バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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紫乃、現実に後悔する

 ダイエットを決め込んだ次の日。今は昼休みである。

 

「紫乃~」

「何、光正」

「プリン作ったけど食べる~?」

 

 昼食を食べ終えた彼がそう尋ねてくる。くっ……正直言って食べたい。もの凄い食べたいけど……! 

 

「え、遠慮しておくわ……!」

 

 昨日ダイエットを決め込んだ身だ。こんな一日で崩壊させるわけにはいかない! 

 

「そう? じゃあ、誰かに……あ、木下さーん」

「何かしら吉井君」

「プリン作ったけど食べる? 紫乃が食べないみたいでさ」

「ふーん。分かったわ」

 

 仕方ないって感じで受け取っておきながらおいしそうに食べる優子。くっ……甘いもの好きな私にとっては拷問だ。だが、我慢! 我慢だ……! 耐えるんだ私……! 

 

 

 

 

 

 次の日。つまりは水曜日のお昼休み。

 

「そういやさ、紫乃」

 

 そういってゴソゴソとカバンをあさり、何か保冷バックのようなものを取りだし、そのまま中から出てきたのは……! 

 

「シュークリーム作ったけど食べる?」

「食べ──」

 

 ハッ! 反射的に食べたいと言ってしまうところだった! いけない! 耐えるの私! 甘いものは食べない! たとえ光正の手作りで無茶苦茶美味しそうでも今はダメなの! 

 

「──────いいわ。代わりに愛子にでもあげて」

「そうなの? 工藤さーん」

「ん? ボクに何か用カナ? もしかして保健体育の実技を……」

「はいコレ、確か好物だったよね?」

「わぁーい。ありがとう吉井君。いただきまーす」

 

 美味しそうに食べる愛子。ぐぬぬっ……我慢……我慢です……! 

 

 

 

 

 

 木曜日の昼休み。

 

「紫乃~」

 

 はいはい。展開は読めてますよ。今日もどうせ作ってきたんでしょ? 私が食べれないからって。

 だからもう答えておこう。

 

「ごめんなさい。私お腹がいっぱいで」

「そう? せっかくショートケーキ作ってきたのに」

 

 そう言って見せてきたのは綺麗に作られたショートケーキ。綺麗にカットされていることから、おそらく作った時は綺麗な円状であったと思われる。

 

「……私がもらう」

「あ、霧島さん。丁度良かった。はいどうぞ」

 

 ……なぜでしょう。日を追うごとに豪華になっている気がします。ああ、あの翔子でさえご満悦だ。

 

「……吉井弟」

「何かな?」

「……作り方を教えてほしい」

「それって雄二に作るため?」

「……(こくり)」

「よし、じゃあ、教えよう。えーっとね」

 

 その後光正先生のケーキ作り講座(?)が行われ、参加者はAクラスの女子ほぼ全員……というか、私以外全員が必死に聞いています。しかも授業以上の集中力です。

 私は、そんな講座を聞いてしまったら欲求を抑えきれずにどうにかなりそうなので数学の勉強してます。あーケーキ食べたかったなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして金曜日の朝。私はもの凄い不機嫌でした。

 

「紫乃おはよ~」

 

 軽い調子で迎えに来た光正に対し、

 

「……おはよ」

 

 ぶっきらぼうに返してしまうほどに。

 

「どうしたの? 顔。何時もより怖いよ?」

「そう? 私はいつも通りだと思うのだけど」

「うーん。大好きなものを食べられなくて不機嫌とか?」

 

 図星だ。はぁ……何でこの男には分かってしまうのだろうか。さすが光正。私が愛する人だ。

 

「だったら何?」

「いやぁ……その、うん」

 

 あーまただ。またこんなぶっきらぼうに返事をしてしまった。確かに甘いものが食べれなかったというのもあるよ? でも、それに加えて今日は寝不足なのです。理由? そんなの甘いもの食べたいっていう欲求と戦っていたに決まってるじゃないですか。光正が三日連続で、ダイエットを決め込んだときに限って甘いものばかり持ってくるせいです。

 

「あ、今日も作ってきたんだ。今日はね……」

「もう、いい加減にしてよ!」

「紫乃……?」

「あ……ごめん。先行くね」

 

 私最低だ。私が勝手に太っちゃって、私が勝手にダイエットを決め込んで、私が勝手に光正からのデザートを食べないでいただけなのに……それを光正にぶつけて、最低だ。

 別に光正はダイエット中の私に、嫌がらせで甘いものを作ってきたんじゃないと思う。ただ、私が甘いものが好きだからって理由。100%の善意か好意だと思う。

 その後走ったまま教室に入ったが、光正が後ろから追いかけてきたわけでもなく、それどころか……

 

「あら? 吉井君は今日は休みですか? 欠席の連絡は受けていませんが……」

 

 それどころか、光正は朝のHRにすら来ませんでした。

 朝のHR終了後。いつものメンバーが私の近くにやってきます。

 

「弟の方の吉井君がサボるとはね~ボクとしては意外カナ」

「まぁ、私も同感ね。彼が無断でサボるとは思ってもいなかったわ」

「……紫乃は何か聞いてる?」

「…………私のせいなの」

「……何が?」

「私が光正が悪くないのに怒ってしまって、きっと私と居づらいからいないんだと思う……」

 

 そう。私のせいなんだ。私が不条理に怒ったりするから……

 

「「「それはないでしょ」」」

 

 三人が声を揃えてそう言った。

 

「何でそんなことが言えるの?」

「……寧ろ吉井弟がたったそれだけの事で学校に来ないとは思えない」

「そうそう。彼がそこまでメンタル弱いと思えないわ」

「アハハ~もしかしたら、面白いことを考えているかもしれないかもね~」

 

 何だろう。確かに、そんな気もしなくはない。

 

「……昼休みまで来なかったら考えればいい」

「でも、外で何か事件に巻き込まれていたら……」

「まぁ、彼なら死にはしないでしょ」

「むしろ、探偵のようにすんなり解決してそうだよね~」

 

 そうね。暗く考えすぎてもダメ。光正に会ったらきちんと謝る。許してもらえなかったら……あれ? 許してもらえなかったらどうしよう? 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

「では、授業を始めますね」

 

 結局、光正は二時間目の途中に教室に入ってきたが、昼休みまで一言も話すことは無かった。

 そして昼休み。私は不安な気持ちも抱えながら彼の分の弁当を持って話しかけようとします。

 

「あ、あの……光正……」

 

 すると、光正は私の手首を掴んで歩き始めます。

 

「黙ってついてきて」

 

 私は彼に手を引かれるまま歩きます。ついたのは……

 

「茶室?」

 

 茶室です。どうしてここなのかとか、カギを何故持っているのかとか、本当に許可を得たのかとか様々な疑問が浮かびましたが。

 

「紫乃。目を閉じて」

 

 光正の言う通り目を閉じます。何でしょう? 何かされるのでしょうか? ……でも覚悟は出来ています。何をされても私は怒りません。いえ、怒る資格がありません。

 すると、口の中に何かが入ってきます。何かそう甘い……甘い!? 

 

「光正! 私ダイエット中なのですから甘いものは……はっ!」

 

 し、しまった! 光正にはダイエット中って知られたくなかったのでした……。くっ……まさか自分から言ってしまうとは……! まさか、私を嵌めるとは……! 

 

「くず餅だよ。それにあんみつ」

 

 だから何だと言うのでしょうか。

 

「朝のあの反応とここ数日の挙動で紫乃がダイエット中ということが分かった。後……」

 

 そういいながら私の首元に触れてきます。ま、まさかバレていたとは……

 

「……甘いものだけではなく、普段の食事も減らしているね。おかげで少し栄養失調気味だよ」

 

 ……ここまでバレるとか……本当に何者ですか? 実は医者なのですか? 無免許の。

 

「ああ、一ついいこと言っておくと。別に和菓子は食べたくらいじゃ太らないから。後、抹茶淹れるから待ってて」

「は、はぁ……って、今から作るのですか!?」

「何のために茶室に居るんだよ。大丈夫だ。オレ、こう見えて茶道を習っていたから」

 

 そう言い終えると静かに進めていきます。淹れる側にも作法があるのでしょうか? よくわかりませんが、一つ一つの工程を丁寧に行ってくれていることは伝わってきます。

 ……というか、この男。料理に関しては、かなりの腕ですよね……羨ましい。

 そう思いながらあんみつを一口……うん。美味しいです。美味しくて食べる手が止まりません。

 すると、目の前に抹茶がやってきました。えーっと。こういう時は……

 

「頂戴いたします」

 

 ……あれ? これってどうやって飲むんでしたっけ? 

 

「いいよ。作法とか気にしなくて」

「あ、うん。でも……」

「分かった。じゃあ、まずは……」

 

 ああ、こんなこと小さい頃に教わったなぁ……使う機会が無さすぎてすっかり忘れていた。取りあえず、光正の言う通りに飲みます。……抹茶独特の苦みを残しながらも尚苦すぎない。丁度いい感じです。

 ……料理が作れて、裁縫が出来てその上抹茶まで淹れられる。あれ? 光正っていいお嫁さんになれそうですね。恐らく並大抵の人より主婦スキル高いですよ? この男。

 

「さてと、片付けるか……」

 

 そう言って洗いに行く光正。

 

「あ、私も……!?」

 

 あ、足が痺れて動きません。無茶苦茶痺れています! そう言えば久しぶりに正座をこんな長時間やったなぁ~……じゃ、ありません! ど、どうしましょう。

 

「……(キュッキュッ)」

 

 わぁ……手際いいなぁ……洗い物まで完璧じゃないですかぁ……って感心している場合じゃありません! 動かないです! だ、誰かヘルプです! 誰かって光正しかいませんけど! 

 

「あれ? 紫乃まだ正座しているの?」

「こ、光正……あ、足が……」

「……(ツンツン)」

「ひゃぁう!?」

「……(ニタァッ)」

 

 あ、この顔はダメな奴だ。良からぬことを企んでいるに違いありません。

 

「あーあ。朝不条理に怒られたなーすっごく傷ついたなぁー(ツンツン)」

「ひゃぁっ! 棒読みですよね!? 絶対傷付いてないですよね!」

「本当に傷付いたなー(ツンツン)」

「ひゃぁぁ! あ、謝るから! 謝りますから! ツンツンしないで!」

「しょうがないな」

 

 するとこの男は軽々と私を持ち上げてそのまま背中に。

 

「光正……これはその……」

 

 光正におんぶされています。

 

「あ、お姫様抱っこが良かった?」

「あれは恥ずかしそうなので遠慮しておきます」

「じゃあ、文句は無いよね?」

 

 光正の背中……あったかいです。

 

「…………ごめんね」

「いいって、紫乃は重くないし」

「そっちじゃない。ここ数日は本当にごめんね」

「いいよ。前に言っただろ? もっと自由でいいって。別に怒りたいのを我慢してストレスになってもらっても困るし」

「分かった。じゃあ、自由にさせてもらうね?」

 

 そう言って片方の手で、光正の頭を撫で始めます。

 

「よしよし」

「……この場に捨ててやろうか?」

「恥ずかしいだけなんでしょ? それに、光正は絶対そんなことしない。でしょ?」

「……ッチ」

「舌打ちするならもっと抱きしめる力を強くしてあげますよ?」

「はいはい。ない胸を押しつけないでくだ……」

「フンッ」

「……く、首が締まる……放せ……」

「光正? ご・め・ん・な・さ・いは?」

「ご、ごめんなさい……」

「素直でよろしい。じゃあ、帰りましょうか」

「はいはい」

「その前に光正……んっ」

 

 私は彼の無防備だった頬にキスをします。

 

「ありがとう。大好き」

 

 そして、短くも誠一杯の感謝と想いを彼の耳元で囁きます。不意を突かれたせいなのか彼は珍しく耳まで紅くしていました。やはり私の恋人は最強ですね。

 この後Aクラスに戻った私たちは、いつも以上の仲の良さを見てさっきまでの雰囲気は何だったんだ? と全員に思われていたらしい。

 嫌ですねぇ。私たちはいつでもラブラブカップルですよ。

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