バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
強化合宿三日目の日誌を書きなさい。
土屋康太の日誌
『前略。(※吉井光正に続く)』
教師のコメント
今度はリレー形式ですか。次から次へとよく思いつくものです。
吉井光正の日誌
『そんなこんなで夜中。目が覚めるとオレの目の前には紫乃が、辺りを見渡してみると島田さんと霧島さんも乗り込んでいた。この状況にもおおいに疑問を感じたがまぁ、いつも通りな光景だと思いオレは……(※坂本雄二に続く)』
教師のコメント
異様な光景を目の前にしていつも通りと思える君が凄いです。
坂本雄二の日誌
『そしてお気楽な光正と対照的に、こちらでは翔子が俺の前で浴衣の帯を緩めようとした。俺は慌ててその手を押さえつけ、思い止まるように説得した。ところが、隣では島田が明久に迫っていて妙な雰囲気になっており(※吉井明久に続く)』
教師のコメント
本当に君たちに一体何があったのですか?土屋君が略した部分がとても気になります。
吉井明久の日誌
『後略』
教師のコメント
ここでその引きはないでしょう。
翌朝。いつも通り早くに起きたオレは外に出て朝日を眺めていた。起床時刻までまだ余裕があるので外の新鮮な空気を吸っておこうと思ったからだ。
「朝日が綺麗ですね……」
つい言葉に出してしまう。でも、それが思っていることだから仕方ない。
「そうですね……」
また新しい一日が始まる。そんな思いを隣で座っている紫乃と顔を見合わせ共ゆ……?
「何で紫乃がここに居るんだぁ!?」
おかしい。オレは確かに一人でここに来たはずだ。何故こいつがここに居るんだ?
「もう……朝からうるさいですよ?」
「あ、ごめ……って違う!何でここに居るんだ!?」
「もちろん。光正あるところに私ありです。えっへん」
「……要するに?」
「ストーキングを……わわ!待ってください!冗談ですから!警察を呼ばないでください!」
オレは携帯を取りだそうとしたが紫乃の手によって阻まれる。
「安心しろ。警察は呼ばない」
「じゃあ、何を……?」
「紫乃の家に電話して世界的名医の脳外科の医者を紹介してもらおうと思っただけだ」
「まさか、この男。自分の彼女の頭がおかしいと言ってるの……?」
「何言ってるの?当たり前じゃん」
紫乃の頭がおかしいのは今に始まったことじゃない。
「むか。絶対光正の方が頭おかしいです!」
「ははは。オレのどこがおかしいのさ」
「平然とクラスメートを裏切れるところ」
「それは昨日のことを言ってるのか?」
「それもです。教師陣と女子生徒に『Fクラスの男子生徒たちが女子風呂の覗きをする』という情報をそれとなく流して、警備を堅めさせたり。私に拉致された振りをして、自分は覗きのための行動に参加せず西村先生の補習を逃れたり……クラスメートを裏切って心は痛まないのですか!」
「うん。全然痛まない」
「本当に人ですか!?」
うん。オレは人だ。そうでなければ紫乃は人外と付き合ってることになる。
「一回、精神科行った方が……」
というか、裏切るのはよくやることだしな。これで大きく裏切ったのは三回目か?まぁ、一々数えたらキリがないけど。
「まぁ、大丈夫だ。心配いらない」
「……いろんな意味で心配になりますが……」
酷いなぁ。そんなに信用ないのか?
「それより、光正。いつものアレをして下さい」
ん?いつものアレ?
そう疑問に思ってると紫乃は先ほどより少し顔を近づけ、目を閉じ、何かを待っている。
ああ、なるほどね。
コンッ
「何するんですか光正!」
「デコピン。威力は十分の一以下に抑えた」
「何故したんですか!?」
「え?目を閉じてやられるの待ってたんじゃないの?」
「して欲しいことが違います!」
「ははは。分かってるよ」
「もう……」
そう言って再び目を閉じる紫乃。なるほど。テイク2か。
ツンツン
「ん……?光正?一体何を?」
「頬を突っついてる」
「何故?」
「柔らかそうだったから」
「もう!焦らしプレイはそこまでにして下さいこのドS!」
「でもやられるの好きでしょ?ドMなんだから」
「はぁ?」
あ、やっべ。やり過ぎたか?
「言うに事かいて私をドMの雌豚呼ばわりとは……!」
「いえ、雌豚まで言ってないです」
というか、雌豚とは思ってすらいない。
「ふふふ。光正。私の真価を発揮してあげましょう……!」
いや、しなくていいです……と言おうとした時には既に唇は塞がれていた。
すっかり疲れ果てたオレは自分の部屋に戻ってゆっくりと過ごしていた。
「夢オチ!?がっかりだよ畜生!」
すると兄さんが頭の可笑しいことを言い始めた。起きて早々に『夢オチ!?』って叫ぶか普通?叫ぶやつなんかいないだろ。
「おはよう兄さん」
「おはよう光正。相変わらず早いね」
そりゃ、自分の朝食作ったり、去年は自分の弁当も作ってたからな。早起きに慣れている。
「でもなんかもう疲れてない?」
「気にするな」
こういうところだけ鋭いんだよなぁ……
「というか、兄さん。そっと背中の方を見て」
「え?背中?」
「うん。とってもいい光景が広がってるよ?」
そう言われてちょっとワクワクしながら背中の方を振り向く兄さん。
「ぐう……」
「…………最悪だ」
そこにはブサイクな寝顔をしている雄二がいた。
そして、吐き気を催すような光景を見ていると、雄二は大きく身じろぎをした。
「んあ……」
口が大きく開いて吐息が洩れる。
「やっちゃえよ兄さん。兄さんはいざという時は出来る男だろう?」
「やめてよ光正!悪魔と同じようなこと言わないで」
……悪魔?
『お前の兄貴にも俺のような悪魔がいるんじゃねぇのか?』
ああ、そういうことか。納得だ。
『パパ~ン。
消えろ。
『天使が一瞬で塵と化した!?』
あいつはもう用済みだ。よってデリートした。
「とにかく雄二!起きろコラぁっ!」
「ぐふぁっ!」
「もう少し優しく起こしてあげようよ」
兄さんは躊躇なく雄二を布団から蹴りだした。まぁ間近で雄二の寝顔を見た兄さんはさぞかし最悪な気分だろう。
「んむ?なんじゃ?雄二はまた自分の布団から離れた場所で寝ておったのか」
目を擦りながら秀吉が上体を起こす。更にその隣ではムッツリーニも秀吉と同じく目を擦りながら身体を起こしていた。
「秀吉、またってどういうこと?」
「いや、別に大したことではないのじゃが……雄二は寝相が大層悪いようでのう。明け方はワシの布団の中に入ってきておって──やめるのじゃ明久!花瓶を振りかざしてどうするつもりなのじゃ!」
「殴る!コイツの耳からドス黒い血が出るまで殴り続ける!」
秀吉が説明してる最中。兄さんは何を血迷ったのか花瓶で雄二を殴ろうとしていた。
ガチャッ
「おいお前ら!起床時間だ──ぞ……?」
「死ね雄二!死んで詫びるんだ!あるいは法廷に出頭するんだ!」
「なんだ!?朝からいきなり明久がキまっているぞ!?持病か!?」
「行け行け~もっとやれぇ~」
「ええい落ち着くのじゃ明久!光正も煽るでない!西村先生、済まぬがこやつを取り押さえるのを手伝って頂きたい!」
「……………!(コクコク)」
「……お前らは朝から何をやっているんだ」
結局、西村教諭とオレを含んだ全員で兄さんを止めて、この場は何とか収まったのであった。