side三人称
亡国機業の廃墟を舞台として異世界からやって来たアギトたちとファブニールが激しい戦いを繰り広げていた。複数いるアギトたちはその力でファブニールに手傷を与えようとするがファブニールの鎧は強靭でかすり傷すらも付かなかった。
「ここまでとは!」(ドルド)
その力はドルドから見れば非常にすさまじくたった一人で複数いるアギトたちを圧倒していたのだ。
≪ソイヤ!ビーストドラゴンフルーツスカッシュ!≫
ファブニールの薙刀が炎に包まれ、炎の斬撃がアギトたちを襲いかかる。ファブニールの斬撃を受けたアギトたちは軒並み灰燼に帰した。さらに、廃墟の地下ではインベスたちが既にアギトたちのほとんどを倒しており、廃墟からは生き残ったアギトたちがぞろぞろと逃げ出していた。
「くっ!!」(ドルド)
ドルドはコンドルの特性を有する本来の姿に戻り、アギトたちを引き連れて去って行った。それを見たファブニールは後ろから出てきたライオンインベス、セイリュウインベス、シカインベスがアギトたちを追いかけようとしているのを止めた。
「いや、これ以上は追わなくていい。クラックの向こう側に戻れ。」(ファブニール)
ファブニールの指示を聞いて3体のインベスはクラックの向こう側へと姿を消した。そして、ファブニールは黄金の果実を出して、その力を使ってある者の動きを予測する。
「流石に好き勝手に動かれると困るからな。お前のその動きをしっかりと把握させてもらうぞ。」(ファブニール)
「俺が玲人から知らされたのはこの世界では何度も何度も途轍もない力を持った奴ら、それも13体のそういう輩の戦いの舞台になっていたってことだ。」(Z.A.L.V.A)
「それってどれくらい前から?」(秋人)
「お前が生まれるよりもはるか昔、らしい。ほとんどの資料は無くなっちまったって話だ。だが、玲人の知っている話はあいつの家で一番古い時代まで遡れたのはどうやら江戸時代って話だ。」(Z.A.L.V.A)
「そんな昔から。」(秋人)
秋人はZ.A.L.V.Aから今大樹たちが巻き込まれている戦いについて話を聞いていた。
「玲人はユグドラシルに入る前、そう言う痕跡を遥か昔の神話に求めていたって話していた。あいつは論文には残さなかったが世界各国の神話はその戦いを目撃して生き延びた人々が残したものだと結論付けたんだ。」(Z.A.L.V.A)
「じゃあ、今この世界にやって来た存在は神話の存在なのか。」(秋人)
「神話の元になった、だがな。そう言う輩とずっと戦っていたのが柏葉家に伝わる戦士である護龍って奴だ。」(Z.A.L.V.A)
「護龍?」(秋人)
「早い話が仮面ライダーだ。ちなみに名前は護る龍ってな。柏葉の家ってのは代々この護龍っていう戦士を奉っていたんだがある時期から龍を忌み嫌うようになったって話だ。玲人の家は分家だが護龍を奉るのをずっとしていたらしいが一族の本家は玲人が知っている時はそれをないがしろにするようになっていたようだな。」(Z.A.L.V.A)
「仮面ライダー、護龍ってそう言うことなのか。でも、そんな守り神をないがしろにするなんて。」(秋人)
「それが柏葉勇吾と関係があるんだろうな。玲人の奴は最後まで勇吾が正しい道に進めるように言っていたが同じくらいに間違った道に確実に進んじまうって言っていた。」(Z.A.L.V.A)
「だから、勇吾君のことは自分でするって。」(秋人)
「ダメだったみたいだけどな。だが、勇吾の件はそこまで重要じゃない。大事なのは生き残っている大樹の方だ。大樹が柏葉の今代の護龍だからな。」(Z.A.L.V.A)
「大樹が!?」(秋人)
「その様子だと知らなかったみたいだな。」(Z.A.L.V.A)
今の護龍が大樹だということを聞いて秋人は胸中を信じられない気持ちで満たされていた。
「待て、ザルバ。護龍になるには何か理由があるのか?それともただの偶然か?」(秋人)
「大樹が護龍になったのはあいつの病気が原因だ。玲人と陽菜はヘルヘイムの森の植物に大樹の病気を治療するための特効薬があるって考えていたがあいつらが思っていたようなものはヘルヘイムの森の植物からでは作れなかったんだ。」(Z.A.L.V.A)
「じゃあ、どうやって治療を。」(秋人)
「おいおい、察しが悪いな。選ばれたわけじゃないなら元々あったものからその力を移植したに決まっているだろ。」(Z.A.L.V.A)
「じゃあ、護龍の力を大樹に。」(秋人)
「どうやら、何代か前のミイラ化した護龍が居たみたいだ。そいつから大樹に護龍の力の源のベルトを移植したっていうのが大樹の回復したその理由だ。」(Z.A.L.V.A)
それらを聞いた秋人はそんな人体実験のようなことを治療のためとは言え血の繋がった実の子供にしたのが玲人と陽奈だと言うことが信じられなかった。
「そんなこと、そんなことを大樹にしたのか。」(秋人)
「親ってのは子供の為ならどれだけ残酷なことも出来る、玲人はそう言ってたぜ。それが実の子供の命を救うならなおさらだってな。」(Z.A.L.V.A)
秋人は今はもうこの世にはいない二人のことを思い出して大樹の為ならばそれもするのだろうと思うのも無理はなかった。そして、それは自分と春奈=愛理も同じだった。
「今さら何を驚いているんだろう、僕と愛理だって同じようなことをやっていたって言うのに。」(秋人)
自嘲的なその言葉はまるで自分も同じことをしたと言わんばかりである。それに対してZ.A.L.V.Aは言葉を続ける。
「まあ、それはそれとして大樹の命が助かった。だが、護龍の力を受け継いだってことは今回の化け物たちと激しい戦いをすることになる。それだけじゃなく、護龍の力を継いだ奴は否応が無く戦いに巻き込まれる運命だからな。それを分かったうえで玲人と陽菜は大樹の命を救うために護龍の力を移植したんだ。」(Z.A.L.V.A)
Z.A.L.V.Aの言葉にかつて玲人と話した時に玲人が言っていたことが秋人の脳裏によぎった。
(ああ、俺と陽菜はな、どんなに口が裂けても大樹のことを大切な子どもだなんて言えねえ。命を救うのと引き換えに子どもにとんでもない運命を背負わせるなんて大人として、親として失格だからな。)(玲人)
かつての記憶がZ.A.L.V.Aとの会話で蘇る。その記憶全てがここに来てその真意を始めて理解できたのだった。
「そうか、全部そう言うことだったんだな。」(秋人)
「ここで本題と行きたいがお前の家に招かれざる客が来たようだぞ。」(Z.A.L.V.A)
そうZ.A.L.V.Aが言った時だった。秋人のケータイも鳴り響いたのだ。
「~♪~♪」(春奈)
織斑邸では春奈が鼻歌を歌いながら洗い物をしていた。
「ねえ、お母さん。」(???)
その時、春奈に声を掛けた人物が居た。その人物はあの街中で虐殺を始めたあのアギトだったのだ。その彼を見た春奈はすぐに台所からすぐ入れるシェルターへと走り出した。だが、その春奈の手を男はがっちりと握ったのだ。
「っ!!」(春奈)
手を掴んだ男を睨む春奈。なんとか逃れようと台所にあった包丁を手にして男に対して振るう。
「お母さん、そんなことをしたら危ないよ。」
男は春奈の包丁を振るう手を止めるとアギトへ変身する。アギトは春奈の首を片手で掴み、右手の爪をぎらつかせる。
「うう!」(春奈)
春奈はアギトの手を掴んで何とか逃れようとする。だが、ギリギリと音を立てて春奈の首を締め上げる。
「ああ、お母さんでやっと5人目だよ。僕の手で天使にしてあげる。」
そう言ってアギトが爪を春奈に突き立てようとしたその瞬間、玄関の方から誰かが走って来て、アギトに飛び蹴りを放ったのだ。
突然のことに春奈を放したアギト。跳び蹴りをした人物はそのまま春奈を守るようにして立っていた。
「君、また来たんだ。」
アギトを憤怒の表情で睨んでいるのは大樹であった。そして、玄関から走って来て春奈を介抱したのはマドカだった。
「お母さん!」(マドカ)
「ゴホッゴホッ!万夏、あなたまで。どうして。」(春奈)
「お父さんから電話があってその探し物のことで戻ろうって大樹と。」(マドカ)
「てめえ。」(大樹)
そこに遅れて翔一も入って来た。そして、その状況から何があったのかすぐに理解した。
「間に合ったんだね。」(翔一)
「翔一さん、私はお母さんを連れて外に出てます。たぶん、今の大樹だと。」(マドカ)
マドカの言葉に大樹がかなりの怒気を孕んでアギトを睨みつけているのに気付く翔一。
「分かった。マドカちゃんはお母さんを安全なところに。」(翔一)
翔一に言われ春奈と共に家を出るマドカ。アギトは大樹の気迫に押されてかその場を動けないでいた。
≪ドラゴンフルーツ!≫
「変身。」(大樹)
≪ソイヤ!ドラゴンフルーツアームズ!竜王、オン・バトルフィールド!≫
大樹はそのまま仮面ライダー炎竜に変身する。
炎竜の変身から数瞬遅れて翔一が腰にベルト、オルタリングを出現させる。そのまま、翔一は右手を構えて、左手の腰に握る。
「変身!!」(翔一)
翔一はオルタリングのボタンを押し込む。その次の瞬間にはオルタリングから光が放たれ翔一の姿は仮面ライダーアギトグランドフォームへと変身した。
「君達の所為でゲゲルが、。」
そのアギトの言葉をつなげる前に炎竜が竜炎刀の柄でそのまま殴り飛ばした。
「もう、てめえは黙ってろ。」(炎竜)
その倒れたアギトに炎竜は竜炎刀を突き立てようとする。それをアギトは敏捷な身のこなしで躱すがそこを仮面ライダーアギトが追撃する。
「はあ!!」(アギト)
仮面ライダーアギトの力強い拳がアギトの肉体に突き刺さる。そのまま、アギトはリビングの窓ガラスを割り、外へ飛んでいく。アギトがしりもちをついているところを炎竜がそれまでにない気迫で竜炎刀を振り上げて走って来た。
「ふん!!」(炎竜)
アギトは首をそらして炎竜の刀を避けたが炎竜の刃はそのまま外壁を切り裂き、アギトの体へと降ろされる。その気勢は明らかにアギトに対する殺意が籠っていた。
「絶対に許すか。」(炎竜)
今までにない程の怒りを、自身でもなぜ平静を保ちながらも燃え盛る業火の如き怒りで炎竜はこれまでにない程のおぞましい殺意を感じていた。
「フン!!」(ガドル)
奥多摩の山奥ではガドルがアギト二人を相手に善戦していた。一人は細身で両脚が異様に発達して巨大な刃を有しており、もう一人のアギトはガドルよりもはるかに巨大な肉体を持っていた。
足に巨大な刃を待つアギトはその刃で鋭い蹴りと共にガドルを切り裂こうとするが大剣を振るう剛力体となっていたガドルの甲殻には一切通じなかった。さらに巨躯のアギトはその剛腕でガドルを押しつぶそうとするもガドルは大剣で上手くいなしては反撃に大剣の重い斬撃を放っていく。
「全く戦いになれていないな。それにお前たちのその動きはただ相手をいたずらに殺めるものだ。そんなものでは俺を殺すことなぞ出来んぞ。」(ガドル)
そのガドルの言葉を聞いて激高する二人のアギト。だが、ガドルはそのまま二人のアギトの首を落とすと難無く仕留めたのだった。
「時間稼ぎは良いだろう。」(ガドル)
ガドルは動きが素早い敏捷体へと変わるとその場を後にしようとする。だが、そこに漆黒の存在が突如としてガドルに襲い掛かる。ガドルは敏捷体になっていたことでその攻撃を難無くかわす。
「なる程、お前がアギトたちの長か。」(ガドル)
ガドルはその姿を一目見てその相手がアギトたちを率いる存在だということを理解した。
十三異界覇王の一角、漆黒進化王イーヴィルアギトがその姿を見せた。
「まるでダグバだな。色が黒いということを除けば、だがな。」(ガドル)
「うん。分かったよ、駿河さん。こいつを殺せば良いんだね。」(イーヴィルアギト)
ダグバに酷似した漆黒の姿をしたイーヴィルアギトはあらぬ方向に話しかける。まるで、そこに誰かがいるかのように。
「生憎だが残っているゴのグロンギをやらせはせん。すでにあいつらにはゲゲルで生きる以外の道がある。俺の様にゲゲルで力を証明する以外に出来ることのない男にはこの程度のことしか出来んがな。」(ガドル)
ガドルはそのまま装飾品を錫杖へと変化させて、イーヴィルアギトに立ち向かう。それに対してイーヴィルアギトはその錫杖を向かって来たところで軽く払う動作でいとも簡単に折ってしまった。
「何!」(ガドル)
あまりのことに驚いてしまったガドル。そのガドルの眼前でイーヴィルアギトの頭部にあるクロスホーンが2本から6本に展開した。そのまま、漆黒の輝きを放つオルタリングから光が放たれる。そこにイーヴィルアギトの足元に歪に変化したアギトの紋章が出現する。
「っ!」(ガドル)
ガドルは一度距離を取るべくイーヴィルアギトから離れる。そのまま、イーヴィルアギトの足元の紋章はイーヴィルアギトの足へと吸収される。そして、イーヴィルアギトはそこからジャンプをしてライダーキックをガドルに放った。