バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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誤字報告をしていただき感謝です!適用させていただきました!


録音機 悪戯 ダメ絶対

 強化合宿二日目の日誌を書きなさい。

 

 

 姫路瑞希の日誌

『今日は少し苦手な物理を重点的に勉強しました。いつもと違ってAクラスの人たちと交流しながら勉強もできたし、とても有意義な時間を過ごせました』

 

 教師のコメント

 Aクラスと一緒に勉強することで姫路さんに得られるものがあったようで何よりです。今度の振り分け試験の結果次第ではクラスメイトになるかもしれない人たちと交流を深めておくと良いでしょう。

 

 

 土屋康太の日誌

『前略。夜になって寝た』

 

 教師のコメント

 前略はそうやって使うものではありません。

 

 

 吉井光正の日誌

『特になし』

 

 教師のコメント

 何か書く努力をしましょう。

 

 

 吉井明久の日誌

『全略』

 

 教師のコメント

 あまりに豪快な手抜きに一瞬言葉を失いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強化合宿二日目。今日の予定はAクラスと合同学習になっていた。

 

「でも、なんで自習なんだろう?授業はやらないのかな?」

 

 合同学習という名の自習。学習内容も指定はない。

 

「授業?そんなもんやるわけねぇだろ」

「やらない?どうして?」

「明久。お前はAクラスと同じ授業を受けて内容を理解できるのか?」

「むっ。失礼な。雄二にはそうかもしれないけど、僕にとってはFクラスもAクラスも大差ないよ」

 

 両方理解できないから……だろ?

 

「……この合宿の趣旨は、モチベーションの向上だから」

「つまり、AクラスはFクラスを見て『ああはなるまい』と、FクラスはAクラスを見て『ああなりたい』と考える。メンタル面の強化が目的だ」

「な、なるほど……」

 

 霧島さんと雄二の息のあった説明により、兄さんは納得する。

 

「というか翔子。光正と天草を見習って、俺たちも勉強しないか?」

「あれ?光正と天草さん静かだね。てっきりイチャついてるものだと思ってたよ」

「……ONとOFFぐらい切り替えられる」

「……光正。ここ教えて」

「ああ、ここの式は……」

 

 聞かれたので質問に答える。

 

「ねぇ、雄二。思ったんだけど普段の二人と今の二人を足して二で割ったら丁度良くない?」

「奇遇だな明久。俺もそう思い始めた」

「……紫乃は光正が大好きだから。普段は仕方ない」

「まぁ、光正も天草さんのこと大好きだしね」

「でも、翔子も明久もよく見てみろ。あいつらの肩、密着した状態で勉強しているぞ」

「あれって、邪魔にならないのかな?」

「……大丈夫。あの二人の効き手は逆だから」

 

 そう。オレの効き手は一応左手。紫乃は右手。よって密着しながら勉強してもお互いを妨げることはない。

 そんなこんなで時間が過ぎてると……

 

「あ、代表に紫乃ここにいたんだ。それならボクもここにしようかな?」

「工藤さん、だっけ?」

「そうだよ。キミは兄の方の吉井君だったよね?久しぶり」

「ふぅー休憩……あ、愛子も来たんだ」

「オレも休憩……と。あ、工藤さんもいたんだ」

「それじゃ、改めて自己紹介させてもらうね。Aクラスの工藤愛子です。趣味は水泳と音楽鑑賞で、スリーサイズは上から78・56・79、特技はパンチラで好きな食べ物はシュークリームだよ」

 

 自己紹介でスリーサイズを言う必要はあるのだろうか。

 

「ん?どうしたの兄の方の吉井君?」

「いや、別に工藤さんの特技を疑っているわけじゃないんだ。ただ、その……」

「あ、さては疑ってるね?なんなら、ここで披露してみせよっか?」

 

 工藤さんが短いスカートの裾を摘んでいる。兄さんの隣では何故か雄二が目を抑えてのたうち回っていた。霧島さんが指をチョキにして「……浮気はダメ」と呟いているが無視だ。ちなみに……

 

「……見ちゃダメ」

「見ないから。手を放してください」

 

 オレは視界を手で塞がれていた。まぁ、雄二に比べたら痛みを感じないが。ん?どうやって視界を塞がれているのに雄二たちの様子が分かったのかって?そんなの指の僅かな隙間から見たに決まっているじゃないか。

  

「…………明久。工藤愛子に騙されないように」

「あれ?ムッツリーニ、随分と冷静だね。僕ですらこんなにドキドキしているんだから、てっきり鼻血の海に沈んでいると思ったのに」

 

 いつの間にかやってきたムッツリーニが冷静に工藤さんの言葉を受け流してるようだ。おかしいな。いつもなら鼻血を出しながらもカメラを構えていると思ってたのに。

 

「…………ヤツは、スパッツを穿いている……!」

 

 君は何でそんなこと知ってるんだい?

 

「じゃあ放してもいいね」

「あ、うん」 

 

 そして、覆っていた手は消え去った。

 

「そ、そんな!?工藤さん、僕を騙したね!?」

「勝手に騙されたんだろ?」

 

 隣では「俺は目を突かれ損じゃないか……」と落胆している雄二が呟いていた。

 

「あはは。バレちゃった。さすがはムッツリーニ君だね。まぁ、特技ってわけじゃないけど、最近凝っているのはコレかな?」

 

 工藤さんは、笑いながら小さな機械を取り出した。何それ? 

 

「…………小型録音機」

「うん。コレ、凄く面白いんだ。例えば──」

 

 小さな機械をカチカチと弄る工藤さん。少し間を置いて、内蔵されているスピーカーから声が聞こえてきた。

 

 ――ピッ 《工藤さん》《僕》《こんなにドキドキしているんだ》《やらない?》

 

「わああああっ!僕はこんなこと言ってないよ!?変なものを再生しないでよ!」

「ね?面白いでしょ?」

 

 悪戯な笑み浮かべる工藤さん。しかし、彼女の見ている方向は兄さんでは無かった。どこ見ているんだろうとオレも見てみると……

 

「……ええ。最っっ高に面白いわ」

「……本当に、面白い台詞ですね」

 

 そこには氷の微笑をたたえた島田さんと姫路さんがいた。

 

「瑞希。ちょっとアレを取りに行くの手伝ってもらえる?」

「わかりました。アレですね?喜んでお手伝いします」

 

 机に勉強道具を置いて、学習室を出て行く二人。そして、入れ違いで入ってくる秀吉。

 

「秀吉、どうしたの?」

「いや。先ほど、島田と姫路に石畳を運ぶのを手伝ってくれと言われたのじゃが、何かあったのかと思っての」

 

 あれ?兄さん冷や汗かいてない?

 

「工藤。今のは録音した会話を合成したのか?」

「うん。そうだよ」

 

 そんな兄さんを気にする様子も無く、隣では雄二が真剣な顔で工藤さんに詰め寄っていた。まさか、工藤さんが犯人だと思ってるのかな?

 

「光正~」

「どうした?」

 

 兄さんと雄二が小声で話している時、紫乃は何故かオレの膝の上に座り抱き着いて、

 

「頭撫でて~」

「撫でられるの好きだね」

「うん。光正に撫でられるの好き」

「はいはい」

「えへへ~」

 

 どうやらさっきまでの集中は完全に切れたようだ。

 

「工藤さん。キミが……」

 

 こちらでは、いつの間にか雄二と話を終わらせた兄さんが工藤さんに何か聞こうとしていたが、途中で言葉が切れた。

 

「ん?なに、吉井君?」

「あ~、え~と、その、キミが──」

「ボクが?」

「キミが──僕にお尻を見せてくれると嬉しいっ!」

 

 そして、兄さんが工藤さんにセクハラ発言をしていた。

 

「……ぷっ。あははっ。吉井君はお尻が好きなの?それともボクの胸が小さいから気をつかってお尻にしてくれたのかな?」

 

 兄さんのセクハラ発言に笑って流してくれる工藤さん。

 

「ご、誤解だよ!別に僕はお尻が好きってわけじゃなくて!」

「流石だな明久。まさか録音機を目の前にそこまで言うとは」

「ある意味天才だよ」

「へ?」

 

 どうやら、オレたちの言葉を兄さんは理解してない様子だ。

 

「ごめんね。折角だから録音させてもらったよ」

 

 ピッ 《僕にお尻を見せてくれると嬉しいっ!》

 

「ひあぁぁっ!?これは合成すらしてない分ダメージが大きいよ!?お願い工藤さん!今のは消して下さい!」

「こっちの吉井君って、からかい甲斐があって面白いなぁ。ついつい苛めたくなっちゃうよ」

 

 ピッ 《お願い工藤さん!》《僕にお尻を見せて》

 

「うあぁぁんっ!どんどん僕が変態になってる気がするよ!」

「前からだろ?」

 

 オレがそう言い終えると、何やら殺気を感じた。

 

「……今の、何かしらね?瑞希」

「……なんでしょうね?美波ちゃん」

 

 表情を変えず、島田さんと姫路さんは兄さんの後ろに石畳を設置し始めた。

 

「まさか、ただでさえ問題クラスとして注意されているのに、これ以上問題を起こすような発言をしたバカがいるのかしら?」

「困りましたね。そんな人がいるなら、厳しいオシオキが必要ですよね?」

 

 姫路さんもだいぶ染まったなぁ……。

 

「二人ともこれは誤解なんだ!僕は問題を起こす気はなくて、ただ純粋に《お尻が好きって》だけなんだ──待って!今のは途中に音を重ねられたんだ!お願いだから僕を後ろ手に縛らないで!あとそっちの皆も笑ってないで助けてよ特に雄二と光正!」

「…………工藤愛子。おふざけが過ぎる」

「ムッツリーニ!助けてくれるの!?」

「…………うまくやってみせる」

 

 兄さんのピンチを救おうと動いたのは他の誰でもないムッツリーニだった。

 そう告げるムッツリーニは工藤さんと同じように小型録音機を構えた。あれ?何だか嫌な予感。

 

「姫路さん。美波。よく聞いて。さっきのは誤解で、僕は《お尻が好き》って言いたかったんだ。《特に雄二と光正》《の》《が好き》ってムッツリィニィィーッ!後半はキサマの仕業だな!?うまくやるって、工藤さんよりも上手に僕を追い込むってことなの!?」

「…………工藤愛子。お前はまだ甘い」

「くっ!さすがはムッッリーニ君……!」

 

 予想的中。そして二人は互いをライバルのように睨み合っている。 

 

「……吉井。雄二は渡さない」

「……明久さんに光正は渡さない」

 

 そして、霧島さんと紫乃の二人は兄さんを睨みつけていた。

 

「アキ……。そんなに坂本と光正のお尻がいいの……?ウチじゃダメなの……?」

「前からわかっていたことですけど、そうはっきり言われるとショックです……」

「二人ともどうしてすぐに僕を同性愛者扱いするの!?僕にそんな趣味は──」

 

 バンッ!

 

 兄さんが言い切る前に、突然学習室のドアが開く。入って来たのはDクラスの清水美春さん(脅迫・盗撮犯容疑者筆頭)だった。

 

「同性愛を馬鹿にいないで下さいっ!」

 

 ああ。変人が増えた。

 

「み、美春?なんでここに?」

「お姉さまっ!美春はお姉さまに逢いたくて、Dクラスをこっそり抜け出してきちゃいましたっ!」

 

 清水さんが島田さんの姿を認めるなり勢いよく飛びつく。熱烈抱擁の構えだ。

 

「須川バリアー」

「け、汚らわしいです!腐った豚にも劣る抱き心地ですっ!」

 

 盾にされた挙句口汚く罵倒された須川君は涙を堪えて上を向いていた。

 

「お姉さまは酷いです……。美春はこんなにもお姉さまを愛しているというのに、こんな豚野郎を掴ませるなんてあんまりです……」

 

 知らないよそんなの。

 

「ちょっと美春!こんなところで愛しているとか言わないでよ!アキに勘違いされちゃうでしょ!?」

 

 いや、兄さんだけじゃないと思うよ。

 

「君たち、少し静かにしてくれないかな?」

 

 そんな中、凜とした声が響き渡った。声の主は……ああ。Aクラスの久保君だ。

 

「あ、ごめん久保君」

 

 兄さんは久保君にだけでなく、この部屋にいる全員に対して頭を下げる。

 

「兄の方の吉井君か。とにかく気をつけてくれ。まったく、姫路さんといい島田さんといい、Fクラスには危険人物が多くて困る」

 

 まぁ、危険人物は多いよね。このFクラス、オレ以外全員危険人物だろ。

 

「それと、同性愛者を馬鹿にする発言はどうかと思う。彼らは別に異常者ではなく、個人的嗜好が世間一般と少し食い違っているだけの普通の人たちなのだから」

「え?あ、うん。そうだね」

 

 何か凄い、重みのある発言だなぁ……。

 

「ほら美春。くだらないことで騒いでないで自分の学習室に戻りなさい」 

「くだらなくなんかありません!美春はお姉さまを愛しているんです!性別なんて関係ありません!お姉さま、美春はお姉さまのことが本当に──」

「はいはい。ウチにその趣味はないからね?」

 

 島田さんが清水さんを学習室の外に追いやる。これで静かになったかな?

 

「……性別なんか関係ない、か……」

 

 久保君が妙に思いつめた表情をして清水さんの捨て台詞を反芻していた。あ、兄さんが鳥肌が立ったように寒気が走ってる。まぁ、オレには関係ないや。

 

「性別なんか関係ない、ですか……」

「あのね姫路さん。その台詞を眩きながら雄二と光正と僕を交互に見るのはやめてもらえるかな?きっとキミは誤解をしているよ?知っての通り、僕は《秀吉》《が好き》なんだってちょっと!?」

 

 また余計な事をする二人だった。でも本当に綺麗に音を重ねているよなぁ……。

 

「け、けど、誤解しないでね?僕は秀吉の《特に》《お尻が好き》なんだ──ってこれだと余計に誤解を招くよね!?ムッツリーニと工藤さん、とにかくその機械をこっちに渡しなさい!僕を取り巻く環境が変わらないうちに!」

 

 もう手遅れだよ。

 

「あ、明久……。ワシはどんな返事をしたら良いのじゃ……?」

「しまった!もう手遅れ!?こうなったら、《久保君》《雄二と》《交互に》《お尻を見せて》違う!どうしてこんな場面で久保君のお尻を見る必要があるのさ!」

 

 雄二のお尻を見る必要もないよ。 

 

「吉井君。そういうのは少々困る。物事には順序がある」

 

 違う。順序以前の問題だ。

 

「分かってる!順序云々の前に人として間違っていることも!」

「アキ、アンタやっぱり女より男の方が……」

「だからどうして皆は僕をソッチの人にしようとするの!?落ち着いて僕の話を聞いてよ!」

 

 やれやれ、大変だなぁ。

 

「ふぅー休憩終わり」

「じゃあ、やるか」

「うん!」

 

 結局、この騒ぎは西村教諭が怒鳴り込んでくるまで続いた。

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