藤木遊作は今、絶体絶命の危機に陥っていた。
「ヤバいってやられちゃうよー」
「五月蠅い、黙れ」
手札には4枚のカード…《青の忍者》《エレキテルドラゴン》《援軍》《魔法剣士ネオ》が並んでいる。
今の手札には普段から使っているサイバースは存在せず、エクストラデッキもそのほとんどが機能しなくなっている。
『どうするんだ遊作、今から対処するには時間がかかる』
「大丈夫だ、どうにかする」
ことの発端は少し前…
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「デュエル研究?」
「ああ、最近はハノイの騎士で何かと物騒だろ?噂ではリンクヴレインズに無理矢理ログインさせられてデュエルを申し込まれる、何てのもあるし自衛のために対策しようってデュエル部ですることになったんだ」
遊作は少し考えた。最近ではハノイの騎士によるデュエルが増えたうえに、プレイメーカーのデュエルの動画が出回っているせいで対策をされていることが多くなってきていることが気がかりであったのだ。
ネット掲示板では、日夜プレイメーカーのデッキ構築の特定や戦略の解析をして、俺ならこうやって倒すといった議論が行われている。メタカードを積めば勝てるというほど、デュエルは単純なものではないが、苦戦するのは確かだ。
「少し興味がある、参加してもいいか」
この研究会で、ハノイの騎士に有利な情報を得ることができるかもしれないと考えて頼んでみる。
「おう、構わねえぜ」
島直樹はどこか得意気な表情を作り、端末を操作した。内容を少し覗き見ると、部長へのメールで参加者が増えることの確認をしているらしい。
「じゃあ、今から部室で始めるから行くぞ」
「ああ、分かった」
部室に向かってみると、そこでは部員達がテーブルデュエルをしていた。
「やあ、島君も来たのか。今はハノイの騎士が使っていたクラッキング・ドラゴンに、自分のデッキでどう戦うかの模擬デュエルをしていてね」
「やっぱり僕のデッキじゃバーンダメージが大きいなぁ、裏守備を活用するしかないかな?」
「戦闘破壊するにはリンクモンスターかエクシーズを使わないと難しそうだな」
「うーん、やっぱり魔法・罠を活用するのが…でも、スペースがなぁ」
見てみると、場にはクラッキング・ドラゴンとデーモンの召喚が並んでいる。おそらくデーモンの召喚が部員のモンスターであろう。横にあるアナログLPカウンターには300と4000が示してある。
「どうだい?藤木君も少しデュエルしてみないか?」
『おい、デッキがサイバース族になってるからダミーに変えといたぞ』
デュエルディスクからAIの声が遊作にしか聞こえないように流れる。
「それじゃあお願いします」
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あのあとデッキを変えるのを忘れてしまっていた。
プレイメーカーはどうするか考えていると、ハノイの騎士が先に動いた。
「先攻はもらったぞ!俺のターン、相手の場にモンスターが居ないとき、《ハックワーム》は手札から特殊召喚できる。2体を特殊召喚!そして、今出したハックワームをリリースして《クラッキング・ドラゴン》をアドバンス召喚、ターンエンドだ!」
クラッキングドラゴン 攻撃力3000
クラッキング・ドラゴンは高い攻撃力と、自分よりレベルの低いモンスターに戦闘破壊されない耐性を持つモンスターだ。
更には相手の場にモンスターが召喚されると、そのレベルに応じてライフへのダメージと攻撃力を下げる能力を持つ。
「俺のターン、ドロー。この手札なら…」
素早く戦術を組み立てる。少なくともこのデッキでは戦闘破壊は無理だ。と、なると……。
「俺はモンスターをセット、そしてカードを二枚伏せてターンエンドだ」
「ふん、お得意のリンク召喚はどうした?俺のターン、ダブルドローを発動!二枚カードを引き、俺はドラゴノイドジェネレーターを発動!ライフを1000ポイント払い、トークンを2体生成する。」
ハノイの騎士LP4000→3000
「さらにもう一体のクラッキング・ドラゴンをアドバンス召喚、カードを一枚セットしてバトルだ!セットモンスターを攻撃!」
「トラップ発動、万能地雷クレイモア!相手のフィールドの攻撃力がもっとも高いモンスター、クラッキング・ドラゴンを破壊!」
クラッキング・ドラゴンが吹き飛ばされるが、まだ残っているもう一体のクラッキング・ドラゴンがプレイメーカーに襲いかかる。
「ならばもう一体のクラッキング・ドラゴンで攻撃だ!」
「…俺の伏せモンスターは青い忍者、リバース効果で伏せカードを確認し、魔法カードなら破壊する…、奈落の落とし穴か」
奈落の落とし穴は、召喚をトリガーとしてモンスターを除去するトラップ。攻撃力1500以上を出すならば一度これをどうにかする必要があるな。
「なんだ?その雑魚モンスターは。まあいい、ターンエンドだ。ドラゴノイドジェネレーターの効果、エンド時にお前はドラゴノイドトークンを一体特殊召喚しなくてはならない。そしてトークンが召喚されたことにより、クラッキング・ドラゴンの効果により200ポイントのダメージ!」
「クッ!」
プレイメーカーLP4000→3800
「俺のターン、ドロー!」
引いたカードは良い。後は相手の伏せとモンスターの攻撃力を考えて……よし、勝利が見えた!
「…俺はドラゴノイドトークンをリンクマーカーにセット、現れろ!リンクスパイダー!」
リンクスパイダーATK:1000
「そして、手札から地割れを発動!相手の場のもっとも攻撃力の低いモンスター、《クラッキング・ドラゴン》を破壊!」
「なんだと!?」
「そして、さらにリンクスパイダーの効果を発動!魔法剣士ネオを手札から特殊召喚する!」
「残念だったな、お得意の連続リンク召喚はさせん!トラップ発動、奈落の落とし穴だ!これでお前の魔法剣士ネオを除外する!」
「それはもうわかっていた!俺はリンクスパイダーをリリースしてアドバンス召喚!現れろ、エレキテルドラゴン!」
エレキテルドラゴン攻撃力2500
常に電気を纏い空中を浮遊するドラゴン。
古代より存在し、その生態には未だ謎が多いものの、
古のルールにより捕獲は禁止されている。
「バトルだ!エレキテルドラゴンでダイレクトアタック!そしてトラップ発動!援軍をエレキテルドラゴンに発動、攻撃力を500ポイントアップする!」
エレキテルドラゴン攻撃力2500→3000
「なに!?俺のライフは3000で、お前の攻撃力は…」
「くらえ!エレキ・ストーム!」
「グワァァァァ!」
ハノイの騎士LP3000→0
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「今回はどうなることかと思ったぞ。遊作」
『さっすがプレイメーカー様、きっとやってくれると信じてたぜ』
現実に戻ると、手がグッショリと汗をかいていた。
端末をみると、メールが届いてるのを知らせるランプが点滅しているのを見つけて、メールを開く。
送信主:島直樹
件名:デュエル研究の予定について
「……」
返信:暫く遠慮する