょっとイロイロあってね。プールの掃除を引き受ける代わりに一日貸してもらったんだよ」

 

 イロイロ……ねぇ?

 

「え?お掃除ですか?このプール全部を?」

「うん。でも、一人でやるわけじゃないよ。僕と雄二とムッツリーニと秀吉と光正の五人でやるんだ」

 

 本当にオレを数に含めていやがるこいつ。オレの意思は関係ないのか?

 

「プール掃除?それならウチも手伝おっか?」

 

 その会話を聞いていたのか、傍にいる島田さんが掃除の参加を申し出た。

 

「私もお手伝いします。遊ぶだけじゃ悪いですし」

「光正。私も手伝うよ~?」

 

 姫路さんや寝ていた紫乃も当然のように手を挙げる。うんうん。人手が増えるのはありがた――

 

「ありがとう。でも、掃除は僕らだけで充分だよ。道具は五人分しか借りてないし」

 

 ――おいコラ何勝手に断ってんだよこのクソ兄貴。道具ならどっからか借りればいいだけの話だろうが。こんなところで貴重な労働力を逃すなよ。まぁ、紫乃に働かせるつもりはねぇけど。

 

「そうですか」

「う~ん、道具がないなら仕方ないわね」

「そうだね~」

「あ、そうでしたっそれならっ」

 

 姫路さんが何かを思い出したかのように手を打つ。その瞬間、オレと兄さんと雄二とムッツリーニと秀吉は本能的に何かを感じ取った。これは……?

 

「ちょっと失敗しちゃって人数分用意できなかったから黙ってたんですけど――」

 

 姫路さんがにこやかに言葉を紡ぐ。

 その間にオレたち五人が目まぐるしくアイコンタクトをやり取りしていた。

 

「――――実は、今朝作ったワッフルが三つ」

「第一回っ!」(雄二の声)

「最速王者決定戦っ!」(兄さんの声)

「「ガチンコ、水泳対決ーっ!!」」(雄二と兄さんの声)

「「「イェーッ!」」」(オレと秀吉とムッツリーニの合い手)

 

 姫路さんの台詞を聞き終える前にタイトルコールが入る。

 突然の事態についてこれず、女子たち全員が目を丸くする。

 

「明久、ルール説明だ!」

「オッケー!ルールはとっても簡単。ここのプールを往復して、最初にゴールした人の勝ちという、誰にでもわかる普通の水泳勝負です」

 

 そう本当にただの水泳勝負だ。誰が速く泳げるのかを競うだけのもの。

 この勝負は、一位二位とそれ以外で大きな違いがある。姫路さん特製ワッフルは三つで、オレたちは五人。つまり、生き残ることが出来るのは二人。

 

「バカなお兄ちゃんたち、突然どうしたんですかっ?急に水泳勝負なんて、葉月ビックリですっ」

「葉月ちゃん。男にはね、大切なものを賭けて戦わないといけない時っていうものがあるんだ」

「ふぇ~。お兄ちゃんたち、かっこいいですっ。プライドを賭けた勝負ってやつですねっ」

 

 賭かっているのはプライドじゃない。命だ。

 

「よくわかんないけど、五人の中で誰が一番速いのかは興味あるわね」

「そうですね。体力なら坂本君が一番に見えますけど……」

「……動きの速さなら吉井双子や土屋も引けを取らない」

「頑張ってね光正」

 

 事態の深刻さを分かっていないのか暢気な言葉が聞こえる。はぁ。何でこんなことになったのやら。

 

「へぇ~、面白そうだね。それじゃ、ボクが判定してあげるよ」

 

 工藤さんがスタート兼ゴール地点に立つ。25メートルのプールだから、50メートル勝負は往復になる。オレたちはスタート地点に着く。オレは丁度真ん中のレーンだ。右隣に雄二、左隣に兄さん……最悪の二人に挟まれた。

 

「はい、行くよ!位置について――」

 

 工藤さんのコールが響く。

 オレは飛び込みの姿勢を取りながら考える。

 ムッツリーニは大量の出血で弱っているから心配ない。秀吉もまぁこの面子的に大丈夫。

 

「よーい――」

 

 とりあえず、普通にやった場合は、兄さんと雄二とオレの中の二人が助かる。

 まぁ、兄さんと雄二のことだ。

 

「――スタートっ!」

「「くたばれこうせぇぇっ!」」

 

 兄さんと雄二がお互いに跳び蹴りをオレに向かって放っていた。まぁ、オレを狙ってくることは想定どうりだ。故に対処も簡単。しゃがんで躱し、二人が交差する瞬間に飛び込みそのまま深く潜る。

 

『くそっ!やっぱり雄二も僕と同じことを考えていたね!?』

『光正さえ潰せば俺の優勝は決まったも同然だったのに……!』

 

 こいつら最低だろ……そう思いながらプールの底ギリギリを静かに速く泳ぐ。

 

「あのさ、二人とも。取っ組み合いもいいけど、弟君とムッツリーニ君はそろそろ折り返しだよ?というか、紫乃のお気に入り君は?姿が全く見えないんだけど……あ、あんなところにいたのか」

 

 そこへ工藤さんが余計なことを言ってくれる。おかげで兄さんと雄二はオレたちの妨害をしようとしだした。

 

「な、なんじゃ明久!?お主は隣じゃろう!?」

「ダメだよ秀吉!ここは通さない!」

 

 何かよくの分からない会話が繰り広げられる。ふぅー

 

「ゴールっと」

「明久、放すのじゃ!」

「逃がすもんかぁぁあっ!」

 

 プールから上がり後方を見ると、兄さんが秀吉の前に立って妨害している。

 

「……?なんだろう?」

 

 急に兄さんが素っ頓狂な声を上げる。一体何をしたんだ?

 

「あ、明久君っ!なにをしてるんですかっ!?」

 

 そこに姫路さんの血相を変えたような声。

 

「へ?」

「それです、それ!」

 

 姫路さん血相を変え、兄さんの手を指差す。

 

「あはは、そういえばコレ、秀吉の水着に似ているね」

「あはは、ほんとだ。兄さん何やってんだよ~」

「んむ?そういえば胸元が涼しいのう」

 

 何か違和感を覚えたのか、秀吉はその場に足をついて立つ。

 あー、上の部分がなくなってるねぇ。

 

「………死して尚、一片の悔い無し……!!」

 

 遠く離れたレーンからムッツリーニのそんな言葉が聞こえてきた。

 そして朱に染まっていく水面。あ、コレまずいやつだ。

 

「ってやっぱりコレ秀吉の水着!?ごごごめんなさいっ!神に誓って僕は何も見てないから!」

「待つのじゃ明久!ワシは男じゃぞ!どうしてそこまで慌てるのじゃ!?」

「うおっ!大丈夫かムッツリーニ!?この出血量はマジでやばくないか!?」

「…………構わない。むしろ本望……」

「わぁぁっ!ムッツリーニが大変な事に!?血が物凄い出ているんだけど!」

「き、木下っ!とにかく胸を隠しなさい!土屋の血が止まらないから!」

「いいいイヤじゃっ!ワシは男なのじゃ!胸を隠す必要なんてないのじゃ!」

「木下君、我儘言っちゃダメです!土屋君が死んじゃいます!」

「……愛子。救急車の手配、頼める?」

「はーい。やっぱりFクラスの皆は面白いねぇ」

「バカなお兄ちゃんたち、いつも楽しそうで羨ましいですっ」

「お姉さま愛しています……」

「あはは……大変なことになったね」

「まぁ、いつも通りだろ」

「光正!お前も手伝え!」

「へいへい」

 

 結局、ムッツリーニは何度も峠を迎えながらも、オレたちと救急隊員の懸命な延命措置によって一命を取り留めた。

 そして週明けの朝、兄さんと雄二は鉄人に生活指導室に連行されていた。

 バカとプールを足すと陸なことにならないね。

 

 

 

 

「そういえば、光正。泳いでいた時、一回も浮上してなかったけど、息は持ったの?」

「ん?五十メートルぐらい浮上しなくても泳ぎ切れるよ?」

「あはは……そりゃ、水中鬼で勝てるわけがないよ。というか、身体能力高くない?」

「今さら?まぁ、そこそこはあるつもりだよ?」

「本当に人間かな……」

「人間だよ!」

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