side三人称
急いで大樹の両親の別荘から車を走らせる秋人。Z.A.L.V.Aから聞いた知らせとスマホに通知された知らせから家に何者かが襲撃したことを察知した秋人は制限速度を大幅に超えた速度で車を走らせている。
「頼む。間に合ってくれ。」(秋人)
幸いにも警察に捕まることもなく秋人は家に着いた。家の中からは激しい戦闘音が鳴り響く。急いで車を降りると家の中からマドカに支えられた春奈が出てきた。
「愛理!万夏!」(秋人)
「お父さん!」(マドカ)
「切嗣。」(春奈=愛理)
「良かった、無事で。いったい何が。」(秋人=切嗣)
「家の中に男が入って来てて、その人がいきなり襲ってきて。」(愛理)
「じゃあ、この音って。」(切嗣)
「今、大樹と一緒に来てくれた人がお母さんを襲った人と戦ってて。」(マドカ)
マドカがそう言うなり家の外壁がいきなり吹き飛んだ。秋人=切嗣は車から以前にグロンギたちに向けた拳銃を取り出した。
「マドカ、母さんと一緒に篠ノ之さんの所へ行くんだ。」(切嗣)
「お父さんは?一緒に行かないの?」(マドカ)
「大丈夫。大樹と一緒に戻るよ。さあ、早く行って。」(切嗣)
「切嗣。」(愛理)
「危なかったらすぐに逃げるよ。」(切嗣)
切嗣はそう言って家の中へと入って行った。それを見たマドカと春奈=愛理は安全な場所である篠ノ之神社へと歩み出した。
切嗣は家の敷地内にすぐ入ると細身の異形と戦う炎竜と仮面ライダーアギトの姿を見た。
「フン!!」(炎竜)
炎竜は怒りのままに竜炎刀を振るい、細身の異形=アギトに攻撃を仕掛ける。その姿はあまりにも殺意に満ち溢れており、その様子からは相手を確実に殺すという意思が見て取れた。その様子に普段の大樹と違うことを察する切嗣。
「大樹!待て!」(切嗣)
切嗣は一度炎竜に声を掛けた。普段であれば戦闘時とはいえそう言った呼びかけに反応する炎竜だが今回は目の前の相手に攻撃することに気が向いており、近くとはいえ切嗣の呼びかけに全く応じる様子が無かった。
炎竜のその姿になぜなのか一瞬考える切嗣。だが、今が戦いの時ということもあって、切嗣はすぐに家の外壁の方に身を寄せる。
炎竜から距離を取ろうとアギトが動くがそこを仮面ライダーアギトが追撃をするので中々身動きが取れていなかった。
(あれはアギト、か。それに戦っている相手もアギトのようだが。仲間割れなのか?それにしては大樹と一緒に戦っている方のアギトは大樹の動きに合わせて戦っている。)(切嗣)
物陰から様子を伺う切嗣。パッと見で分かるのは大樹と共に戦っているアギトは協力関係を築いているということと戦っている相手のアギトにどうやら大樹が尋常でないレベルで殺意を抱いているということだった。
(もしかして、愛理を襲ったことに怒りを感じたのか?だとするなら、あの戦い方は納得できる。もし、それが正しいなら。)(切嗣)
そんな中で炎竜の蹴りがアギトに炸裂した。そのまま吹っ飛ぶアギト。そのアギトはなんと切嗣が姿を隠したところへと飛んできたのだ。
「ヤバい!」(切嗣)
切嗣はその場からすぐに離れようとする。だが、それをアギトが見逃さないことはなかった。そのままアギトは物陰に隠れていた切嗣に襲い掛かるのだった。
奥多摩の山中、イーヴィルアギトがガドルに対して必殺の一撃を放った直後である。その一撃はガドルに死を想起させるには十分すぎるほどのものだった。だが、そこに森の至るところから植物の蔦が伸びてイーヴィルアギトを絡めとったのだ。
「お前の相手は同じ十三異界覇王の俺だろ。」(ファブニール)
植物の蔦を操っていたのはファブニールだった。ファブニールはそのままイーヴィルアギトを拘束して地面へと引きずり倒した。
「ゴ・ガドル・バだな。」(ファブニール)
「俺の名を知っているのか。」(ガドル)
「まあ、俺のいた世界でそれなりに、だけどな。ここを任せてくれないか?流石にあのアギトはあんたにも手に負えないだろうし。」(ファブニール)
「この俺に退けと。」(ガドル)
「あんたは彼らにとって大事な頭目だ。みすみす見殺しにするのは俺の思うところではない。」(ファブニール)
そうやって話すファブニールとガドル。その中でファブニールはイーヴィルアギトが自身が操る蔦の拘束を破ろうとしているのに気が付いた。
(流石にこの程度の拘束では抑えきれないか。それにしてもこのアギトは一体?シルエットは明らかにクウガのアルティメットフォームだ。アギトがこの方向に進化するってことは何があったんだ?)
「もう少し話したいがこいつがどうやら暴れたいらしいからな。じゃあな。」(ファブニール)
ファブニールはクラックを出現させるとそのまま蔦で拘束したイーヴィルアギトをクラックの向こう側へと引きずり込む。そして、自身もクラックの向こう側へと姿を消す。
「はあ、この俺を弱者扱いか。流石にダグバと同等の力を持っているだけはあるのか。」(ガドル)
そう言うガドル。その胸の内に自身が歯牙にもかけないほどの存在ということに対する憤りもあるがそれよりも先に逃げている同胞たちの元へ行くことが先決だと言い聞かせて森の中を疾走する。
「小父さん!!」(炎竜)
「っ!」(アギト)
炎竜と仮面ライダーアギトの目の前で切嗣がアギトの襲われそうだった。両者ともに最悪のシーンを想像した。だが、その次の瞬間に彼らは想像も出来なかった音が鳴り響く。
ダン!ダン!
銃の発砲音が二度鳴ったのだ。
「ああああああああああああああ!!」
あのアギトが痛みで悶えて地面を転げ回る。そこを切嗣は距離を取り、炎竜と仮面ライダーアギトの近くへと退いていく。
「小父さん!」(炎竜)
「大丈夫、ギリギリだったけど。」(切嗣)
「一体、何を?」(アギト)
「神経断裂弾、30年前の未確認生命体がまだいた当時に出来た中古品だけど。かなり速い相手だったから不安だったけど、向かってきたところに2発をあいつの腰の宝玉に。」(切嗣)
切嗣が撃ち込んだのは神経断裂弾、30年前に警視庁で開発された対グロンギ用の特殊な弾丸である。撃ち込まれれば体内で神経組織を同時に複数個所を破裂させるものでその殺傷力は非常に高い。
切嗣はアギトが自分に向かってきた瞬間に腰の宝玉目掛けて神経断裂弾を2発撃ち込んだのだった。
「グウウウウウ!!」
アギトはそのまま腹部を抑えてのたうち回る。それほどまでにその痛みは想像を絶するものだった。だが、そのアギトは痛みに悶えながらも立ち上がり、切嗣を睨み付ける。
「痛いじゃないか、ヒドイよ。」
アギトの声は明らかに尋常ではない痛みで歪んでいた。その数瞬の後には腰の金色の宝玉の当たりから破裂音を幾度も響かせておびただしい血を飛び散らせる。
「さあ、君のことは一切僕は知らない。でも、君が僕の家族に危害を加えようとしていた。そのことで僕の
「本当にヒドイな。」
その直後、一際大きな破裂音が響いた。その瞬間に腰の宝玉は砕け散り、そこから塊のように血を吐き出してアギトは死に絶えた。アギトはそのまま変身前の本来の男の姿となった。その様子を見ていた炎竜と仮面ライダーアギトは変身を解除する。
「小父さん...。」(大樹)
変身を解除した大樹が切嗣に声を掛ける。その声音は弱弱しく、まるで叱られるのを待っている子どものようだった。それを見て切嗣はただ大樹の両肩に手をポンと軽く置いた。
「大樹は悪くないし、大樹の所為じゃないよ。僕もこういうことにはまあそれなりに慣れているから、大丈夫だよ。」(切嗣)
そう言うと大樹に笑いかける切嗣。その声音も笑顔もただただ子供を安心させようとする親のものだった。
「あの、お怪我は?」(翔一)
「いや、幸いどこも怪我はしていないよ。」(切嗣)
翔一の問いかけに切嗣はそう答えた。切嗣はそのまま倒れているアギトの遺体を見る。その顔を見た時、切嗣の表情が一変した。
「どうして、こいつが。とっくに死刑は執行されていたはずなのに。」(切嗣)
「どうかしたんですか?」(翔一)
切嗣は過去に記憶で目の前に居る男がこの場に居るはずのない人物であることを正確に覚えていた。
「大樹、物置からブルーシートを持って来て。このホトケさんを車で篠ノ之さんの家に運ぼう。」(切嗣)
「んっ、うん。」(大樹)
「あの、俺はどうすれば?」(翔一)
「このホトケさんを運ぶのを手伝って欲しい。流石に事情を知らないご近所さんの前でこいつを見せるわけにはいかないから。」(切嗣)
物置から大樹がブルーシートを持って来た。切嗣はなれた手付きでアギトだった男の遺体をブルーシートで包むと翔一と共に車のトランクに載せた。そのまま、大樹たちは車に乗り、マドカたちが向かっている篠ノ之神社へと向かった。
時を同じくしてヘルヘイムの森。そこではイーヴィルアギトとファブニールが激しい戦いを繰り広げていた。
「はっ!!」(ファブニール)
ファブニールは薙刀を振るいイーヴィルアギトを切り裂こうとするがイーヴィルアギトはその姿をより強固なものへと変えた。体の鎧には紫色と赤色のラインが走り、右肩のアーマーがより鋭く巨大な物へと変わり、右腕が異様に筋肉が発達したものとなっていた。
イーヴィルアギトフレイムタイタンフォームはそのままファブニールの薙刀を掴み、あろうことかその刃を粉々に握りつぶしてしまった。
「おいおい、そんな形態は知らないぞ。」(ファブニール)
ファブニールの言葉に答えるようにイーヴィルアギトは漆黒に染まった宝玉=オルタリングから巨大な片刃で幅広の大剣であるフレイムタイタンソードを取り出した。それを筋肉が発達した右腕で持つとイーヴィルアギトは力任せにファブニールに振り下ろした。
「まずい!」(ファブニール)
≪ビーストシークワーサーアームズ!獣雷、ライトニング!≫
ファブニールは敏捷性に秀でたビーストシークワーサーアームズにアームズチェンジするとそのままその場から勢いよく後方へ跳んで離れた。その直後のイーヴィルアギトがフレイムタイタンソードを勢いよく振り下ろした。その刃はそのまま地面へと突き刺さり、あろうことか大きな地割れまでも引き起こしていた。
「まさか、ここまでかよ。」(ファブニール)
ファブニールは木の枝の上に乗り、樹上からイーヴィルアギトの様子をうかがう。
「まさかとは思うがクウガとアギトのハイブリッドなのか。一体、どんな奴が変身してんだよ。」(ファブニール)
自分なりのイーヴィルアギトの姿を見て推測をするファブニール。その背筋に冷たい汗が流れる程にイーヴィルアギトの戦力に恐怖を覚えた。
「オルタリングの形状からはたぶん、漫画版クウガのアギトだな。体系は男性だから津上雪奈は除外して良いな。もしかすると本当にハイブリッドかもな。それがあっているならとんでもない輩を呼んじまったか。」(ファブニール)
「そこか!」(イーヴィルアギト)
樹上に居るファブニールに気付いたイーヴィルアギト。そのままイーヴィルアギトはフレイムタイタンソードを横なぎに豪快に振るった。周囲の木々は力づくで振るわれた大剣によってバキバキと音を立てて崩れた折れていく。そこをファブニールは木から降りる形で難を逃れた。
「うん、分かったよ駿河さん。このままやれば。」(イーヴィルアギト)
「おいおい、流石に俺でもここまでは難しいぞ。」(ファブニール)
ファブニールはイーヴィルアギトを見てこのままでは劣勢のままだということをやっと理解できた。
「仕方ない。あまり手の内は見せたくないが。」(ファブニール)
そう言うとファブニールは黄金の果実による竜人型のオーバーロードの擬態を解いて、仮面ライダー炎竜ドラゴンフルーツアームズの姿に戻る。そこでロックシードホルダーにセットされている赤黒いロックシード=ファブニールロックシードを取り出した。
≪ファブニール!≫
ファブニールロックシードを開錠するとファブニールの頭上に赤黒い鋼のドラゴンが現れた。イーヴィルアギトは再度フレイムタイタンソードをファブニールに振るうがそれをドラゴンが間に入って防ぐ。さらにドラゴンが口から火炎を吐いてイーヴィルアギトの浴びせた。
≪ロックオン!ソイヤ!ファブニールアームズ!邪龍、アウトレイジ!≫
ドラゴンが空中で咆哮するとバラバラになりファブニールに装着される。ファブニールの最強形態であるファブニールアームズである。
≪邪龍DJ破断剣!≫
そして、ファブニールの右手には専用アームズウェポンである邪龍DJ破断剣が出現した。
「行くぞ。」(ファブニール)
ファブニールはそのままイーヴィルアギトと距離をゆっくりと詰めていく。お互いの武器の間合いに入った瞬間から両者は激しく切り結び始めた。お互いに重量のある大剣をイーヴィルアギトは片手で荒々しく振るい、ファブニールは両手で邪龍DJ破断剣を持ち、流れるような動きで剣を振るう。
両者の力は互角、正確には技量などの地力の差からファブニールがわずかに優勢だった。
「くっ!!」(イーヴィルアギト)
「やっぱりな、お前ほとんど喧嘩もしたことない素人だろ。」(ファブニール)
ここまででファブニールはイーヴィルアギトの変身者は精神に何かしらの破綻を抱えているものの戦闘については素人に毛が生えた程度であることが分かった。
(だが、厄介なのは素人だからこその動きの読みづらさに変身した姿の力だ。油断すればそれこそ簡単にこっちを押しつぶせる。)(ファブニール)
その中でファブニールはイーヴィルアギトの脅威をしっかりと理解できた。それ故に自分の中にある計画を多少なりとも変える必要があるのではと考えるが、それを頭を振って迷いを払う。
(どっちみち、あいつには、
「行くぜ、まだまだ付き合ってもらうぞ。」(ファブニール)
そう言うとまたもファブニールはイーヴィルアギトと激しく切り結ぶ。
次回、篠ノ之神社へと集まる大樹たち。同じ頃、アギトに追われるグロンギたちの元に仮面ライダーロードとロードレディが駆けつける。
異世界にその力を振るう邪悪なるアギトたちのゲゲルの矛先は大樹たちへ向かう。
「ああ、もう。やっと分かったのに、やっと分かったってのに、もう二度と奪わせはしない!」
そこでついに炎竜が覚醒する。