バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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バイトしよう ①

 バカの兄さんは叫んだ。

 

「どうかしたの、じゃないよ母さん!通帳を何度確認しても残高が三九円のままなんだけど!僕への仕送りを忘れてない!?」

 

 電話越しの母さんに向かって。

 おかしいな。オレはしっかり振り込まれていたけど……あ、そういえば今月のお小遣いは普段より二割多かったな。なんか関係あるのか?

 

「息子への仕送りを横領!?くそぉっ!父さんに言いつけやるっ!」

 

 オレはゲームをしながら、電話をかけている兄さんを見る。相変わらずうるさいなぁ。

 

「父さんと光正も共犯なの!?」

 

 待て待て待て。何故オレも共犯扱いなんだ。しかも何の共犯だ何の。

 

「僕の生命の源を家族三人で仲良く等分だなんてアンタら最低だ!」

 

 いきなり、最低呼ばわりとかいい度胸じゃないか。ちょっと表出やがれ。

 

「しかも微妙に力関係が出ているし!父さんが可哀想だよ!」

 

 急にどうした?共犯の次は可哀想?というか、オレは?

 

「……父さん……どうしてこんな人と結婚したの……?」

 

 知らねぇよ。父さんに聞けよ。

 

「え?ああ、うん」

 

 ん?雰囲気が変わった?

 

「……ごめん母さん。電波が悪くて聞こえないんだ」

 

 ……コイツは何をごまかしているんだ?

 

「え?光正に代わって?まぁ、僕はいいけど……光正ー!」

 

 ッチ。面倒だなぁ。とりあえず、中断して……っと。

 

「はいもしもし?」

『もしもし?光正』

「で?オレに代われって何の用だ?」

『頭の悪い方の息子の成績を教えてくれる?』

「……別にいいけど。あんまり教えたくないかな」

 

 だって……ねぇ。

 

『いいから教えなさい』

「だって教えると、母さん。あまりのショックで寝込んでしまうよ?」

 

 あまりの酷さに、母さんが倒れてしまわないか心配だ。

 

「ちょっと待つんだ!どうして僕の成績がそんな悪いみたいな言い方するのさ!」

 

 当たり前じゃないか。何を言ってるんだ?

 

『覚悟はできてるわ。だって、明久は人類の想像を遥かに超越するくらい頭が悪いんだから』

「…………」

 

 言葉もなかった。実の母親にここまで思われている兄さんって一体……?

 

「でも母さん。二年生になってから兄さんも成長したんだよ」

 

 そう成長はした。

 

「光正……」

 

 兄さんがいいこと言った的な目でこちらを見る。

 

「やっと九九が言えるようになったんだよ!」

『……うちの明久はいつから小学校二年生になったのかしら』

「九九ぐらい言えるわ!」

「……とまぁ。そんな話をするレベルです」

『もういいわ。じゃあね光正。明久によろしく』

「ほーい」

『あ、仕送りは打ち止めって言っといて』

 

 プツッ

 

「兄さん。母さんから仕送りは打ち止めって」

「何だって!?くそっ!こうなったらストーカーのようにリダイアルを連打してやるっ!息子の強さを舐めるなよっ!」

「程々にしとけよ~」

 

 こうして、オレはゲームに舞い戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、嫌がらせ撃退音を鳴らされた後に着信拒否に設定された、と」

「うん。酷いと思わない?あの人、きっと僕の母親じゃないと思うんだ」

「自業自得だバカ野郎」

「そうか。お前らも苦労しているんだな……」

 

 昼休みの教室。母さんについて兄さんが雄二に愚痴を言ってた。すると、雄二から意外な反応が返ってくる。

 

「ど、どうしたの雄二?そんなに同情してもらっても気味が悪いんだけど」

「そうだよ雄二。急にどうした?熱でもあるのか?」

「いや、母親についての苦労は俺もよくわかるからな……」

 

 雄二は遠い目をしながら窓の外を眺める。その表情には哀愁が漂っているようにも見える。雄二の母親はそんなに苦労する人なのかな?

 

「して、明久はどうするのじゃ?」

 

 飲み物のパックを片手に持っている秀吉が兄さんに問い掛ける。秀吉が飲んでいるのは豆乳。美容にいいって前TVで言っていたっけ?まぁ、何飲もうが個人の勝手だが。

 

「う~ん……。正直、困っているんだよね。向こうも意地になっているみたいでなかなか電話が繋がらないし、会いに行こうにも海外なんて遠すぎるし……」

「というか、オレたちって、母さんも父さんも何しているのかとか何処にいるとか良く知らないよね」

「……それって、かなりの問題じゃ……」

「「気にしたことないけど?」」

「あ、そう」 

 

 うーん。本当に父さんと母さんは何している人なんだろう?何か海外企業の経営コンサルタント?みたいなことやってるって聞いたことがある気がする。

 

「…………自分で稼ぐしかない」

 

 何かの雑誌を見ながら呟いたのはクラスメイトの土屋康太。通称ムッツリーニ。

 ただ最近彼は、ムッツリじゃなくて只のオープンスケベにしか見えない。

 

「だよね。何か良いアルバイト見つけないとなぁ」

「できれば、日払いで……だろ?」

「うん。後、高校生でも働けるところ」

 

 そりゃそうだ。

 

「バイトか。それなら、駅前の喫茶店でバイトを募集していたぞ」

 

 雄二が顎に手を当てながら呟く。

 

「駅前の喫茶店?」

「『ラ・ペディス』だったか?あの何語だかよくわからん名前の店だ」

「へぇ~。あのお店、バイトの募集なんてしていたんだ」

「確か、今週土曜日だけの募集で、11:00~20:00勤務で8800円程度、未経験者歓迎とか」

「日雇いで未経験者歓迎?それは僕にとって都合がいいけど──何かありそうだね」

「ほんと、裏がありそうだね」

 

 普通の喫茶店でこんな日雇いのアルバイトなんて頼まないし、未経験者歓迎ってもう普通とは考えにくい。

 

「確かに珍しい募集の仕方じゃが、そう訝しむほどのことでもなかろう。大方、突然人員が減って急場をしのぐ為に募集をかけておる、とかその程度じゃろ」

 

 まぁ、そうとも考えられる……か。

 

「…………そもそも、明久に選り好みをする余裕はない」

「う……。それは確かに……」

「じゃが明久よ。光正には仕送りがされているんじゃろ?だったら良いのではないか」

「光正がさ。僕が対価を払わないとご飯をくれないんだ。酷いと思わない?」

「何でオレが貰った金で兄さんの面倒を見ないといけないんだ。それにオレは兄さんと違ってバイトをちょくちょくしていたからな」

「そうなの?」

「そうだわ」

 

 まぁ、高校生ともあって日雇いとか短期のやつしかやってないけど。まぁ、最近は、紫乃優先だし、バイトはそこまでしていない。

 

「んじゃ、明久も面接に行くか?」

「え?『明久も』ってことは、雄二もやるの?」

「そのつもりだ。というか、元々俺がやろうと思っていたバイトだからな」

 

 なるほど。どうりで詳しいわけだ。

 

「なんじゃ。雄二も何か入用じゃったのか?」

「ああ。ちょっと……自分の部屋に鍵をつけたくてな。とびきり頑丈なやつを」

 

 うーん。なんとなく想像出来てしまう自分が怖い。

 

「それで、募集って何人くらいだったの?」

「確か、四~五名ってなっていたぞ。結構広い店みたいだし、それなりに人数が必要なみたいだな」

 

 ふーん。そうなんだ。

 

「五人くらいか。それなら、秀吉とムッツリーニと光正も一緒にどう?」

 

 まぁ、悩む必要はないか。あれ?今回は聞かれたなぁ?

 

「そうじゃな……。演技の幅が広がるかもしれん。何事も経験じゃ」

「…………カメラの購入資金の足しになる」

「まぁ、あっても困ることないしいいよ」

 

 まぁ、ムッツリーニの厨房での腕前は知っているし、オレとしてもかなりのものができる気がする。

 

「そうと決まれば、早速今日の帰りに面接に行こうよ。募集終わっちゃっても困るし」

「そうだな。そうすっか」

「了解じゃ」

「…………(コクリ)」

「ほーい」

 

 

 そんなわけでオレたち五人は学校帰りに『ラ・ペディス』へと寄り、その場で面接を受け、全員採用となった。

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