バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
そんなこんなで、出撃前ブリーフィング。
「おい、明久。光正のヤツは?」
「喉乾いたって。大食堂にジュース飲みに行ったよ」
「あの野郎……本当にマイペースだな。まぁ、作戦は伝えてあるし、そこで集合だから丁度いいか」
もう雄二も諦めているけど、光正は実は凄いマイペースだ。基本的にあいつは自由人だからなぁ。
「結局、手を貸してくれたのはD・Eクラスだけじゃったな」
「仕方ないだろう。Bクラスは代表が代表なだけに纏まりが無く、Cクラスは代表が小山だからな。男子連中がしり込みするのも無理はない」
「けど、D・Eクラスが協力してくれるだけでも昨日よりずっと状況が良くなったよ」
「まぁそうじゃな。女子側とて入浴の為に最大でも半数しか出てこられんじゃろうし、教師を抑えることが出来れば何とかなるじゃろ」
防衛側は昨日以上の戦力を保有していないはず、今日こそは……行ける!
「でも、ここまで大きな騒ぎにすると女子の入浴自体が中止になったりしないかな?」
「それはないだろ。教師側にもプライドがあるからな。『覗きを阻止出来ないかもしれないので入浴は控えてください』なんて言うと思うか?」
「ああ、そっか」
確かに先生たちとしても意地があるだろう。召喚獣を使った勝負で生徒に防衛戦を抜かれるようなことはあってもならないのだから。
「これは憶測だが……教師側はこの事態を好ましく思っている可能性もあるな」
「え?僕らの覗きを?」
「ああ。あくまでこの合宿の目的は『生徒の学習意欲の向上』だからな。目的がなんであれ、召喚獣を使って戦闘を行う以上勉強せざるを得ない。女子側も同様だ。防衛の為には召喚獣が不可欠だからな」
確かに、本当にマズイのなら、この部屋にこの入浴時間中鉄人一体を配置すればいいもんね。しかし、先生たちも自信があるからと言って随分と大胆な行動に出たもんだなぁ。
「さてムッツリーニ。作戦開始時刻と集合場所は両クラスに通達してきたか?」
「…………問題ない」
作戦開始時刻は二〇一〇時、集合場所は一階にある大食堂。前半組が脱衣を終えて入浴し始めている頃を狙って仕掛ける手筈だ。
「よし。それじゃ、そろそろ出るか」
「そうだね。他の皆が待っているかもしれないし」
僕らが大食堂に向かおうとしたその時。
「吉井兄っ、大変だ!」
突如ドアが開かれ、クラスメイトの須川君が飛び込んできた。
「須川君、どうしたの?作戦開始まではあと少し時間があるはずだけど」
「やられた!大食堂で敵が待ち伏せをしていたんだ!今は戦力が分断されて各階に散り散りになっている!」
「なんだって!?」
「それに吉井弟が天草に捕まった!」
「何ぃっ!?またかあいつは!」
まさか向こうに先手を打たれるなんて!
「…………情報が洩れるようなことはない」
断言するムッツリーニ。そうだ。ムッツリーニがそんなへマするわけがない!
「こっちの考えが読まれていた……!」
雄二が悔しげに呟く。
「坂本。吉井弟から最後のメッセージだ」
「拝見する」
須川君から紙を渡される雄二。僕らも見てみるが、そこには走り書きをした感じの字でこう書かれていた。
『この作戦が読まれるのは裏切り者が居るからだ。
裏切り者が自覚していない場合がある。貴重な一回を無駄にするようだが、
背に腹はかえられない。今日は引け。絶対に勝てない。なぜなら、
今、防衛の一人に最強の』
これ以降は文字が続いていなかった。きっと捕まって途切れてしまったのだろう。
「そういうことかよ……!」
雄二にはこの文面で光正の意図が分かったようだ。
「自覚していない裏切り者は……俺だ。間違いない。俺が考えを読まれている」
「成程のう。霧島翔子じゃな。流石、学年代表の名は伊達ではないな」
「よっぽど雄二の覗きが許せないんだね」
なるほどね。だから自覚していない裏切り者か。そりゃ作戦を考える雄二の思考が完全に読まれていたら失敗するわけだ。というか、常識はずれの雄二の作戦が読めるほど、霧島さんは許せないんだろうなぁ。
「…………だが、迷っている時間はない」
「そ、そうだね!雄二どうする!?光正は引けって言ってるけど」
「どうするもこうするも、こうなっては作戦なんて殆どないようなものだ。悪いがここで貴重な一回を無駄にするわけには行かない!分断された戦力を一旦編成し直す!とにかく出るぞ!」
「「「了解!」」」
須川君も含めた僕ら五人は廊下に出た。
「仕方がない。こうなったからには、各自の判断で行動しろ!」
『『『おうっ!任せておけっ!』』』
総司令である雄二から事実上の撤退宣言が下った。
「だから書いといたのに。今日は手を引いて新たな策を練り直せって」
そんな様子を女子たちの陰からこっそり眺めるオレ。そして、
「それで諦められたら苦労してないでしょ」
紫乃である。まぁ、紫乃のおかげでオレはあいつらの仲間と思われていない。
「というか、オレでも高橋女史があそこまでの怪物とは想定外だった」
「総合科目7000点オーバーはさすがに強すぎるよね……」
そう。最強の教師高橋女史までもが、この防衛線に加わった今、雄二たちに勝ち目はないだろう。
ましてや……
『…………』(←土下座)
『…………』(←土下座)
『…………』(←土下座)
雄二の降伏宣言に、雄二と兄さん以外の全員が土下座しているようではなおさらだ。
「……綺麗な土下座だな……」
「本当にねぇ……」
バカしかいない。
「兄の方の吉井君と坂本君は彼らのような真似はしないのですね。指揮官としての矜持というものですか?」
「違うな。高橋女史。俺たちには分かってるのさ」
「ええ。雄二の言う通りです。僕らにはわかっているんです。そんなことをする必要がないということが」
オレにも分かるけどさ……。
「まさか、助けが来るとでも……?」
兄さんたちの恐ろしいぐらいの余裕に高橋女史は警戒する。
「助け?違うな。アンタは何も分かっちゃいない」
「そうですね。僕らが言っているのはそう言うことじゃない」
そう。兄さんたちが土下座しないのは、決してプライドのためでも援軍を期待しているためでもない――
「坂本君、明久君。覗きは立派な犯罪なんですよ?」
「そういえばアキには昼間のお礼もしないとね」
「……雄二。浮気は許さないと言った」
――正解は、土下座程度であの三人が許すわけがないからだ。
「ところで光正」
「何、紫乃?」
兄さんたちの行く末を見守ってから個室風呂に来たオレと紫乃。風呂に入ろうと服を脱いでいた時に声がかかる。
「渡したメッセージ。なんであんなの書いていたの?」
「ああ。まぁ、理由としてはそろそろオレが裏切り者というヒントぐらい与えても面白くなるかと」
「ふーん」
答えに満足したのか興味ないのか服を全部脱ぎ律儀に畳んでいる。
「ところで、首の絆創膏はどうしたのですか?」
すると、急にニヤけながら聞いてくる紫乃。
「誰かさんが朝からキスマーク付けただろ?隠すためだよ」
Fクラスの男連中にばれようものならどんな処刑が待っているのか分からないしな。
「……もしかして、迷惑でした……?」
「別に(ぷいっ)」
「なるほど……。これが俗に言うツンデレですか。ふむ。やはり私はヤンデレになるべき……」
「ならなくていい」
「そうですか?」
「そうだ」
紫乃がヤンデレになった日には、オレがいろんな意味で死にそうだ。
まぁ、絶対に嫌いになることはないが。
『混在は裏切り者
を生み、
殷盛を生む。理解』
メッセージ没案。何となく載せてみました。