バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~ 作:アカツキ
「はぁ……はぁ……」
「どうした? もう終わりか?」
地に伏しているオレを見下ろす鉄人。
「……まだだ!」
「ならかかってこい」
何故こんな状況になったのか? それは昼休み終了直前に遡る……
「……本当にオレの体操服じゃねぇか……」
万に一つあの紫乃が間違っているわけがないと思っていたが一応確認したら本当にオレの体操服だった。
「はぁ……着替えるか」
取りあえず男子更衣室に向かうことにする。……さすがに紫乃に付いていくわけにもいかないし、付いて来られても困る。……あれ? オレ、体育って何処でやるんだ? まぁ、外か体育館だとは思うのだけど……
「というか、そもそもオレ一人で何するんだ?」
そう。一番の問題というか疑問点はそこだ。体育は男女で別れている。さすがに、女子側に混ざるわけにもいかないしな……色んな意味で。さて、どうしよう?
そう疑問に思いながら着替えを済ませ更衣室から出てくる。すると……
「着替え終わったか?」
仁王立ちする鉄じ……コホン。西村教諭がいた。
「えぇ、まぁ。あれ? 鉄人が担当ですか?」
「ああ。二年生は男子お前しか今は居ないからな」
「はぁ。で、何やるんですか?」
「そうだな。何か希望はあるか?」
「サボりたい。帰りたい。ゲームしたい」
「そうか」
そう言って納得する鉄人。マジで!? 帰らせてくれるの!?
「どうやら、お前には拳で教育を行う必要があるようだな」
なるほど。オレは返答を間違えたらしい。
「付いて来い」
そう言って先導する鉄人。えぇーまさか、補習室で監禁か?
「ここだ」
着いた場所は体育館。全体を半分に仕切って、向こう側では女子が整列している。
「で? 観戦でもするんですか?」
正直紫乃の体育姿には興味がある。まぁ、男子高校生だから仕方ないということで。というか、体操服姿の紫乃も可愛いなぁ。
「違う。少し待ってろ」
そう言っておもむろにマットを敷き始めた鉄人。
「はぁ。マット運動でもするんですか? 一応バク転とかバク宙とかも出来ますよ?」
「違うな。言っただろ? 拳で語るって」
「えぇーオレ暴力振るうのは得意じゃないですよ?」
「俺の背中をマットにつけるもしくはこの10m四方の敷かれたマットから外に出せばお前の勝ち。降参したらお前の負けだ」
なるほど。要するに、日頃の憂さ晴らしができるってわけだ。しかも、鉄人の許可の下で。
「ははっ。オレがそんな勝負に──」
キーンコーンカーンコーン
「──乗るに決まってんだろうがぁっ!」
「制限時間は五時間目終了のチャイムまでだからな」
こうして五十分一ラウンドの勝負が幕を開けた。
そして、場面は冒頭に戻る。
「オラッ!」
地に伏した状態から脚払いを仕掛ける……が。
「フンッ」
そのまま受け止められてしまった。
「……ッチ」
バク転の要領で起き上がり、即座に飛び膝蹴りを喰らわそうと思うも、
「甘いわ!」
身体をずらされ、そのままラリアットを喰らう。
ゴスッ
思い切り背中から落ちたので、背中が痛い。
「どうした? もうギブアップか?」
「そんなわけ……!」
即座に体勢を立て直し、殴りにかかる。
「攻撃が単調だ。もっと波をつけろ」
攻撃の波……か。
不意に攻撃の手を休めて、静止する。そして一気に最高速で蹴りを鉄人の胸に放つ。
「……っ!」
これを避けきれないと判断した鉄人は腕をクロスさせ、ガードの体勢をとる。そのまま行けば蹴りが当たるといったところで、
キーンコーンカーンコーン
授業のチャイム。蹴りを鉄人に当たる寸前で止める。これ以上はルール違反だ。
「そこまでだ。吉井弟」
「あー勝てなかったですか」
「だが、向かう姿勢は良かったし、最後の攻撃は良かったと思うぞ」
でも、勝てなかったのが事実。いや、五十分フルに戦ったがまともに一発すら入れられなかった。しかも鉄人は攻撃はしてもオレに怪我させないようにしている。本気じゃないってわけだ。
「で? 今週の残りの体育は何する?」
「今日と同じでいいですよ。次こそはって奴ですね」
「分かった」
オレはこの体育で悔しさと自分の弱さを感じた。これが敗北するって意味だろうか。
絶対に卒業までに鉄人を倒す。オレはこの時そう心に誓った。
………………ところで何でオレはこんなことを体育の授業中にしているのだろうか?
六時限目の補充テストもオレと紫乃の受けた現代国語は無事終わった。
時は放課後になったのだ……。
「ふふっ。光正。最後の勝負ですね」
「ああ。ここまで一勝一敗のイーブン。この教科で決着が付く」
数学はオレの、保健体育は紫乃の勝ちで終わっている。つまり、決着は最終教科現代国語に委ねられている。
「では、私から発表しましょう」
『天草紫乃 398点』
ほう。中々高いじゃないか。
「素直に感心するよ。中々点数が高いじゃないか」
そこは称賛に値するだろう。
「上から目線ですね。その余裕は本心ですか? それともはったり?」
「ククッ。さぁ、どうだろうな。ただ、紫乃は400点を超えてないだろ?」
つまり、現代文で腕輪を持て無かったということだ。
実に残念だ。
「ま、まさか光正。貴方……!」
「ああ。そのまさかさ。後1点で……」
そしてオレは満を持して自分の点数を公開する。
『吉井光正 4点』
「後1点で5点だった」
ゴスッ
襲い来る陥没するような頭部への痛み。
プニッ
引っ張られ、千切れそうになると錯覚する両頬。
「(あ、意外に柔らかい……じゃなくて!)光正! 何ですかこの点数は!」
「いひゃひも、ほへの実力ひゃ!」
「バカじゃないですか! 何が、素直に感心するよですか!」
「ひゃから感心してひぃひゃろうが!」
「何言ってるのかイマイチ伝わってないです!」
……それは紫乃が放せば解決だと思う。
「ですがそんなのどうでもいいです!」
どうでもいいのかよ。
「今はこの感触を堪の──いえ、このおバカを怒らないといけません!」
このおバカって誰だ? まさか、オレのことじゃあるまいな。
「おバカってひゃれのひょとだよ」
「あ・な・た・の・こ・と・で・す!」
おっと。今回は通じたらしい。
「まぁ、いいです。放してあげましょう」
「……っと。全く、手加減ぐらいしてもいいのに」
「誰かさんが酷すぎる点数を取ったからでしょ?」
……否定はしない。
「でも、現代国語でこんなひどい点数とることが分かってるなら、保健体育のテストを本気出せばよかったのに」
「甘いな紫乃。アレがオレの本気だ!」
「……今度は蹴り飛ばしましょうか?」
あ、怖い。後ろから修羅のようなものが見える。暴力! 反対! 暴力! 反対!
「さてと、勝負に勝ったことですし、何か一つ命令しますか」
「…………ゑ?」
「あれ? 言ってなかったですか?」
「言ってないよね!?」
「おかしいですね……言ったつもり(は全くありません)でしたが」
「嘘だ! 絶対に言ってないぞ!」
「……はぁ。わがままですね」
何故かため息をつく紫乃。いやいやそんな約束した覚え一切ないからね?
「というわけで、今度の日曜日。私とデートして下さい」
「…………はい?」
あれ? これ結局命令される流れなの?
「だから。私とデートして」
「……まぁ、それぐらいならいいけどさ。何処に行くの?」
「それは、光正にお任せします」
…………ゑ?
「行く場所とか、まぁ、デートプランって奴ですね。しっかり練っておいてくださいよ」
「えーっと……」
「ちなみに、お家デートはなしですよ?」
……勝手に話が進んでいるが、まぁ要するに。
「オレが紫乃をエスコートすると」
「はいです」
「いつもの行き当たりばったりじゃなくて、計画を立てて?」
「はいです」
……はぁ。計画……ねぇ。本当に立てる必要があるのだろうか?
「ちなみに計画を立てなかったら……」
「立てなかったら?」
「私がヤンデレになります♪」
「……はい?」
「それもかなり重度のです♪」
「よし。任せておけ」
決してヤンデレになった紫乃が怖いわけでは無い。