バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
紫乃との風呂も終え、ちょっと散歩をし部屋に戻ってきた。鉄人がオレたちの部屋を厳重マークしているせいで中々自分の部屋に入れなかったが、一瞬の隙を見つけて入ることが出来た。
「ゴふっ」
普通に四人とも部屋にいたのだが、携帯を見て吐血したかのような感じの兄さんがいた。
「バカぁっ!僕のバカぁっ!ある意味自分の才能にビックリだよ畜生!」
「兄さんは前からバカでしょ?」
「光正帰ってきたか……で?どうした明久?さっき何か悲鳴が聞こえたが」
「色々と大変なことになっちゃったんだ!二人とも今は僕の邪魔をしないで──」
「大変なこと?それは──っとと」
ツルン(雄二がバナナの皮で滑る音)
ドタッ(雄二が兄さんを巻き込んで倒れる音)
バキッ(雄二が兄さんの携帯電話を踏み潰す音)
「明久。大変なこととは何だ?」
「たった今キサマが作った状況だ」
「あ~あ。兄さんの携帯が粉々だよ」
兄さんの携帯は、雄二に踏まれて無残な状態になっていた。こんな状態じゃ誰かにメールや電話をしようとしても出来ないな。
「ん?これはお前の携帯電話か。すまん。今度修理して返す」
絶対すまんと思ってないだろ。というか分かってやっただろ。
「それと光正、今まで何処にいたんだ?」
「紫乃が関わっているって言ったらわかる?」
「……すまん。捕まってたんだよな」
謝る雄二。しかし、雄二の想像しているような事は起きてないのでご安心を。
「いや、今はそんなことどうでもいいから、とりあえず雄二の携帯電話を貸して!」
「あ、ああ。別に構わんが」
雄二が持っている携帯を放り投げるかのように兄さんに渡すと、すぐ調べるかのように何かを調べる兄さん。一応オレも後ろから見てみるが……
坂本雄二のアドレス帳登録……一件 → 『霧島翔子』
「雄二。アドレス帳には霧島さんしかないよ?」
「む。翔子のヤツ、また勝手に俺の携帯を弄りやがったか。機械オンチのクセに……。やれやれ。家でアドレス帳を入力し直さないとならないな」
「…………」
アドレスが霧島さんしかない事に兄さんは無言になりながら深刻な顔をしていた。この男は何をやらかしたんだ?
「明久。そんなに深刻そうな顔をしてどうしたんだ?まるで間違えて島田に告白とも取れるようなメールを送ってしまって弁明しようとしたところで俺に携帯電話を壊されてなにもできなくなってしまった、なんて顔をしているぞ?」
「なるほど雄二。説明ありがと」
「あははっ。何を言っているのさ雄二。光正も、そんなことあるわけないじゃないか」
「そうだよな。そんなことになっていたら流石に携帯電話を壊した俺が極悪人みたいだもんな」
「前から極悪人でしょ」
「まったくだよ。あはははははっ」
兄さんが笑いながら雄二の携帯を使って何やらメールで何やら文章を打って送信していた。
一応送った文面を見てみると……
【To:霧島翔子 From:坂本雄二
もう一度きちんとプロポーズをしたい。今夜浴衣を着て俺の部屋まで来てくれ】
実に愉快だ。
「うん?明久、俺の携帯で誰に何を送信し──ゴふっ。ななななんてことをしてくれるんだキサマ!」
「黙れ!キサマも僕と同じように色々なものを失え!どりゃぁぁ──っ!」
「おわぁっ!俺の携帯をお茶の中に突っ込みやがったな!?これじゃ壊れて弁明もできないだろうがこのクズ野郎!」
「そう!その気持ち!それが今僕が雄二に抱いている気持ちだよ!」
「何をわけのわからんことを!と、とにかく今は翔子の部屋に行って誤解を解いてこないと大変なことに──」
「あ、今出たら鉄人先生が……」
ガラッ(雄二が廊下へと続くドアを開ける音)
ドゴッ(廊下にいた西村教諭が雄二に拳を叩き込む音)
グシャベキグチャッ(雄二がテーブルを巻き込んで壁に激突する音)
「部屋を出るな」
「了解です」
ピクリとも動かない雄二の代わりに兄さんが返事をする。なるほど。見つからなくてよかった。
「ちなみに秀吉とムッツリーニはまだ携帯電話買ってないの?」
「うむ。特に必要ないからの」
「…………いざというとき鳴り出すと困る」
「はぁ、じゃあ光正貸して」
「ほーい」
オレは兄さんに自分の携帯を投げ渡す。
「さっきまで何か操作していたみたいだけど…………おい光正」
「何だい兄さん」
「何で美波の分だけ消されてるんだい?」
「あれれぇ~おっかしいなぁ~?」
「このクソ弟め!」
すると、兄さんはオレの携帯で何か文章を打とうとする。いや、正確には打っていた。
グサッ(花瓶の破片が壁に刺さる音)
「クソ兄貴。ステイだ」
「何故僕が光正に従わないと……」
「余計な動きを見せてみろ。次は目だ」
「くっ……お前には兄弟の情が無いのか!」
「ない」
「即答だと!?」
「携帯をそっと床に置いて、手を頭の上に」
「……ッチ」
「そのまま下がって……」
無事自分の携帯を回収する。そこには……
【To:天草紫乃 From:吉井光正
きちんとプロポーズをしたい。今夜浴衣を着てオレの部屋ま】
危ない危ない。というか、ほとんど雄二のやつのパクリじゃねぇか。取りあえず削除……っと。
「ところで、お主ら。いざこざも良いがこの部屋は片付けないとまずいのではないかの?これでは布団も敷けぬぞ」
「そうだね。とりあえず片付けて秀吉の撮影を始めようか」
「撮影?」
「うん」
「もしかして、秀吉の浴衣姿の写真でも撮ってA~Cクラスの男子の劣情でも煽るのか」
そして、覗きの仲間に引きずり込むと。
「良くわかったね。一応姫路さんと美波にも被写体になってもらうつもりだったんだけど……」
あぁ、兄さんが可笑しなメールを送ったから来ないかもしれないのか。
「んじゃ、なおさら掃除しないとな」
倒れたテーブルを起こし、床に散らばった物を拾って、ゴミは一ヶ所に集める。
えーっと、ムッツリーニの荷物は右(ドサッ)、ガラスの破片は左(ポイッ)、オレの荷物は右(ドサッ)
「兄さん
「ん?気絶してるしゴミでしょ」
「それもそうか」
というわけで気絶している雄二は左(ポイッ――ザク)
「ぐぁあっ!せ、背中にガラスの破片がっ!」
「あ、雄二。起きたなら手伝ってよ」
「そうだよ。雄二のせいでこうなったんだよ?」
「お前らには俺の背中の傷が見えないのか!?」
「大丈夫。致命傷ではなさそうだから」
「どうせ、雄二だしツバつけりゃ治るんでしょ?」
「そう思うならお前らにも、こうだっ!」
「ああっ!僕の着替えと荷物がガラスの破片まみれに!?」
「ふぅー。兄さんの荷物を盾に生き延びたよー」
「仕方ない。明久だけでもこの痛みを味わえ!」
「それなら浴衣を着るからいいさ!秀吉とペアルックだしね!」
「…………羨ましい」
「お主ら……、ワシの性別を完全に忘れておらんか?」
そうこうしている内に時間が過ぎ……。
コンコン
控えめなノックの音が扉から聞こえてきた。
「あ、いらっしゃい、姫路さん。廊下で鉄人に絡まれなかった?」
「西村先生はいましたけど、お菓子をあげたら通してくれました」
そう言って手作りと思わしきお菓子を見せる姫路さん。
「「さらば鉄人。安らかに眠れ……」」
オレたちは彼の冥福を心から祈ろう。
「ところで、明久君はどうして浴衣姿なんですか?」
「これ?部屋にあったのを着てみたんだ。折角あるならと思ってさ。似合うかな?」
「はい。とっても似合ってます!綺麗な肌や細い鎖骨が凄く色っぽくて!」
どうしよう。彼女からは大切なものが消え失せている気がする。
「姫路。よく来てくれた」
「こんばんは坂本君。お邪魔しますね」
「早速だが、プレゼントだ」
雄二が手に持っていた浴衣を姫路さんに渡す。
「浴衣、ですか?ありがとうございます。ところで話って……?」
手渡された浴衣に戸惑っていた姫路さんだった。
「話というか、姫路さんにお願いがあるんだ」
「お願い?」
「うん。実はね、その浴衣を着た姫路さんの写真を撮らせて欲しいんだ」
「え……っ?」
「あ~、その、なんて言うか……」
どう説明しようかと悩んでいる兄さん。しかし……
「……その、明久君と一緒なら、いいですよ……」
姫路さんが条件付きで承諾したのであった。
「それくらいお安いご用さ!僕も秀吉も一緒に写るから!」
ねぇ兄さん。少しは姫路さんの気持ちも察してあげて?
「まぁ、明久君ですから仕方ないですよね……。それじゃ、ちょっと着替えてきます」
そう言って姫路さんは浴衣を持って着替えに行こうとする。
「姫路さん、ちょっと待って」
「はい?」
しかし、兄さんが呼び止めた。
「実は撮る写真なんだけどさ、友達とかに見せてもいいかな?」
「え?浴衣姿をですか?そ、それは少し恥ずかしいです……」
「何を言っているんだ姫路。浴衣姿程度で恥ずかしいと思っていたら明久の存在はどうなる?バカの上に変態なんて、生きていけないほど恥ずかしいことじゃないか」
「そうだよ。その上で生活力ゼロで、金を全部趣味に注ぎ、弟に養ってもらってるなんてもう存在するだけで恥ずかしいでしょ」
「放して秀吉っ!雄二と光正の頭をかチ割ってやるんだ!」
秀吉が兄さんの腕を掴んで阻止する。
「とは言え、何もタダで頼もうなんてワケじゃない。それなりの礼はさせてもらおう」
雄二がそう告げながらチョイチョイと姫路さんを手招きした。
「なんでしょうか?」
特に警戒した様子もなく姫路さんが歩み寄っていく。
「ムッツリーニ」
「…………何だ」
「兄さんと姫路さんのツーショット。姫路さん用に一枚ぐらい撮って、渡してあげて」
「…………わかった」
本来は不干渉でいってもよかったが……まぁ、これぐらいはいいだろう。
「交渉は成立した。問題ないそうだ」
「はいっ!少しくらいなら浴衣の裾をはだけてもいいですっ!」
何やら姫路さんが奮い立っている。雄二。君は、姫路さんに何を吹き込んだんだい?
「とにかく協力してくれてありがとう。それなら早速準備をお願いできる?」
「はいっ!」
俗衣を抱えて部屋のトイレに入る姫路さん。
「…………(キュッキュッ)」
ムッツリーニは一心不乱にカメラのレンズを磨いている。
その後、浴衣を着替え終わった姫路さんがトイレから出ると撮影会が始まったのであった。