IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 前世のトラウマを抱え、戦うことに不安を抱くようになった大樹は突然、学校に襲撃してきたゴリラインベスを相手にまともに戦うことが出来なくなった。そして、間一髪のところで一夏がゲネシスドライバーとロックシードを使い、変身。アーマードライダー白銀となった。


仮面ライダー炎竜 第9話

 アーマードライダー白銀は新装備の刀型アームズウェポン、バニシングブレードを構える。対するゴリラインベスはドラミングを行い、新たな乱入者を威嚇する。

 

 「はあああああ!」

 

 白銀はゴリラインベスに向かって、もうスピードで飛び掛かる。ゴリラインベスは自慢の剛腕で白銀を叩き潰そうとするが白銀は持ち前のスピードでゴリラインベスの攻撃を次々とかわしていく。攻撃が止まる瞬間に白銀は絶え間なくバニシングブレードで切り付けていく。先程の炎竜の攻撃よりも深く、鋭い斬撃はほぼ無傷に等しいゴリラインベスにダメージを与え続ける。

 白銀の攻撃を鬱陶しく感じたゴリラインベスは白銀を叩き潰そうとその剛腕を前後左右に振り回すが、何一つ当たることが出来ずに逆に攻撃のたびに地面にめり込む剛腕を白銀に切り付けられる結果になる。

 

 「これで終わりだ!」

 「シルバーエナジースカッシュ!」

 

 ドライバーを操作して、真上に飛び上がる白銀。バニシングブレードにエネルギーが集まる。

 

 「うおおおおおおお!」

 

 バニシングブレードを振り上げ、ゴリラインベスの頭からまっすぐに振り下ろす。

 切られた傷口から青白く輝く光が迸り、そこから銀色のリンゴ型のオーラが形成される。オーラが二つに割れると同時にゴリラインベスも爆発四散する。

 

 

 

 

 俺は一夏がインベスと戦っているのをただ見ているだけだった。傷だらけの俺を万夏たちが安全な場所へ連れて行った。俺は一夏の戦いを見ているとき、何とも言えない複雑な気持ちになった。端的に言えば、不甲斐ない、悔しい、安心、後悔、それらがないまぜになっていた。

 戦えない俺に価値はない、なんて考えたことはない。基本、戦わずに済めば、それに越したことはない。危険なんて近くになくて良いのだ。その危険が近くに迫っているのであれば当然、戦う。基本、俺の戦いにおけるスタンスはそんなものだ。結局、今の感情なんてはっきり言えば、戦うべき人間であった俺が何もできずに、一夏を戦わせる結果になったという事実に俺自身が我慢ならないだけだ。

 あの戦いの後、学校は貴虎さんたちの手で一時封鎖された。ちょうど、貴虎さんたちは一夏にゲネシスドライバーとロックシードを渡すために町に来ていたために、俺が危ないところを間一髪で救うことが出来た。学校は思いのほか、修復箇所が少ないために1か月もすれば元通りだそうだ。幸いにも夏休みが間近だったこともあり、特に問題はなかった。

 しばらくは一夏はヒーロー扱いで当の俺はというと友人たちを除けば、教師の言うことを聞かなかった問題児のレッテルが貼られた。その後は、一夏は俺の代わりにインベスを次々と撃破していった。まあ、皆は少し、調子に乗っているのではと気にしていたが。そんなこんなで1学期は終わり、中学校生活最後の夏休みが来た。

 夏休みに入って、俺は独学でのトラウマ克服に努めるようになった。内容は、ドライバーとロックシードに触れる、これだけ。ただ、触れようとして前世のトラウマがフラッシュバックしてまともに進まなかったが。そんな俺を万夏、箒、弾、数馬、鈴は心配しており、ことあるごとに俺を連れ出して気分転換をさせた。基本、箒は訓練でいないことが多かったが、3度目の中学校生活最後の夏休みという変な感じの夏休みを過ごしていた。

 

 「ああ、夏のビーチなんてただの灼熱地獄だ。」

 

 今は、箒が訓練から戻って残り2週間の少ない夏休みを満喫するために電車で来れるビーチに来ている。ちなみに俺は万夏と共に夏休みの友達、宿題はとっくに終わらせている。この中で終わらせていないのは弾だけだ。

 夏のビーチ、水着とくれば男はヒャッハーだろう。俺は基本はインドア人間で特撮オタクだからこんな暑い中で砂浜、ビーチ、海?何それ、おいしいの?という人間だ。今、一夏と弾のペアと箒と鈴のペアでビーチバレーをしているのをビーチパラソルの下で見学中。

 

 「大ちゃん、かき氷買って来たよ。」

 「万夏、ありがとう。」

 

 万夏が近くの海の家でかき氷を買ってきてくれた。ちなみに、ここにいる全員が水着を着ている。弾は炎をあしらった派手目な海パン、一夏は甚平柄の海パン、俺は小父さんが見繕ったドラゴンが書かれた海パンである。女性陣はというと万夏が青のワンピース型、箒は白のビキニ、鈴は赤色のスポーツタイプ?である。

 俺と万夏はかき氷を食べながら、友人たちの本気ビーチバレーを見ている。一夏も弾も悪くはないが、相手は箒と鈴だ。徹底的にやられている、というより鈴も箒もあの二人にボールを当てに行ってる。時折、鈍い音がして、一夏と弾がカエルが潰れてような声を出す。

 

 「えげつない。」

 「箒が夏休みを訓練で楽しめなかった分を取り戻すためだからね。」

 「ほぼ、弾の奴が遊びたいだけだと思う。なんか、ビーチバレーじゃなくて別の何かになってない?」

 「ドッチボールかな?」

 「はあ、暑い。」ι(´Д`υ)アツィー

 「ねえ、大ちゃん。泳ごうよ、せっかくの海なんだから。」

 

 万夏が俺の手を引っ張り出して、泳ごうと催促する。一瞬、動きたくないと思いつつ、

 

「うん、行こうか。」

 

 万夏の誘いに応じる。今はなんの変哲もない日常を楽しむくらい罰は当たらないし、せっかく皆で海に来ているのだ。海水浴を楽しんだっていいだろう。一夏と弾がズタボロのぼろ雑巾みたいになるまで、俺と万夏は海水浴を楽しんでいた。

 この時の俺たちはこれから来る脅威を誰も想像することが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 海水浴から数日後、案の定、弾の奴が宿題の存在を思い出し、焦りだした。2学期まで残り1週間だから頑張れば終われる。俺はそれよりも少しでも早く戦えるようにリハビリを行うのでそもそも助けるつもりはない。

 

 「はあ、はあ、はあ、うっ。」

 

 今の所は回復の兆しはないが。むしろ、無理をすればするほど前世でのことが全て事細かに、鮮明に思い出してしまう。今では触れるどころか見るだけで当時の記憶がフラッシュバックするレベルまで悪化している。こんなでは足手まといだ。焦る気持ちと裏腹に俺の体は、心は戦場へ戻ることを拒否していた。

 

 「クソっ。」

 

 苛立たしさだけが募っていく。

 

 「大樹、入るぞ?」

 

 小父さんが俺の部屋をノックする。

 

 「ちょっと、待って。」

 

 俺はドライバーとロックシードを出来る限り見ないようにして、片づける。

 

 「良いよ。」

 「調子は大丈夫か?最近、万夏たちが心配しているから根を詰めているもんだと思ってな。」

 

 部屋に入るなり俺の調子を伺う言葉が出る。

 本来、反抗期に当たる中学生なら反発するだろうが、

 

 「調子は大丈夫だよ。うん、まあ。」

 「はっきりしないなあ。」

 

 まあ、当たり障りのない返答する。ただ、俺は誤魔化したいことがあるとこのようなはっきりしない物言いが多くなる。

 

 「何か悩んでいることがあれば、ちゃんと相談しな。」

 

 相談したいことはしたい、ただ、貴虎さんたちは信じてくれたけど小父さんも同様に信じてくれることじゃないから、話したくても話せない。

 

 「一夏は母さんに似て、困っている人が居たら、助けずにはいられないから、まあ、かなり話しにくいだろうけど、少なくとも千冬か俺には話しやすいと思うから、遠慮しないで話しなよ。大樹は特に一人でなんでもやろうとするから。」

 

 万夏をはじめとして、織斑家の皆は俺のことを家族の一員として見てくれている。だからこそ、というのもあるけど出来る限りは心配を掛けさせたくない。ここまでのことを考えればおそらく、小父さんたちにとっての一番の心配の種は俺だろうけど。

 

 「、、、、、、、。」

 

 ここまでの話で思い当たる節がありすぎて、一言も話せない自分がいるけど。

 

 「話したくなったら、話せよ。それに、これから先、どんなことがあっても大樹は俺達の大切な家族だからな。」

 

 そう言って、小父さんは部屋を出た。

 小父さんが居なくなった後、俺は小父さんが掛けてくれた言葉を思い返し、自分の中のこれまでの戦いを振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 大樹と秋人が話していた頃、一夏は箒と共に、近くの森に新たに出現したワシインベスと戦っていた。

 

 「PIYAAAAAAAA!」

 「シルバーエナジースカッシュ!」

 「はああああああ!」

 

 空中から向かってくるワシインベスを白銀は真正面から切り裂いていく。

 

 「PIIIYAAAAAAAA!」

 

 断末魔の叫びをあげてワシインベスは爆発四散した。

 

 「よし!」

 

 インベスが倒れたのを確認した白銀は変身を解除する。

 

 「お疲れ様。」

 

 そんな一夏にねぎらいの言葉を掛ける箒。

 

 「おう!」

 

 その言葉に持ち前の爽やかスマイルの一夏。

 箒はその笑顔を見て、恥ずかしさから顔を背けるが一夏の一部分を見ると、ため息を一つして

 

 「一夏、調子に乗りすぎないでね。」

 

 と一言言った。

 

 「なんでだ?」

 

 その言葉に一夏は疑問を口にする。

 箒をはじめとした友人たちは一夏が本人が自覚していない癖を知っている。先程の箒の言葉はその癖がつい先程出ていたことに気付いたからである。

 

 「ここまで、上手くいっているからって、これから先も同じようには行かないからだよ。」

 「大丈夫だって、貴虎のおっさんたちの話じゃあ余程のことは起きないだろうって。」

 

 一夏の様子を見て、言っても聞かないと肩を落とす箒だったが、

 

 「戦場ではそんな気楽な考えは通じないぞ。」

 

 二人の後ろに以前、大樹と戦った傭兵であるナイトが居た。

 

 「全く、王が言っていた新たなアーマードライダーは正直期待外れだ。これなら、俺の腕を切り落とした柏葉大樹の方が見込みがあった。」

 

 ナイトは以前、炎竜によって切り落とされたはずの腕をその具合を確かめるようにせわしなく動かしていた。

 

 「大樹を知っているのか?」

 

 一夏はナイトの発言から大樹とは面識があることに疑問に持つ。

 

 「知っている。俺が戦いたいのはあいつだ。相手を完膚なきまでに叩き潰す、獣がごとき剣を振るうあいつがな。お前たちを殺せば、あいつが来るのか?」

 

 そう言ったナイトは心臓部が緑色に発光し、そこから植物の蔦が彼の体を覆い隠していく。そして、全身を蔦が覆うとその蔦が次々と枯れていき、吹き飛ぶ。その姿は過去に沢芽市に現れたオーバーロードに酷似していた。

 漆黒の人狼、今のナイトの姿はそう言っても過言ではないものだった。

 

 「箒!安全なところに!」

 「分かった。」

 

 一夏は箒にそう言うとロックシードを開錠する。

 

 「変身!」

 

 一夏は再度、白銀に変身する。

 

 「大樹は戦えない。俺が相手だ。」

 

 白銀はナイトにそう言い放った。

 

 「そんなのは俺の知ったところではない。まあ、向かってくる以上は相手をしてやる。」

 

 ナイトは自身の体から刀を生成する。

 

 「はああああ!」

 

 白銀はナイトに向かってバニシングブレードを振るう。それをナイトはこともなげに左手で掴む。白銀は掴まれたバニシングブレードを引こうとするがびくともしない。

 

 「予想通り、お前では期待外れだ。」

 

 そう言うとナイトは刀を振り上げて、白銀目掛けて振り下ろす。白銀は自身の左肩から生じた強烈な衝撃を感じた。

 

 「うわああああああ!」

 

 純粋に切られたと自覚した白銀はこれまで生きてきた中で体感したことのない痛みに悶えていた。それと同時に親友の大樹が、貴虎たちが身を投じていた戦いがどういうものなのかを今更ながらに理解した。多大なまでの恐怖を感じながら彼らは生半可な覚悟で戦場に身を置いていたわけでは無いことここに来て初めて理解した。

 

 「興覚めだ、死ね。」

 

 ナイトはそう言うと刀を振り下ろそうとする。

 

 ズギャーン!ナイトへと紫色の光弾が次々と襲い掛かる。

 ナイトはそれを躱し、襲撃者を見る。

 

 「ブドウスカッシュ!」

 

 ナイトを攻撃したのは龍玄であった。龍玄は必殺技であるドラゴンショットを発動、エネルギーがチャージされ、紫色のドラゴン型のエネルギー弾を撃ち出す。ナイトはドラゴンショットを片手で受け止める。ナイトが龍玄に気が向いている隙を突き、ナックルがドライバーを操作し、ライダーパンチをナイトに打ち込む。

 

 「おうら!」

 

 ナックルの渾身の一発がナイトの頭部に炸裂する。だが、

 

 「あの戦いを経験したアーマードライダーでもこの程度か。」

 

 攻撃が聞いたそぶりを見せずに落胆の声色を漏らすナイト。相手が並のインベスでは無いのを予想していた二人ですら予想していた以上の強敵であることを示唆していた。だが、

 

 「この程度で期待外れなんざ思われてもうれしくねえよ。」

 

 これまで、様々な戦いを経験した二人にとって格上が相手など今更驚くほどではない。

 

 「僕たちの経験した戦いをここまでの攻撃で全てを測れない。見くびるな。」

 

 格上であろうと守るべきものがあるのならば戦う、それこそが彼ら仮面ライダーの矜持である。その気勢を見たナイトは、

 

 「面白い、ならば俺を楽しませろ!」

 

 獰猛な喜びを現すように龍玄とナックルに襲い掛かる。

 

 「行くぜ、ミッチー!」

 「ああ、行こう!ザック!」

 

 それに臆することなく、龍玄とナックルは立ち向かう。その姿を見た白銀は

 

 「すげえ、あんな奴相手に。」

 

 純粋にあこがれを抱いた。そして、

 

 「俺だって!」

 

 バニシングブレードを杖代わりに立ち上がる。そして、自身の傷も顧みずに龍玄とナックルと共に戦おうと走り出す。

 

 「もっとだ、もっと来い!」

 

 ナイトは歴戦の仮面ライダー二人を相手に互角の戦いを見せていた。近距離でコンビネーションパンチを見せるナックルに、ナックルを援護するように龍玄が中距離で打ち抜く。その卓越したコンビネーションですら、目の前のナイトには準備運動にしかならなかった。そこに、

 

 「はあああ!」

 

 さっきまで倒れていた白銀が参戦した。流石のナイトもこれには煩わしさを感じたのか、いくつかの攻撃がまともに当たるようになった。

 

 「全く、煩わしい。このまま、死ね!」

 

 ナイトは自身の刀に漆黒のエネルギーを集める。そこに

 

 「いい加減にしなさい、ナイト。」

 

 特殊な改造が施されたと思われる濃紺色のISに乗るイリーナ・A・タカハシの姿があった。

 

 「あなたの任務はアーマードライダーの各個撃破、同時に3人も相手にして、どういうつもり?」

 「ふん、これは俺の戦いだ。お前が口を出すな、クイーン!」

 「あなたの戦いでも王の命令なら、私はあなたの戦いをしっかりと見る必要がある。はっきり言えば、これ以上の続行をする意味はないわ。すぐにでも王の元へ戻るわよ。」

 「何?」

 「王の考えではこいつら全員と戦うにはまだ早いのよ。あなた一人の考えで王の計画を破綻させるのは許されないわ。」

 

 クイーンと呼んだイリーナとの会話でナイトは渋々、その場を引き下がる。

 

 「待て!」

 

 それを白銀が追おうとするが上空のイリーナが手元のライフルで白銀の足元に弾丸を打ち込む。

 

 「ヴァルハラの仮面ライダー、次に会えば無事には返さないわ。王の計画の邪魔するのなら私が全て、塵一つ残さずに殺してあげるわ。」

 

 イリーナはそう言い残し、その場を去った。

 3人はナイトとイリーナが去ったのを確認すると変身を解除した。

 

 「計画ってなんだよ。」

 

 一夏がこの場にいる全員が感じているであろう疑問を口にする。

 




次回、前世の記憶と向き合い己が戦う理由を考える大樹。そして、またも現れるナイト。ナイトに対抗する龍玄、ナックル、白銀。修羅へと落ち、眠りについていた紅蓮の竜王、炎竜が復活する。

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