バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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他クラスとの交渉

「Aクラスなら久保を説得するのが妥当だな。そんなわけで明久。説得に行ってこい」

「うむ。明久ならば適任じゃな」

「まぁ、確かにこの中では交渉役に一番ふさわしいよな」

「…………頼んだ」

 

 満場一致。オレたちは兄さんに久保君の説得を任せた。

 

「あ、うん。別にいいけど……でも、どうして僕なの?僕よりも交渉術に長けた雄二や清涼祭の準備でAクラスと親睦を深めていた光正の方が適任じゃない?」

 

 席を立って久保君のところに行こうとしたところで、オレたち四人に尋ねた。

 

「「「「…………」」」」

 

 兄さんの問いにオレたちは目を逸らすしかない。

 

「あ、あのさ。なんだか凄く嫌な感じがするんだけど、本当に大丈夫だよね?」

「そ、そうじゃな。一応、久保はお主に悪意を抱いてはおらんと断言できる」

「そうそう。少なくとも負の感情は抱いていないよ」

「…………彼に悪気はない」

「なんで三人ともそんな奥歯に物が挟まったような言い方をするの?」

 

 こういう言い方しか出来ないんだよ。

 

「明久、早く行ってこい」

「え?でも……」

「大丈夫だ。この中ではお前が一番久保に好かれている。だから自信を持て」

「あ、うん」

 

 うんうん。オレたち男子の中では一番兄さんが久保君に好かれている。断言してもいい。

 

「……ただし、いざという時はコレを使え」

 

 雄二が兄さんのポケットにスタンガン(二十万ボルト)を押し込む。兄さんは横目で確認するが、何故交渉のためだけにスタンガンを持たされるのかが分かっていない顔をしている。

 

「そ、それじゃ、行ってくるね」

 

 兄さんは釈然としないながらも久保君のいるテーブルへ向かう。

 

「光正。この交渉どうみる?」

「うーん。割合的に7:失敗、2:成功かな?」

「残りの1は?」

「……言わなくても分かるだろ?」

「そうだな……」

 

 無事に帰ってくるといいなぁ……ついでに兄さんの貞操も。

 それから少しして、兄さんがこっちに戻って来た。

 

「明久。どうだった?」

「大丈夫だった?」

「ごめん。失敗だったよ」

「そうか。まぁ、無事で何よりだ」

「いや、そんな危ないことはしてないんだけど」

 

 いや、かなり危険だったと思う。

 

「しかし、そうなると他のクラスとの交渉を迅速に進める必要があるな」

「それはそうだけど、今は一応授業中だよ?」

「それはわかっている。だが、全クラスに声をかけるとなると休み時間程度では全然足りないからな。なんとしても抜け出すしかない」

 

 雄二が鋭い目付きで鉄人の隙を伺っている。するとそんな様子を見て、島田さんがオレたちに近づいて来た。

 

「こらっ。アンタたち、また何か悪巧みしてるでしょ」

 

 目ざといなぁ。そして彼女が言った『悪巧み』と言う単語に遠くで鉄人がピクッと反応している。

 

「美波、別に僕たちは悪いことなんて考えていないよ?」

 

 いや、覗きに関して考えている時点でアウトだ。 

 

「はぁ……。今更アンタたちに問題を起こすな、なんて無理を言う気はないけど、よりによって覗きなんて……。少しは覗かれる方の気持ちを考えてみたら?」

 

 確かに……島田さんの言い分ももっともだ。

 

「よりによってお風呂の覗きなんて……。周りと比較されるし、隠すものはないし、パットを入れることもできないし、寄せてあげることも……」

「あの、美波。それって、一部のピンポイントな箇所を見られることを嫌がっているだけに聞こえるんだけど」

 

 なるほど……。

 

『どうしたの紫乃?急に泣き始めて』

『優子……お風呂って残酷よね……』

『はい……?』

 

 紫乃が何故泣いてるのかがよく分かった。

 

「美波、そういえば」

「ん?なによ」

「須川君が話があるって言ってたよ」

「え?須川がウチに?」

「うん。さっきそう伝えて欲しいって言われたんだ」

 

 須川君?あ、嘘か。恐らく島田さんを引き離す作戦だろう。

 

「ふぅん……。何の用かしらね。ま、後で休み時間にでも聞いてみるわ」

「え?あ、いや、それはちょっと困る、かな……」

「?なんでよ?」

 

 なるほど。今、この場から島田さんに向こうへ行ってもらいたいのだ。後では困る。 

「その、とても大事な話だから、すぐにでも聞いて欲しいって言ってたんだよ」

「え?大事な話って?」

 

 『大事な話』と言う単語を聞いて島田さんは食いつく。お、この様子ならすぐにでも動きそうだね。

 

「すっっっごく真剣な顔だったから、よっぽど大事な話なんだよきっと」

「えぇぇっ!?ま、まさか、それって……?須川がウチになんて、そんなのありえないよ……。でもでも、旅先だとその手の話は多いって言うし……」

 

 急に赤くなり始める島田さん。おそらく、恋愛絡みと勘違いしているのだろう。そんなわけないのに。

 

「今すぐ伝えたいって言ってたから、すぐにでも行かないと可哀想だよ」

「……アキは、それでいいの……?」

 

 島田さんは行くどころか、責めるような、寂しそうな目で兄さんを見ていた。

 

「え?それで良いも何も」

「だからっ!アンタは、ウチがその、須川とゴニョゴニョ……」

「ごめん。よく聞こえないんだけど」

 

 なるほど。言いたいことがよく分かった。

 

「ああもうっ!要するに、アンタはウチが誰かに告白されたりしたらどう思うのかって聞いてるのよ!」

「悪戯かと思う」

 

 即答だった。

 

「はぁ……。シャツについた血って落とすの大変なのよね……」

「いきなり返り血の心配!?僕の出血は決定事項なの!?」

 

 そりゃそうだ。

 

「島田。明久はお前がどこにも行かないと安心しきっているんだ。ここらで焦らせてやるのも一つの手だと思うぞ?」

 

 隣で様子を見ていた雄二が妙な事を言いだした。なるほど上手いな。これなら、兄さんには真意が伝わらなくても島田さんには充分に伝わる。

 

「……そうね。見てなさいよアキ。ウチだって結構モテるんだからねっ!」

 

 雄二の口車の乗せられた島田さんは、須川君がいる所へ向かって行った。

 

『島田。そんなに血相を変えてどうした?』

『西村先生。ちょっと須川に用事があるんです。スグに終わりますから』

『そうか。だが、その剣幕だとお前が須川を血の海に沈めないかと心配なんだが』

 

 お。これはチャンスじゃないか?

 

「明久、光正、秀吉、ムッツリーニ。今だ。見つからないように脱出するぞ」

 

 雄二が自習のフリをしている秀吉とムッツリーニにも声をかける。互いの目を見て小さく頷くオレたち。そのまま音を立てずに出入り口に向かい、廊下に出てそっと扉を閉める。

 

『大事な話?何のことだ?』

『騙したわねアキっ!出てきなさいっっ!』

 

 兄さんが扉を閉める寸前、島田さんの怒鳴り声が聞こえた。

 あと一瞬遅ければ、兄さんは犠牲になっていただろう……。

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