うちの幼馴染は本日も厄介事を持ってくる   作:ゼノモフ

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プロローグ

「なあ陣! こんな話を知ってるか? ローマ法皇がホームレスに……」

「目障りだから消え失せろ!」

「じゃ、じゃあ出張から帰った男が妻と……」

「毎晩毎晩うるせえよ! じゃないか?」

「ああ、大当たりだ」

 

 

 高校の入学式の日、席が隣になった俺と幼馴染はジョーク当てで勝負をしていた。

 どれだけ素早く相手の話のオチを読めるか、と言うゲームだ。

 

「じゃあ次は俺の番だ。 ある男が酒場で……」

「歩いて帰った、だろ?」

「残念、周りの奴にも聞こえるように大きな声で言ってやる、だ」

「ああ畜生! ポーランド人の方かよ!」

「俺の勝ち!」

 

 

 勝った。

 

 と同時に、チャイムが鳴る。

 

「タイムアップだ。 罰ゲームにジュース奢れよ?」

「しょうがねえなぁ…… 缶で頼む」

「ペットボトルだよハゲ。 頼むぜ、相棒?」

「へいへい」

 

 俺の差し出した拳に、幼馴染が拳を合わせる。

 その時、教室の扉がガラリと開かれる。

 

 開け放たれた扉から入ってきたのは恐らく先生だ。 緑髪で、低身長、童顔。 制服を着ていれば生徒だと勘違いしそうだし、実際私服の今も勘違いしかけた。

 

「皆さん揃ってますね? 私は副担任の山田真耶です! 一年間、よろしくお願いします!」

 

 しかし、刮目すべきは顔や身長ではない。

 聖母マリアがハンカチを食いちぎりそうなくらいデカい胸部装甲。 胸元にメロンを2つぶち込んでる見たいな存在感。

 

 なにあれやっべえ、一回も見た事ないぞあんなモンスターおっぱい。

 

 

「この学校はご存知の通り、ISについて学ぶ学校です! 全寮制なので、朝も夜も一緒です。 みなさん、仲良くしましょうね!」

 

 

 仲良く、ねぇ……

 

 マトモに仲良くできたら良いんだが……

 

 なんせ、周りは全員……

 

 

 ♢

 

 

「じいさん、じいさんや。 ここは何処かの?」

「ばあさん、それがワシにもわからないんじゃ……」

 

 

 薄暗い廊下に響く声は、口調や内容とは裏腹に若い少年のものだ。

 その2人のうちの1人がため息の後に再び口を開く。

 

「んで、一夏くんよぉ…… 俺はお前が案内するってんでついてきたんだが?」

「ごめん! ほんっとうに申し訳ない! いや、マジでさ! 2人なら大丈夫かと思ってて! 取り敢えずこれがなんとかなった後に全力でぶん殴ってくれて構わないから!」

「チッ…… まあ、お前に着いてった俺も悪いんだがよ……」

 

 ガラの悪い少年が、腕時計を確認した後に制服のホックを外しポケットへ手を突っ込んだ。

 

「おいおい」

「もう受験の開始時間も過ぎた。 まあ元々本命は別だからな、そう気にすんなや」

「……悪いな、ホント…… なあ、次に扉を見つけたらそこに入ろうぜ? 多分それでなんとかできるだろ」

「決断が遅かったな…… ま、それで行くか…… お、丁度見つけたぜ」

 

 

 ガラの悪い少年が白手袋に覆われた手で指した先には、両開きの扉があった。

 右側の扉には何やら書かれているが、薄暗くてそれを確認することはかなわない。

 

「ああ、そうだな。 オーケーオーケー。 よぅし、俺のコミュ力を見せてやるぜ……」

「良いから早く行くぞ。 失礼しまーす」

 

 胸に手を置いて呼吸を整えるような仕草をする少年を傍目に、ガラの悪い少年が扉を開け放つ。

 そこは廊下と同様、薄暗がりであった。

 

「んだよ、空き部屋じゃねえか」

 

 呟き、扉を閉めようとするガラの悪い少年の後ろ髪を、女性の声が引いた。

 

「あら、まだここに残ってたの? 試験を始めるから早く着替えなさい」

 

 と、それだけ言って、忙しいのか女性は直ぐに何処かへ行ってしまう。 薄暗がりの中、彼ら2人がそれを知れたのはハイヒールの小刻みな足音が遠ざかって行ったからだ。

 

 

「着替えなさい、だとよ」

「最近の試験は着替えんのか?」

「ンな話聞いたこともねぇ…… まさか……」

 

 ガラの悪い少年は真っ直ぐに前へ進む。

 薄暗がりの中、ガラの悪い少年の視界の中にあるモノが入り込む。

 

 鈍い銀色と黒の装甲。 鎮座するソレは……

 

 

「おい一夏、来てみろよ…… 珍しいモンが見れるぞ」

「は? ……ISか、なんでこんなとこに?」

「そりゃあ前、IS学園の試験会場がここだから、じゃね?」

 

 そう、IS。 略さずに言えばインフィニット・ストラトス。

 

 

「『正式名称「インフィニット・ストラトス」。宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。開発当初は注目されなかったが、篠ノ之束博士が引き起こした「白騎士事件」によって従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、各国の抑止力の要がISに移っていった』……Wikipediaより抜粋」

「マニアだなぁ……」

 

 

 なにも見ずに長ったらしい説明をしたガラの悪い少年を、普通な方の少年が少し引いたような目で見る。

 

「触れてみろよ、動くやもしれん」

「ハハッ、そんなわけがない、さ……?」

 

 少年がISに手を触れた瞬間、辺りを青い光が包む。

 神々しく、眩しく照らすソレは、まるで祝福のようであった。

 

「何事!?」

 

 先ほどの女性が急いで奥から出てくる。

 

「ISの起動? でも、こんな光は普通は……」

 

 物事の異常性に気づいた女性が、ISを装着した人間の方を見ると……

 

「嘘、でしょ……?」

 

 そこには、ISに乗る少年の姿と、口笛を吹くガラの悪い少年の姿があった。

 

 

 ♢

 

 

「さて、どうしたものか……」

 

 そう呟くのは普通の少年の後にISを動かしてしまったガラの悪い少年、名は名残 陣である。

 

「アバッ、アババッ、アババババババ……」

 

 携帯のアラームのようになっているのは先にISを動かした普通の少年、織斑 一夏である。

 

「落ち着け一夏。 アバババしてる場合じゃねえから」

「アバッ、アバッ、アバババッ、アバッバッ」

「新たな言語が出来上がっている……」

 

 引く陣と、アバる一夏。

 それもそのはずである。 周りは皆、女子なのだから。 年頃の男子には辛い状況であろう。

 

 さて、なぜそんなことになっているのか。 それを語るにはまず、先ほどの陣のWikipedia抜粋の文章に1つ付け加えねばならない。

 

 ISというのは、女にしか動かせないのだ。

 ISが登場してから今の今まで、ただの1人も現れなかった男性IS操縦者はアッサリと、一気に2人も見つかった。

 

 だがしかし、今現在までその2人以外の男性IS操縦者は見つからず、依然として名残陣と織斑一夏の両名は2/3500000000の、絶滅危惧種であっても蛇もかくやというほどに尻尾を巻いて逃げ出すレベルの希少さだ。

 

 

「では、織斑君!」

 

 五十音順の自己紹介が始まり、織斑一夏の番は直ぐに来た。

 だがしかし、依然として携帯と化している彼が、何か反応を示すことはない。

 

「一夏、へい一夏!」

「…………………………」

「マナーモード入りやがった…」

 

 陣の呼びかけにも応じず、高速振動を継続する一夏。

 しびれを切らした陣は、その横っ腹を足の裏で蹴飛ばした。

 

「ちょ、名残君!?」

「ぶっ壊れた電子機器直すのにはこれが一番いいんですよ…… ほら」

 

「ココハダレワタシハドコ……??」

 

「より壊れていませんか?」

「直に直ります」

 

「……はっ!?」

 

「ほぉら、直った」

 

 

 蹴り飛ばされた脇腹を抑えながら立ち上がる一夏に、真耶は心配8割呆れ2割といった様子で声をかける。

 

「だ、大丈夫です! それでなんでしょうか?」

「あ、それでは自己紹介をお願いします。 五十音で今"お"のところなんです! お願いします!」

「あ、はい……」

 

 一夏はたっぷり10秒程度固まった後、口を開く。

 

「織斑一夏です! よろしくお願いします! ハイ以上!」

 

 

 初の男性IS操縦者でさらにイケメンということもあり、一夏に注目していた女子たちは予想外の台詞にひっくり返る。

 昭和的だなぁ…… と、陣が呟いた瞬間に一夏の後頭部を衝撃が襲う。

 

 

「貴様はマトモに自己紹介もできんのか?」

アバッ(げえっ)アバッバッ(関羽)!?」

「誰が三国志の英雄か!」

 

 再び衝撃が襲う。

 その正体は何の変哲も無い出席簿での打撃であった。

 

「あ、どーも織斑先生」

「久しぶりだな、名残…… 山田君、新入生への挨拶を任せてすまなかった」

「いえ、気にしないでください織斑先輩!」

 

 未だ煙を上げ続ける出席簿を弄びながら、彼女は教室の前へ出る。

 

「さて諸君、私が不運なことに君たちの担任をすることになった織斑千冬だ! 私の仕事は雑巾代わりにもならない弱冠15歳の諸君を、ちり紙くらいには役に立つように一年間で育て上げることだ! よければ返事をしろ、悪くても返事をしろ!」

 

 一夏は二度も叩かれた点を押さえ、陣は耳を塞ぐ。

 

 

 キャーーーー!!

 

 

 と、文面に表すのならこんなものだろうか?

 そんな黄色い歓声が教室を包んだ。

 

 一夏は物理的ダメージにつけ加え、精神的ダメージを食らった。 確実に寿命を縮めたことだろう。

 

 

「黙らないか! まったく…… 私のクラスには愚か者だけが集まるように仕組まれているのか?」

 

 

 もっともだ、という陣のつぶやきは、静まり返ったクラスに解けるように消えていった。

 

「ふむ、時間も残り少ない。 名残、自己紹介をしろ」

「間の人は……」

「ひとまずお前がすべきだろう? 全員、随分と気になっているようだからな」

「うす……」

 

 小さく返事をしながら、彼は腰を浮かせた。

 

「あー、名残 陣です。 元はIS整備士志望だったんで知識はありますが、操縦についてはからっきしなんで手助け等あると助かります。 どうぞよろしく」

「100点だ、陣」

「わーい、何点中?」

「一億点中」

「ガキか」

 

 

 チャイムが、鳴った。

 

 

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