バカとテストと召喚獣~オレと兄さんとFクラス~   作:アカツキ

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デートは中止!?代わりに……

 明日から男子たちの停学が解除される。そんな日曜日の朝。私は光正とデートする予定でした……

 

「最悪だ……コホッコホッ」

 

 しかし中止です。私が風邪を引いちゃったので……しかも38℃越えの高熱です。

 昨日、少し不調を感じて病院に行ったのですが、どうやら軽い栄養失調だったらしいです。おそらく、そこで風邪を拾ったのでしょう。免疫機能が低下している時につけ狙うとは……! 風邪め。意外と姑息です。

 

「……まぁ、栄養失調の原因は私のダイエットによる弊害だったりするわけですが」

 

 一応光正には心配をかけたくないので用事が入ったと適当に断っておきました。残念です。せっかくデートプランを考えてもらったのに……。

 

「寝ますか……」

 

 自業自得ですね。私のせいです。

 ……これ以上起きてると、ずっと負の思考に陥ってしまいます。ここは寝て治しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 額に伝わる冷たい感触。その感触は私の意識を徐々に覚醒させていきました。

 きっと、お母さんでしょう。そう思いながら目を開けてみると……

 

「起こしたか? 紫乃」

「…………え?」

 

 目の前にはなんと光正がいました。

 

「全く……風邪ひくなんてな。ほら、しっかり布団着て」

 

 そういいながら頭を撫でてきます。さすが、光正。撫でるのが上手い……って、そうじゃなくて。

 

「あの~何で光正がここに?」

「ん?」

「メールで用事が入ったと言っておいたと思うのですが……」

「ああ、そのことか。あの程度で騙せると思ったか?」

 

 はい。とても騙せると思っていました。

 

「だって、直接なら私の思考や嘘が読まれても携帯電話のメールではそんなの無理でしょ?」

 

 ……まぁ。私の心を読んでいた割には、私の恋心に気付くのが遅すぎですが。

 

「そうだなぁ……一言で言えばオレの直感だ」

 

 はい? 

 

「オレの直感は紫乃に対してのみ9割ぐらいで当たる」

 

 ……これは喜べばよいのでしょうか? まぁ、私も似たようなものですが。

 

「まぁ、今は気にするな」

「は、はい……」

「とりあえず、何か作るか。あ、厨房借りる……?」

 

 動きを止める光正。

 

「ったく。お前は寂しがり屋かよ」

 

 理由は他でもない。私が袖を引っ張っていたからですね。

 

「ほら。温かいか?」

 

 そう言って抱きしめてくれる光正。ああ、何でしょう。心の奥底がぽかぽかとして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぅー……すぅー……」

 

 案外寝るの早かったな。それだけ疲れていたのかな。

 

「さてと、行きますか」

 

 そう言って厨房に向かうオレ。すると、紫乃のお母さんが荷物を持って歩いて来た。

 

「あら? 光正君よね?」

「あ、荷物持ちますよ」

「助かるわ」

 

 荷物という名の食材を持って厨房に入る。

 

「調理器具お借りしますね」

「ええ。好きに使って頂戴」

 

 そう言われたので好きに使わせてもらう。とりあえず、下準備をして……

 

「ごめんなさいね。あの子の看病をしてもらって」

「いいですよ紫乃のお母様。オレは気にしていません」

 

 あらかたの下準備を終え、紫乃の為におかゆと自分と紫乃のお母さん用の夕食。後は紫乃の飲み物を手早くかつ丁寧に作ってゆくと声をかけてくる紫乃のお母さん。そういや、何度か見たことはあるけどこうやって話すのは初めてかな? 

 

「へぇ~君は料理人でも目指しているの?」

「いいえ。料理はまぁ、人より得意なだけですよ」

 

(手際の良さは普通にそこら辺の料理人と遜色ないレベルと思うのだけど……)

 

 さてと、自分たちの分は完成かな? 

 

「はい、紫乃のお母様。普通の男子高校生の作った料理でお口に合わないかもしれないですが」

「いいのよ。じゃあ、いただくわね」

 

 さてと、紫乃の分のラストスパートかな? まぁ、見るだけだが。

 

「……おいしい」

「それはよかったです」

 

(まさか、味もここまでおいしいとは……この子。紫乃が言うように本当にハイスペックみたいね)

 

「光正君」

「はい。何でしょう」

「紫乃を嫁にもらって頂戴」

「……はい?」

 

 この人。今何て言った? 

 

「何とおっしゃいましたか? 紫乃のお母様」

「堅苦しいから『お義母さん』でいいわ」

「はぁ……」

 

 この人。さっき、紫乃を嫁にもらってとか…………まぁ、確かにもらいたいけど。

 

「それで……えーっとお義母さん。オレなんかでいいんですか?」

「光正君。私はね、紫乃が本当に好きになった人と結婚して欲しいと思ってる」

 

 一般的なご家庭の普通の親はそう思っていてるだろう。もちろん例外は存在するだろうが。

 

「でも、紫乃の結婚する人って言うのは同時に我が『天草グループ』を背負って貰う必要があるの。だから、人格面とか様々なところをチェックしないといけない」

「そりゃそうですよね。社会のクズに天草グループを任せられないですよね。いただきます」

 

 如月ハイランドでの不良がいい例だ。

 

「そう。だから、例え去年から凄い名前が出てきて、紫乃が狂いそうなくらい好きな光正君。あなたでもそこら辺を変えるつもりは無い。それは我が天草グループのルールであるからね」

「はぁ……でも、どうやってそう言うのって見るんですか? だって、それだったらお義母さんの前だけ優等生を演じればいいですよね? まぁ、オレは素で行かせてもらいますが」

 

 そう。例えば評価される観点があっても、評価されているタイミングでその観点を良い風に演じられれば、どんなに性根が腐り切った人間でもオッケーになってしまう。

 

「振り分け試験中、倒れた女子生徒を保健室まで運ぶ。清涼祭中拉致された紫乃以下数名の女子の救出。如月ハイランドにて粗相を犯した我が社員の摘発。合宿にて、盗撮犯の検挙」

「……紫乃から聞いたんですか?」

「いいえ? 私の持つ情報網で掴んだ光正君の情報よ?」

 

 情報網? 

 

「別に、オレ一人でやったわけではありませんよ?」

「そうね。普段の姿では若干暴走しがちだったり、人を裏切ったりしているけど……」

 

 耳が痛いです。心は痛くありません。

 

「でも、あなたの紫乃に対するまっすぐな姿勢は高く評価している」

「そうですか……」

「さて、これでこの堅苦しい話は終わり。ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

「それで、こっからは私的な話。まぁ、気を楽にしていいわ」

 

 元から気を楽にしているとは言わない方がいいだろう。

 

「ぶっちゃっけ光正君。君って、紫乃がこういうお嬢様じゃなくても好きになってたでしょ?」

 

 余りの質問に笑いそうになる。

 

「なに当たり前の事聞いてるんですか? 当然です」

「ははっ。やっぱり君は去年最初に紫乃が言った通りの子だ」

「はい?」

「人の肩書きも存在も興味がない子がいるって」

「まぁ、興味ないですね。ついでに人の心も」

「それで、現代文の成績が異様に悪いのかい?」

「……そうですね」

 

 いや、ほんの少しは改善されたはずなんだ。ほんの少しは。

 

「いい光正君? 皆がそうってわけじゃないけどね。あの子は『天草グループの一人娘』として見られることばっかだったの。近づいてきた子は皆そう。でもあなたは違った。あなたが初めてだそうよ? 今まで会った中で最初から無礼な発言を連発した子は」

「あはは……」

 

 笑うしかねぇな。

 

「まぁ、そういう意味でもあなたになら任せられるわ。……はいコレ」

「コレは……薬?」

「市販のだけどね。看病は任せたわ。光正君」

「分かりましたよ。お義母さん」

「うむ。あぁ、ダメだよ?」

「何がでしょう?」

「いくら弱っているからって襲ってエッチなことしたら」

「しませんよ。そういうのは、紫乃が元気な時じゃないと」

 

 そうじゃないと反応を楽しめない。

 

「これは孫の顔を見られるのも近いかもねぇ」

「そうですねぇ」

 

 そんな感じで話を済ませ、オレは再び紫乃の部屋に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紫乃~元気になった~?」

「少しはね……」

 

 うーん。まだダメみたい。当然か。

 

「おかゆ作ったけど食べれる?」

「うん……食べさせて?」

「分かってますよ。フーフー……はい。あーん」

「あーん…………さすが光正。おいしい」

「よかった。腕によりをかけて作ったかいがあったよ」

「私のために? ……嬉しい」

 

 十数分後……

 

「ごちそうさま……」

「さて、汗かいたでしょ? 服脱いで」

「はぁい……」

 

 そう言って脱ぎ始める紫乃。思わず目を背けるオレ。

 

「どうしたの光正? 私の裸なんて見慣れているでしょ?」

「い、いやぁ……何か申し訳なさというか……」

「もしかして、私の裸に興味があるの?」

「当たり前だ」

「ふふっ。よかった……もしかして、光正って私に興味ないのかって思っちゃうもん」

「そんなことない」

「……じゃあ、背中をお願い」

 

 そう言って背中を向ける紫乃。柄にもないとは分かってるし、こんな時に言うことでもないとも分かっているが……紫乃が凄い艶めかしく見える。……よし。

 

「…………」

「光正って、拭くのも上手いんだね」

 

 心頭滅却。無心になれ。煩悩退散色即是空空是即色……! 

 

「ありがと。前は自分でやれるよ」

 

 ミッションコンプリート。クッ、合宿の時もだが、ここまでオレの鋼の理性を壊しに来るとは……! 紫乃め! 中々侮れない! お義母さんの前では平然を装っていたがはっきり言って限界が近い……! 

 

「光正。終わったからこっち見てもいいよ」

 

 振り返ると既に布団の中にいる紫乃が。

 

「ふふっ。光正も男の子なんだね」

 

 どういう意味だコラ。

 

「冷静を装ってるみたいだけど、我慢してるのバレバレ」

 

 ……ふん。

 

「光正。頭を撫でてほしいな」

「全く……」

 

 言われたように撫で始める。

 

「本当は抱き着いて寝たいけど、光正にうつすとよくないからやめとく」

 

 配慮ができるみたいだ。……こんな状態なのに。

 

「……もし、眠くなったら隣の部屋かリビングで寝ていいよ。……おやすみ」

 

 目を閉じる紫乃。すると、数分しないうちに寝息が聞こえてきた。

 

「全く。完治してないのにそんなに喋るからだ……バカ」

 

 オレは食器を洗い、風呂に入ってその後一晩中紫乃の看病をした。


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